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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第三百四十七話 手紙と数字遊び


 翌朝、俺はベルとセバスチャンの三人で朝食を取っていた。


 いやぁ、よく眠れた。


 やはり、ちゃんとした寝床で眠れるというのはありがたいものだ。昨日までの移動続きの日々と比べれば、今朝は随分と身体が軽い。


 父上からは詳しい報告を今日行うように言われているが、まだ呼び出しはない。まぁ、あれだけの軍勢を率いているんだから、朝から色々と忙しいんだろう。


 呼ばれるまでは大人しくしていればいい。


 そういうわけで、俺はのんびり朝飯を食っている。


 目の前にはパンとチーズ、それから焼いた肉に茹でた野菜が並んでいた。温かい肉の匂いが食欲を刺激してくる。


 うん、なかなかいい朝食だな。


 そして、俺の隣ではベルが一生懸命パンを食べていた。


 小さな口を大きく開け、もぐもぐと噛んでいる。飲み込むと、今度は焼いた肉へ手を伸ばした。


 いやぁ、今朝もいい食いっぷりだ。


 昨日の夕食では、俺たちとほとんど変わらないくらい食べていたからな。さすがに今朝はそれほど腹も減っていないかと思っていたんだが、どうやら余計な心配だったらしい。


 ベルは俺の視線に気づくと、肉を持ったまま顔を上げた。


「どうした?」


「あ、いえ……」


 何やら少し恥ずかしそうにしている。


 ん?


 また遠慮しているのか?


