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第17話 問題のある人間たち

「ヒトはなぜ結婚するのか?」

 カニの長老が静かにつぶやいた。

「ヒトだけじゃありません。あたしたち磯の生き物だって、夫婦になるじゃありませんか。

 人間みたいにたくさんのお金を使って、派手に、盛大な披露宴をやったりしませんけど、2人で小さな住処(すみか)をもち、子供をたくさん産んで育てます」

 イソスジエビのスジコちゃんが言う。

「そうですね。生物の進化の結果として男と女ができて、離れていた男と女が一緒になることで、より強い生命力をもった子供たちを産み、新しい世代を残すことができる。

 自然というのは、まるで神様が意図したかのように、よく考えて作られています」

 カニのタロウのことばに、一同がうなずく。

「人間以外の生き物は、何千年も前の生き方でそのまま生きているのに、どうして人間は今までと違った生き方をしようとするのでしょうか?」

 タロウが半歩前に出た。

「人間そのものが、千年前と、いえ百年前でもいいです。変わったというのでしょうか?」

 長老が応える。

「そんなことは、ありゃせん。

 百年前に生きていた人間と今の人間とで、DNAに違いがあったりはせん」

「それなら、どうして、今の人間は大金を使って結婚式をしたりするんですか?」

 くいさがるタロウ。

 ダボハゼのヨッシーが口をはさんだ。

「夫婦になるかならないかと、金のかかる結婚式をするかしないかは、別問題だろ?」

 うなずく一同。

「べつに結婚式をしなくたって、オレたちのように夫婦になるやつだっているさ」

 こっくりするスジコちゃん。

「ぼくは、漠然とした不安を持っています。ぼくたちは、恐らくこれからもそう変わらない。

 でも、人間はとても急いでいて、いつも何かに追われていて、疲れていて、お金を求めていて、そのくせ他人から愛されることも求めている。

 でも、それらが全て満たされることはありません。

 いろいろなことを、たくさん求めすぎていませんか?」

 タロウの疑問に長老が追加した。

「そういえば、今朝のラジオで言っておったが、全国47都道府県民で一番歩くのが速いのが、ここの神奈川県民だそうじゃ。2位が東京都民。千葉県民や埼玉県民も速い。都会に住む人間は、歩くのも速くなるんじゃな。

 わしは昔、ニューヨーカーの話す英語を聞いたことがあるが、機関銃のように速かったぞ」

「あたしは、都会に住もうとは思わないわ。都会にはきれいな海がないし、あたしは歩くのも速くないし」

 スジコちゃんが自虐的に笑った。


「今日は、改めて、当家のみどりさんの結婚式です。

 タカシの顔を見たら、おめでとうと言いましょう」

 新聞部の銀太くんが言った。

「そうですね。みどりさんだって、いろいろと考えて、ツトムくんとも話し合って決めたことでしょうから、とりあえずは『おめでとう』ね」と、スジコちゃん。

 それでもタロウは納得しない。

「でも、人間は、これからどうなるんでしょう?

 なぜ急がないといけないのか、なぜ戦争が終わらないのか。根っこは同じじゃないのか?

 ぼくは、YourTubeでやってる、ロシア軍のT-72戦車の砲塔がびっくり箱みたいに吹き飛ぶシーンなんか、見たくありませんよ。あの戦車の中には人間がいるんですよ。いくらロシア軍が悪いといったって、ひどすぎませんか?」

 興奮しているタロウの額に、長老が手を当てた。

「熱がある。タカシのインフルエンザが移ったかの?」

 一同の目が点。

「ここらで、お開きだな」

 ため息をつくヨッシー。


「でも、人間たちがたくさんの問題を抱えていることは事実のようですね?」

 新聞部の銀太くんが銀子ちゃんに言った。

「あたしたち新聞部には、それをひとつひとつ取材して報道する責任がありますね」

 うなずき合う2人。(終わり)

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