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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
42/82

3-8 生産ステーション解放:状況変化/遅滞

生産ステーションの港部分は長い通路が多い構成。

中央部から円を八等分するようにメインとなる部分が作られておりそこから宇宙船を係留する部分へと通路が伸びる。

ステーション職員は乗員たちの先頭を案内しながら歩きメイン通路から下へ向かう。

セリナは一度宇宙へと出て緊急通路からステーション内へ。

外に浮かべていた武装は背負えるように登山用の袋へと詰め替えて回収。

ステーション機能の停止によって監視カメラ映像や入出記録など電子機器系を利用出来ず所持している各国特殊部隊の訓練マニュアルなどを参考にして追跡中。

個体の機械的機能、望遠視界、各種センサー、個体制御による身体操作によって人間より楽に追跡している。

職員の会話が確実に拾える距離を維持するには直線通路が多いこのエリアでの追跡難度は高い。

メンテナンス用の通路の仕様も考慮したが即時対応に問題がある。

追跡中、外壁が閉じられ溶接されている扉、部屋を確認。

外壁はステーション災害時や火災時に閉じられるもので部屋内部を保護する為のもの。

それが丁寧に溶接されており分析としては近時間に行われていた。

内部まで確認する時間はないが記録。

同様の箇所が無いかセンサーでも確認しつつ追跡を継続。

職員たちは角を曲がり62mで停止、そこは倉庫であり長く使われていない。

その中へと乗員を誘導した職員は外へ出ると扉を閉じ壁際の端末を操作。

IDカードを使用して外壁も下ろす。


男は予定として聞いていた通路を何本か走り回っていた。

結局目的を果たせたのは最後の地点、通路の先には男が2人だけで歩いている。


「おーい。やっと見つけた。」


「ネーシャじゃねぇか。どうした?」


何度か仕事をした事のある男がこちらを判ってくれた。


「下でトラブルだ。おかげで手間取ってる。それを報告してくれ。」


「何やってんだ。もっと詳しく話せ。」


「俺も良くわかんねぇよ。キリアトの所の連中が仕事があるみたいで結構起きててよ。

 どうするかって話をしてたらやりあった奴らがいたらしい。

 でかい音で騒ぎになって向こうもやり返して来てんだ。」


「人質の話と銃を使って脅して大人しくさせるって話だったろうが。」


「しらねぇよ。バカやった奴らに言えよ。

 あっちはブロックに立てこもっておかげで手間取ってる。

 手が増やせるなら頼んでくれってよ。」


「判った、判った。

 戻って話しとくからネーシャ、お前はさっさと戻れ。

 しっかりやらないとお前らも奴隷だぞ。」


ネーシャはぶつくさと文句を言ってから走り出した。

職員の格好の2人はそれを見届ける。


「お前も文句ばっかり言ってないでちゃんと仕事しないとあいつらみたいになるぞ。

 さっさと溶接を終わらせるぞ。」


「報告するんじゃねえのか?」


「しくじってるだから慌てなくていいんだよ。

 あのフロアを封鎖して空気を抜けば片付く。

 サティッシュは奴隷を増やしたかったから捕まえるように言ってんだ。

 元々逆らいそうな奴はここで切るつもりなんだよ。」


「そこまですんのかよ。」


「使えない奴も一緒だ。

 俺はサティッシュの側で奴隷にはならない。

 お前はどうするんだ?」


「ちゃんと仕事するよ。」


どうやら溶接された扉の中には他の船の乗員が閉じ込められているでしょう。

今回と同様の方法でそれぞれを別の場所に監禁、分断しているのですね。

さきほどの会話としても計画失敗、予定変更については確実な方法で処理するようです。

少し敵勢力の評価を改めておきます。

キリアトさんの所で問題発生、このまま報告されるのは問題ですから対応しましょう。


対処は簡単ですがセリナというリラ女性として行動が必要です。

AIとしては人間を模倣するようにしていますが完全に行動まで模倣する事はありませんでした。

