3-9 生産ステーション解放:合流
1層12番エリア、すでにエリア内の地形情報は共有しています。
非常用も含めて照明が無いのは敵勢力の判断でしょうか。
視界について対応策を用意していれば制圧はもっとスムーズでしょう。
こちらは宇宙服を装備している者が多く視界不備は問題ありません。
侵入前にすでに照明は消し先頭に2名、その後ろに続きます。
こちらの侵入は発見されず、一度迂回し敵勢力後方へ向かいます。
すでにこちらの持ち込んだ銃器については説明しています。
宇宙船ギルドの方たちは機械については詳しい方が多く理解は早かったです。
使いこなせるかは別問題、これは熟練の必要がありますから仕方ありません。
センサーで周辺状況を確認しつつ中央へ。
中央管理室の制圧作戦について調整している間に問題なく中央のブロックまで接近。
ブロック船のパーツは20m四方、建造物として考えればかなり巨大です。
障害物が多く潜伏するのが容易、おそらくそれがこの事態を引き起こしているのでしょう。
こちらの移動もそうやって障害物を利用し容易く接近出来ました。
先頭の2名はキリアトさん側の職員と顔なじみ。
連絡要員としては最適で後方の見張りに出ていた人物と接触、こちらは案内されます。
ブロック船の居住ブロック、キリアトと職員達が宿泊施設として使っている。
宇宙船の改造作業を秘密裏に進めるのに都合が良かったからだ。
すでにいくつかのブロックはギルドへと運び出されイストの計画に参加したブロック船に装備された。
その時に外したブロックがここに運ばれ保存されている。
その居住ブロックのリビング、キリアトの従業員たちは作業服姿で10人程集まっている。
中央のテーブルに広げられた紙の地図は赤や青の色で書き込みがいくつもされており、それをソファーに座ったキリアトが修正している。
「おつかれさん。良くこんな所まで来れたな。」
顔を上げずに手元のメモを見ながら書き込みは続けているがキリアトは周囲のざわめきに顔を上げた。
「セリナさんじゃないか。こんなとこにどうした?」
宇宙服のヘルメットを脱いでいるセリナの姿にキリアトは驚く。
周囲の反応はセリナの容姿についてのものが多くそれは納得する。
「イストの代理です。
現在このステーションと軌道エレベーターステーションはサティッシュ関係者によって制圧、占拠されています。
イストの計画を代行、ステーションの開放を目指しています。
サトウ氏にも連絡しており許可と協力を得ております。」
「イストの代理か。ならイストは軌道ステーションか。」
セリナの表情が曇り少し俯く。
「イストはサティッシュに拉致されました。
船を守り指示を託されましたがじっとはしていられません。
ステーションを開放しイストを助けたいのです。」
顔を上げ手を組みセリナが凛とした顔で言葉を紡ぐ。
拉致されたという言葉とその態度で周囲が静かになる。
キリアトが立ち上がり後ろに並んでいる従業員たちの顔を見渡す。
「ここをさっさと片付けてセリナさんに協力するぞ。」
応じる返答が従業員全員から上がる。
「イストの事とか詳しく聞きたいが時間はあるか?」
「今は急いだ方が良いでしょう。
計画関係でイストが学んだ事は多く一緒に学習しています。
それらからイストはこのような事態の対応も考えていました。
そちらにも協力頂けますか?」
「もちろんじゃ。サティッシュの奴からイストを助けんとな。
するとここに来ておるのもサティッシュの連中か。」
「協力している船の乗員たちです。
ギルドの方を中心に別に動いている方たちもいます。
ここが今どんな状況か説明して頂けますか?」
「よかろう。お前ら、見張りは絶やすな。何かあったらすぐに連絡じゃぞ。
セリナさん、こっちに来てくれ。」
