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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百三十七話 俺なら使える


 ふむ、ふむ。


 さっき覚えたばかりの感知魔法を、もう一度使ってみる。


 自分から伸ばした細い魔力の糸を、一つ一つ別のものとして意識する。重なっても混ぜない。俺の中ではそれぞれ違う色のように感じながら、周囲へ広げていく。


 実際に色がついているわけじゃない。


 ただ、同じものだと思ってしまえば重なったところから広がってしまう。それぞれ別のものだと意識していれば、細いまま伸ばすことが出来る。


 その隙間に出来る、魔力の糸が通らない穴。


 まだ、それが人なのか馬なのか、他の何かなのかまでは分からない。ただ、そこに何か生きたものがいるらしい、ということだけは分かる。


 一度止める。


 すぐにもう一度。


 今度は少しだけ広げ方を変えてみる。


 ふむ。


 また止める。


 もう一度。


 何度か繰り返しているうちに、さっきまでは魔法そのものを使うことに意識を取られていて気づかなかった部分が少しずつ見えてきた。


 これ、かなり魔力を使うな。


 普通の感知魔法だって、使っている間は当然魔力を使う。感知しているのだから、魔力を使わずに済むわけじゃない。


 だが、これは少し違う。


 普通の感知魔法なら、感知するために魔力を広げて、その範囲をまとめて感じ取る。


 こっちは、広げた一本一本の糸を、そのままずっと使い続けているような感覚だ。


 しかも一本じゃない。


 周囲に何本も、何本も伸ばしている。


 一本分を使い続けながら、さらに別の一本、その隣にも一本。そんなものを同時に重ねているようなものだ。


 そりゃ魔力が要る。


 もう一度広げながら、自分の中で消費されていく魔力を確かめる。


 俺にとっては大した量じゃない。


 大した量じゃないんだが、それは俺だからだ。


 普通の感知魔法が、使いたい時に広げて確かめるものだとしたら、こっちは使っている間ずっと一本一本を維持し続ける。


 アクティブとパッシブの差とでもいうか。


 いや、どっちも魔力を使ってるんだから少し違うか。


 まあいい。


 それにしても、よくこんな使い方を考えたもんだ。


 俺は感知魔法を止め、少し離れたところでこちらを見ているオルフィアへ目を向けた。


 にこにこしている。


 俺が何度も魔法を使っているのが、よほど嬉しいらしい。


 こいつ、使う者のことをまったく考えてないんじゃないだろうか。


 感知出来ないものを、感知出来ない穴として見つける。


 発想としては確かに面白い。


 しかも、それを実際に使える形にしているんだから大したものだとは思う。


 だが、魔力の消費がおかしい。


 これ、俺以外にまともに使える奴いるのか?


 開発者本人が一回使っただけで肩で息をしていたんだぞ。


 オルフィアですらあれなんだから、騎士には絶対に使えんだろうな。


 魔法ってのは、多くの者が使い、共有されて、その中で色々な使い方が試されながら発展していくものだ。


 なのにこいつの考える使い方は、入口の時点で使える奴を振り落としている。


 さすがオルフィアと言うべきか。


 使い方を考えるのは天才的だが、使う者のことはまったく考えていない。


 うーむ。


 マッドなやつ。


「ねぇ、どう? どう?」


 俺が魔法を止めたのを見て、オルフィアが待ちきれないように聞いてきた。


「ん、ああ、うん。色々試さなきゃならんが、使えると思うぞ」


「ほんと?」


「ああ」


 少なくとも、今のところはな。


 範囲をどこまで広げられるのか。


 糸をどこまで細かく増やせるのか。


 穴の大きさで何か違いが分かるのか。


 動いている相手をどこまで追えるのか。


 人と馬を見分けられるのか。


 試したいことはいくらでもある。


 だが、使えるか使えないかで言えば、使える。


 俺なら。


 そこだけは口に出さず、心の中でこっそり付け加えておく。


 オルフィアは俺の返事を聞くと、満足そうに何度も頷いた。


 自分で考えた魔法の使い方を誰かが実際に使えるようになるのが、よほど嬉しいんだろう。


 俺ももう一度だけ魔力を細く伸ばしてみた。


 さっきより迷いは少ない。


 一本。


 その隣にもう一本。


 さらに一本。


 別々のものとして意識しながら周囲へ伸ばしていけば、重なっても前みたいに面へ広がらない。


 やっぱり出来るな。


 一度分かってしまえば、最初ほど難しくはない。


 もちろん、普通の感知魔法と同じ感覚で使えるわけじゃない。気を抜けば混ざりそうになるし、糸を増やせば増やすほど意識するものも増える。


 それでも、さっきオルフィアの魔力を感じながら必死に真似していた時とは違う。


 少なくとも、自分で使い直すことは出来るようになった。


 魔法を止めると、周囲へ伸ばしていた感覚が一気に消えた。


 うん。


 今日はこのくらいでいいだろう。


 これ以上やるなら、ただ繰り返すより、何を確かめるか決めてから試した方がいい。


 俺がそう判断した頃には、オルフィアも満足したらしい。


 自室へ戻ると言って、嬉しそうに部屋を出ていった。


 随分とウキウキしていたな。


 あの様子だと、また何か考えるんじゃないだろうか。


 新しい魔法そのものを作るわけじゃない。


 今ある魔法を、普通なら考えないような形で使う。


 それに関しては、本当にこいつは次から次へと思いつく。


 今回だって、感知出来ないなら、感知出来ないことを感知すればいい、なんて普通は考えない。


 面白いからいいんだけどな。


 俺は閉じた扉をしばらく眺め、それから小さく息を吐いた。


 また何か思いついたら、嬉しそうな顔で持ってくるんだろう。


 それはそれで楽しみではある。


 あるんだが。


 とりあえず、あまり人の迷惑にならない魔法を考えてくれるといいが。

本日の更新は、5時、12時、20時となります。

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― 新着の感想 ―
これはもう相思になるまでさほどかからないだろ 相愛まで行くかは一旦置いておいて
回転式レーダーみたいに回せば1本でもなんとかなりそう
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