第三百七十一話 悪辣な父上
「ギルバート、この度のいくさでマバール家は領地を得たか?」
父上が笑顔で尋ねてきた。
……ん?
なんだ、今度は領地の話か。
善良王の処刑については、先ほどの説明でおおよそ理解できたと思う。王太子ジリオスの立場を弱め、王国貴族たちを混乱させるために、あえて今という時期を選んだわけだ。
それは分かった。
だが、ここでマバール家の領地について尋ねてくるとは思わなかった。
「いえ」
俺は素直に答えた。
少なくとも、今回の戦争でマバール家の領地が広がったという話は聞いていない。
王国から離叛したあと、マバール家はシルビア河まで領地を拡大した。あれは確かに大きな変化だったが、今回のいくさで新たに領地を獲得したわけではないはずだ。
そもそも、今回の戦争で領地の拡大を望んでいたのは、マバール家と同じ頃に王国を離叛した新帝国貴族たちだ。
彼らにとって、王国との戦争は新しい領地を得る機会でもあった。
だからこそ、かなり積極的に戦っていたわけだが……。
ん?
俺は少し考え込んだ。
そういえば、マバール家は最初から今回の戦争で領地を大きく広げようとはしていなかったよな。
いや、領地を広げること自体に興味がないわけではない。
むしろ、王国との関係が悪化してからは、将来的に王国領へ進出することも考えていたはずだ。
ただし、その方法が違う。
王国が十分な力を持っている間に正面から戦うのではなく、王国国内を混乱させ、弱体化したところを攻略する。
確か、そんな方針だったはずだ。
当時は俺も、それなら無理に戦わずに済むかもしれないな、くらいに考えていた。
もちろん、実際に戦争になれば、そんなに都合よく進むとは限らない。
敵だって馬鹿じゃないし、王国には王国の事情がある。
こちらが望んだとおりに動いてくれる保証なんて、どこにもないからな。
ところが、今回の戦争を振り返ってみると……。
王国は敗れた。
新帝国貴族たちは領地を獲得した。
王国貴族たちは戦力を失い、これから善良王まで処刑されることになる。
そのうえ、後継者のジリオスには、王国をまとめられるだけの実績が乏しい。
……あれ?
なんだか、そもそものマバール家の戦略どおりになってないか?
俺は父上の顔を見た。
父上は相変わらず穏やかな笑みを浮かべている。
いや、待て。
さっきまで王太子の問題について話していた時とは、少し表情が違うような気がするぞ。
なんというか、こちらが何かに気づくのを待っているような……。
「父上」
俺が口を開くと、父上は軽く頷いた。
「新帝国貴族たちは望み通り領地を得た。おかげで我らは国境より離れる事が出来た。新帝国貴族たちの新たな領地はシルビア河の向こうとなるからな。さらに背後も帝国貴族となった今、国境は無い」
父上は実に楽しそうに語ってくれた。
……ああ。
そういうことか。
俺は思わず、頭の中にマバール領とその周辺の位置関係を思い浮かべた。
マバール家は、もともと王国の東端を守る辺境伯家だった。
東には帝国があり、王国と帝国の国境を守ることがマバール家の重要な役割だった。
だが、国境を守るというのは、口で言うほど簡単なことじゃない。
敵が攻め込んでくれば戦わなければならないし、平穏な時期であっても軍の維持や警戒を怠るわけにはいかない。
それに、国境の向こう側に敵国がある以上、何か問題が起きれば真っ先に巻き込まれる可能性が高い。
俺だって、そんな経験は何度もしてきた。
いや、何度もというか、最近はそればかりだった気もするな。
とにかく、国境を守るというのは面倒なのだ。
だからこそ、マバール家が王国から離叛して帝国貴族となることには、大きな意味があった。
かつて敵国だった帝国が、今では自分たちの所属する国になっている。
当然、帝国との国境を守る必要はなくなる。
だが、その代わりに今度は王国との国境ができてしまった。
所属する国が変わったからといって、いきなり国境が消えるわけじゃないからな。
しかも、王国から離叛した家なのだから、王国側からすれば裏切り者だ。
お互いに仲良くしましょう、なんて話になるはずもない。
