教室にて
アクセスいただきありがとうございます。
消えゆくモノの愛し方。3話目です
時間が無かったため短めです。よろしくお願いします
薄尽くんとの図書館での出会いの、その翌日。
登校時間の30分前に、私は既に教室にいた。家にいてもやることも無いし、趣味である読書は正直どこでも出来る。
であるならば先に登校しておけば時間など気にせず文字を読むことができる。本を読む時は雑念があってはならないのだ。
本とは著者の血と汗と涙の結晶。より美しい表現を求め東奔西走し、その果てに完成した1冊が私たちの手元に届く。そんな高尚な物に対して、読者側が誠意を持って読まないというのは大きな失礼に当たると考えている。
だからこそ、心配事がない環境で読書をするのが好きなのだ。
「……そういえば」
昨日、薄尽くんがバイト先に来たのだが、その時になんやかんやとあった結果、感情について書かれた本をいくつかピックアップしね彼にメッセージを送ったのだが、返信が無い。
そこまで仲良くもない中で連絡先を聞いたのは失敗だっただろうか?でも本では友達作りは積極性が大切だと言っていた。きっと大丈夫だ。そんなことを考えていると
「おはようございまーす……お、やっぱいた」
「おはよう。今日も早いね」
「ランにだけは言われたくないよ、はは」
相も変わらず笑顔を顔にたたえた青年が教室に入ってきた。
薄尽 珠洲。学年の人気者であり、いつでも明るい男の子。テストの時ですら楽しそうな表情を崩さない彼だが、おそらく私はこの学校で唯一彼の真剣な表情を知っている。
あの顔を見て、彼には何か大きな秘密があるのでは無いかと考え、知識欲ゆえに接近したのだ。
「そういえば昨日連絡返せなくてごめんね、おすすめして貰った本は全部買ったよ」
「あ、そうなの?お眼鏡にかなう本だったみたいで良かった」
「うん、凄いよ本当に見たことない本ばかりだったから」
気付けば私が送ったメッセージの横には既読の2文字が浮かんでいた。
昨夜はついてなかったので、おそらく今朝確認してくれたのだろう。
「求めているような内容だといいけど…結構普通のこと書いてるやつばかりだから、あんまり期待はし過ぎないでね」
「大丈夫大丈夫、一般的な内容から学んでいく方が効率いいと思うんだ」
彼はどうやら精神科医を志しているらしく、感情に関する書物を探し回っていたらしい。
だから私の知る限りのそれに近しい内容の本をおすすめした訳だが、記憶が正しければそれらの内容は感情の組成だとか感情と体調の相関関係だとかそんな内容だ。
しかし、こんな内容の本が欲しければそれこそ図書館にいくらでもある。彼はお目当ての内容が乗っている本が見つからないと言っていた。
だからこそ、彼が精神科医を志しているというのは嘘では無いかと考えているのだが…
「そうだラン、今日昼ごはん一緒に食べない?」
「あぁうん……え?」
そんな思考は彼のその声に引き裂かれた。今私はお昼ご飯を一緒に食べようと言われたのか?なぜ?あぁいうのって同性の友達と食べるもんじゃないの?もしかして彼はもう友達とかそんな次元じゃなくて私のことが好きなのか?いやそんなはずは無いまだ知り合って2日目だ。ありえない。
などと思考を巡らせていると
「本のこと色々聞きたいな〜って思ってさ」
「あ、あぁそういう…」
とてもシンプルな理由だった。ともかく、彼に接近するためにもこの機会は好都合だ。
まさか向こうから接近して来るとは思わなくて焦ってしまった。落ち着け、冷静に……ただでさえ私はあまり人と話さないのだから、ペースを乱されてはならない……
「嫌だったら全然いいんだけど、どうかな?」
「そうだね……私今日図書委員の当番だから、図書室でいいならいいよ」
「全然大丈夫だよありがとう!じゃあまたお昼に声かけるね」
「うん、じゃあ1日頑張ろう」
廊下は気付けば騒々しく、今日という日の始まりを告げていた。
時刻は8時20分。朝礼まではまだそこそこの時間が残っていた。健やかな日差しが片耳を温める中、私は読み残した本を読破するために集中する事にするのだった。
太陽がいざ下らんとする頃、俺はランに声をかけていた。今日は彼女と昼食を取ることにしている。
理由は彼女が本に詳しいからだ、もしかすると俺が探しているような内容の本を知っているかもしれない。
「お待たせ、ラン」
「全然大丈夫だよ、じゃあ行こっか」
「何?珠洲お前女の子とご飯食べんの???」
そうクラスメイトが声をかけてくる。からかうようなその声の中に、確かに怨嗟のようなものを感じた。
そうか、学校で男女2人でいるとこういう噂が立つのは自然な事だ。俺らくらいの年頃の子供たちにとって色恋沙汰というのはいたく刺激的に映るのだ。
「そうだよ、でも聞きたいことがあるだけだからそう言うのじゃないかな」
「ほんとか〜?そういうこと言うと関係を隠したがってると思われる事もあるから気をつけろよ?」
「いやいや、本当にそういうのじゃないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」
「薄尽くん、そろそろ行かないと」
「あぁごめんごめん、じゃあまた後でね〜」
そういってクラスメイトに手を振り、図書室へと向かう。
ランはその間、随分楽しそうに話してくれた。俺は彼女に感謝しているからかは分からないが、その笑顔が妙に印象的で、心を明るくしてくれたのだった。
患者番号 A015
薄尽 閑太郎
年齢:51歳
病名:消舌症
概要:人と口を開いて話すことができない。
「?????????????。」
「?????????????。」
備考:「?????????????。」
段階:ステージ5
完治確率:0%
患者番号 D003
薄尽 珠洲
年齢:17歳
病名:情忘症(ロストエモーション症候群)
概要:「?????????????。」
「?????????????。」
「?????????????。」
「?????????????。」
備考:「?????????????。」
段階:ステージ4
完治確率:0%
患者番号 θ001
薄尽 蜜
年齢:20歳
病名:突発性情忘症
概要:精神的な外的刺激により、重要な情報を認識できなくなる。
「?????????????。」
「?????????????。」
「?????????????。」
備考:「?????????????。」
段階:不明
完治確率:0%




