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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百七十四話 特殊部隊みたいなもん


 さて、俺は何を命じられるのかな?


 椅子に座ったまま、今度は自分のことを考える。


 善良王のおっさんを連れて帰るという仕事は終わった。父上から今日は休めとも言われたが、いくさそのものが終わったわけじゃない。むしろ、俺が王都へ行っている間に本格的に始まったばかりだ。


 なら、次の仕事があるはずだ。


 マバール家の軍政と言うか、こういう時の体制は結構単純だ。


 父上が総司令官とするなら、ダル兄さんが副司令みたいなもんだろう。父上の次に家を継ぐのはダル兄さんだし、俺よりずっと前から国境で兵を預かってきた。


 アル兄さんは少し違う。


 前に出て敵をぶん殴るというより、後ろを掌握して支援するような感じか。アル兄さんは人と話すのも上手いし、俺みたいに気に入らなければ殴ればいい、とはならない。


 じゃあ、俺は?


「……俺は何だ?」


 思わず声に出た。


 大軍を率いて正面から進む役目でもない。


 父上みたいに全体を見て命令を出すわけでもないし、アル兄さんみたいに後ろをまとめるわけでもない。


 俺がやってきたことを考える。


 少ない騎士を連れて動く。


 敵の奥まで入り込む。


 橋を奪ったり、城へ入り込んだり、王都まで行って善良王のおっさんを掻っ攫ったりする。


 ……うん。


 少数精鋭で敵を引っ掻き回す俺は、まぁ、特殊部隊みたいなもんか。


 そう考えると、かなり分かりやすいな。


 もちろん、この世界でそういう名前の役目があるわけじゃない。俺が前世の感覚で勝手に当てはめているだけだが、自分の立ち位置を考えるにはちょうどいい。


 父上が全体を動かして、兄さんたちがそれぞれの場所を受け持つ。


 俺は必要なところへ突っ込む。


 うん。


 やっぱり分かりやすい。


 せっかくのいくさだし、俺も戦場に出たいんだけどなぁ。


 小競り合いなら国境にいれば珍しくもないが、国同士がここまで大きくぶつかる機会なんて、そう何度もあるとは思えない。


 どうなるかな。


 父上なら何か考えてそうだけど――。


「あっ」


 そこで別のことを思い出した。


 そういえば、あの黒づくめのこと伝えるの忘れてたな。


 バカルカには帰り道で襲われたこと自体は話したが、父上のところへ戻ってから、うちの武官たちにはまだきちんと報告していない。


 あいつらのこともそうだが、問題は筒だ。


 身体に筒を付けて、その中には黒い粉と金属片が入っていた。


 俺には前世の知識があるから、それらしいものを想像することはできる。だが、本当に同じものなのかは知らない。


 攻撃魔法を使って試しても爆発しなかった。


 善良王のおっさんも知らないと言っていた。


 だからこそ、持って帰ってきたんだった。


「……後で、じゃないな」


 今でいいか。


 どうせまだ寝るには少し早い。


 俺は椅子から立ち上がった。


 武官たちなら、俺よりこの世界の武器や戦い方には詳しい。誰か一人くらい見たことがあるかもしれない。


 もし知らなくても、警戒だけはしてもらった方がいい。


 あんなものを腹に抱えて兵の中へ入り込まれたら面倒だ。


 結局、俺はそのまま武官たちのところへ向かった。


 王都からの帰り道で襲ってきた黒づくめのこと。


 全員が平民だったこと。


 武器らしい武器を持たず、一人が騎士へ抱きついたまま爆発したこと。


 それから、身体に付けていた筒のこと。


 持ち帰ったものも見せた。


「これだ」


 俺が筒を示すと、武官たちの視線が集まった。


 一人が手に取り、向きを変えながら確かめる。他の者も覗き込んだが、すぐに答えが返ってくることはなかった。


「見たことは?」


 尋ねると、武官が首を横へ振った。


「ございません」


「誰も?」


 周囲へ視線が動く。


 何人かが互いの顔を見たが、やはり反応は同じだった。


「少なくとも、ここにいる者には心当たりがございません」


「そうか」


 まぁ、そんな気はしていた。


 誰かが一目見て、ああこれは何々です、と答えてくれれば楽だったんだが。


「じゃあ、調べてみてくれ。それと、同じような黒づくめが来るかもしれないから警戒も頼む」


「承知しました」


 武官が頷く。


「筒についても調べてみましょう」


「頼む」


 これでいい。


 正体が分からないものを俺一人で考えていても仕方ない。


 必要な連中に渡したんだから、あとは任せよう。


 話が終わり、部屋を出たところで、ふと別の顔が浮かんだ。


 そういえばオルフィアは何してるかな?


 新しい感知魔法のこともある。


 せっかく戻ってきたんだし、また色々と魔法のことを話したい。あいつと魔法について話していると、俺一人では考えつかない方向へ話が転がることがある。


 まぁ、こっちは明日でもいいか。


 そう思ったものの、せっかくだから居場所だけ確認しておこうと近くの者に尋ねてみた。


 すると、返ってきた答えは思っていたものと違った。


「マバール城へ?」


「はい。すでに移っておられます」


「ああ、そうか」


 聞いてみれば納得だった。


 オルフィアたちはもうシルディア城にはいない。


 安全なマバール城へ移されたらしい。


 まぁ、当たり前だよな。


 ここは今や、前線司令部みたいなもんだ。


 父上がいて、武官や文官が動き、兵も集まっている。王国とのいくさが始まっている以上、安全とは言い難い。


 それに比べれば、マバール城へ移した方がいい。


「ちょっと残念だな」


 色々、魔法のこととか話し合いたかったんだが。


 特にあの感知魔法はまだ気になる。


 俺の感知魔法とはかなり違うし、使い方によっては色々出来そうなんだけどな。


 まあいいや。


 マバール城にいるなら、そのうち会える。


 それより今日は父上から休めと言われている。


 報告もした。


 筒も渡した。


 オルフィアの居場所も分かった。


 なら、もうやることはない。


 俺は自室へ戻ることにした。


 今日は色々あった。


 王都から戻ってきて、父上に善良王のおっさんを渡して、その善良王のおっさんがひと月後に処刑されることになった。


 明日になれば、また何かあるだろう。


 俺が何をすることになるのかは、まだ分からない。


 でも、今考えても仕方ない。


「まぁいいや、寝よ」


 そう呟いて、俺は今度こそ休むことにした。

次の更新は、20時となります。

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