二十三話
日がゆっくりと西へと動き出し、空が灯ったばかりの火種の様なオレンシ色に染まり行く夕暮れ時。
その光か差し込む僕の部屋の中で、僕は一体何をしているのかと言えば……
正座である。
「ねぇ、アレク。君はちゃんと事の問題性を理解しているのかい?」
僕とかの三男坊――カミル・ソール・ガイベール――との決闘での最後の術式である〈偽称:虚無が一 崩心〉を使った事に叱咤を投げつけるのは灰色髪の冒険者。若干、いやかなりご不満の様である。
「はい…」
「じゃあ、何がダメだったのか、言ってくれる?」
「ただでさえ負担がかかっている魔力回路に負担を増やしたからです」
ひと時とはいえ、攻撃系マジックが全て使えなくなった、となればね。流石に反省するとも。
「そう、その通りだよ。今、アレクがどれだけ記憶と能力を取り戻したのか、遺憾にして私は知らないけれど、あんな矛盾が曲がり通ってる術式を使うのが危険な事ぐらい分かるさ」
頭をシンリアにポンポンと叩かれて、居た堪れなくなって視線を窓に逸らす。
危険性は承知している。何故なら、あの術式を作ったのは僕だから。一般の魔導師や魔術師が使おうとすれば、忽ち魔力回路が壊れるだろう。抑、術式の発動条件を満たせるとは思えないが。
「アレクが誠意の現れとして、自分の最高傑作を使ったのは別に良いさ。わたしも、ノリで過剰な術式を使うことだってある。ただ、自分の状態を鑑みてくれ」
知っている。誰も彼もが僕が呪いに蝕まれている事に、哀れみや同情を向けているとは限らない事は。シンリア含め、父上や母上、使用人たち、配下の皆、そしてフィーネ。誰もが大切な人、だからこそ見せる自分は頑としてでも弱みは見せたくない。
家族に絞れば、何時如何なる時も眼の奥に心配が滲んでいた。彼女は僕がその表情に目を向けようとしなかったのも知っているだろう。
肩に暖かな優しさが触れる。逸らされた目線を正す様に彼女に肩を掴まれていた。
「君が呪いを解く事を望まなくても、周囲は、私は、義妹ちゃんは、あの子は望んでいる」
どの子かは、言わなくても分かるよね?と言ってシンリアは肩から手を離し、僕の正座を解かせてソファーに直らせる。
「まぁ、今回は許すけど。余程危機的な状況じゃないと使わない様にね」
危機的状況……帝都に居る限り有り得ない。口調と声色は柔らかいが、内心では相当に度し難いのだろう。
「……諦めて当分は使役体の召喚と強化に注力します……」
「うん。それがいいと思うな、わたしは」
僕が呟いた言葉にシンリアは満足気に頷き、ポケット――アイテムボックス――から数枚の資料を取り出した。
「コレは……」
それ等を受け取って、中身をスラスラと読み進める。内容は……
「あの兵器の修復状況だよ」
「外殻が壊滅的だが、内部の機関部とエンジンルームは奇跡的に無事と」
良くここまで外殻が傷つく戦闘で壊れなかった物だ。何らかの結界か、特殊な加工が成されているのだろうか。
「金属は陛下から送られて来たら、片っ端ら加工しているから外殻自体は時間の問題だね」
「問題は………」
外殻は経年劣化と傷だけだから、コッチで金属を集めればいいだけだ。しかしこれは…,
「「圧倒的燃料不足」」
因みに、僕が集める素材は劣化で使えなくなった物を取り替えるのに必要な物であって、燃料には成らない。
「主成分が地底の奥底に眠ると言い伝えられている原初の血……ですか」
「確認されている採取可能地は全て龍種が管理しているね」
嘘でしょ!?成体の龍種と交渉するのは骨が折れるなんてレベルでは無いよ!出来たとしてどんな難題を吹っかけられるのか、予想できない。
「穴を掘った方が早そうですね………」
「代替案として、膨大な生命力が篭った液体なら良いらしいけどね……」
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最終的に、代替案を選択した。その作成の為に新たに大型錬金釜を購入した。手痛い出費だが、後ほど陛下に経費として落としてもらう。
