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【悲報】清楚系で売っていた底辺配信者、うっかり配信を切り忘れたままSS級モンスターを拳で殴り飛ばしてしまう《書籍化&コミカライズ》  作者: アトハ
6章

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レイナ、再びアメリカへ

 アメリカに到着したのは、その日の夕方だった。

 長時間の移動を終えた私は、空港を出た瞬間にぐっと背伸びをする。


「ん~~っ……!」

「おつかれさん。時差で頭ぼんやりしてへん?」

「大丈夫です! 異世界グルメのことを考えてたら、むしろ目が冴えてきました!」

「元気の出どころが怖いねん」


 千佳が呆れたように、そう言った。


 空港から移動した先には、以前にも訪れたアメリカダンジョンの周辺施設が広がっていた。

 前に来たときと比べても、空気がずいぶん違う。ゲートが発見され、ダンジョンが異世界への玄関口となった今、この一帯はほとんど前線基地のような扱いになっているらしかった。


「すごい人ッス……」

「いま世界で一番忙しいダンジョンかもしれんな」


 軍曹が感慨深げに呟く。


「異世界への玄関口、か。そう言われると実感が湧いてくるな」


 豪腕さんも、周囲を見回しながら小さく頷いた。


 その後、私たちは事前に案内のあった施設の中に進んでいく。

 見覚えのある顔がこちらに手を振った。


「ん、来た」

「マインちゃん! 久しぶりですね」

「うん。レイナちゃん、ところで新作のサインは──」

「人のサインを呪物扱いする人に書きません!」

「ぬ……、残念」


 開口一番、そんなことを聞いてくるマインちゃん。

 それから集まったメンバーを、しげしげと眺めて口にする。


「それにしても本当にダンジョンイーターズの精鋭が集まってる。とても、心強い」

「むしろ、こんな大人数で押しかけてごめんね」

「とんでもない。戦える人は、一人でも多い方がいい」


 マインちゃんは、そう口にした。

 それから私たちは、マインちゃんに案内されて施設の奥に進んでいく。

 通された部屋には、大きな机とモニター、それに異世界側の地図らしきものが広げられていた。

 前線基地というだけあって、休憩室というより作戦室みたいな雰囲気だ。


「現地の状況、まず共有する」


 マインちゃんが机の上の資料を指で押さえながら言った。


「ゲート近辺は、こっちでだいぶ安全を確保した。でも、離れるとすぐ瘴気が濃くなる」

「やっぱり、その瘴気ってかなり厄介なんですか?」

「ん。厄介。じわじわ削られる。長く居ると、身体も魔法も鈍る」

「……でも、美味しいんですよね?」

「…………まあ」


 瘴気により強化されたという狂化イノシシの件が気になっていた。

 もちろんグルメとしてだけではなく、真面目に異世界のことを知る意味でも、瘴気の対策を確認しておくことは大切そうだ。


「現れるモンスターは?」


 一方、黙って聞いていた長田さんも鋭く問う。


「強さだけなら、下層から強くても深層の手前にいるやつぐらい。でも瘴気込みだと面倒」

「というと?」

「瘴気を吸い続けると、こちらはどんどん弱っていく。それなのに相手だけどんどん強化されていく」

「厄介な特性ですね……」


 ちなみに瘴気については、おもちくんも「よく知らない」とのことだった。

 ただ異世界の現地人にとっても、かなり厄介な代物らしい。


「ダンジョンに近い拠点には、瘴気が入ってこない。だから、そこを拠点にしてる」

「なるほど……」


 異世界の探索が始まって数カ月。

 付近の安全は確保できたし、近くの探索は緩やかにだが進んでいる。

 中でも近隣の村との接触に成功しているというのは大きな成果であり、だとしてもそれ以上は瘴気が厄介すぎて探索が進んでいないというのが現状のようだった。


「人も土地も。瘴気でずっと消耗してる」


 マインちゃんの表情は、深刻そうだった。


「異世界の探索。やっぱり大変なんですか?」

「ん。大変。でも、楽しい」


 それでもマインちゃんは、静かにそう微笑む。

 未知の地への探索──そこに楽しさを見いだせないなら、はなから探索者になんてなっていない。

 多かれ少なかれ、異世界にまで足を進める凄腕の探索者というのは変わり者が多いのだ。


「…………ところで、異世界グルメはどうですか?」

「ん、任せて。色々と見つけてる!」

「おお~!」


 私は、マインちゃんの言葉を聞いて目を輝かせる。


「レイナ、真面目な作戦会議の場なのにそれでええんか?」

「ちっちっち、千佳は分かってませんね。ダンジョンの探索において、どうやって現地で食の安全を確保するのかというのは極めて重要な確認事項なんですよ。だから決してこれは私利私欲にまみれた質問という訳ではなく、探索を成功させるために絶対に必要な質問で──」

「めちゃくちゃ準備しておいた回答やな!?」


 御名答。

 千佳に突っ込まれるのを想定して、飛行機の中でずっと考えておいた渾身の言い訳だ!

 軍曹と千佳が、「うちの子が申し訳ありません」みたいな顔でマインちゃんを見る。

 そんな視線を受けたマインちゃんは、


「はい、レイナちゃんの言うとおり! 異世界グルメは、異世界探索のライフラインですから!」


 強い口調で、そう言い切った!

 実際のところ異世界について分かっていることは少なく、言ってしまうなら習うより慣れろということなのだろう。実際、ある階層より先のダンジョンは、そういう側面が強かった。


「ん、今日はゆっくり休む。明日、アメリカダンジョンを渡ってゲートをくぐる」


 そう、マインちゃんが宣言した。

 そうして今日の作戦会議はお開きになった。

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