↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/307

第二百三話 理性的な常識人


 意識を外へ戻してみると、いつの間にか少し先でセバスチャンとシルフィアが並んで馬を走らせていた。


 さっきまでシルフィアは俺の後ろにいたはずだが、考え事をしている間に前へ出たらしい。


 木々の間を縫って進んでいるから、完全に横一列というわけではない。それでも進路が広くなった場所では二頭の馬が並び、少し狭くなればどちらかが前へ出る。


 何か話している。


 風と蹄の音に混じって、シルフィアの声が聞こえてきた。


「普段はお静かな方なんですね」


 俺のことか?


 どうやらそうらしい。


 セバスチャンが前を向いたまま答えた。


「静かな時はたいてい変な事か、とんでもない事を考えとりますから要注意ですぜ」


 おい。


 失礼だぞ。


 ……とは思うが、今まで考えていたことを思い返すと、少し否定しにくい。


 森を見ていただけなのに、いつの間にか前世の人口増加から迷宮の薪の木へ行って、そこから作物に魔法を使った場合の人口やら生産力やらを考えていた。


 普通に馬で走っている時に考えることかと言われると、俺にもよく分からん。


 だから声には出さなかった。


 何も聞こえていないふりをして、そのまま二人の後ろを走る。


 やがて木々の間から差し込む光が少しずつ弱くなっていった。


 昼の間は葉の隙間から落ちていた光が細くなり、森の奥に沈む影が濃くなっていく。風にも昼間とは違う冷たさが混じり始めた。


 日が暮れるな。


 無理をすれば、このまま夜も走り続けることは出来る。


 夜の街道を走ったことだってあるし、肉体強化魔法を使えば馬もかなり保つ。


 だが、今回はそこまで急いでいない。


 追いつけるなら追いつけばいい。


 追いつけなくても、それで全部終わりという話でもない。


 俺たちは適当な場所で馬を止め、そこで野営することにした。


 周囲には木があるが、馬を休ませる程度の空間はある。地面も極端に傾いてはいない。


 馬から下りると、長く鞍に座っていたせいで脚に少しだけ重さが残っていた。


 身体を軽く伸ばしている間に、セバスチャンはさっさと動き始める。


 こういう時は本当に手際がいい。


 火を起こし、その上で塩漬け肉を炙り始めた。


 火に炙られた肉から脂が落ち、小さく音を立てる。そのたびに火が揺れ、周囲へ塩気の混じった肉の匂いが広がった。


 昼間ずっと馬で走っていたせいか、それだけで腹が減ってくる。


 シルフィアは少し離れたところでパンを切っていた。


 宿場で買ったものだろう。


 刃を入れるたび、乾いた表面から細かな欠片が落ちていく。


 俺は火の近くへ腰を下ろし、炙られている肉を眺めた。


 早く食えないかな。


 そんなことを考えていると、パンを切っていたシルフィアが顔を上げた。


「追いつけるでしょうか?」


 俺は少しだけ考えた。


「さぁな」


 分からんものは分からん。


 俺たちは街道を無視してかなり真っ直ぐ進んでいるが、向こうがどのくらいの速度で動いているかまでは知らない。


 シルフィアの手が止まった。


「それでは意味ないのでは?」


 意味がない?


 一瞬何を言っているのか分からなかったが、すぐに追手のことだと分かった。


 どうやらシルフィアは、あいつらへ追いつくこと自体をかなり重要だと思っているらしい。


 俺は火の向こうにいるシルフィアへ視線を向けた。


「どいつに命じられて合流したのかは分かってるんだろ、お前」


「はい、それはもちろん分かっていますが」


 なら別に困らない。


 あいつらは勝手にどこからか湧いてきたわけじゃない。


 シルフィアたちへ後から合流した連中で、誰に命じられて来たのかもシルフィアは知っている。


「なら問題ないな。追いつければ両方に聞く。追いつけなければそいつに聞く。たいして変わらん」


 追いつければ、シルフィアを襲った連中から直接話を聞ける。


 そのうえで、そいつらを送り込んだ奴にも聞けばいい。


 追いつけなかったら、最初から送り込んだ奴のところへ行けばいいだけだ。


 話を聞く相手が一つ減る。


 俺からすれば、そのくらいの違いしかない。


 シルフィアはすぐには答えなかった。


 切りかけのパンへ視線を落とし、それからもう一度こちらを見る。


「……あの、出来るだけ穏便にお願いしますね」


 何を当たり前のことを言っているんだ。


「当たり前だろうが。俺は理性的な常識人だぞ」


 ちゃんと話を聞きに行くのだ。


 いきなり襲いかかるつもりなんてない。


 普通に聞いて、普通に答えてくれれば、それで終わる。


 どこにも問題はない。


 ところが、シルフィアではなくセバスチャンが口を挟んできた。


 塩漬け肉を炙りながら、妙に落ち着いた声で言う。


「まぁ、相手が素直に答えれば大丈夫でしょう。たぶんですが」


「おい、たぶんってなんだよ?」


 俺が言い返すと、セバスチャンは肉から目を離さなかった。


 その態度も少し腹が立つ。


 何なんだ。


 俺がそんなに危ない奴みたいじゃないか。


 すると、今度はシルフィアが小さく首を傾げた。


 俺とセバスチャンを見比べるようにして、ぽつりと呟く。


「……理性? ……常識?」


 なんでだ?

次回更新は、明日5時となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
その生き様はまさに、傾奇者!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。