表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/43

第37話 役場にロボットが採用?

「役場にロボットが採用されたんだ」

 5月18日午後7時、「いただきます」のかけ声の後、最初に口を開いたのは世帯主のタカシだったけれど、なんとなく声が低い。

 妻のコズエさんと娘のハコちゃんの、3人のささやかな夕食の場面。

 今夜は蕎麦ざるに載ったラーメンのつけ麺と天ぷらで、見た目が涼しい。


「ええっ?」

 口の中のラーメンを飲み込んだ後、ハコちゃんが叫んだ。

「役場でロボットが働いてるのぉ?」

 うなずく世帯主。

「人件費を削減しなくちゃいけないから、退職した正規職員の代わりに、非正規職員を採用した。

 それに加えて、役場庁舎の案内役として人型ロボットを採用したんだ」

 首をひねる妻。

「ロボットに案内できるの?」

 天ぷらの海老の尻尾をかじる夫。

「それが、得意なんだ」

 箸を置いて説明を始めるタカシ。

「だってAI搭載だから、役場の全ての仕事の中身と担当部署を理解している。

 受付に来た住民があいまいな問い合わせをしても、2、3回、確認の質問を繰り返すと、本人も知らないような業務内容に結び付けて、その担当係に案内できるんだ」

 目を見開く妻。

「人間の知識には限りがあって、勤務した部署のことは詳しいけど、24もある係の全ての業務内容を詳細に知っている職員なんか、いるわけない」

 うなずく2人の家族。

 アオリイカの天ぷらをがぶりとかじるタカシ。

「体の内部構造は全く金属的なんだけど、外側はシリコンとか人口皮膚とかに包まれていて、温かみがある。

 握手すると、実際に温かいんだ。

 顔なんかも、若い女性の顔に作られていて、びっくりするほど表情が豊か。

 笑いもするし、困った顔もする。

 皮膚は、人間の皮膚細胞を培養した皮膚にする研究がすすんでいるらしい」

「えっ」と、口を開けるハコちゃん。

「走ろうと思えばマラソン選手より速く走れるんだけど、そんなスピードで役場の中を走られたら危ないから、歩く速度は時速2キロでリミッターを掛けている。

 子供や高齢者も来るからね」

 うなずくコズエさん。

「階段は?」

 質問のあと、ミョウガの天ぷらを1つまるまる口に入れた。

「それが、全く心配ない。

 テストしたら、後ろ向きに上ることもできる」

 喉に詰まりそうになり、あわててお茶を飲む妻。

「じゃあ、人間はいらなくなっちゃうじゃん?」

 ハコちゃんがいんげん豆をかじった。

「そこなんだよね。

 役場の中で、恐らく、すぐ人間と置き換わりそうな仕事は、例えば、トイレやフロアの清掃、道路のパトロール、守衛業務、観光案内。

 おおっ、クレーマー対応が得意かも?

 それと、意外に、消防の救急隊に向いてるかもしれない。

 人間より早く症状の判定やトリアージ〔治療や搬送の優先順位決め〕ができる可能性があるよね。何しろ知識とデータが豊富だからな。

 それに」

 自分で言いながら、思いついたアイデアに興奮するタカシ。

「人間が入っていけないようなビル火災の現場や、危険な場所にも、ロボットなら突入できるぞ!」

 半分ラーメンが載っているざるを前に腕を組むコズエさん。

「学校の先生の代わりにロボットが教える時代がくるのかしら?」

「やだ~、先生は人間の方がいい!」

 むくれるハコちゃん。

「だって、例えば、音楽の時間には誰よりも上手にピアノ伴奏ができるし、歌だって上手(うま)い。

 体育の授業だったら、先生もできないようなアクロバティックな器械体操も」

 自分で言いながら、吹き出すコズエさん。

「機械が機械体操するんだから、上手に決まってるわよね!」

 タカシもつられて笑ったけれど、途中でしょぼんとした顔になる。

「オリンピックの、体操の床のシライ3〔後方伸身2回宙返り3回ひねり、I難度〕とか、スケートの6回転ジャンプだって、ロボットなら、きっとできちゃう。

 100メートルだって、そのうち余裕で9秒切っちゃうよな、、、」


 ラーメンも天ぷらもざるに残したまま、そろって腕を組んでいる3人。(終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