実際、王国との戦争にもなった。
ところが、今回の戦争で新帝国貴族たちが領地を獲得した。
しかも、その領地はシルビア河の向こう側にある。
つまり、マバール領と王国領の間に、新帝国貴族たちの領地が入るわけだ。
……おお。
ということは。
マバール家は、敵国との直接的な国境を失ったことになる。
かつて王国の東端を守っていた辺境伯家が、今では帝国の内部に領地を持つ貴族家になったわけか。
もちろん、周囲が帝国貴族の領地になったからといって、すべての危険が消えるわけではないだろう。
貴族同士の争いが絶対に起きないなんてこともないし、魔物だっている。
それでも、敵国との国境を直接守る負担がなくなるのは、相当大きい。
何しろ、敵国の軍が攻め込んでくることを、常に警戒する必要がなくなるんだからな。
俺は父上を見た。
ああ、そうか。
王国から離叛した理由の一つだった、国境警備の重い負担から逃れるという目的。
それが、今回の戦争で達成されたわけだ。
しかも、マバール家自身が新たな領地を獲得したわけではない。
新帝国貴族たちが、自分たちの望む領地を手に入れた結果として、こちらの国境が遠ざかったのだ。
……なんだそれ。
上手くいきすぎじゃないか?
俺が少々呆れながら考えていると、父上はまだ話を終えていなかった。
「それに、領地を望まなかったマバール家は、それほど前線で戦わずに済んだからな。ギルバート、お前以外はな」
……ああ。
そこは例外なんですね。
まあ、確かに俺は色々とやった。
そもそも善良王を捕らえたのだって俺だし、今回のいくさではあちこち走り回った。
シルディア城から大急ぎで帰ってきたばかりなのも、元をたどればそのせいだ。
だが、マバール家全体で見れば、確かに俺ほど前線で暴れ回った者ばかりではない。
もちろん、戦争なのだから損害がまったくなかったわけではないだろう。
それでも、領地を獲得するために積極的に前進していた新帝国貴族たちとは、事情が違う。
父上はそこで少し笑みを深めた。
「そして、前線で戦った新帝国貴族たちは疲弊した。失った戦力の補充、新たな領地の統治、何かとマバール家に頼らねば立ち行かんだろう。残念だがな」
……。
父上。
満面の笑顔でそれを言われても。
どう見ても残念そうには見えませんよ。
俺は思わず口を閉じたまま、父上の顔を眺めてしまった。
いや、言っていることは分かる。
前線で戦えば、当然ながら戦力を消耗する。
騎士も兵も、戦争が終わったからといって、失った分をすぐに補充できるわけではない。
しかも、新帝国貴族たちは新しい領地まで獲得している。
領地を増やすというのは、聞くだけなら実に魅力的な話だ。
土地が増えれば、それだけ収入も増える可能性がある。
家の勢力を大きくすることにもつながるだろう。
貴族としては、領地を広げたいと考えるのも当然だ。
だが、獲得した土地を放っておくわけにはいかない。
そこには、もともと王国の支配を受けていた人々が暮らしている。
新しく領主になったからといって、すべての住民が喜んで従ってくれるとは限らないだろう。
それに、領地の管理には人手が必要だ。
戦争で疲弊した軍を立て直しながら、新しく手に入れた土地まで統治しなければならない。
……うわぁ。
考えただけで面倒だ。
領地が増えたからといって、すぐに楽になるわけじゃないのか。
むしろ、最初のうちは仕事が増えるばかりなんじゃないだろうか。
そして、そんな時に比較的戦力を温存しているマバール家が近くにいる。
しかも同じ帝国貴族だ。さらに同じ元王国貴族でもある。
困ったことがあれば、相談したり、協力を求めたりすることもできる。
……いや。
できる、じゃないな。
父上の見立てでは、そうしなければ立ち行かない可能性が高いということか。
もちろん、すべての新帝国貴族がマバール家を頼るとは限らない。
自分たちだけで何とかしようとする家もあるだろうし、別の貴族に協力を求めることだってあるはずだ。
だが、少なくともマバール家には、そういう新帝国貴族たちに協力できるだけの余力が残っている。
……待て待て。
これは、どういうことだ?
