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2/5

ほぉんとぉ、あんた達は、懲りないね

ベルは、飛ぶのが、少しずつだが、速くなっている。


身体もどんどん、育っていた。


「ベル様は、過去の天神族に例がない、育ちの早さね。」


「一日中、動き回り、夜はぐっすり寝てるもの。」


「しかも、マナ石はいつも大量に側にある。」


「それは、まさに、食べ放題って事よね。」


「すぐに無くなるけど。」


「無くなる。」


「いつも用意、ありがとう。」


「いいんです。すくすく元気に育って下さるだけで、私達は幸せです。」


「いつでも、地下へ降り、マナ石を掘りに行きます。」


「ベル様のお食事は、お任せ下さい。」


「そうねぇ。収納庫には、まだまだ沢山の、マナ石あるけど、この減り具合だから、そろそろ、掘り出しも始めたらいいかも。」


「でも、それは、あなた方ではなく、別にゴーレム作るから、そっちに行ってもらうわ。」


「ええ。あなた方はノーヴァ様の、お作りになったゴーレムですもの。あくまでも、ベル様の防衛と、お世話が仕事よ。」


「了解しました。」


などなど、子育てチームは、談笑しながら、ベルを見守っている。




ラウは、大戦後の様子を偵察と情報収集を兼ねて、結界を出て、外を見に行った。


「想像していた通りだわ。辺り一面、地面は抉れ、焼け野原。」


かつて、あった、澄み渡る湖も、鬱蒼とした森も、人々の街も、畑も、美しい大地は見る影も無い。


死臭と共に、毒の汚染が広がっている。


そしてそこには、なんとか生き残った他種族を狩り、食べている、魔神族と龍神族がいた。


「最悪だわ。」


魔術を使えるといっても、霊体のようなナビには、神族一人さえ、倒せない。


魔神族と龍神族は、雑食で、食べれるものなら、なんでも食べる。


普段は、料理された食事を、気取って食べているが、大戦により、大怪我や瀕死になった者が、どちらの神族も、生き残りのほとんどを占めている。


今までは、天神族に治癒して、もらっていたが、天神族は、もういない。


と、なると、魔力がある他種族や、魔物や、魔神族なら龍神族、龍神族なら魔神族を喰らう。


調理した食事よりも、格段に、回復も早くなるし、魔力も増える。


「こいつら、ここまで数を減らしても、全然反省してないわ。それどころか、まだ殺りあう気、満々てかっ。」


大戦で地上に落ちた浮遊大陸を、どっちが先に浮かび上がらせるかも、お互い勝手に勝負していた。


「神族同士、喰い合うのは、好きにしたらいいけど、他種族を食べさせては、いけないわ。」


ラウはデラに相談する。


「助けるにしても、広範囲だから、ナビ総出になるわね。」


「作戦も練らないといけないわ。」


「そうね。私達は非力だもの。」


「うーん。1人では、無理だから、取り敢えず、戻るわ。」


「分かった。みんなを集めておく。」


ラウが屋敷に戻る時、ベルの側に、いたのと、同じような淡い光の球が、物凄い量、付いて来ていたが、ラウは気が付かない。




ラウが屋敷に戻り、緊急会議が始まった。


ラウからの報告に、ナビ達は怒り心頭。


「そうだ。あいつらは、生きたままでも、食べるんだった。」


「なんて意地汚い。」


「もう、これ以上、他種族を苦しめさせないわ。」


「でも、どうする?」


「地下深くに、居住空間、作って、他種族、一斉に転移させる?」


「それはいい案だけど、種別に作らないと、揉めるわよ。」


「うーん。一箇所ではなく、各地に作ったら?」


「それも非効率じゃない?」


「時間も掛かり過ぎる。」


色々な案を出し合い、今は緊急なので、広く大きく、一つの地下空間を作り、それを6つぐらいに、区切る事にした。


揉め事が起こったら、都度、解決する事にする。


「中央に、広場を6つ設置、そこに毎朝、食べ物を収納庫から、出してあげましょ。」


「それなら、そこに、泉も6つ作りましょう。」


「そうね。取り敢えずは、これでいくわ。」


「神族達に見つからないよう、認識阻害と、防御の結界も貼りましょう。」


「そうと決まったからには、急ぐわよ。」


「ニア、地下空間作りに、先に行くわ。」


ニア以外は、神族達の浮遊大陸と、ベルの屋敷から遠い大地の地下深くに、地下空間を作り出す。


