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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百三十二話 大人しくだぞ


 ルディア家のことを調べていたのなら、俺が城を吹き飛ばしたことまで伝わっていてもおかしくはないらしい。


 なら、ちょうどいい。


 どうせここまで知られているなら、ついでに話しておこう。


「ルディア家には、オルフィアに従いたい者たちが一定数いるようです。マバール家で受け入れると約束しました」


 言った瞬間、文官代表の顔が固まった。


 さっきまで善良王の話を聞いて考え込んでいた顔とは違う。目を少し見開いたまま、俺を見ている。


「……約束したのですか?」


「ああ、した。少ないより多い方がいいだろ」


 正確には、まだきちんと約束したわけじゃない。


 シルフィアに、オルフィアへ従いたい奴がいるならマバール領へ来いと手紙を書かせるつもりでいるだけだ。


 でも、これから約束するんだから同じようなものだろう。


「な、なぜ、そのような約束を」


 文官代表の声が、さっきまでより少しだけ重くなった。


 なぜって。


 そんなに変なことか?


「ん? 貴族一人と騎士一人より、たくさん亡命した方が帝国としても使い道があるだろ」


 オルフィア一人だけが帝国へ逃げてきました、よりも、ルディア家の者たちがまとまってこっちへ来た方が何かと使いやすいと思う。


 人数が多ければ、帝国側にいる方が本家本元です、みたいな形にも出来そうだしな。


 詳しいことは知らないが、その辺は俺より文官たちの方が得意だろう。


「はぁ……」


 文官代表が大きく息を吐いた。


 それから、俺ではなく父上を見る。


 父上はすぐには答えなかった。


 俺と文官代表、その両方を見ているような気がする。


 少しして、ようやく口を開いた。


「確かに多ければ使い道はある。その形で進めよ」


「はい」


 よし。


 正式承認だ。


 これでシルフィアにも堂々と手紙を書かせられる。


 勝手に決めたことを怒られるどころか、ちゃんと認めてもらえた。やっぱり大した問題じゃなかったな。


 そう思っていると、父上が静かに言葉を続けた。


「ギルバート」


「はい」


「なぜ黙って王国に行った?」


 ああ。


 そっちか。


 俺は少し考えてから、そのまま答えた。


「散歩にいちいち父上のお許しは必要ないと判断しました」


「さ、散歩ですか?」


 文官代表が思わずという感じで声を漏らした。


 横では武官の長が顎へ手をやりながら俺を見る。


「ふむ、いささか長い散歩ですな」


 そうか?


 確かに少し長かった気はする。


 でも、ちゃんと帰ってきたんだから問題ないだろう。


 諜報を司る男は何も言わない。


 父上も俺を見たまま黙っていた。


 うーん。


 やっぱり散歩という言い方が悪かったか?


 俺としては本当にそのくらいのつもりだったんだが。


 やがて父上が、別のことを聞いてきた。


「ふむ。ギルバート、王国と戦になると思うか?」


 今度は迷わなかった。


「はい、必ず」


 文官代表も武官の長も、今度は何も言わない。


 俺はそのまま続けた。


「いつになるかまでは分かりません。ですが、あとは遅いか、早いか、だけだと思います」


 王国を歩いて見たものだけでも、貴族たちは少しずつ動いていた。


 父上たちだって、何も考えていないわけがない。


 なら、戦になるかどうかを考える段階はもう過ぎている。


 俺にはそう見える。


 父上は一度だけ小さく頷いた。


「ギルバート、どこまで攻め込める?」


「ご命令なら王都までは攻め込めます」


 王都には行ったことがある。


 道も、そこまでの距離も大体は分かる。


 人数を絞って一気に進むなら、辿り着くこと自体は出来ると思う。


 ただし、それと取った場所を維持することは別だ。


「ですが、占領は出来ません」


 父上の目が俺から離れない。


「攻め込むだけなら、少数先鋭で一気に行えます。ですが占領となれば、かなりの人数が必要です。マバール家だけでは無理でしょう」


 城を壊して進むだけなら簡単だ。


 敵を倒すだけなら、もっと簡単かもしれない。


 だが、その後ずっとそこに人を置き、周囲まで押さえ続けるなら話が変わる。


 俺一人が強くても人数は増えない。


 父上は少しの間、黙っていた。


 それから、俺を見たまま聞いた。


「善良王を殺せるか?」


 大広間の空気が変わったような気がした。


 だが、聞かれたこと自体は難しくない。


「はい。ご命令なら必ず」


 俺は頷いた。


 文官代表も武官の長も黙っている。


 二人とも俺と父上を見ているだけだ。


 諜報を司る男は、さっきからほとんど動かない。


 寝てないよな?