俺は改めて今回の戦争を振り返った。
王国貴族たちは敗れた。
領地も戦力も失い、これからさらに政治的な混乱へ巻き込まれる可能性が高い。
新帝国貴族たちは勝利した。
望んでいた領地も獲得したが、そのために前線で戦い、戦力を消耗した。
今後は失った兵の補充や新領地の統治に追われることになる。
では、マバール家は?
領地は増えていない。
だが、王国との直接の国境がなくなり、国境警備の重い負担から解放された。
しかも、他家と比べれば戦力の消耗は少なく、新たな領地を統治するための負担も背負っていない。
そのうえ、新帝国貴族たちが困れば、マバール家の力を必要とする可能性が高い。
……おいおい。
なんだ、それ。
領地を広げたわけでもないのに、周囲の貴族たちに対する立場が強くなっているじゃないか。
しかも、相手は王国貴族だけじゃない。
同じ帝国に属する新帝国貴族たちに対しても、こちらが有利な立場に立てるということだ。
王国貴族は敗戦で弱り、新帝国貴族も勝利の代償として疲弊した。
その間、マバール家は比較的余力を残したまま、国境警備という大きな負担まで失っている。
……うわぁ。
これ、一石二鳥どころじゃないぞ。
一石三鳥じゃないか。
いや、数え方によってはもっとあるんじゃないか?
俺は父上の顔を見た。
父上はまだ笑っている。
なんだろうなぁ。
あれだけの戦争があって、多くの貴族たちが必死に戦って、ようやく領地を手に入れたというのに。
マバール家はその間に、もっと別のものを手に入れている。
それも、目に見える領地ではなく、今後の政治や軍事に大きく関わる立場そのものをだ。
……いやいや。
ちょっと待ってくれ。
今回の戦争で俺があれこれ苦労していた間、父上はそこまで考えていたのか?
もちろん、戦況がすべて思いどおりに進んだとは思わない。
俺だって予想外の出来事に何度も遭遇したし、父上にも計算しきれなかったことはあっただろう。
それでも、今こうして聞いてみれば、マバール家が望んでいた方向へ物事が進んでいる。
しかも、他家が得た利益まで、結果的にはマバール家の利益につながっている。
俺は少し迷ったが、結局そのまま口にしてしまった。
「悪辣ですね」
……あ。
しまった。
思わず言ってしまった。
いや、だって。
どう考えても悪辣だろ、これは。
勝った新帝国貴族たちが苦労しているのを横目に、自分たちは比較的余裕を保っている。
しかも、彼らが困ればマバール家を頼らざるを得ないだろうと、笑顔で語っているんだからな。
父上は俺の言葉を聞いても、怒る様子はなかった。
それどころか、少しおかしそうに笑っている。
「さすがにここまで上手くいくとは思わなかったがな」
……本当ですかねぇ。
俺は父上をじっと見た。
確かに、戦争というものは何が起こるか分からない。
相手の動きもあるし、味方だって思いがけない行動をすることがある。
だから、今回の結果を最初からすべて計算していたというのは、さすがに無理があるだろう。
だが、父上ならどうだ?
最初からある程度は狙っていたんじゃないかなぁ。
少なくとも、領地を求める新帝国貴族たちが前線で戦えば、消耗することくらいは分かっていたはずだ。
それに、彼らがシルビア河の向こうに領地を得れば、マバール家が王国との国境から離れられることも、当然理解していただろう。
それに俺が王城から善良王を攫う事の意味もあるよな。
となれば、どこまで偶然だったのか。
……うーん。
考えれば考えるほど、父上の笑顔が恐ろしく見えてくる。
俺は小さく息を吐いた。
なんか、どっと疲れたな。
シルディア城から急いで帰ってきて、処刑の時期について一人で色々と考えていたのが、少々馬鹿らしくなってきた。
いや、疑問に思ったことを聞けたのだから、無駄だったとは思わない。
実際、父上の考えを聞かなければ、ここまで理解できなかっただろう。
それでもなぁ。
俺がどうして今なのかと悩んでいた間に、父上は今回の戦争の結果だけでなく、その先の王国貴族や新帝国貴族の動きまで見据えていたわけだ。
……俺、悩んだ意味あったのかなぁ?