音が漏れないよう、防音の結界を、張って。




ニアはベルが、楽しそうに1人遊びをしているのを、確認し、しばらく離れる事を、メムとイムに伝えて、ナビ達の元へ急いだ。


ベルは、ラウに付いてきた、沢山の、光の球に囲まれていたが、球はベルにしか見えないままだ。


キイは、ベルの側で、箱庭に夢中。


ベルが箱庭に興味を示さないので、独壇場になっていた。


メムとイムは、ベルに危険が無い限り、温かく見守る。


マナ石の予備を、奥の部屋に、ニアが詰めれるだけ詰めて、置いていってくれたので、マナ石が不足する心配もない。


ベルは光の球達には、興味津々だった。





地下空間を作りながら、ユニは急に怒り出す。


「何が浮遊大陸よ。天神族の浮遊大陸は、あいつらのせいで、霧散してしまったというのに。」


「怒ってないで、手を動かしてぇ。」


「ちゃんとやってるわよ。でもさぁ。」


「まぁね。神族達の魔力で保っていたんだから、壊れちゃうよね。」


「他人事のように言わないで。」


「じゃあ、どうしろと言うの?  天神族の方々は、もういないのよ。」


「ベル様1人では、どうしようもないわ。」


「だからって、悔しくないの?」


「悔しいわよ。恨んでもいるし。でも、それを言うのは、後にしよう。」


「そうよ。ここを早く完成させて、あいつらを困らせてやりましょう。」


「そうね。魔物も動物も、地下を作って、避難させましょう。」


「それは良い考えだわ。作る事をしない、あいつらが、食べる物に困るのも、復讐になりそう。」


「復讐かぁ。天神族の方々は、復讐を願わないと思うわ。」


しばし沈黙になった。


「確かにね。あの方々は、怪我した魔神族も龍神族も、他種族も、分け隔てなく、治癒されていたもの。」


「私達が、そういうことしたら、悲しむわね。」


「悲しむでしょうね。」


「うん。まあ、魔物はともかく、動物は助けましょ。」


「動物いなくなると、他種族が地上に戻っても、肉が手に入らなくなるものね。」


「いつまでも、私達に頼った生活は、他種族の、ためにもならない。って事ね。」


「ほらっ。手が止まっているわよ。急がないと。」


「そうだわ。1人でも多く助けないと。」


それからのナビ達は、無言で地下空間を作っていった。





ベルは、自分の周りの光の球が、次第に羽のある小さな人型に、見えるようになっていた。


「ベル。」


最初からいた光の球だった者が、声を掛けてくる。


「ベル。」


もう一つの、最初からいた光の球だった者も、優しく声を掛けてくる。


ベルはなんだか、泣きたいような気持ちになった。


「私達の大切な大切な我が子。無事に産まれてくれて、ありがとう。」


女性型の小さなそれは、ベルの頬にキスをした。


「愛しているよ。」


男性型の小さなそれも、そっとベルの頬にキスをした。


「こんな姿になったけど、お前の父だよ。」


「私はあなたの母よ。」


そんな会話をしていると、わやわやわやっと、羽のある小さな人型に、ベルは囲まれている。


「この子が、我らの最後の希望か。」


「アロイス、ノーヴァ、よくぞ、この子を護ってくれた。」


「どれどれ、お顔を私達にも見せてちょうだい。」


「あらあら。可愛いわね。」


「アロイスにもノーヴァにも、よく似ているわ。」


「久方ぶりの赤子かぁ。どれどれ。」


「ん? それにしても、大きくないか?」


「そうだな。よく育っている。」


「私達が小さくなったせいも、ありそうね。」


みんなが大笑いする。


「そうよ、そうよ。」


「あの時、死んだものと思ったんだがな。」


「まさか、光の精霊に、全員なるなんて、誰も想像すらしていなかっただろう。」


「なんと不思議なことか。」


「それに、天神族だった頃の記憶が、全て残っているなんて。」


「奇跡だな。」


「びっくりだ。」


「アロイスとノーヴァは、我々より先に、ここに来ていたんだな。」


「ええ。意識が戻ってすぐに、我が子が心配で。」


「そうか。そうか。」


「私は、意識が戻り、姿が変わって、ぼんやりと、焼け野原を眺めていたよ。守りきれなかった後悔と共に。」


「でも、あれが、我らの全力だった。」


「そう。あれが全力だったから、力及ばずだったが、仕方ない。」


「うん。全力だった。仕方ない。」


