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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百七十八話 味方も吹き飛びますぜ


 出来そうですな。


 セバスチャンからその言葉が出たことで、頭の中にあった形が少し現実味を帯びた。


 敵の後ろへ回る。


 後方から攻撃して、前へ追い立てる。


 その先にはエディオン家の軍勢がいる。


 前後から挟めば、少なくとも正面から一緒に攻めるよりは面白い戦い方が出来そうだ。


「よし。なら――」


「ですが」


 動こうとしたところで、セバスチャンの声が続いた。


 まだ何かあるらしい。


「なんだ?」


「それにはエディオン家というより、バカルカとの連携が必要ですぜ」


「バカルカと?」


「へい」


 セバスチャンが頷く。


 言われてみれば当然か。


 ザイン殿はエディオン家の当主だが、実際に軍勢を率いて戦場を進んでいるのはバカルカだ。


 俺たちが勝手に敵の後ろへ回って、適当な頃合いで攻撃する。


 それだけなら出来る。


 だが、敵をエディオン家の方へ追い込むとなれば話は変わる。


 向こうが何も知らなければ、こちらが敵を押し込んだ時にどう動くか分からない。


 せっかく挟める位置にいるのに、バカルカたちが別の場所へ動いていたら意味がない。


「そうだな」


 俺は少し考えてから頷いた。


「だが、街道を進むエディオン家の軍勢なら目立つだろ」


「そりゃあ、まあ」


「狙う場所が分かれば、事前に話し合うことは出来る」


 追いつくこと自体は何とかなると思っている。


 なら、一度バカルカと顔を合わせればいい。


 俺たちがどこから回るか。


 どの辺りで攻撃を始めるか。


 細かいところは実際に地形や敵を見ないと決められないだろうが、少なくとも前後から挟むつもりだということくらいは伝えられる。


 セバスチャンも少し考えた後、頷いた。


「そうですな」


 よし。


 なんとかなりそうだ。


 父上からはエディオン家を手伝えと言われた。


 エディオン家と一緒に正面から進めとは言われていない。


 俺たちが後ろから敵を殴って、そのままエディオン家のところまで追い立てるなら、十分手伝っているだろう。


 むしろかなり親切だ。


 敵の方から運んでいくんだからな。


 俺が満足しながら頷いていると、向かいにいるセバスチャンが口を開いた。


「若様」


「なんだ?」


「攻撃魔法は考えて使ってくだせえよ」


「いつも考えてるぞ」


 何を当たり前のことを。


 俺だって何も考えずに魔法を撃っているわけじゃない。


 セバスチャンは俺の返事を聞いても表情を変えなかった。


「バカルカたちまで吹き飛ばさんように」


「……そこまで雑じゃない」


 さすがに味方がいる方向へ全力で攻撃魔法を撃ったりはしない。


 敵を追い立てるんだから、最後にはエディオン家と距離が近くなる。


 そのくらいは俺にも分かる。


「分かっている。だが、騎士なら防御魔法が使えるだろ?」


 バカルカはもちろん、エディオン家の騎士たちだって当然、魔力持ちだ。


 真正面から俺の攻撃魔法を受けるのは困るだろうが、敵を狙った攻撃の余波くらいなら防御出来るんじゃないだろうか。


「少しくらいなら大丈夫じゃないか?」


 そう言うと、セバスチャンが微妙な顔をした。


 何だ。


 おかしなことを言ったか?


「騎士は、まぁ大丈夫でしょうな」


「ほら」


「若様がきちんと加減出来りゃ、ですが」


「もちろん、出来る」


 たぶん。


 いや、出来る。


 俺だっていつも全力で撃っているわけじゃない。


 壊したいものに合わせて威力くらい変えている。


 セバスチャンは俺の返事を聞き流すように続けた。


「ですが、平民兵は吹き飛びますぜ」


「……あ」


 平民兵。


 俺は一度口を閉じた。


 そうか。


 エディオン家は軍勢だから、当然騎士だけじゃない。


 兵もいる。


 魔力を持たない平民兵も大勢いるはずだ。


 騎士なら自分で防御魔法を使える。


 だが平民兵にはそれがない。


 敵を追い込んで、その向こうに味方の平民兵がいる状態で攻撃魔法を撃てばどうなるか。


 ……うん。


 普通に危ないな。


「そうか、軍勢だから平民兵もいるよな」


「おりますぜ」


「……分かっている」


 今だけど。


 だが、それをわざわざ言う必要はない。


 俺はちゃんと分かっている。


 これから気をつければ何も問題はない。


 セバスチャンを見る。


 目が合った。


 何だ、その目は。


 何となく疑われている気がする。


「なんだよ」


「何も言っとりませんぜ」


「ならそんな目で見るな」


「どんな目ですかい?」


「俺が味方ごと吹き飛ばすと思ってそうな目だ」


 セバスチャンは答えなかった。


 答えろよ。


 無言のまま俺を見るのはやめろ。


 俺は視線を外した。


 ともかく、作戦そのものは使えそうだ。


 後はエディオン家がどこを狙っているのか確認しなければならない。


 それが分からなければ、どこへ先回りすればいいのかも決められない。


「俺はエディオン家の狙いを確認してくる」


 話を切り替える。


 セバスチャンの視線はまだこっちに向いているが、気にしない。


「お前は準備をしといてくれ」


「へい」


「騎士たちにも伝えておけ。明日には出陣出来るようにな」


 今から準備を始めれば十分だろう。


 王都へ行った時に使った物もあるし、騎士たちだって戦が続いている状況で完全に気を抜いてはいないはずだ。


 セバスチャンが頷いた。


「分かりやした」


「よし」


 俺は立ち上がる。


 やることは決まった。


 ザイン殿か武官たちを探して、エディオン家がどこへ向かっているのか聞く。


 そこから俺たちの進路を決める。


 俺は扉へ向かい、そのまま部屋を出た。


 背中にまだセバスチャンの視線が刺さっているような気がしたが、振り返らない。


 別に気まずいわけじゃない。


 攻撃魔法の話から逃げたわけでもない。


 ちゃんと次の仕事があるだけだ。


 決して逃げたのではない。

本日はここまでとなります。

ありがとうございました。

次の更新は明日、5時となります。

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