そこに液状魔力、沢山の血吸草、ありったけの魔物の血、そして落し蓋に〈極限濃縮〉の術式を書き込んで強火で放置。
余った皮や、爪などの肉体素材を追加し続ければ、いつか同じ様な物が出来る筈だ。多分、不要な素材を僕含め協力者全員でやれば、半年程で起動に必要な分ぐらいは出来るだろう。
燃料作成の為に、肉体素材の三分の二を消費してしまったが、大半は雑魚のドロップを使ったので刺して問題はない。
なので、金属準備の再開である。
銀片と銅片を上位錬成し、できたインゴットを更に上位錬成した物と前回から更に三日闇属性を持つ液体に漬け込んだ結果、真っ黒に染まった要塞結晶蟹の純白水晶を錬成陣にセット。
「錬金術錬成術式:素材〈上質な硬質魔銅 十五個 上質な硬質魔銀 十五個 要塞結晶蟹の純白結晶 八個〉リソース〈魔力 200,000 暗黒魔石 大 二十個〉」
で、これらを銅片をインゴットにした時と同様に錬成。この闇属性金属、暗濃蜥蜴の硬質合銀は仮称怨霊くんの体にも使うので多めに作る。その為数は三十個。
そんな訳で同じ手順で六属性分作る。
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作り終えたら、出来た各六種の合銀を新しく作成した各六属性の要塞結晶蟹の純白水晶を漬けていた液体に漬ける。
そして、もう一つの大型錬金釜で作っていた薬を六等分に取り分け、六つの壺に入れる。そして各六属性の魔力臓器のペースト、粉状魔石、液状魔力、吸魔草の根を入れる。
中身をよく混ぜて、各六属性の火、水、土、風、闇、光に対応する宝石である紅炎の紅玉、深蒼の青玉、連昏の琥珀、封動の金緑石、博全骸骨古賢者の呪宝、配光救暗の月長石を入れ、ガレアがよく拾ってくる唯の水晶や効果付きのものを大量に上位錬成して作り出した水晶塊―白々蟷螂の水晶天殻―も投入する。
これを必要分集めるために、かなりの数の魔物や鉱物資源を乱獲することになった。白々蟷螂いった何処に住んでいるのか、帝国内にいるようなら今すぐにでも突撃するのだが……。一先ず、学院の図書館の魔物大全図鑑には影も形もなかったとだけ、言っておこう。
さて、仮称怨霊くんの肉体作りを始めよう。
長々と悩んだのだが、最終的に機械人形にした。人型であるのもあるが、体内に色々な機構や武器が仕込みやすいのだ。加えてパーツを強化するだけで全体の強化に繋がるので、簡単にパワーアップが可能だからだ。下手に魔力の指向性を気にする必要が無いので、下準備が要らなかったのもあるし、ドゥラハンに嫌われる要素が減らせるのもある。
機械人形とは古代文明の武器の一つで、現代にも残る人形術による戦闘に使ったものだと考えられている。その為、僕がしようとしているのは機械人形の素体を使った器作りというのが正しい。
では、機械人形から器として使うのに際して何が必要なのか。本来機械人形は人形術を使う術者の魔力で作動するため、常に微弱ながら魔力を消費する。
仮称怨霊くんの前世と守護者向けの魔力性質を鑑みれば、日常生活ぐらいならばフォローできる範囲ではあるが、戦闘においては少々心もとない。受けた攻撃にもよるが、全力戦闘は小一時間ほどが限界であろう。元々、彼はマジックを使う職についたことが一度もない脳筋なので致し方ない問題ではあるが。
そんな訳で、彼の器にはシンリアを介して行った生きた遺跡との商売で手に入れた魔力を生み出す古代文明の発展の礎――魔力炉を積み込むことにした。なお、構造は教えてくれなかったので、自作ではない。
分解して仕組みを理解するのは難しそうなので、こちらも保留、ってか遺跡の方から直々に『やめておいた方が賢明』との注意が有った。その代わりに古代文明の魔力タンクに使われていた魔力貯蔵魔導術式を教わったので大満足である。
明らかに他のエサで目くらましをされたが、大して問題ではない。どっちを選ぼうと徳だから!
