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第40話 サッカーWC始まる!

「7、8、9、10、、、」

 6月13日の土曜日の午後、青木家の水槽の中を、マメコブシガニのマメコちゃんがサッカーボールのリフティングをしながら歩いている。

 ボールは、消臭剤の白い玉が縮んで小さくなったものだ。

 マメコちゃんはカニだけれど前に歩けるので、マンチェスター・シティの長谷川(ゆい)さんのように、リフティングしながら前に歩ける。

「マメコさん、すごいですね!」

 岩の影から顔を出してきたカニのタロウに返事をせず、首だけ回してリフティングを続ける。

「13、14、15、、、あ~、失敗しちゃった!」

 ボールの真下を蹴ることができず、タロウの方に飛んでいってしまった。

「ごめんなさい! ぼくが変な声をかけたからですね!」

 タロウがボールを拾い、持っていきながら謝った。

 肩で息をするマメコちゃん。

「仕方ないわ、いつも20回いかないのよ」

「それにしても、すごい。

 ぼくもYourTubeで長谷川唯さんの空中・ウォーク・リフティングを見たことありますけど、同じチームのプロでも、できませんよ?」

「そう?」

 笑顔で胸を張るマメ子ちゃん。


「やっぱり、今週のトップニュースは、ワールドカップ開催ですかね?」

 濾過器を通って循環水が落ちてくる管の下にいる梅干イソギンチャクの銀太くんが声をかけた。

 銀太くんは水槽新聞部の部員だ。

「うん、それもあるけど、最初に、マンチェスター・シティの優勝を言わないと。

 9月から始まった25-26シーズンの第2節から破竹の13連勝。

 終わってみれば、22試合中18勝1分で、負けは3つしかない。勝率82%!

 昨年まで6連覇していた王者チェルシーを押えて10年ぶりの優勝。

 そのチームで主力になっていたのが、MFの長谷川唯さん、FWの藤野あおばちゃん、GKの山下杏也加(あやか)さんよ。

 サッカーの本場、イングランドのトップリーグで優勝するチームの屋台骨を日本人選手が支えていた、このことに、あたしは感動するの!」

 目元をぬぐうマメ子ちゃん。

「その次の5月31日にブライトンと戦った女子FAカップ決勝でもマンチェスター・シティが勝って、2冠を達成したの。

 この試合でも、その3人が出場して、藤野あおばちゃんが得点するとみんなに頭をなでられてた。

 157センチの唯さん、162センチのあおばちゃん。

 2人とも外国人選手に囲まれると子供みたいな身長だけど、ちゃんと活躍してる。

 あおばちゃんなんかまだ大学生だし、去年の女子FAカップ決勝のチェルシー戦のゴールは、まだ21歳。大会決勝の最年少ゴール記録だったのよ。

 あたしも体は小さいけど、技術とスピードで負けないように、練習しなきゃ!」

 両手両足を伸び縮みさせて、身体能力をアピールした。


「世界的にはサッカーがメジャーなスポーツだけど、開催国のアメリカにとっては、とてもマイナーなスポーツで、やっぱりアメフト、野球、バスケットボールなんだよな」

 そうつぶやきながら、ダボハゼのヨッシーがガラス壁を降りてくる。

「でも、第1回目のサッカー女子ワールドカップの優勝はアメリカだし、今だってランキング1位はアメリカよね?」

 銀太くんの隣りにいる銀子ちゃんが参加した。

 マメコちゃんが首を振る。

「半分は合ってるけど、半分はバツ。

 最新の世界ランキングは、スペインが1位で、アメリカは2位。

 その中でも日本の5位は立派。何といっても2011年の優勝シーンがすごい!

 YourTubeで何度見ても鳥肌が立っちゃう。

 1点ビハインドで迎えた延長後半の12分、宮間さんが蹴った左からのコーナーキックを澤さんが右足のアウトサイドでゴールに流し込んだのは、本当に神業そのものよ!

 その後のPK戦。海堀(かいほり)さんが2本止めて優勝。

 今回のワールドガップで、男子は優勝を目指すって言ってるけど、女子は15年前に実際に優勝してるんですからね!」

 男子のヨッシーとタロウが首を縮めた。


「わしにとっては、カズが59歳でオールスターゲームに出たことの方が、重要じゃの?」

 岩陰から、のっそりとカニの長老が現れた。

「総理も女性。『天皇陛下も女性でどうじゃ?』という時代。

 女子が元気なことは、良いことじゃ。

 がの、高齢者にとっては、やはり生涯現役が理想なんじゃ」

「たまには、いいこと言うじゃねぇの?」

 ヨッシーが顔を上げた。

「おめさん方は、サムエル・ウルマンの『青春』という詩を知らんかの?」

 首を振る一同。

「青春とは人生のある時期を言うのではなく、心のあり方を言うのじゃ。

 人は歳を重ねただけで老いるものではない。理想を失うときに老いる。

 子供のような探求心、人生への喜びと興味。

 燃える心と勇気、そうしたものを持ち続ければ、人はいつまでも老いないのじゃあ~。

 カズさんは、それを地でいってると、思わんか?」

 皆がうなずく。


「ところで、長老はいくつになったんだっけ?」

 ヨッシーが上目遣いに見た。

「年頃の老人に、歳なんか聞くものではない!」

 鼻で笑うヨッシー。

「じゃあ、今年のお誕生会は、ないことにしよう」

「え~、そりゃ困るぞなぁ!」

 笑いころげる一同。(おわり)

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