セリナは動向していたギルドの人員に兵器の取り扱いについてのレクチャーを指示。
キリアトはリビングから奥へと移動しセリナが着いて来ているのを確認して話を進める。
ブロックの改造は夜間に行なっていた事。
作業中の従業員が2名、男達と遭遇して負傷した事。
その時に大きな音と爆発があったらしく寝ていた者も起きだした。
周辺を確認して何人もの人間がこのエリアに居る事が判り負傷した従業員も発見した。
負傷した従業員は居住区へと運び一緒にいた者から状況を説明。
見知らぬ男2名と角を曲がった時に遭遇しお互いに驚いた。
向こうが手に持っていた銃を撃ち従業員が1人負傷。
仲間が倒れたのを見て銃を持っていた男を殴り飛ばしたらもう1人の男が何かを投げた。
そこで爆発が起きたが従業員たちは巻き込まれなかった。
遭遇した男たちは逃げたらしく負傷した従業員の手当てをしている所で様子を見に来た者が発見。
負傷者と落ちていた銃を回収している。
武装しているのが判り対応する為に投げやすい工具や建材を持って周辺警戒。
それでかなりの人数が銃や火炎瓶で武装してこちらに向かっている事が確認された。
出来るだけ遠くで物を投げつけて向こうを警戒させて侵入を防いでいる状態。
通信が使えずに色々と難しい状態だが周辺地図があるのでなんとか対応している。
そういった説明が終わる頃には居住ブロックの部屋にキリアトが入っていった。
セリナも中に入るとベットに寝かされた従業員は血塗れ。
その男を看病しているらしい男が心配そうに見ていた。
顔を背けるセリナ。
「すまん。刺激が強かったの。」
その様子にキリアトが謝る。
「大丈夫です。少し驚いただけです。」
>身体状態確認/即時治療による生存率96%
個体は女性であれば行いそうな反応を模倣しつつ負傷者の状態を確認。
銃は散弾、猟銃のようで火薬式の古い物、弾丸が体内に無数。
出血量が多く適切な処置を行なえば治療出来ます。
しかし現在では無理でしょう。ステーション機能の停止で医療設備も稼動していません。
ここから徒歩で運ぶ場合でもかなりの距離があり時間と共に生存率は下がります。
この場での治療、適切な対応で生存率は上がりますが当個体で行なうには不適切な処理です。
「セリナさんに見て欲しかったのはこれじゃ。」
キリアトはテーブルの上にあった銃をセリナに見せる。
詳しく見ても良いか確認してセリナは手に取り色々な角度から見て銃を見聞する。
銃口を壁に向けて銃を二つ折りにすると弾丸の有無を確かめる。
「動物を狩る狩猟に使われていた銃です。
単純な構造で火薬によって弾丸を射出するものです。
小さな弾をまとめて沢山飛ばすものでもちろん人間にも脅威です。」
「こちらだけじゃなくサティッシュたちも準備しておったんじゃろうな。
こんな物を持っておるとは思わなんだ。」
「知識があればこういった物を作るのは難しくはありません。
他に使われた武装、武器はありましたか?」
「火炎瓶じゃな。こっちが奴らを見つけたら物を投げて逃げておったら使われた。
かなり長く燃えているようで液体というよりは粘液のようなものじゃ。
ひとり服について燃えたらしいがすぐに脱いで対した事はなく幸いじゃった。」
「爆発については?」
「そっちは詳しくは判らん。
採掘用に爆発を使う事があるからそれじゃないかと思う。
ちょっと広めに見張りに出しておって見つけたらすぐに物を投げて逃げさせとる。
あっちもそんなに人はおらんようで今は少し落ちついとる。」
「報告に行った者が居ました。それでこちらの状況を知ったのです。
おそらくイストを人質とした交渉が行なわれるかこちらに対して攻撃を行なうかがあります。」
「何か手はあるのか?」
「用意していた対人用の武器があります。