「腹いっぱい食べろよ」


「は、はい!」


 そう答えると、ベルは再び食事を始めた。


 うん。


 それでいい。


 それにしても、こうして明るいところで見ると、ベルは少し小柄なような気がする。


 昨日は汚れていたし、何より色々とあったから、あまり気にしていなかったんだが。


 まぁ、俺自身もまだ大人ではないし、子供の身体の大きさなんて個人差があるだろう。ベルくらいの年齢なら、これくらいでも普通なのかもしれない。


 ただ、あの村の暮らしぶりを思い出すと、どうしても気になってしまう。


 小さな村の貧しい家で育ったんだ。


 食事だって充分ではなかったのかもしれない。


 もちろん、実際にどうだったのかは知らん。


 だが、もし食べるものが足りていなかったのなら、これからは遠慮なく食べさせてやりたいものだ。


「ベル、チーズも食べるか?」


「はい!」


「なら、パンに乗せて食ってみろ」


 ベルは俺の方を見てから、パンの上にチーズを乗せた。


 それを口へ運び、何度か噛む。


 すると、大きな目が少し見開かれた。


「おいしいか?」


「はい! おいしいです!」


「そうか、ならもっと食え」


 俺がそう言うと、ベルは嬉しそうに頷いた。


 いやぁ、実にいい。


 こうも素直に喜んでもらえると、食わせる方まで楽しくなってくる。


 別に俺が料理を作ったわけではないんだがな。


 向かいではセバスチャンも朝食を取っていた。


「セバス、お前もちゃんと食っておけよ」


「へい、若様もですぜ」


「俺はちゃんと食ってるだろうが」


「そいつぁ結構なことで」


 何とも適当な返事である。


 まぁ、こいつは俺が心配しなくても自分のことくらいきちんとやるだろう。


 何しろ、長年騎士をやっている男だからな。


 俺などより、よほど身体の扱いには慣れているはずだ。


 ベルが肉を口へ運んだところで、俺もパンを食べる。


 うむ、悪くない。


 こうして落ち着いて朝飯を食えるのは実にありがたい。


 戦争中だからといって、四六時中緊張している必要はないんだ。


 休める時には休み、食える時には食う。


 それでいい。


 何より、今日は父上から呼ばれるまでは暇なんだからな。


 さて、何をして過ごそうかな。


 朝食を終える頃には、ベルもすっかり満足した様子だった。


 昨日に続いて今朝も腹いっぱい食べたんだから、ひとまず俺に与えられた仕事はきちんと果たしたと言っていいだろう。


 いや、ベルの仕事だったか。


 まぁ、どちらでもいい。


 さて、俺は何をするかな。


 父上からの呼び出しが来るまで、ただぼんやりしているのも悪くないんだが、せっかく時間がある。


 そうだ、手紙を書いておこう。


 昨日の夜、ベルを抱えて天幕へ戻る途中にも考えていたんだ。


 マバール城へ送るなら、あらかじめ事情を知らせておいた方がいい。


 それに、レティシアたちへ近況を伝えるのにも、ちょうどいい機会だろう。


 俺は自分用の天幕にベルを連れて戻り、紙を用意し、書く内容を考え始めた。


 さて、何から書こうかな。


 まずは俺が元気にしていることだな。


 あいつらは俺が何かやらかしていないか、すぐ心配するからなぁ。


 いや、別に心配してくれるのはありがたいんだぞ。


 ありがたいんだが、俺としてはもう少し気楽に構えていてほしいものだ。


 もっとも、今は戦争中だから仕方ないか。


 それに、俺が後方襲撃を繰り返していると知れば、余計に心配するかもしれない。


 うーむ。


 やはり、なるべく安心できる内容にした方がいいな。


 もちろん、嘘を書くつもりはない。


 実際、俺は元気だし、それなりに楽しくやっている。


 後方襲撃だって順調だ。


 ただし、作戦の詳しい内容までは書けない。


 どの領地を襲撃したとか、どの程度の損害を与えたとか、そんなことを手紙に書く必要はないからな。


 仮に途中で誰かに読まれたら面倒だ。


 そういうわけで、詳しい話は省いて、元気にやっていることと、色々と上手くいっていることを書いていく。


 ついでに、セバスチャンたちも元気だということを付け加えた。あくまでついでだが。


 俺だけ元気だと書いても、あいつらは他の連中のことまで気にするだろうからな。


 これで少しは安心してくれるといいんだが。


 さて、次はベルのことだ。


 俺は筆を止め、近くにいるベルを見た。


 食事を終えたベルは、何をするべきか分からないのか、俺の様子を眺めている。


 うーん。


 せっかくだから、こいつにも何か遊ぶものを与えてやるか。


「ベル、暇か?」


「え?」


 ベルは少し驚いたように顔を上げた。


「俺はしばらく手紙を書いているんだが、お前も何かして遊ぶか?」


「あ、はい!」


 おお、元気な返事だ。


 とはいえ、ここには子供が遊ぶようなものなど、ほとんどない。


 さて、どうしたものかな。


 ……ああ、そうだ。


 数字が好きなんだったな。


 それなら、計算問題でも出してやるか。


 俺は別の紙を取り、適当に問題を書いてみた。