 さすがに立ったまま寝たりはしないだろうけど。


 俺は一度だけそちらをチラッと見てから、父上へ視線を戻した。


「ですが、善良王を殺せば、その後の交渉は難しくなると思います。まずは降伏させるべきかと考えます」


 殺すこと自体は出来る。


 命令されればやる。


 ただ、善良王を殺してしまった後、誰と話をすれば戦が終わるのか分からなくなりそうだ。


 王都まで行って王を殺しました。


 それで終わり。


 となれば楽なんだが、たぶんそんなに簡単じゃない。


 次に誰を倒せばいいのか、どこまで進めばいいのか分からないまま戦い続けるのは面倒だ。


 それなら、生きたまま降伏させて話を終わらせた方がいい。殺したければいつでも殺せるし。


 俺が答えると、父上は俺から視線を外した。


「どうだ?」


 文官代表と武官の長へ向けた言葉だろう。


 たぶん、諜報を司る男も含まれている。


 文官代表が先に頷いた。


「正しい判断かと」


 続いて武官の長も頷く。


「問題ありませんな」


 最後に諜報を司る男を見る。


 男は何も言わず、小さく一度だけ頷いた。


 やっぱり起きてた。


 俺は三人の様子を横目でこっそり見ながら、少しだけ肩の力を抜いた。


 どうやら、今の答えは間違っていなかったらしい。


 少なくとも、誰からも反対はされなかった。


 それならもう終わりかな?


 王国のことも報告した。


 ルディア家のことも認めてもらった。


 戦になった時の話までした。


 これで帰っていいんじゃないかと思ったところで、父上が俺を呼んだ。


「ギルバート」


「はい」


「しばらくの間は城に留まれ。勝手な外出は禁ずる」


「はい」


 反射的に頷いた。


 ……うーん。


 これは怒られているのか?


 それとも褒められているのか?


 さっきから、どうにも判断がつかない。


 ルディア家のことは認めてもらった。


 戦の話も間違っていなかったらしい。


 なのに、城から勝手に出るなと言われた。


 俺は少し迷ってから、聞いてみることにした。


「あの、父上」


「なんだ」


「それは謹慎ですか?」


 父上の口元が少し動いた。


 笑ったように見えた。


「お前に謹慎は大して罰にならんからな」


 ああ。


 確かに。


 部屋にいろと言われても、特に困らない。


 飯は出るし、寝られるし、本でも読んでいればいい。


 俺が納得しかけたところで、父上は続けた。


「使う事にする。しばらくは大人しく待っていろ」


「はい、大人しくですね」


 うん。


 それは得意だ。


 何もしなくていいなら、いくらでも大人しく出来る。


 それに、父上が禁じたのは勝手な外出だ。


 勝手じゃなければ外出してもいいんだろう。


 そう考えていると、父上がもう一度俺を見た。


「いいか、大人しくだぞ」


 さっきも聞いたぞ。


 ずいぶん念を押すなぁ。


 俺は安心させるように笑顔を作った。


「はい、お任せください」

次の更新は、20時となります。

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― 新着の感想 ―
国のトップを殺せば勝ちだと思って実際に殺しちゃったら泥沼化って最近どっかであったがするなあ
現実世界ならパパ上さん胃潰瘍とかでお亡くなりになりそうだな。
ギルバートは飾って嬉しい装飾華美な儀礼用の剣じゃなくて、多少の装飾はされているものの実用性一辺倒な剣って事を改めて実感した御父上。 騎士としての初期教育が全てだったんだなぁ って遠い目をしてそうな上…
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