いやいや。
勉強になったと思っておこう。
そう考えないと、なんだか情けなくなってくる。
俺は肩の力を抜き、少し視線を落とした。
しかし、父上も大変だな。
領地のことだけでなく、貴族たちの動きや戦争のあとのことまで考えている。
そりゃ、こんな時間まで仕事をしていれば疲れるわけだ。
……ん?
そういえば。
俺はふと思い出した。
「ああ、そういえばアル兄さんは?」
今回、マバール城へ帰還してから、まだアル兄さんに会っていない。
アル兄さんは父上が不在の間、マバール城を差配していたはずだ。
当然、父上が帰還すれば色々と報告することもあるだろうし、仕事も山ほど残っているのかもしれない。
だが、せっかく俺も帰ってきたのだから、顔くらいは見ておきたい。
それに、善良王の処刑が近いのだから、城の中でも何かと忙しくしているのではないだろうか。
父上は俺の問いかけに、あっさりと答えた。
「アルディスにユーディリア処刑を取り仕切らせる。ちょうど良い褒美になるだろう」
……はい?
褒美?
処刑を取り仕切ることが?
俺は一瞬、返事を忘れてしまった。
いや、言っている意味は分かる。
アル兄さんは父上が不在の間、マバール城を差配していた。
その働きに対する褒美として、重要な仕事を任せるということなのだろう。
しかも、今回処刑されるのは、ただの罪人ではない。
つい先日まで王国の頂点に君臨していた国王だ。
その処刑を取り仕切るとなれば、当然ながら政治的にも軍事的にも大きな意味がある。
マバール家として、誰にその役割を任せるか。
父上がアル兄さんを選んだということは、それだけ信頼しているということなのだろう。
……なるほど。
そう考えれば、確かに褒美なのかもしれない。
しかしなぁ。
俺の感覚では、褒美といえばもっと別のものを想像してしまう。
何か欲しいものを与えるとか、休みを増やすとか。
まあ、貴族の仕事に対する褒美が、そんな簡単な話で済むとは思わないけど。
それにしても、処刑の準備と実行を任されるというのは、なかなか重い褒美だな。
……いや。
待てよ。
先ほど父上は、後継者は離して鍛えると言っていた。
そして、危険で厳しいからこそ鍛えられるとも。
ダル兄さんにヴォス要塞を任せたように、アル兄さんにも重要な仕事を任せるということか。
しかも、ただ手伝わせるのではなく、実際に取り仕切らせる。
うーん。
やっぱり、この家の息子は大変だな。
俺は改めて三男坊でよかったと思った。
……いや、俺も色々やらされてるんだけどね。
そんなことを考えていると、父上が続けた。
「ユーディリアに会いたくば、アルディスに相談せよ。アルディスが了承するなら会って構わん」
おお。
ずいぶんあっさりと許可を出してくれたな。
いや、正確には許可を出してくれたわけではないか。
アル兄さんが了承するなら、という条件付きだ。
つまり、父上としては俺がユーディリアと会うこと自体を禁止するつもりはない。
ただし、処刑を取り仕切るアル兄さんの判断に従えということだろう。
なるほど。
筋は通っている。
アル兄さんに仕事を任せたのに、父上が横から勝手に面会を許可してしまったら、アル兄さんの立場がなくなってしまうかもしれない。
さっきまで話していたことを思い返せば、父上がそういうやり方を避けるのも納得できる。
それに、俺がユーディリアに会いたいと思っていることまで、どうやらお見通しらしい。
まあ、あのおっさんを捕らえたのは俺だし、急いで帰還してまで処刑について尋ねに来たのだから、父上にしてみれば想像しやすかったのだろう。
……まったく。
何でも見透かされているようで、少々落ち着かないな。
俺は小さく頷いた。
しかし、父上は本当に処刑を実行するつもりなんだな。
いや、今さら疑っていたわけではない。
ただ、ここまで具体的にアル兄さんへ仕事を任せ、俺の面会についても指示してくれるとは思わなかった。