 昨日までに、ベルがかなり計算できることは分かっている。


 馬の蹄の数を計算させた時も、普通に一つずつ数えていくのではなく、数を上手く分けながら考えていた。


 あれは面白かったな。


 今度は少し複雑な問題も混ぜてみよう。


 もっとも、別に正解する必要はない。


 勉強をさせたいわけでもないし、試験をしているわけでもないんだからな。


 ただの暇つぶしだ。


 本人が楽しければ、それで充分だろう。


「ほら、ベル。これでも考えてみろ」


 俺が紙を差し出すと、ベルは両手で受け取った。


 そして、書かれたものをじっと見つめる。


「……これを、考えるんですか?」


「ああ、そうだ。分からなくても構わんぞ。好きに考えてみろ」


「はい!」


 ベルは早速、紙に目を落とした。


 大きな目が文字や数字を追っていく。


 しばらくすると、何やら考え始めたらしい。


 口元が小さく動いている。


 ふむ。


 やはり数字を考えるのは好きなようだな。


 まぁ、昨日までの様子からして、嫌がるとは思っていなかったが。


 俺はベルの邪魔をしないようにして、手紙の続きを書き始めた。


 さて、ベルのことをどう説明するか。


 途中で立ち寄った村に、面白い子供がいた。


 その子供を保護して、本陣まで連れて帰ってきた。


 うん。


 まずはそんなところだろう。


 何が面白いのかも少し書いておいた方がいいか。


 数字を考えるのが好きで、計算が随分と得意なようだ、と。


 まぁ、俺もまだ詳しく分かっているわけではないんだが。


 それでも、あの能力が普通ではないことくらいは分かる。


 いや、普通という言い方もおかしいか。


 何しろ、俺だってこの世界の子供たちがどれくらい計算できるのか、別に調べたわけではない。


 ただ、少なくとも俺が知っている範囲では、なかなか珍しい才能だと思う。


 そんなことを考えながら、手紙を書き進めていると、


「あ、あの……」


 ベルの声がした。


「ん?」


 顔を上げると、ベルが紙を持ったままこちらを見ている。


「この字は何て読むのですか?」


 そう言って、問題に書いた文字を指差した。


 ああ、なるほど。


 そういえば、こいつはまだ文字があやふやなんだったな。


 数字を扱うのは随分と得意だが、文字についてはそうでもないらしい。


 まぁ、それも仕方ないだろう。


「ん? ああ、これはな……」


 俺はベルの指先を見ながら、その文字を読んでやった。


 ベルは俺の説明を聞くと、もう一度同じ文字へ目を向ける。


 しばらくじっと見つめてから、小さく頷いた。


「分かったか?」


「はい!」


「よし、じゃあ続きを考えてみろ」


 そう言うと、ベルは再び紙に向き直った。


 うん。


 これでいい。


 別に文字が読めないからといって、計算までできなくなるわけではない。


 分からないところがあれば、その都度教えてやればいいだけだ。


 それに、文字が分かるようになれば、今までより色々なことを考えられるようになるだろう。


 ベルにとっても悪いことではないはずだ。


 もっとも、無理に覚えさせるつもりはない。


 何しろ、こいつの一番面白いところは、自分で考えることを楽しんでいる点なんだからな。


 それを潰してしまっては意味がない。


 俺が文字を教え始めたせいで、数字を嫌いになったりしたら本末転倒だ。


 まぁ、そんなことになるかどうかは分からんが。


 とにかく、今は楽しんでもらうことが一番だろう。


 俺は再び手紙へ向き直った。


 レティシアたちには、ベルが落ち着いたらマバール城へ送るつもりであることも書いておく。


 まだ父上に正式な許可をもらったわけではないが、これくらいなら問題ないだろう。


 もちろん、後でちゃんと許可は取るつもりだ。


 ベルの世話はこちらで手配するつもりだが、城に着いた後は少し面倒を見てほしい。


 そんな内容を書き添える。


 レティシアとダリアは妊娠中だから、あまり負担をかけるわけにはいかない。


 だが、顔を合わせた時にでもベルに声をかけてくれれば、それだけでも随分違うだろう。


 知らない場所に一人で行くんだからな。


 少なくとも、周囲の人間が優しくしてくれれば、少しは気が楽になるはずだ。


 そして、リエリエールへの手紙には、もう少し詳しく書くことにした。


 何しろ、実際にベルの相手を頼みたいのはあいつなんだから。


 まず、ベルは数字を考えることが好きらしい。


 計算問題を出すと楽しそうに取り組むので、暇な時には適当に遊んでやってほしい。


 それから、まだ文字の読み書きはあやふやだが、分からないことがあれば自分から尋ねてくる。


 うん。


 この辺りも伝えておこう。


 何を教えるにしても、本人が面白いと思えるようにしてほしい。


 無理に勉強をさせる必要はないし、まして今から仕事を覚えさせる必要もない。


 まずは普通に暮らせるようになれば充分だ。


 そう考えながら筆を進め、最後に大切なことを書き添えた。


