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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第二百八話 あの城で亡くなりました


 首領。


 男の口から出たその言葉を、頭の中で転がしてみる。


 あの変な集団に、そう呼べるようなやつがいるらしい。


 少なくとも、分家の当主はそいつについてシルフィアたちがどこまで調べているのかを気にしていた。


 だが、それだけでは何とも言えない。


「ふーむ」


 俺は隣にいるシルフィアへ顔を向けた。


「シルフィア、お前はどうだ?」


「何がです?」


「どういうふうに調べろって命じられてた?」


 シルフィアは少し考えるように目を伏せた。


 だが、答えそのものを思い出すのに時間はかからなかったらしい。


「協力も妨害もせずに、ただ調べるだけで良い、と命じられました」


「それだけか?」


「はい」


 ずいぶん違うな。


 こいつらは、あの変な集団そのものより、それを調べているシルフィアたちを調べろ。


 シルフィアたちは、あの集団へ協力も妨害もせず、ただ様子を調べろ。


 同じものを調べているようで、見ている方向が違う。


「シルフィア」


「はい」


「お前、その首領とかいうやつの存在は知ってたか?」


「ぼんやりとは」


 シルフィアが眉を寄せる。


「どこかに誰かがいるな、程度には。明確には分かりませんでした」


「その程度か」


「はい」


 なら、シルフィアたちが首領とやらを突き止めていたわけでもない。


 それなのに、分家はそこを特に気にしていた。


 ふーむ。


 何かありそうではある。


 だが、今のところは何かありそう、までだ。


 俺は男たちを眺めた。


 怯えたように固まっている。


 別に取って食うわけでもないんだから、もう少し力を抜けばいいのに。


「あっ、そういえば」


 ふと気になった。


「お前ら、シルフィアといつ頃合流したんだ?」


 男たちの一人が口を開きかける。


 その前に、横からシルフィアの声がした。


「ご当主様が亡くなられてからです」


「ん?」


 俺はシルフィアを見る。


 シルフィアは男たちの方を見たままだった。


「彼らから、ご当主様の死と……分家の方が任務を続けるようにと伝えられましたから」


 声が少し低い。


 そうか。


 最初から一緒だったわけではないのか。


 本家の当主が生きている間、シルフィアたちは当主から直接命じられて調査していた。


 そして当主が死んだ後、こいつらがやって来た。


 当主が死んだことを伝えた。


 ついでに、分家から任務を続けるよう言われた、と。


「ふむ」


 俺は腕を組む。


「それじゃ、シルフィアはこいつらと合流してから誰に報告してたんだ?」


「え?」


「分家か?」


 そう聞いた瞬間、シルフィアの顔が険しくなった。


「そんなわけないじゃないですか!」


「お、おう」


「本家にそれまで通り報告していました!」


 随分強く言うな。


「一応、彼らにもある程度の内容は伝えていましたが」


 最後だけ少し声が落ちた。


「本家に、か」


「はい」


「どうやってだ?」


 ここから本家まで毎回戻っていたようには見えない。


 シルフィアはすぐに答えた。


「一緒にご当主様から命じられた者に、報告書として渡していました」


「そいつが届けてたのか?」


「はい」


 なるほど。


 シルフィアが調べたことを報告書へまとめる。


 それを、同じように亡くなった当主から直接命じられていたやつへ渡す。


 そいつが本家へ運ぶ。


「今までちゃんと戻ってきてるか?」


「はい。戻ってきていますよ」


 シルフィアは頷いた。


 少なくとも、これまで報告書を持っていったまま消えたわけではないらしい。


 なら、途中でこいつらに報告書を奪われていた、なんて分かりやすい話でもなさそうだ。


 もっとも、本当に何もなかったかまでは知らんけど。


 俺は壁際の男たちを見る。


 シルフィアはこいつらにも、ある程度の内容は話していた。


 だが、報告書そのものは別のやつへ渡していた。


「つまり、お前らはシルフィアの報告書の細かい内容までは知らなかったんだな」


 男たちは互いに顔を見合わせた。


 否定する者はいない。


 まぁ、今の話を聞く限りではそんなところだろう。


 俺はもう一度シルフィアを見る。


「ああ、ついでに聞くが、その報告書を運んでるやつは今どこにいる?」


「今ですか?」


「最後に会ったのは?」


 シルフィアは少し考えてから答えた。


「おそらくですが、一つ前の報告書を届けて、戻る途中か……もう戻ったぐらいだと思います」


「一つ前?」


「はい」


「どんな報告書だ?」


 何気なく聞いた。


 すると、なぜかシルフィアが少し顔を歪めた。


「あなたたちの報告書です!」


「俺たち?」


「あなたとセバスチャンさんです!」


 俺とセバスチャン?


