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処方箋のない恋〜たった一夜の過ちから始まる、大人の恋の処方箋〜  作者: 優涼


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第28話 家族になる日

第28話 家族になる日




蒼の実家から戻って一週間後、思いがけない知らせが届いた。


蒼の父が、涼子に会いたいと言ってきたのだ。


今度は、涼子の実家がある東京まで、足を運びたいという。


「わざわざ来てくださるなんて」


涼子は少し驚きながらも、準備を整えた。


当日は、蒼の両親が揃って上京し、涼子の両親との顔合わせも兼ねた食事の場が設けられることになった。


料亭の個室に集まった二つの家族は、最初こそ緊張した空気に包まれていた。だが、酒が進むにつれて場の雰囲気は少しずつ和らいでいった。


「先日は蒼から色々と聞かせてもらいました」


蒼の父が、涼子の両親に向かって静かに切り出した。


「正直に言うと、私は最初この結婚に不安を持っていました。ただ蒼と涼子さんの話を聞いて、考えを改めました」


涼子の両親は静かに耳を傾けていた。


「二人はこれまで随分な試練を乗り越えてきたようです。それを聞いて、私はむしろ安心しました。困難があっても、逃げずに向き合える二人なら大丈夫だと思えたんです」


その言葉に涼子は、胸が熱くなるのを感じた。蒼も隣で静かに頷いていた。


涼子の父も、温かい言葉を返した。


「うちの娘は昔から一人で何でも抱え込む性格でしてね。でも蒼さんと出会ってから、随分と柔らかい表情を見せるようになりました。私たちも安心しています」


二つの家族の間に流れる空気は、次第に温かいものへと変わっていった。


***


食事の終盤、蒼の父は改まった様子で涼子に杯を差し出した。


「涼子さん、改めてよろしくお願いします。蒼のことを、これからも支えてやってください」


「こちらこそよろしくお願いします」


涼子は深く頭を下げながら杯を受け取った。これまでの緊張がゆっくりとほどけていくのを感じた。


「それと」


蒼の父は少し照れくさそうに続けた。


「妹の話を持ち出して余計な心配をかけてしまい申し訳なかった。でもあなたたちのおかげで、私自身も過去の出来事と少し向き合えた気がします」


その言葉に涼子は静かに微笑んだ。


「教えてくださって、私の方こそ感謝しています。おかげで蒼さんのお父様の気持ちを、本当に理解できました」


食事が終わり、店の外で二つの家族が別れを告げる頃には、最初の硬さは嘘のように消えていた。


***


その夜遅く、涼子と蒼は、ホテルの部屋で二人きりになった。窓の外には都心の夜景が広がっている。


「今日は本当によかったですね」


蒼がそう言うと、涼子は静かに頷いた。


「あなたのお父さん、本当に蒼さんのことを大切に思ってるのね。あんな風にちゃんと向き合ってくれる家族があるって素敵なことだと思う」


「涼子さんのご両親も、温かい人たちですね。父も母も、帰りの車の中でずっとその話をしていました」


二人はしばらく黙って、夜景を眺めていた。やがて涼子が静かに口を開いた。


「私たちこれで本当に家族になるのね」


「はい」


蒼は涼子の手をそっと握った。


「これまで色んな試練がありました。桐谷さんのことも、噂のことも、父のことも。でもそのたびに、二人でちゃんと向き合ってきました。だからこそ、今日という日があるんだと思います」


「そうね」


涼子は蒼の肩に静かに頭を預けた。


「結婚式まであと少し。これから先も色々あると思うけど、二人でならきっと乗り越えられる」


「はい。どんな試練が来ても二人で」


窓の外に広がる夜景を見つめながら、二人はしばらくそのまま寄り添っていた。長い道のりを経て、ようやく二つの家族が心から祝福してくれる関係へとたどり着いた夜だった。


(第29話へ続く)

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