手始めに、外骨格ともいえるフルプレートの全身鎧を作る。何故一番初めに造るのかと言えば、機械人形の中に何でも詰め込める為、延々と作ってしまうのを防ぐためである。一番外を作れば、必然的に作り込める場所が限られる事で作業に終わりが現れるという事だ。セルフで地獄にハマるのは御免被る。
作った暗濃蜥蜴の硬質合銀の内、十五個を使う。ティルフザールの次世代機作成に使ったタンザナイト程の宝石は無いが、数ランク下の闇属性の宝石が大量にあるので上位錬成で対応しよう。
「錬金術上位錬成術式:素材〈宝生岩の黒瑠璃 大 五十個〉リソース〈魔力 200,000 暗黒魔石 五個〉」
予想される魔力量は七十万程なので現在の素材状況ではよい方だろう。特段、石言葉にこだわる程余裕もないので、このまま使用する。後ついでに残ってる宝石たちを大量に上位錬成させようかな。仮称怨霊くんの趣味は知らないが、ゴッテゴッテの鎧になっても許してくれるさ。最悪洗n……脳言霊有るしねぇ。
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金属貝の黒鉄真珠、格闘宝黒兎の闇紅玉、etcなどがたくさん出来上がったので数えてみると、その数五十四個。ため込み癖が良い効果を発揮しているようだ。大体貯めた素材は基本的には上位錬成の贄になる事が多いので、錬金術を持っているならいい癖なのではなかろうか。
ついでに新しく鉄素材や、金素材、裏地に使う革素材も量産しておいた。当分は普通の生産では困ることはなくなるだろう。普通の生産を全くしていない気がしなくもないが。
要らない労働をした不安が過ぎったが、気にせず鎧を作っていこう。
「錬金術錬成術式:素材〈暗濃蜥蜴の硬質合銀 十五個 光集金蝶の光翼 十五個 混両在の水晶紛 五個 暗殺毒蜥蜴の腹皮 八個 空刃飛狼の刃翼 二個 暗黒蜘蛛大母の繰縛糸 響弾奏蛇の銀麟 その他宝石諸々〉リソース〈魔力2,000,000 魔力 1,000,000 光芒魔石 五十個 暗黒魔石 五十個〉」
いちいち機械人形から引っぺがす必要があるので、作り直すのは面倒なので魔力は無遠慮で行こう。あと、龍器の効果を利用するためにクラウンオブリベルを触媒に錬金している。プラスで錬成陣も使っているけど。
合銀と光翼、水晶紛を一緒に溶かし、一体になる様に混ぜる。本来は相反する光と闇の属性を持つため、爆発するのがオチなのだが。混両在の水晶紛によって部屋を傷つけることなく済んでいる。
そんでもって神殿騎士の基準の規格で一度作って、追加で装飾をつけていく。全体的にシスム様の聖獣である梟をモチーフに作っておく。
勿論、ガレアと仮称怨霊くんで普段から?護衛を務めて貰う予定なのでシスム様の聖印を中心に、暗月、暗日の紋章を組み合わせたものをマント状にした空刃飛狼の刃翼に溶かした響弾奏蛇の銀麟を染み込ませた暗黒蜘蛛大母の繰縛糸で縫っていく。
余談だが、シスム様の聖印など暗月などの神々の権能が関係する紋章を個人が神殿に許可なく刻んだり、物に書くことは出来ない。僕の場合は聖者だから許されているだけだ。
終わったら留め具や襟等々至るとこに隅々まで魔導術式を刻んだ宝石を配置していく。プレート部分には術式を刻まない。刻んでしまったら術式の負担がかかるようになって、防御能力が下がりやすくなるかつ、壊れやすくなってしまうからだ。
プレートを何枚かの層に分けて、内部の層にだけ書くとかすれば、防御力低下は通り抜けられるのだが。
まぁ、金属系の素材を尽く溶かしたことから分かると思うが、今回はみみっちい作業はしない。長く使いたいのが本音である。
贅沢に盛り込んだ宝石と、自重を放棄した魔力量から、竜王ぐらいの本気の一撃でもない限り壊せない性能である。まぁ、そんな物を着けていれば、戦闘が上手にならないから能力制限を後付けるが。
ガレアの剣捌きやサーラの魔弓術と比べれば、仮称怨霊くんの槍使いとしての能力はお粗末なものだからね。後、守護騎士の宿命として機動力が無いに等しいので、機械人形の馬を用意する予定だ。
そんな感じで完成。
[神鎧:梟雄なる鴟梟]品質 G