父上の中では、ユーディリアの処刑は既に決定したことなのだ。
そのうえで、誰に取り仕切らせるか、処刑のあとに王国がどう動くか、さらにその先でマバール家がどんな立場になるかまで考えている。
……これは。
俺が今さら何か悩んでも、どうしようもないな。
もちろん、俺にも俺の考えはある。
ユーディリアという男について、まだ理解できないことも残っている。
あのおっさんがどうしてあそこまで自分の考えを信じているのか、もう一度会って確かめてみたい気持ちもある。
だが、それは処刑を止める理由にはならない。
むしろ、会いたいのであれば、父上が言ったとおりアル兄さんに相談すればいい。
許可が出れば会える。
出なければ、その時は諦めるしかないだろう。
俺は父上の顔を見て、自然と頭を下げた。
「さすがですね、父上」
本当にそう思う。
俺が一人で悩んでいた問題を、父上はもっと大きな視点から考えていた。
しかも、今回の戦争で直接領地を増やしていないマバール家が、結果としてこれほど有利な立場を得ている。
もちろん、すべてが父上の計算どおりだったとは限らない。
だが、少なくとも俺には、ここまで上手く立ち回る自信はない。
……いや。
そもそも、そんなことを考えながら戦争をするのが嫌だ。
俺はできれば、もっと気楽に暮らしたい。
好きなことをして、好きなものを食べて、女の子たちと仲良く過ごす。
そのために必要な仕事なら頑張るが、できることなら面倒事は少ない方がいい。
……まあ、今さらそんなことを言っても仕方ないか。
俺は既に、ずいぶん色々なことに首を突っ込んでしまっているからな。
それでも、父上と同じような仕事をすべて引き受けろと言われたら、さすがに困る。
やっぱり、俺は三男坊でよかった。
改めてそう思う。
父上は俺の言葉を聞くと、少し口元を緩めた。
そして、ゆっくりと息を吐いた。
「では、そろそろ休むとするか。さすがに疲れたからな」
ああ。
もうこんな時間だったな。
俺は父上の夜着姿を見て、改めて申し訳なくなった。
そもそも、父上は休む直前だったのだ。
それなのに、俺が面会を申し込んだものだから、こうして話す時間を取ってくれた。
しかも、ただ質問に答えるだけではなく、後継者の育て方から王国の政治情勢、今回の戦争でマバール家が得た利益に至るまで、ずいぶん多くのことを教えてくれた。
俺としては大いに勉強になったが、父上には余計な負担をかけてしまったかもしれない。
「はい。ごゆっくりお休み下さい」
俺はそう答え、改めて頭を下げた。
父上は静かに頷いた。
その姿を見てから、俺は扉へ向かった。
来た時と同じように、余計な音を立てないよう気をつけて扉を開ける。
部屋の外へ出ると、廊下は相変わらず静かだった。
夜もすっかり更けている。
扉を静かに閉め、俺は小さく息を吐いた。
……ふぅ。
なんだか、妙に疲れたな。
父上と話をしただけなのに、シルディア城から急いで帰ってきた時とは、また違った疲れがある。
とはいえ、俺が疲れたなんて言っていたら、父上に笑われてしまうかもしれない。
あれだけの戦争があって、その後始末まで考えて、王国貴族と新帝国貴族の動きにも目を配っている。
そのうえ、息子たちに仕事を任せ、後継者を育てることまで考えなければならないのだから。
俺なんかより、よほど大変だろう。
そう思うと、先ほどの父上の姿が頭に浮かんできた。
いつもの服ではなく、楽な夜着に着替えた姿。
それでも、王国の行く末を語る時には、普段と変わらない鋭さがあった。
そして、最後には疲れたと言って休むことにした。
……そりゃ、そうだよな。
あれだけやれば、そりゃ疲れるわ。
本日はここまでとなります。
ありがとうございました。
実は最近、投稿の予約が上手く出来ない事があります。
もしかしたら、投稿されない場合があるかもしれません。
その時はカクヨム側をご利用ください。
次の投稿は、明日5時の予定です。