 たくさん食べさせてやってほしい。


 うむ。


 これは忘れてはいけない。


 昨日も今日も、ベルは実によく食べていた。


 小さな身体であれだけ食べるんだから、まだまだ大きくなるんだろう。


 いや、実際にどれくらい成長するのかは知らんが。


 少なくとも、食べ物を遠慮する必要はないということだけは伝えておきたい。


 何しろ、それがベルの最初の仕事なんだからな。


 そんなことを考えていると、またベルから声がかかった。


「あの、ギルバートさま……」


「どうした?」


「こっちの字も、よく分からなくて……」


「どれだ?」


 ベルが差し出した紙を覗き込む。


 ああ、これか。


 確かに、文字を覚えたばかりの子供には少し難しいかもしれない。


 俺はその文字を読んでやり、問題の意味も分かるように伝えた。


 ベルは真剣な顔で聞いていたが、説明が終わるとすぐに紙へ目を戻した。


 そして、また考え始める。


 ほう。


 文字の意味が分かれば、ちゃんと問題に戻るんだな。


 分からなかったことをそのままにしておくのではなく、聞いてから続きを考える。


 なかなかいいじゃないか。


 俺はそんなベルの様子を眺めながら、少し口元を緩めた。


 面白いなぁ。


 こいつは本当に、数字を考えるのが好きなんだな。


 別に誰かに褒めてもらうためにやっているようには見えない。


 問題を読んで、分からないことがあれば尋ねて、それが分かるとまた数字に戻っていく。


 その繰り返しが楽しいらしい。


 うーん。


 こういう才能は大切にしてやりたいものだ。


 何かの役に立つかどうかなんて、今は考えなくていい。


 本人が好きでやっているんだから、好きなだけ考えさせてやればいいさ。


 それにしても、こんなことならもう少し紙を用意しておけばよかったかもしれん。


 いや、別に今日全部使う必要はないか。


 これからしばらくは本陣にいるつもりだし、遊ぶ時間ならいくらでもあるだろう。


 そう考えながら、俺は手紙の続きを書いた。


 その後もベルは時折、読めない文字について尋ねてきた。


 俺はその都度筆を止め、できるだけ丁寧に教えてやる。


 面倒だとは思わなかった。


 むしろ、教えたことを聞いてから、また楽しそうに考え始める姿を見ていると、こちらまで面白くなってくる。


 いやぁ、これはなかなかいい暇つぶしを見つけたかもしれんな。


 もっとも、当のベルにしてみれば、暇つぶしどころではないのかもしれない。


 何しろ、随分と真剣な顔をしているからな。


 まぁ、本人が楽しんでいるならそれでいい。


 俺は手紙を書き、ベルは数字を考える。


 時折ベルが質問してきて、俺が答える。


 そんなことを繰り返しているうちに、いつの間にか随分と時間が過ぎていた。


 しかし、父上からの呼び出しはまだない。


 うーむ。


 やはり忙しいらしいな。


 まぁ、軍を動かしているんだから当然か。


 俺が勝手に訪ねていっても邪魔になるだろうし、ここは大人しく待っていよう。


 やがて昼になったので、俺たちは一度手を止めて食事を取ることにした。


 朝食を腹いっぱい食べたばかりのような気もするが、もう昼なんだから仕方がない。


 俺は軽く食べることにしたが、ベルにはちゃんと食わせる。


 もちろん、無理に詰め込むつもりはない。


 ただ、遠慮する必要はないということだ。


「ベル、足りなかったら言えよ」


「はい!」


 ベルは嬉しそうに頷き、再び食事を始めた。


 うん。


 実によろしい。


 これだけ食べてくれるなら、食事のことで心配する必要はなさそうだな。


 昼食を終えると、今度は少し眠くなってきた。


 何しろ、今日は大したこともしていないのに、朝から手紙を書いたりベルの相手をしたりしていたんだから。


 ……いや、大したことはしていないか。


 まぁ、せっかく休めるんだから休んでおこう。


「ベル、少し昼寝するぞ」


「お昼寝ですか?」


「ああ。お前も寝ておけ」


「はい」


 ベルは素直に頷いた。


 うんうん。


 寝る子は育つと言うしな。


 せっかく腹いっぱい食べたんだから、今度はちゃんと寝てもらおう。


 もちろん、昼寝をしたからといって急に身体が大きくなるわけではないんだろうが。


 それでも、子供は食べて寝るのが仕事みたいなものだ。


 今のベルには、それくらいでちょうどいい。


 俺も身体を休めることにした。


 天幕の中は、昼間の明るさが布越しに柔らかく差し込んでいる。


 外からは兵士たちの話し声や足音が時折聞こえてくるが、昨日まであちこち移動していたことを思えば、こんな音を聞きながら休めるだけでもありがたい。


 ベルも大人しく横になっていた。


 しばらく様子を見ていたが、特に困っているようでもない。


 よし。


 俺も寝るか。


 目を閉じ、身体から力を抜く。


 いやぁ、平和だなぁ。


 もちろん、外では今も戦争が続いている。


 父上だって忙しくしているんだろうし、騎士や兵士たちもそれぞれ仕事をしているはずだ。


