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【悲報】清楚系で売っていた底辺配信者、うっかり配信を切り忘れたままSS級モンスターを拳で殴り飛ばしてしまう《書籍化&コミカライズ》  作者: アトハ
6章

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レイナ、北海道で食材を探す(1)

 ──そうして、あっという間に一週間が経った。


「「はじまりました!」」


 場所は、北海道。

 待ち合わせしたのは、函館ダンジョンの入口前。


「今日も食卓から、癒やしをお届け──食材のみなさん、こんレイナ~!」

「作戦会議室からマイクを持ってこんにちは……、じゃなかった! 北海道の大自然からマイクを持ってこんにちは! 望月雪乃です! 今日はレイナちゃんと一緒に地元でコラボします!」


 ひんやりとした空気の中、私とゆきのん先輩は並んでカメラに手を振った。


"こんレイナ~!!"

"ゆきのん久しぶり~!"

"この組み合わせ待ってた!!"

"北海道キタァ!"

"挨拶ちょっとアレンジしてるww"


 今日は待ちに待ったゆきのん先輩とのコラボ配信の日だ。

 遠方ということもあって珍しく事前にお知らせをしたのだが、チャンネルの登録者数がぐんっと跳ね上がっていて正直驚いた。


(ゆきのん先輩の人気、あらためてすごいなあ)


 そんなことを感じながら、私は隣に立つゆきのん先輩に目をやる。


「わぁ──ホンモノのレイナちゃんだ……!」


 ニコニコと微笑みながら、ゆきのん先輩がしみじみと口にした。


(……ゆきのん先輩がなんか壊れてる!?)


"ゆきのんもう限界で草"

"プロの配信者なのに画面越しでも全部顔に出てる"

"もうこれ、ただのファンじゃんw"


 ゆきのん先輩は、ありがたいことに私なんかの大ファンだと公言してくれている。

 もっともそれは、私だって同じで──


「ゆきのん先輩! 今日のコラボ、楽しみにしてました。よろしくお願いします!」

「う、うん! ……レイナちゃんのアハハハ笑い、久々にカメラに収めないと!」

「それはもう忘れてください!」


 久々のオフコラボだけど、コメント欄ではよく絡んでいたし、不思議と久しぶりという感じもせず。


"挨拶代わりに黒歴史を掘り返していくw"

"ゆきのん先輩はガチファンだから、今でもあのショートは毎日見てるらしいぞ"

"もはや天敵じゃねーかw"


「……ゆ、ゆきのん先輩?」

「えへへ」


 てへ、と誤魔化すように笑うゆきのん先輩。


(定期的に私がモンスターを撲殺する黒歴史のショートが、ホットランキングに上がってくると思ったら……!)


 ぷくーっと膨れる私をなだめるように、


「そろそろダンジョン入ろうか?」

「はい! 今日は海鮮食べ放題ですね!」


"一瞬で機嫌が直ったw"

"ゆきのん、レイナちゃんの扱い手慣れてる"

"メインディッシュとご対面!"


 そうして私たちは、ダンジョンの中へと足を踏み入れた。


 函館ダンジョンは、新宿ダンジョンとはまるで別物だった。

 見るからに地下にありますという見た目をしていた新宿とは違い、このダンジョンは地下にもかかわらず雄大な自然を感じさせる。

 潜ってみれば、そこはただ広大な原野が広がる別世界。


(なんか……、深呼吸したくなる感じ)


 新宿ダンジョンの薄暗い岩肌とは違い、吹き抜けていく風も、足元の草の香りも、ダンジョンの中にいるとは思えないほどに新鮮だった。


「ここダンジョンの中ですよね!? 綺麗ですね!」

「でしょう! これが函館ダンジョンの売りだもの」


 私の言葉に、ゆきのん先輩も得意そうに応える。


"伊達に観光地やってないな"

"なんでダンジョンの中なのに太陽が見えるんだろうね?"

"剣も魔法もあるんだよ!"

"ここもファンタジー世界に繋がってるんかな?"


「…………で、ゆきのん先輩。これはどっちに進めばいいですか?」

「ふふ。この辺はまだ浅い場所だから、ゆっくり行きましょう! ガイドは任せて」


 先輩はそう言いながら、さっと先頭に立った。

 見慣れた大きなリュックを背負うその姿は、頼もしい探索者そのもので。


"おかしいな。レイナちゃんがいるのに、なんだかまともな探索者してるぞ!?"

"↑↑まるでレイナちゃんがいたらポンコツになるみたいな言い方はやめれw"

"まったくもって否定できないww"

"凛々しいゆきのん先輩も見れて最高!"


 ほどなくして、私たちは最初のモンスターに出くわした。

 草むらからぬっと姿を現したのは、甲羅の表面がテカテカと光る巨大なカニ型のモンスター。


(カニ……!)


 私の目が、一瞬で輝く。

 新宿ダンジョンで食べたモンスターと比べれば小ぶりだけど、カニの美味しさはサイズでは決まらないのだ。


「ゆきのん先輩、あれは?」

「アーマードキングクラブ。北海道ダンジョンの名物モンスターだね。あのクラブの部分が天敵で油断すると手先を引きちぎられたりするから、まずは距離を取って──」


 バシッ。


「えいっ! とりあえずハコベールに放り込んでおきます!」

「あっ……、鍋の出汁にすると美味しいです!」


"草"

"カニさん逃げてw"

"解説諦めたw"

"解説、正しいぞ?"

"まあ深層練り歩く捕食者の敵じゃないな"


 私たちは、そのまま函館ダンジョンを進んでいく。

 進むにつれて、出てくるモンスターの種類がどんどん変わっていった。 牡蠣の殻のようなモンスター、ウニの棘を無数にまとったモンスター、足が十本あるエビの化け物。

 どれも美味しそうな海鮮系のモンスターで、出てくるだけでワクワクしっぱなしだ。


「ダンジョンに来たら、やっぱりこれですよね! 片っ端から回収します!」


 ポイッ、ポイッ、ポイッ。

 私は片っ端からハコベールに詰め込んでいく。


"相変わらずレイナちゃん、食べ物のことしか考えてないw"

"魚介の豪華食材詰め込み放題!"

"ゆきのん、途中から解説がおすすめ調理法になっていって草"


 そうしてハコベールの中に、ほどよく色々な種類の食材が集まったころ。

 開けた場所に出た私たちは、腰を落ち着けて試食タイムへ突入するのだった。


「せっかくだし、まずはシンプルにお出汁で食べてみよう?」


 ゆきのん先輩が小さなコンロを取り出し、手際よくお湯を沸かしてくれる。

 私はゆきのん先輩が作った料理を、うまうまと食べる役だ。


(…………あれえ?)


"食卓チャンネル(仮)"

"ゆきのん先輩のお料理チャンネル!"

"いっぱい食べる君が好き"


「わ、私だって料理ぐらいできますからね!」


 私が食材さんたちと、そんなことを言い合っていると、


「レイナちゃん、出来たよ!」

「いただきます!」


 ゆきのん先輩が作っているのは、さっき採れたエビとカニが入った豪華な海鮮鍋だ。


「どうかな? 新鮮なモンスターだから、たぶんポン酢でそのまま食べるのが美味しいと思うの」

「なるほど、素材を味わうってことですね。さすがゆきのん先輩!」


 鍋からは、ふわりと美味しそうな香りが漂ってくる。


(美味しそう……!!)


「も、もう大丈夫ですかね?」

「もうちょっと待っててね!」


 ゆきのん先輩が、にこにこしながら止めてきた。

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