平均的な人間の身体能力などを考慮すると手段は限られます。

ある程度はイストと共に訓練をしていたと説明すれば周囲を納得させられるでしょう。


背負っていた袋から取り出したのは大型の筒。

先端が白く塗られているこれは捕縛用のネットを射出します。

ネットの射程は30m前後、粘着質の物質が塗布してあり5m程に広がります。

後は近距離用の捕縛銃、こちらも粘着物質によって動きを封じるものです。

こちらは直径4cm程の銃口、50cm程の銃身と大型、弾数2発が欠点です。

有効射程は20mとされていますが効果的なのは10m程という結果があります。

捕縛ネットと同時使用するのが前提ですからあまり問題点でもありません。

装弾数の問題は2丁用意することで対応します。

この辺りであれば使用しても問題ないでしょう。

尋問の必要がありますから気絶による無力化は避けましょう。

捕縛銃を2丁背負いネット射出装置を抱えて歩いて行きましょう。


背中にボンベを背負って手には工作機械、おそらく溶接用トーチを持ち職員たちは戻って来ました。

警戒は見せずに歩いて行き職員がこちらに気が付いた段階で少し駆け足でより接近します。


「おい、ここで何やってるんだ。」


「すいません。無線が壊れてて、作業が終わったんですが誰もいなくて困ってたんです。

 何かあったんですか?」


適当な作り話で返答しながら接近を試みます。


「俺が説明する。お前は後ろに回って押さえろ。」


立場が上らしい男が小声で指示しています。

こちらが近くまで行くと思ったのでしょう。適切な対応と言えるでしょう。

10m程の距離で抱えていた筒を職員たちに向けて引き金を引けばネットが射出。

射出後ネットが広がっていくので多少射角は上げてあります。

慣れれば目標の頭上からネットを降らせたりも出来ます。

ネットは身体に絡まり一時的に動きを束縛するだけ。

建築物などネットが付着する場所があれば効果的に拘束出来ます。

今回は正面からの射出ですから床しかネットが付着しません。

ただもがいて慌てた男がネットを引っ張り二人とも床に倒れています。

射出後即座に走り寄っていますから職員の足に捕縛銃を発射、銃を交換しそれぞれの胴体へ射出。

青く色づけされたゼリー状物質はすぐに硬貨し足や腕の動きを封じます。

ネットに絡まり慌てている職員ですから狙うのは容易く人間の女性でも行えるでしょう。

青い色なのは色々議論されて視覚的な事を考えての事です。

変わった事を気にするのも人間的なのでしょう。

職員たちの指示していた方の男に向けて尋ねましょう。


「扉のロックはパスワードですか?」


「教えるかよ!」


「そうですか。」


自分の端末を扉横の端末に繋ぎサトウ氏から送られて来たプログラムを起動、実行。

行政府関係者でも使用するのが大変というマスターキープログラム。

リラのすべての機械制御端末を操作出来るというものです。

サトウ氏か用意していましたが今まで使用される機会は無かったそうです。

外壁の解除、扉の解錠とスムーズですね。


「何をしやがった?」


「行政府の承認がありこのような扉などを開くプログラムを使用しました。」


この言葉は扉が開き始めて中にも聞こえるように言っています。

行政府の支持、指示があると言うのは大きな効果があるでしょう。


「みなさん、大丈夫ですか?」


開いた扉の中、倉庫では開く扉から離れて警戒している乗員たちが見えます。


「今は安全だと思われます。すぐに出てください。」


「皆さん、出ましょう。」


ヤマモトさんの号令で通路へと出て来ると職員たちの様子に驚いた乗員もいます。


「現在の拘束はいずれ解けますのでロープなどで拘束をお願いします。

 ヤマモトさん、いくつかお願いしたい事があります。」


先にヤマモトさんたち状況とこれからの事を説明します。

途中で何人かが船に必要な道具を取りに戻りました。

ヤマモトさんたち船の乗員には他の船の乗員を解放して頂きます。

粘着性硬化剤は軟化剤のスプレーがありますからそれを使用しつつ職員を捕縛。

命令していた方の職員はサティッシュの船の乗員だそうです。

尋問には有益な返答無し。