 だが、俺は今日のところは休ませてもらっている。


 ありがたいことだ。


 そうして、俺もしばらく昼寝を楽しむことにした。


 目を覚ましてからも、父上からの呼び出しはなかなか来なかった。


 うーむ。


 本当に忙しいんだな。


 まぁ、別に急ぐ話でもないか。


 後方襲撃の戦果については、昨日帰還した時に詳しい報告を今日にするよう言われている。


 父上が呼ばないということは、まだそちらに時間を割けないということだろう。


 俺としては、休める時間が増えるんだからありがたい限りである。


 ベルも昼寝から目を覚まし、また紙に目を向けていた。


 どうやら、先ほどの計算が気になっているらしい。


 俺はそんな様子を見ながら、書き終えた手紙を確かめた。


 うん。


 こんなところでいいだろう。


 レティシアたちにも近況を伝えられるし、ベルのことも一通り説明できた。


 リエリエールへの頼み事も書いてある。


 あとは送るだけだな。


 もっとも、ベルをマバール城へ送ることについては、まだ父上の許可をもらっていない。


 そこは今日の報告の時にでも相談しておこう。


 たぶん問題ないとは思うんだが、勝手に城へ送ってしまうわけにもいかないからな。


 それにしても、随分とゆっくりした一日になったものだ。


 昨日までは馬に乗ってあちこち走り回っていたというのに、今日は手紙を書いて、ベルと遊んで、飯を食って昼寝までしている。


 うーむ。


 こういう日があってもいいよな。


 いや、むしろ、できることならこういう日をもっと増やしたいものだ。


 そんなことを考えながら過ごしていると、やがて天幕の外の明るさが少しずつ弱まってきた。


 そろそろ夕方か。


 結局、今日もこのまま終わるんじゃないかと思い始めた頃、ようやく父上からの呼び出しがあった。


 おお、やっとか。


 いやぁ、随分と待ったな。


 まぁ、待っている間も好きなように過ごしていたんだから、別に文句はないんだが。


 俺は書いていたものを片づけ、ベルの方へ向き直った。


「ベル、俺はちょっと父上のところへ行ってくる」


「はい」


「お前はここで待っていろ。そんなに時間はかからないと思うが、勝手にどこかへ行くんじゃないぞ」


「は、はい!」


 ベルは顔を上げ、しっかり頷いた。


 うん。


 いい返事だ。


 知らない場所なんだから、勝手に歩き回られても困る。


 何しろ、ここは本陣だ。


 兵士たちが忙しく働いているし、子供が遊び回るような場所ではない。


 まぁ、ベルもそんなことはしないと思うが、念のためだ。


「さっきの問題でも考えて待っていろ。分からなかったら、帰ってから教えてやる」


「はい、ギルバートさま!」


 ベルは手元の紙を大切そうに持ちながら頷いた。


 うむ。


 これなら大丈夫だろう。


 それにしても、こいつは本当に数字が好きなんだなぁ。


 朝からあれだけ考えていたというのに、まだ飽きていないらしい。


 いや、実に面白い。


 マバール城へ送ったら、どんなことを覚えるんだろうな。


 今から少し楽しみだ。


 もっとも、その前に父上へ報告しないといけないんだが。


 俺はベルにもう一度待っているよう伝えてから、天幕を出た。


 外には夕方の空気が広がっていた。


 本陣の中では相変わらず騎士や兵士たちが行き来している。朝から忙しそうだったが、どうやら夕方になっても仕事は終わらないらしい。


 大変だなぁ。


 いや、他人事みたいに言っている場合じゃないか。


 俺だって後方襲撃を任されているんだから、ちゃんと仕事はしているんだぞ。


 ただ、今日は休めるだけ休ませてもらっているというだけだ。


 うん。


 何も問題ない。


 そう考えながら、俺は父上の天幕へ向かって歩き始めた。


 さて、まずは今回の後方襲撃について報告しないとな。


 それから、小麦の価格についても少し気になることがある。


 そして、忘れてはいけないのがベルのことだ。


 マバール城へ送る許可も、今日のうちにもらっておきたい。


 まぁ、父上なら問題ないと言ってくれるだろう。


 そうだといいんだが。


 俺はそんなことを考えながら、夕暮れの本陣を歩いていった。

本日はここまでとなります。

次回は、明日5時となります。

ここで少し質問なんですが、

現在、朝、通勤、通学中に、

お昼休み中に、

帰宅中や帰宅後に、

と思い投稿してます。

これを、昼、夕方、夜、

の方が読みやすいでしょうか?

朝は少し時間が無いとの意見もあり考えています。

よろしければご意見お聞かせください。

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― 新着の感想 ―
今のままでいいかな、早朝に読むものが少ない(ほぼ無い)ので、ありがたいです。
起きて暇なとき読めるし今でも嬉しいよ 更新してくれるだけで嬉しいよ!
今のリズムがちょうど良いです!
感想一覧
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