防御力 第三封印発動時 防御力 +200,000 物魔耐性 B- 第二封印発動時 防御力 3,500,000 物魔耐性 S+ 第一封印発動時 防御力 +60,000,000 物魔反射 A+ 威圧 部分開放 全封印解除時 防御力 +999,999,999,999,999 攻撃力 +999,999,999 完全物魔増幅反射 行動極限増力:復讐 行動極限強化:護衛 神威 完全開放 【神機開帳:■■■■ ■■■■■■■■■】不変効果 守護系マジック極限強化 知力極限増力 神気強化 【祝福:シスム】 自動修復
静寂と輪廻の女神シスムの祝福をうけた聖なる全身鎧。七大神が一柱、女神シスムの寵愛を受けた龍人族の聖者が作った全身鎧。この神鎧に込められた願いは恪守。しかし、この新たなる神器は未だ未熟にして未覚醒。外敵の必滅を掲げる単なる暴虐の意志でしかない。
………シスム様の介入だったから跳ね返さずにむしろ助長したけどさぁ。確かに全素材を【星辰の空中庭園】で僕が龍器とマーズフレイズとか込々で浄化と祝福したけどもさぁ。シスム様に事情も話したけどもさぁ。
これは…仮称怨霊くんの範疇を超える気がしてならないなぁ。御霊に成りかけではある。ではあるのだけど……圧倒的に精神修行が足りない。第二封印の時点で神器に飲まれる。
使徒にすればどうにかなるか?いや、だったら天使か悪魔の方が適性が高いか。
一年、いや二年かければどうにか……
取り合えず、機械人形の素体作るか。
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きょーの成果
プラス
神器ゲット やったね!帝国の勢力バランスが盛大に崩れるよ!
イーミール君
ステータス
名前:イーミール・レオン・エルカミス
種族:龍人族
MJ聖者:シスム レベル50 → 召喚師 レべル1
SJ 銃師見習い レベル10 → 銃士 レベル30 → 統率者 レベル1
生命力:18,480/86,760(+68,280)
魔力:218,489/404,939(+186,450)
STR:360(+205)
VIT:241(+125)
INT:557(+100)
DEX:400(+210)
AGI:355(+210)
MID:727(+250)
スキル
召喚術 レベル60 従魔契約術 レベル60
錬金術 レベル65 死霊魔術 レベル60
光芒魔術 レベル20 疾風魔術 レベル20
暗黒魔術 レベル20 並列発動 レベル45
雷魔術 レベル50 影魔術 レベル50
空間魔術 レベル50 光芒魔法 レベル20
暗黒魔法 レベル20 疾風魔法 レベル20
影魔法 レベル20 雷魔法 レベル20
光芒魔導 レベル20 暗黒魔導 レベル20
疾風魔導 レベル20 雷魔導 レベル10
影魔導 レベル10 空間魔導 レベル10
中級銃術 レベル20 統率 レベル1
学習 レベルMAX 解析 レベル45
上級剣術 レベル3 大剣術 レベル20
工学 レベル60 科学 レベル60
魔力学 レベル60 精霊学 レベル60
思考加速 レベル15 並行思考 レベル15
体力回復速度強化 レベル40
魔力回復速度強化 レベル50
イスタール帝国史 レベル60
礼儀作法(イスタール式) レベル75
話術 レベル60 速読 レベル80
舞踏 レベル1
権能『ハマリエル』
称号
【聖者:シスム】【寵愛:シスム】
術式
【転移:シスムの神域『星辰の空間庭園』】【龍体変化】【龍器召喚】【マリル】【ポテス】
【夢想無兵の古戦場】【偃暗月呪喰】etc
技
呪閃流
スキル進化
光魔導 → 光芒魔導 闇魔導 → 暗黒魔導 風魔導 → 疾風魔導 ダンス → 舞踏
あるぇ?可笑しいな、シンリアが第二皇女殿下よりヒロインムーブしてる。(無心で好みと思いつきのままに書いた)(反省はしている後悔はしていない)(第二皇女殿下のシーン増やさなきゃ《使命感》)
頼り甲斐があってちゃんと叱る時は叱ってくれるお姉ちゃん系師匠キャラ良いよね!
神鎧は仮称怨霊くんの試練要員です。それ以上もそれ以下もない。ただ、性能だけを見れば神器の中では現状中の下ぐらい。あと、継承位争いを激化させたかったのもある。
何処かの闇を司る女神『護衛の騎士と護られる令嬢……身分差……危ない恋情……舞台を整えるに値する!!』
と、犯人は申しております。