「この姿になって、聖の気が身体を纏っているんだが、こんな小さな身体では、たくさん集まっても、大地の浄化は、ほとんど出来なかったよ。」


「そんなこんなで何日か過ぎていった。すると、微かに天神族の気配がする、何が現れた。」


「私は、それが、私のナビだった者と、感じたの。」


「それで、付いて行こうとなって。」


「全員で付いて来たら、ここに辿り着いたってわけ。」


一万もいる精霊達は、ガヤガヤ、あちらこちらで話をしていて、騒がしい。


「ここは、広いな。」


「小さいといえども、一万程の精霊なのに、余裕でおられる。」


「陽の光も入って、暖かいわ。」


光の精霊達の話を、ほとんど理解出来ていないが、ベルは目で追いながら、話を聞いていた。


両親がベルの頭を、ずっと撫でてくれていた。


ナビ達は、ベルに触れられないし、ゴーレムは主人に気安くない。


ベルはなんだか、嬉しくて、声を上げて笑う。


両親だけでなく、周りの精霊達も、そんなベルを愛し気に見つめていた。






「やっと、出来たわ。」


「泉もこれぐらいの、水量があれば、皆んなの喉を潤せるでしょ。」


「転移させる前に、食べ物、置いておきましょう。」


「さて、受け入れ準備は出来たわ。」


「一斉に、神族以外の他種族を、転移させるわよ。」


「待って。いきなり、こんな所に連れて来られたら、怖くない?」


「あっ。そうよね。あいつらに追い回されて、捕まると、喰べられてだものね。」


「あいつらに集められたと、勘違いして、パニックになりそう。」


「ねっ。」


「じゃあさぁ。中央の広場の壁に、メッセージ、残しましょう。」


「それがいいわ。」


住みやすいよう、急いだ割には、細部に配慮された、空間になった。


ナビ達は、地上の各地へ散らばり、他種族を地下空間に転移させる。





「そうだぞ、ベル。じぃじと言ってごらん。」


「じぃじなんて呼ばないで、ばぁばと呼んでみて。」


ベルを囲んで、それぞれ、自分が最初に呼ばれようと、目論んでいる。


じぃじも、ばぁばも、たくさんいて、ベルは、見るだけでも、大忙し。


「ちょっとぉ。ベルは産まれて、まだ数日よ。話せないわよ。」


「分からんぞ。何せ、天神族の全てのスキルを、持っておる。成長も早い。」


「おいおい。最初は、パパだろ。じぃじは違う。」


「いいえ。ママよ。ばぁばも違うから。」


ベルは、皆んなに名前を呼ばれて、嬉しくて、手足をバタつかせて、はしゃいでいる。


「可愛いわ。」


「見ているだけで、幸せね。」


ふわふわ飛んでいるベルを、あちらこちらで、呼ぶ。


「ベル。こっちだぞ。」


「ベル。こっちこっち。」


たくさん呼ばれても、両親が呼んだ方に、パタパタと飛んで行く。


「分かってるの。ベル。」


「いい子だね。」


褒められ、頭を撫でられ、ベルは、とってもとっても嬉しい。


「ベル様、ご機嫌です。」


何故、そんなに機嫌が良いのか、分からないが、楽しそうなベルを、メムとイムも目を細めて、見守っていた。





ナビ達は神族達の目を盗んで、なるべく一斉に、他種族を地下空間に、転移する。


一斉転移後も、取り溢しがないよう、サーチしながら、大地の隅々を探し、見つけ次第、転移させた。


転移させられた人々は、不安と恐怖で、最初は動けなかった。


だが、時間が少し経つと、勇気のある者達が、周りを探り出す。


「いったい、なんだ、ここは。」


「泉もあるし、大量の食料もある。」


「毒入りって事はないよな。」


不安が拭えない。


そして、壁に掘られたメッセージを見つけた。


「おい。ここに何か書いてある。」


「字が読める者いないか?」


すると、オズオス、手を挙げる者が数人いた。


「読めるやつは全員で読んでくれ。皆んなに聞こえるように。」


手を挙げた者達が、壁に書かれたメッセージを読む。


「地上には、ご存知の、凶悪な2つの神族が、皆さんを食らおうと狩りを始めました。天の神が、皆さんを助ける為、地下に避難場所を作りました。ここは、2つの神族に見つからないよう、様々な効力の結界が張ってあります。地上に毒の汚染も広がっています。しばらくの間、皆さんは、ここで暮らして下さい。食料の心配はありません。毎朝、6つの泉の側に、食料を供給します。それは、皆さんが地上に帰れるまで、続きます。」