「なんでだ?」


「変に入ってきて、変なことばかりするからです!」


 シルフィアが声を上げる。


「報告するに決まっているでしょう!」


「そうかぁ?」


 別に変なことなんかしてないと思うんだが。


 俺はセバスチャンを見る。


「なぁ?」


 同意を求めると、セバスチャンも顎に手をやりながら頷いた。


「大したことはしとらんですなぁ」


「してます!」


 シルフィアがすぐに食いついた。


「すごく変でした!」


 そうかなぁ。


 俺とセバスチャンが揃っておかしいなら、むしろシルフィアが真面目すぎるだけなんじゃないか。


 たぶん。


 まぁ、それはいい。


「ちなみに俺の名は?」


「え?」


「報告したか?」


 シルフィアが少し目を瞬かせる。


 それから首を振った。


「いえ。名乗られる前でしたので」


「そうか」


 なら。


「よし、それなら問題なしだな」


「何が問題なしなんですか!」


 すぐに聞き返された。


「ん?」


 そんなに気になることか?


「その分家と城を吹き飛ばすのに」


「どうしてそうなるんですか!」


 シルフィアの声が部屋に響いた。


「なんでって」


 俺は首を傾げる。


「たぶん当主を殺したから」


 シルフィアの動きが止まった。


「ついでに、あの変な集団にもなんか関係ありそうだから」


「ど、どうして……」


 さっきまでの勢いが急に消えた。


「どうして、そうなるんですか?」


 震える声だった。


「ん?」


 どうしてと言われても。


「半分以上はカン」


「カン……?」


 俺はそれ以上シルフィアへ答えず、壁際の男たちを見る。


 別に何もないところから思いついたわけじゃない。


 こいつらが分家から送り込まれたのは、本家の当主が死んだ後。


 その分家は、シルフィアたちがあの変な集団をどこまで調べたかを探らせていた。


 特に首領について。


 その後は、シルフィアたちを始末しろと命じた。


 理由も教えずに。


 十分怪しい。


 だが、怪しいだけなら怪しいだけだ。


 なら、一つ確かめればいい。


「おい」


 俺が声をかけると、男たちの肩が揃って跳ねた。


「ルディア本家の当主はどこで死んだ?」


 男たちが黙る。


「本家か?」


 誰も答えない。


 俺は少し身を乗り出した。


「違うんじゃないか?」


 一人の顔が僅かに動いた。


 やっぱり何か知ってるな。


「知ってるなら真剣に答えろ」


 俺は笑うのをやめた。


「真剣にな」


 部屋の空気が静かになった。


 さっきまで途切れ途切れに話していた男たちも、今度は互いの顔を見ようとしない。


 やがて一人が、乾いた唇を舐めた。


「は、はい……」


「どこだ?」


「違います」


「何が?」


「本家では……ありません」


 シルフィアが息を呑む音がした。


 俺はそのまま男を見る。


「ならどこだ?」


 男は一度俯いた。


 それから、震える声で答えた。


「あの城で……お亡くなりになりました」


 あの城。


 俺たちがこれから行こうとしている、分家の城。


 横で椅子が大きく鳴った。


 振り向くより早く、シルフィアが男たちへ詰め寄っていた。


「な……」


 さっきまでとはまるで違う声だった。


「なぜ、それを知らせなかった!」

本日の更新は、5時、12時、17時、20時となります。

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― 新着の感想 ―
シルフィアの本家での地位が全くわからないので何とも言えないが、 まず本家の当主が亡くなられたのなら、本家の次期当主=上司が誰になるか 誰に報告するのかは最低限確認するよね。 そして分家の手下たちになん…
グループ会社の社員と、本社の警備部門くらいには関係が断絶してるからかな
読んでてだんだん面倒になってきた さっさと吹き飛ばそう それで解決するだろ
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