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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百十五話 ルディア本家の当主を殺したか


 命じられた男が城へ向かっていく。


 その背中を見送りながら、俺は小さく息を吐いた。


 やれやれ。


 ようやくかよ。


 最初から聞きに行けばそれで終わった話なのに、どうしてここまで面倒なことになるんだ。


 俺は別に、こいつらを殺したいわけじゃない。


 城まで案内してくれたんだから、その礼として一応ちゃんと当主に聞いてから会おうとしているだけだ。それなのに命がけだのなんだのと言い出すから話がややこしくなる。


 まったく。


 俺はかなり理性的に対応していると思う。


 ふとセバスチャンを見ると、こっちを見ながらにやにや笑っていた。


「なんだよ」


「いやぁ」


 セバスチャンは楽しそうに口元を歪める。


「お優しいですな」


「ああ」


 分かってるじゃないか。


「自分でも自分の理性と常識が少し嫌になる」


「確かに」


 セバスチャンが吹き出した。


 そのまま肩を揺らして笑い始める。


 ……なんだ?


 何がそんなに面白い。


 まあ、セバスチャンがおかしいのは今に始まったことじゃないからいいか。


 シルフィアは笑っていなかった。


 さっきから少し離れたところで黙っている。


 顔もまだ青い。


 いや。


 さっきより青くなってないか?


 俺は少し眉を寄せた。


 大丈夫か、こいつ。


 朝から顔色は悪かったが、さっきは普通に話していた。魔力を解放した後にまた青くなって、口元まで押さえていたが、それから少しは落ち着いたと思っていたんだが。


 なんかあったか?


 シルフィアはこちらを見ようともせず、黙って城の方を見ている。


 吐きそうなら先に言ってほしい。


 出来れば俺から離れてから。


 そんなことを考えながら待っていると、やがて城の方から数人の男たちが歩いてきた。


 先ほど向かった男もいる。


 戻ってきた一人が俺たちの前で足を止めた。


「ご当主様は会っても良いと仰せだ」


「そうか」


「ただし」


 男の目が俺を真っ直ぐ捉える。


「礼儀を守るのならば、とも仰せだ」


「当たり前だろうが」


 何を言ってるんだ。


「これまでも俺はちゃんと礼儀を守ってる」


「いや、まったくですな」


 隣でセバスチャンが深く頷いた。


 やっぱりそうだよな。


 俺はちゃんと話をして、案内してもらった礼まで考えて、当主に確認する時間まで与えた。


 これ以上どう礼儀正しくしろというんだ。


 ふと見ると、シルフィアがなぜか首を傾げている。


 なんだ?


 まだ気持ち悪いのか?


「ついてこい」


 男がそれだけ言って城へ向き直った。


「ふむ」


 ようやくだな。


 俺たちはその後について進む。


 さっきまで周囲にいた男たちも一緒だった。


 前にもいる。


 横にもいる。


 後ろにもいる。


 完全に囲まれてるな。


 別にいいけど。


 ここまで来て襲ってくるなら、それはそれで分かりやすい。


 ただ、今のところ誰も剣を抜こうとはしない。俺たちを囲んだまま、黙って城の中へ案内していく。


 近くで見ると、やっぱり小さい。


 外から見た時にも感じたが、マバール城を見慣れているせいか、どうにも城というより小さくまとまったものに見える。


 本当は少し見て回りたい。


 どんな造りになっているのか。


 外から見た印象通りなのか。


 昔からそのままだというなら、なおさら少し興味がある。


 俺は歩きながら周囲へ目を向けた。


 ……いや。


 さすがに勝手に城の中をうろうろするのは無礼か。


 俺は礼儀を守る男だからな。


 今は我慢しておこう。


 案内された先は広間だった。


 大広間というか……中広間くらいか?


 マバール城の広間を基準に考えるから小さく見えるだけかもしれないが、少なくとも俺が大広間と聞いて思い浮かべるほどの広さではない。


 俺とセバスチャン、それにシルフィアが中へ入る。


 男たちも離れない。


 そのまま周囲に立っている。


 随分と警戒されているなぁ。


 俺はちゃんと礼儀を守ってるのに。


 待っている間、シルフィアへちらりと目を向ける。


 まだ少し顔は青い。


 だが立っているし、今のところ口元を押さえてもいない。


 大丈夫……なのか?


 まあ、本人が何も言わないなら放っておこう。


 しばらく待っていると、広間の外から複数の足音が近づいてきた。


 俺はそちらを見る。


 先に何人かの騎士が入ってきた。


 その中に囲まれるように、一人の男がいる。


 ふむ。


 青年と呼ぶには少し年だな。


 かといって中年と呼んだら本人が怒りそうな年齢のおっさんだ。


 顔つきだけ見れば、街道で会った騎士たちほど険しくもない。


 俺はなんとなく男を眺める。


 感知魔法は使っていない。


 だから不正確だ。


 それでも、正直そこまで強い魔力は感じなかった。


 貴族というより、騎士に近いくらいなんじゃないかな。


 もちろん、ちゃんと調べたわけじゃないから分からんけど。


 男も俺を見ていた。


 何も言わず、じっとこちらを見ている。


 俺も見返す。


 ……なんだ?


 何か待ってるのか?


 数秒そうしてから、ようやく気づいた。


 ……ああ、そうか。


 挨拶か。


 礼儀を守れと言われたばかりだしな。


「はじめまして」


 俺は男へ向き直る。


「俺はギルだ。本名は名乗れんから、そう呼べ」


 うん。


 ちょっと雑だけど、まあいいだろう。


 こっちは帝国貴族だし。


 そもそも本名を名乗るつもりは最初からない。


 男はまだ黙って俺を見ていた。


 表情から何を考えているかまでは分からない。


 やがて男が口を開く。


「ようこそ、とは言えんが」


 そこで一度言葉を切った。


「よく来たな。私がルディア家に連なるゲルディア・ルディアだ」


「ふむ」


 ルディア家に連なる、ゲルディア・ルディア。


 こいつか。


 分家の当主だな。


 ようやく本人まで辿り着いた。


 なら、聞いておくか。


「ふむ、聞きたい事がある」


「なんだ?」


 ゲルディアが俺を見る。


 俺もその顔を見ながら、そのまま聞いた。


「ルディア本家の当主を殺したか?」

次の更新は明日、5時となります。

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