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魔力が強いやつがモテる世界に生まれ変わったのでモテる為にがんばります  作者: 伊右衛門


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第百九十八話 ただの暇つぶし


 結局、俺とセバスチャンはそのまま宿の食堂に居座っていた。


 特に何かをするでもない。さっきまで色々と話していたせいか、今すぐ動こうという気にもならず、椅子に身体を預けてダラダラと時間を潰している。


 セバスチャンは当然のように酒を飲んでいた。


 朝から飲んで、まだ飲むのか。


 昨日もシルフィアよりずっと飲んでいたはずなのに、こいつは本当に平気な顔をしている。杯を傾ける手にも迷いがないし、酔っているようにも見えない。


 俺も少しだけ付き合いながら、腹が減れば適当に何かを食う。


 まあ、たまにはいいだろう。


 ここ最近は歩き回ったり、人を追いかけたり、妙な連中に関わったりしていた。何もせずに宿の食堂で時間を潰すくらい、罰は当たらん。


「なぁ、セバス、どんぐらいいれば平民兵は騎士を倒せるんだ?」


「は?」


 何がきっかけだったかは、もう覚えていない。


 たぶん本当にどうでもいい話から始まったんだと思う。


 気づけば俺とセバスチャンは、そんな話をしながらかなりの時間を潰していた。


 そして昼頃になった時だった。


 二階へ続く階段から足音が聞こえ、何となくそちらへ目を向ける。


 シルフィアが降りてきた。


 昨日よりはまともに歩いている。朝みたいに頭を押さえている様子もない。ただ、目が赤かったり、瞼が少し腫れているように見えたりする。


 まあ、そんなことは関係ない。


「おい、シルフィア! ちょっとこっち来い! 急げ!」


「は、はい」


 声をかけると、シルフィアは一瞬だけ足を止めたものの、すぐにこちらへ歩いてきた。


 俺たちの卓まで来ると、なぜかそのまま背筋を伸ばして立つ。


「な、なんでしょうか?」


「まあ、座れ」


「はい」


 促すと、シルフィアは空いている椅子へ腰を下ろした。


 ちょうどいい。


 セバスチャンだけでは話が進まん。


「貴族が率いる平民兵千人と、平民が率いる騎士百名。戦うとどちらが勝つと思う?」


「はい?」


 間抜けな返事だった。


 シルフィアは俺を見たまま、しばらく瞬きをしている。


「だから、貴族が率いる平民兵と、平民が率いる騎士だ。俺は指揮と作戦、戦場や武具、条件を整えれば平民兵が勝つこともあり得ると思うんだが」


「無理ですな」


 横からセバスチャンが即座に口を挟んだ。


「そもそも条件がどんどん増えとるじゃないですか」


「条件くらい決めないと比べられんだろ」


「最初はそんな話じゃなかったでしょうが」


「そうだったか?」


 覚えていない。


 そもそも、なんでこんな話になったんだったか。


 俺とセバスチャンは先ほどからこの問題についてずっと話しているが、最初のきっかけは完全に頭から消えていた。


 シルフィアはまだ少しキョトンとしていたが、俺とセバスチャンを交互に見たあと、考えるように視線を落とした。


「えっと……それなら、やはり騎士が勝つんじゃないですか? 数も十倍程度ですし」


「ほら、言ったでしょうが。十倍程度じゃ無理ですぜ」


 セバスチャンが得意げに言いながら酒を飲む。


 こいつ。


「いや、戦いとは戦うだけではない。陣地を作り、飯を作り、クソを処理する。補給路も警戒もしなければならんし、交代も必要だ。そう考えると平民兵にも勝ち目はあるだろ」


 千人いる。


 百人しかいない。


 単純に殴り合うだけならともかく、戦いというのは殴り合って終わりじゃない。戦う場所へ行くまでにも人は動くし、戦っていない時にも飯は食う。


 俺がそう言うと、シルフィアは少し考えてから首を傾げた。


「でも、それなら千人いる平民兵側の方が負担が大きくなりませんか? 騎士なら少数でも色々出来ますし」


「う、いやでもだなぁ」


「諦めなせえ、若様の負けですぜ」


「まだ負けてない」


「もう負けとりますぜ」


 セバスチャンが笑う。


 俺は腕を組んで椅子の背に寄りかかった。


「いや、だが平民兵にはもっと使い道があると思うんだがなぁ」


「今も色々使ってますぜ。それこそ陣地作りやその維持には、かなり戦力になっとるでしょうが」


「それはそうなんだが」


 もっと何かないだろうか。


 せっかく千人もいるんだぞ。


 人数というのは、それだけで使いようがあると思うんだが。


 俺とセバスチャンがそんなことをダラダラと話していると、途中から黙って聞いていたシルフィアがおずおずと口を開いた。


「あの……これってなんの話なんですか?」


「……まあ、暇つぶしだな」


「そうですな。ただの暇つぶしですな」


「はあ……」


 シルフィアが曖昧に頷いた。


 なんだその顔は。


 暇なんだから仕方ないだろう。


 別に何かの作戦を立てていたわけでもないし、平民兵千人と騎士百人を本当に戦わせる予定があるわけでもない。ただ、暇だったからなんとなく話していただけだ。


 シルフィアまで加わったおかげで少し長引いたが、そろそろいいだろう。


 窓から入る光も、朝とはずいぶん違っている。


「まあ、いい。昼飯にするぞ」


「へい」


「はい」


 話を切り上げ、そのまま俺たちは昼飯を食った。


 朝は二日酔いでろくに食えていなかったシルフィアも、今度はがっつり食っている。


 もう大丈夫そうだな。


 俺も腹いっぱい食い、セバスチャンも酒だけではなくきちんと飯を腹へ入れた。


 食べ終わる頃には、さっきまでのどうでもいい話も完全に頭から抜けていた。

本日は5時、12時、20時の更新となります。

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ベトナム戦争方式をすれば力の弱い方が勝つ場合もあります。 時間をかける、ゲリラなど
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