その男の所持していたカードは回収し扉の開閉が行えるのを確認。

2人は拘束したまま倉庫に放り込みます。


他の乗員にイストが学んだ方法がありますと説明し室内へ。

今回の事態が解決した後に解放する事、関わっていた事を公表しない事を提案。

サティッシュ側が勝利し解放された場合は元の状態。

こちらが勝利した場合は普通のリラ市民として生活が可能。

犯罪者として裁かれるか、奴隷となるか、死亡するか。

選択肢を提供し計画全貌ではなく一部の情報を提供して頂きました。

このステーションでの活動人数、乗員を捕らえた場所の位置、扉のパスワード。

行政府の正式書類を偽装したのが効いたようです。

尋問関連も蓄積情報を元に実戦しましたが対応出来るようですね。


状況堪忍、今後の予定、指示を終わらせてこちらは下層へと向かいましょう。

真下へと向かうのは近くの緊急用通路が最短ルートです。

このような通路はステーションの姿勢が変化した時の為に複数あります。

今のままでは梯子を降下するのですが問題はありません。

途中で一度通路をずれてさらに降下。

終点には床になっている扉がありこの向こうがキリアトさんの居るエリア。

1層12番エリア、元は港ですが現在は封鎖したままで破棄したブロック船を収納しています。

基本的には倉庫のような場所で今までは使用されていません。

現在はキリアトさんたちが計画用の作業場所として利用しています。

宇宙服の固定用ワイヤーで梯子に身体を固定。

扉を開き少し降下します。

エリア内は照明が落とされておりかなり遠くに明かりが見え薄暗くブロックが見えています。

時々聞こえてくるのは発砲音のようです。銃器が使用されています。

中央付近に人間の反応が21名、ブロック内やその周辺。

おそらくこちらがキリアトさんたちでしょう。

その北側に半円状に散らかっているのが敵勢力でしょう。

3名から5名程が固まって行動しているようです。

こちらは20名。ヤマモトさんの推測では船2隻分の乗員と予想されています。

サティッシュに協力する船単位で行動を決定されているのではないか。

重要な場所にはサティッシュの船から乗員を派遣し指示しているのではないか。

そう考えておられ作戦遂行としてもそれが正当でしょう。

部屋に捕らえている乗員の男は各種調整役のようでした。

制圧されている中央管理室にも何名か存在しているはずです。

このエリアでは船の乗員たちで集まって行動しているので小数のグループなのでしょう。

エリアの詳細マップを記録し一度上の通路へと戻ります。

ここには兵装を置いてあります。

上の梯子から3名が接近中、この通路の200m程先から11名ほどが接近中。

このまま落下するのが最短コースなのですが止めて起きましょう。


上から来たのはカイヨウマルの乗員。

ヤマモトさんの許可があるということで動向を許可、兵装を分割し持たせます。

兵装の重量を考慮して移動速度を遅くしたのが追跡された原因ですがこれは仕方ありません。

ここからは進行速度が上昇すると考えましょう。

もう一方から接近していたのはギルド関係者とカイヨウマル乗員、連絡に向かった1名でした。

状況を説明しキリアトさんたちの救出に向かうと言います。

反論はせずに今後の行動を支持。

こちらとしては時間が優先です。

生産ステーションに帰還してからすでに1時間43分が経過。

イストの状態が確認出来ておらず救出を優先です。

危険を説明し協力を申し出たのですから被害については自己責任。

イストの計画代行としてありますから出来れば被害は出さないで置きましょう。

ギルド関係者、造船業関係者がこの通路を使用していたのはカイヨウマル乗員の案内です。

最短距離を検索すればこちらの行程と重なるのは当然です。

そのまま進行速度を上げて下層へ。

状況に変化が無ければキリアトさんたちと合流を優先しましょう。

生産ステーションの開放まではまだ先です。

書く予定にない部分で詰まっておりました。

以降は予定通りの更新になると思います。

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