「俺達は助かったのか。」


「天神族様が助けてくれたのね。」


大きな歓喜とざわめきが、おこる。


「お静かに。」


「続きがあります。」


「皆さんが、その目で見たように、天神族は全滅しました。故に、天の神は天神族ではありません。どうか、将来を見据え、人々の力で、生きていく力を、ここで蓄え、地上に戻った暁には、人々で助け合い、暮らしていって下さい。各種族毎、代表者を1人決め、必要な物がある時には、早朝までに、広場の壁にメモを書いておいて下さい。用意できる物なら用意しますが、無理な物もありますよ。尚、ここで非道な行いをした者には、相応の罰が下される事を、覚えておいてね。」


「これで全部です。」


「やはり、天神族様は全滅されたのか。」


「私達を守って下さり、ありがとうございました。」


「今まで、助けて下さり、感謝してもしきれないです。」


ほぼ全員が、涙を流し、天神族を偲んだ。


「あの大戦の時、天神族様方が、大勢いらして、我々を守る為に、広範囲の結界を、張って下さった。」


「御自分達は、あいつらの攻撃の余波を受け、次第にボロボロになりながらも、私達を最後まで、守って下さった。」


「病気も怪我も、優しい笑顔で、治療して下さった。」


「あんなに優しい天神族様方が、全滅なんて。」


「なんて理不尽なんだ。」


「天神族様方の浮遊大陸は、私達の目の前で、砕け散った。」


「なのに、あいつらの浮遊大陸は、落ちて来ても、健在だ。」


「そして、今は、俺らを、餌のように、捕まえては、喰らう。」


「外道でなくて、なんなのだ。」


他種族は、大戦後も、生き抜くのに必死で、何かを考える余裕がなかった。


やっと、自分の感情と向き合えたのが、この時だった。





隅々まで、サーチして、他種族の取りこぼしが、ないのを確認後、ナビ達は、屋敷に戻った。


ラウだけは、地下空間にいて、他種族の嘆きを聞きながら、どう動くのか様子を観察している。


「神族の奴ら、何がおきたか分からず、呆気に取られていたわね。」


「自業自得よ。」


「動物も何とか、新たな地下空間に、転移したし。」


「後は、魔物食べるか、敵を食べたら、良いんだわ。」


「喰らいあって、数を減らしたら、助かるわね。」


「他種族いなかったら、同族だけでは、なかなか増やせないものね。」


「あいつら、女性体、極端に少ないから。」


「それも自業自得。」


「うーん。疲れた。」


「そうね。魔力、カツカツになってるもの。」


「私も。なのに、ラウはタフね。」


「ああ。ラウは魔力量、私の倍ほど、あるから。」


「え?」


「同じナビでも、元の主人によって、魔力量が違うのよ。」


「私達の中では、デラは別格だけど、その次に、ラウなのよね。」


「そう思うでしょ。実は一番魔力量があるのは、キイでした。」


「産まれたばかりなのに?」


「待って待って。それは、ベル様が、魔力量も天神族、最高って事?」


「当たり前じゃない。最後の希望だからね。ベル様は。」


またまた、ニアが、ドヤ顔していた。




地下空間では、棲み分けが終わり、それぞれ代表者を決めた。


人族はクリスタン。


ハイエルフとエルフはハイエルフのオリアンナ。


ドアーフはニコラスレイ。


獣人族は虎の獣人のジェネシス。


ダークエルフはコーネリア。


ホビットはサミール。


ドアーフは早速、自分達の住処の広場の壁に、伝言を書いた。


「出来る事なら、鍛治をしたい。鍛治に必要な物を、頂きたい。加えて、壁を掘り進める許可と、ツルハシなどを、頂けたらと願う。」


ハイエルフ達も伝言を書いた。


「木は難しくても、草花を植える事を、許可頂きたいです。」


ホビットも伝言を書く。


「細工物を作る道具などを、頂けたらとおもいます。」


この日、他の種族の伝言は無かった。


ラウは翌日、それらの願いを叶えた。


ついでに、ハイエルフの居住地は床を掘り下げ、暮らす程度の大きさの木を、植える事も、許可した。


返事も壁に書くから、壁は伝言だらけにならない様、読み終わったら、タッチすると、消えるようになっている。


地下だが、魔石で、昼間は明るい。


夜はランプを使うか、魔術の灯りを使う。


ドアーフは早速、壁を掘り進め、鍛治場を作れるように、整えている。


ホビットは、細工物を作り出している。 


手先が器用なので、色々な物を作るつもりのようだ。


翌日、人族は布と針と糸を希望した。


この様に、少しずつ、各々、暮らしやすい様、工夫して、伝言を書き始める。


ラウは、箱庭を作っているようで、なんとなく、楽しみになっている。








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