↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/310

第二百二十二話 新しい価値観


あれから俺たちは城を離れ、今は野営している。


 俺としては、別にあの宿にそのまま泊まってもよかったのだが、シルフィアに全力で止められた。


「絶対に目立ちますからやめましょう!」


 あそこまで必死に言われると、さすがに押し切るのも面倒になる。


 別に目立ったところで、こっちが気にしなければいいだけだと思うんだがなぁ。


 もっとも、野営そのものが嫌いなわけではない。


 夜気の中で焚き火がぱちぱちと鳴り、赤い火の粉がときどき暗闇へ舞い上がっていく。飯も大したものではない。火で炙ったものをそのまま食う程度だ。それなのに、こういう場所で食うと妙に美味く感じる。


 なんでだろうな。


 豪華な食事とは比べ物にならないはずなのに、焚き火の熱を感じながら口へ運ぶと、不思議と悪くない。


 食事を終えた俺は、そのまま火の向こうをぼんやりと眺めた。


 善良王か。


 炎が揺れる。


 あいつが今回のことに、どの程度まで関わっているのかは分からない。


 ゲルディアの話だけで、善良王が直接何かを命じたと決めつけることはできない。だが、まったく無関係とも思えなかった。


 新しい価値観、ねぇ。


 なんなんだろうな、それ。


 俺の知っているものに無理やり当てはめるなら、民主主義……なのか?


 いや、違うか。


 この世界で選挙なんてできるとは思えない。


 そもそも、誰が投票するんだ。どこまでを一人として数える。どうやって集める。考え始めれば、前世と同じようなものをそのまま持ってくるのは無理がある。


 じゃあ、なんだ?


 単純に話し合いの価値を上げて、強い奴だけじゃなく、弱い貴族にも活躍する場所を作ろうとしているのか?


 それなら少しは分かる。


 力が弱くても頭のいい奴はいるだろうし、戦うのが得意じゃなくても別のことが得意な奴はいる。そういう連中まで使えるようにするというなら、別におかしな話でもない。


 ……いや。


 それだけなら、平民にまで考えを広める意味がないか。


 焚き火の中で炭が崩れ、赤くなった部分が沈んだ。


 選挙のいいところって、なんだったかな。


 強い奴も弱い奴も一票。


 金持ちでも貧乏でも一票。


 偉くても偉くなくても、とりあえず一票。


 そういうところだったはずだ。


 なら、善良王が考えているのも、平民にまで同じ権利を与えるようなものなのか?


 うーむ。


 なんか意味あるか?


 前世でそれが上手く機能したのは、基本的というか、本質的にはみんな同じだったからだよなぁ。


 もちろん金のあるなしもあったし、生まれた家も違った。頭の良さも身体の強さも、全員同じだったわけじゃない。


 それでも、人間そのものがまったく別の生き物みたいに違っていたわけじゃない。


 例えば普通の奴に王様の服を着せれば王様に見えるだろうし、逆もそうだ。王様に普通の服を着せれば普通の奴に見える。


 だが、この世界は違う。


 生まれた時点から、持っている力そのものが違う。


 貴族や騎士は魔力を持っている。


 平民は基本的に持っていない。


 努力して埋められるとか、鍛えればどうにかなるとか、そういう差じゃない。最初からそこにある、どうしようもない現実だ。


 俺だって、今まで何度もその差を見てきた。


 力のある者が前に出て、力のない者がそれに従う。


 良い悪いの話じゃなく、そうしなければ危ない場面だっていくらでもある。


 そんな世界で、貴族と平民を同列に扱う?


 いや、無理じゃないか?


 少なくとも俺には、物理的に不可能に思える。


 権利だけ同じにしたところで、実際に持っている力が違う。


 言葉では同じだと言えても、何かあった時に最後に物を言うのは結局そっちじゃないのか。


 それとも、そういうところまで全部ひっくり返したいのか?


 だとしたら、なおさら分からない。


 単に理想だけで動いてるんだろうか。


 ゲルディアみたいに。


 ……いや、あれと一緒にするのはさすがに早いか。


 善良王本人が何を考えているのか、俺はまだ聞いていない。


「うーむ、分からん」


 考えているうちに、声が出ていたらしい。


 少し離れたところにいたシルフィアがこちらを向いた。


「どうしました?」


「いや、なんでもない」


 それだけ答えて、また焚き火へ目を戻す。


 考えても分からんものは分からん。


 結局のところ、王都まで行って善良王本人を締め上げるでもしないと、本当のところは分かりそうにないな。


 本人に聞けば早い。


 何を考えているのか、何をしようとしているのか、全部吐かせればいい。


 ……王都か。


 ここからだと、どのくらいかかるんだ?


「なぁ、セバス」


 俺が呼ぶと、向かい側にいたセバスチャンが顔を上げた。


「なんです?」


「ここから王都までだと、何日ぐらいだ?」


 とりあえず聞いてみただけだ。


 それなのに、セバスチャンはすぐには答えなかった。


 焚き火越しに、じっと俺を見る。


 なんだその目は。


 俺はまだ何も言ってないぞ。


 しばらく無言で俺を見ていたセバスチャンが、やがて低い声で言った。


「行きませんぜ、いくらなんでも」

本日の更新は5時、12時、20時となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。