銃ですが殺傷ではなく捕獲するもの、動きを無力化する物です。
すでに使い方の説明はお願いしています。
それらを使いこの場を制圧、そのまま中央管理室の奪還に向かう予定です。」
「そんな簡単じゃなかろう?」
「はい。負傷する事もありますし最悪の状況もあるかもしれません。
出来るだけ危険が無いように配慮しますが戦闘では何があるか判りません。」
キリアトは腕組みし天井を見上げ唸る。
うむと呟いて力強く頷く。
「イストや他の宇宙船乗りは計画で死ぬ事も覚悟しているのじゃろ。」
「はい。イストは他の方に説明する時もそれを重要視し常に気にしていました。」
「わしらも計画が発覚すればどうなるか判らん状態じゃった。
投獄されるかもしれんし殺されるかもしれんかった。
ならここで何かあっても変わらん。
イストの方はどうなんじゃ。まだ無事なのか?」
「情報はありません。人質であれば無事だと思われます。
サトウ氏やキリアトさんと交渉する為でしょう。
最悪の事態であれば相応の対応をする予定です。」
「サティッシュならわしらを抑えるために殺したりはしておらんじゃろう。
じゃがあいつは頭に血が上ると何をするか判らん。
早く助けた方が良い。急ぐ方が良いな。」
部屋の呼び鈴が鳴らされ男が入って来た。
敵勢力が集まり始めたとの報告。
負傷者を残して他の者たちはリビングに戻りキリアトの従業員、ギルドの者たち全員が集まる。
敵勢力はエリアの一角に集まりつつある。
その辺りはブロック船のパーツは無く近くに上層に向かう通路がある。
そこからこのエリアに侵入したと推測。
集まっているのは撤退の為か攻撃の為いずれかとセリナは予想。
そこに二手に分かれてこちらに向かって来たと報告が入った。
物を投げつけたら逃げる事なく接近して銃を使われた。
見張りはひたすら逃げる事になったようだ。
セリナはまずギルドの者6名を選出、敵勢力が侵入したと思われる入り口に向かってもらう。
逃走され報告されるのを防ぐ為だ。制圧用の各種武装を多めに持たせる。
それらの装備を理解して使えそうな者を選んだ。
すでに詳細なエリア情報はあるがテーブルの上にある地図で作戦を説明。
3人ずつのグループを作り敵勢力に対して複数の方向から攻撃する。
イストのように死亡する危険性も説明したがこの場にいる全員が参加を表明。
『キリアト、話がしたい。こちらは1人でそっちに行く。』
増幅された音声がエリアに響き渡る。
「交渉の為か陽動、どちらかでしょう。」
セリナは推測を述べ全員で外に出るように指示、室内からでは状況確認が難しい為だ。
センサーによる探知は電波式が主流、障害物が多い地形ではやはり反射が多く精度が落ちる。
ツキヨミ制御システムがあれば高出力で行なえ問題は無いが個体機能だけでは出力が低い。
AIの分析能力で問題はなく補正出来るがやはり室内からでは難しい。
敵勢力は2集団で接近中。1つが先行して迂回し右側から、もうひとつが正面から接近中。
ヘルメットを被り宇宙服の機能のように見せかけそれを報告。
入り口を抑える6名は左側を大きく迂回して向かうようにルートを指示、即座に出発させた。
右側から先行する集団は9名、大きく後方に回りこむ部隊と側面から攻撃する部隊を用意。
それぞれ8名ずつ、後方からの部隊にはキリアト、側面側にはセリナが指揮を行なう。
通信が出来ないので挟撃のタイミングが難しい。
音を使用する合図が確実だが出来ればここは静かに制圧したい。
セリナは状況を確認出来るのでキリアト側の攻撃に合わせて行動を開始する。
本来は逆の方が被害軽減が見込めるがすでに危険性を説明しており問題は無いと判断。
襲撃ポイントとして何箇所かを指示しキリアトが応じ部下を率いて出発した。
3-10は水曜か木曜更新予定です。




