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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百三十八話 痩せ細る前に


 オルフィアが部屋を出ていったあと、俺は机の上に積んであった報告書へ手を伸ばした。


 散歩に出ていた間に届いていたものだ。


 何枚かめくり、ざっと目を通していく。


 細かい数字や名前まで全部覚える気はない。今知りたいのは、大きな流れがどうなっているかだ。


 王国から帝国へ移ってくる民は、やはり増えているらしい。


 ふむ。


 止まるどころか、少しずつ増えてるのか。


 紙を一枚めくる。


 帝国からすれば、放っておくだけで働き手が増えていく。


 ウハウハだな。


 人が増えれば、それだけ働く手も増える。


 だが、出ていかれる側の王国貴族たちはたまったものじゃないだろう。


 今日いきなり領地から人が消えるわけじゃない。


 一人。


 また一人。


 家族ごといなくなる奴もいる。


 そうやって少しずつ、少しずつ領地が痩せ細っていく。


 畑も店も人がいなければ動かない。


 そこまで書かれているわけじゃないが、人が減れば困ることくらい俺にも分かる。


 さて。


 どこまで我慢出来るだろうか。


 王国の貴族たちが、このまま黙って見ているとも思えない。


 だからといって、何をするかまでは分からない。


 逃げる民を無理に止めるのか。


 帝国側へ何か言ってくるのか。


 それとも、この混乱に乗じてこちらから攻めるのか。


 俺は報告書を机へ戻し、椅子の背に身体を預けた。


 ふむ。


 好みとしては、こっちから攻め込みたいな。


 別に待てないわけじゃない。


 だが、我慢出来なくなった王国側が、もうどうにでもなれとヤケクソで攻め込んできたら面倒そうだ。


 準備も何もなく突然来られるより、こっちの都合で動いた方が楽に決まっている。


 それに。


 どうせ奪うなら、価値があるうちに奪いたい。


 人が抜け続け、畑も荒れ、金も食料もなくなってから攻め込んだって仕方がない。


 勝ったあとに何も残っていなければ、取る意味が薄い。


 何より、あまり痩せ細ると、その後が大変そうだ。


 この世界、補給がないわけじゃない。


 必要な物を後ろから運ぶこともする。


 だが、それだけで全部を賄うわけでもない。


 基本的には現地で手に入る物を使う。


 食える物があれば食う。


 使える物があれば使う。


 足りない物だけ運ぶ。


 そういう方が早い。


 だからこそ、攻め込む先が貧しすぎると困る。


 何もない土地を進むなら、必要な物を全部こっちから持っていかないといけなくなる。


 荷が増える。


 動きが鈍る。


 面倒だ。


 まあ、だから俺は少数精鋭で攻め込みたいんだけどな。


 人数が少なければ必要な物も減る。


 動きも速い。


 俺の騎士たちなら、そこらの平民兵を大量に連れて歩くよりよほど使いやすい。


 とはいえ、本格的に王国と戦争するなら、マバール家だけで全部やることにはならないだろう。


 帝国も動く。


 たぶん。


 そこはまだ何も聞いていない。


 父上から正式に言われたわけでもないし、俺が勝手に考えているだけだ。


 ただ、本当に国同士で戦うなら、どこまでやるつもりなんだろうな。


 俺は机の上へ肘をつき、報告書を眺めたまま考える。


 ある程度のところまで攻めて、新しい国境にするのか。


 川とか山とか、守りやすい場所まで取って、そこから先はやめる。


 それなら分かりやすい。


 でも、本当に王都まで行くつもりなら話は別だ。


 王都まで攻め込んで。


 善良王を殺すのか。


 うーん。


 俺としては、善良王は殺さない方がいいと思うんだが。


 別に殺せないとは思っていない。


 命令されれば殺す。


 ただ、殺したあとが面倒そうなんだよな。


 王国の貴族たちをまとめる奴がいなくなって、あっちこっちが好き勝手に動き始めたら、誰と話せばいいのか分からなくなる。


 だったら、善良王には生きていてもらって、王国貴族たちを説得でもしてもらった方が楽だ。


 王様なんだから、そのくらいはしてほしい。


 降伏しろでも、戦争をやめろでも、何でもいい。


 俺たちが一人ずつ殴って回るより早い。


 まあ、父上たちがどう考えているのかは知らないけどな。


 それに、別に国境を動かさないというやり方もある。


 土地を取れば、取ったあと守らなきゃならない。


 人も置かなきゃならない。


 面倒が増える。


 だったら、今の国境はそのまま。


 攻め込んで、取れるものだけ取って帰る。


 それもありなんじゃないだろうか。


 俺は指先で机を軽く叩いた。


 そのやり方なら、なおさら早い方がいい。


 王国側にまだ余裕があるうちに。


 痩せ細って、何も残らなくなる前に。


 あえて国境は動かさず、奪えるものだけ奪う。


 うん。


 それはそれで悪くないな。

次の更新は、20時となります。

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― 新着の感想 ―
どっかの騎馬民族みたいなことを言い出したぞ・・・ 「あえて国境は動かさず、奪えるものだけ奪う」 王国と帝国って両方大国だよね・・・物凄い物騒な考え方だと思うんだけど
レティシアが全然出てこない・・・
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