第30話 怪しいチナ国
「チナ国って本当に存在する国なのかな?」
梅干イソギンチャクの銀太くんが、イソスジエビのスジコちゃんの小屋の中でつぶやいた。
「国連が認めてるんだから、まあ信用するしかないわよね?」
そう言いながら、昆布茶を出した。
「でも、国連も最近はなんだか頼りないよね。
常任理事国のラシアがシズムライナに武力侵攻してもう4年。
ついこの間は、もうひとつの常任理事国のアメリゴがバネズエラのムドゥロ大統領夫妻を拉致しちゃったじゃん。
国際平和を守る責任のある国が、国際法を踏みにじって戦争と混乱を生んでいる。
子供が考えたってオカシイことを、大国の大統領が平気でやってる」
そう言って、湯飲みから一口すする。
「例えばだよ。どこかの国のダミーだったりして」
スジコちゃんも一口すする。
「いろんな可能性があるけど、今のあたしたちには確かめようもないわよね。
どうしたらいいのかしら?」
「そうだ、ぽんちゃんに頼もう」
口の中で噛んでいた昆布を飲み込む。
ぽんちゃんは青木家の飼い犬のミニチュアダックスフントだ。
「ロンバの奴が昼間何をしているのか、ぽんちゃんに調べてもらおう」
首を左に曲げるスジコちゃん。
「どうやって?
あの人はオムツをしていて、階段もあがれないのよ?
名前は可愛いけど高齢犬、すっかりおじいさんなのよ?」
頭の上の触手で腕組みする銀太くん。
「いや。ぽんちゃんは鼻がいいし、耳がいい。
ケージの中にいても、ロンバの奴が2階や3階でどう動いているのか、きっと聞こえるはずだよ。
あいつの動きをトレースして、何を企んでいるのか、みんなで確かめよう!」
「ぼんちゃーん!」
3月21日の土曜日。青木家がみんな出かけていて、ちょうどロンバが3階を掃除している最中に、玄関の水槽の中からピアノ部屋のケージで寝ているぽんちゃんに銀太くんが呼びかけた。
ぽんちゃんの目が開き、両耳が向いた。
「ありがとう。大きな声で話せないから、よく聞いてね」
うなずく老犬。
「今3階にいるロンバの動いている音、聞こえる」
「聞こえるよ」
犬語で低く返事をした。
「今、どこにいる?」
3階には結婚して家を出て行ったミドリさんの部屋が東側にあり、タカシの部屋が西側あるけれど、そこはちょうど玄関の真上になる。
「タカシの部屋の中を動いてる」
全ての部屋は、ロンバが入って掃除できるように、戸が開けたままになっていた。(終わり)




