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【悲報】清楚系で売っていた底辺配信者、うっかり配信を切り忘れたままSS級モンスターを拳で殴り飛ばしてしまう《書籍化&コミカライズ》  作者: アトハ
6章

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レイナ、ダーツで食材調達先を決める

 翌日、私は千佳の家で配信を立ち上げた。


「食材のみなさん、こんレイナ~」


"こんレイナ~~!"

"ニッコニコのレイナちゃん!"

"マネちゃんの胃に穴が空く音が聞こえる"


 相変わらずの勢いで流れるコメント欄を眺めながら、私は咳払いを一つ。

 今日は千佳のラボからの配信だ。私の背後には、千佳がどこから持ってきたのか、壁一面を覆うほどの巨大な地図が貼り出されている。


「え~っと、昨日の配信でカフェを開くってお話ししましたよね。そしたら、コメント欄におすすめのダンジョンがものすごい数書き込まれちゃいまして……」


 実際、アーカイブのコメント欄を確認したら、数万件の『うちの地元のダンジョンに来て!』という熱烈なオファーが届いていた。

 目を丸くした私が、千佳のラボに駆け込んだのが今日の早朝。

 そろそろ来る頃やと思ってたで、こんな企画はどうや? と提案され、準備が終わったのが今日の昼頃──千佳は、もしかすると未来予知者なのかもしれない。


「それで、到底私一人では絞り込めなかったので……。今回は、この企画で旅先を決めることにしました!」


 私はジャーン! と本格的なダーツの矢をカメラに突き出した。

 千佳が用意したのは、巨大な世界地図とダーツの矢──某企画をパク……、もといオマージュした企画をすることにしたのだ。いわく「せっかくの全国遠征やし、決めるところからネタにした方が盛り上がるやろ?」とのこと。


「というわけで行き先はダーツで決めます!」


"どこかで見たことある企画ww"

"ダンチューバーもちょこちょこやってるよね実際"

"レイナちゃんの腕力でダーツ投げたら、地図どころか壁が死ぬのでは?"


「じゃあ、行きますね!」


 ラボの壁には、世界地図が張られていた。

 ちなみに私は、ダーツなんて生まれてこの方やったことがない。

 もちろん、どこに刺さるかなんて分からない完全なるランダムである。


「えいっ!」


 シュパッ、という風切り音と共にダーツが放たれた。

 解き放たれたダーツの矢は、悲しいほどに地図を大きく外れており、壁に掛かっていた来年度のカレンダーに深々と突き刺さった。


「…………」

「レイナ……、もしかしてノーコン?」

「む、むむむ。今の練習です! もう一回!」


 じとーっとした千佳の目線。


"これは見事な場外ホームランw"

"人殺せそうな速度で吹っ飛んでいって草"

"壁に大穴空いとるやんけ!"

"ノーコンレイナちゃん!"

"ん? ダーツ、よくよく見るとカレンダーに刺さってるぞ?"

"刺さってる場所、カレンダーの火星のところやん。火星行こうぜ!"

"草"


「え~っと、さすがに宇宙まで行くのは厳しいですね。もう一回投げます」


 私が気を取り直して二投目を構えようとした、その時。


"《エリクシア株式会社》うち、宇宙やります。やらせてください"

"無茶言わないでw"

"これ本当に公式アカウント?"

"エリクシア、なんかレイナちゃんの暴走に便乗するのが生きがいになってないかw?"


「エリクシアさん!? いや……、でも宇宙にダンジョンはないと思うので──」


 そう言いかけたとき、隣で地図のシワを伸ばしていた千佳がぼそりとつぶやいた。


「……まあ、ラクラク・ハコベールの空間拡張技術と、先月開発した重力制御モジュールを組み合わせれば、あるいは……」

「千佳!?」


"マネちゃん待ってw"

"大真面目に宇宙行きを考察しないでw"

"ダンジョンイーターズ、いつの間に宇宙開発まで射程に入れてたの!?"

"《エリクシア株式会社》ぜひご一緒させてください"

"エリクシア公式の反応が速すぎる件"

"なにこの化学反応・・・(ドン引き)"


「千佳は前向きに考えないでね!?」

「……冗談や。たぶん」


 エリクシアさんといえば、千佳と共同でラクラク・ハコベールという謎の未来技術を詰め込んだ発明品を私に渡してきた記憶は新しい。そんな彼らが「やります」と言ったら、一週間後には宇宙服を着た私が配信している未来が見えてしまうのが恐ろしいところだった。


「え~っと、もう一回! えいっ! …………えいっ!」


 その後、二投目は千佳の机の上のペン立てを粉砕し、三投目はエアコンのフィルターを貫通した。

 千佳の顔がどんどん青白くなっていくのを横目に、私は必死にダーツに集中する。

 そうして、ついにダーツが地図の北端にポスッと刺さった。


「やった! 刺さりました──あそこは北海道ですね!」


"北の大地キターーーー!"

"おお! 有名どろこだと札幌か函館ダンジョンかな?"

"海鮮! 美味しい海鮮モンスターがレイナちゃんを待ってるぞ!"

"ゆきのんの故郷じゃん!"

"誰もダンジョンの難易度の話をしないww"


「北海道……。いいですね、とっても美味しそうです!」


 新宿ダンジョンは地下に潜るタイプだけれど、北海道のダンジョンは広大な自然と一体化している場所が多いと聞いたことがある。

 新宿ダンジョンとは、随分とラインナップが変わりそうだ。


(海鮮系のモンスターが採れるのかな~)


 私が、無邪気に北海道グルメダンジョンに思いを馳せていると、コメント欄の流れがさらに加速した。


"久々にゆきのんコラボ来る!?"

"これはチャンスじゃない、ゆきのん?"

"久々にあの凸凹配信見れるの?"

"ゆきのん、全裸待機してそう"


 コメント欄に続々とそんな書き込みが溢れてくる。

 このチャンネルが爆発的に伸びるきっかけをくれたのは、紛れもなくゆきのん先輩とのコラボ配信だ。

 今でも配信を見てくれている食材さんの中には、ゆきのん先輩の推しも多いはずで……、


「あの~、ゆきのん先輩も忙しい大先輩ですからね。あんまり困らせるようなことは──」


"《望月雪乃》行きます行きます行きます! レイナちゃんと北海道旅行、行きます!!"

"当たり前のように居た~~~!!"

"速攻すぎて草"

"おちつけゆきのんww"

"ガチ恋勢の鑑"


「ゆきのん先輩!? 北海道でのコラボ配信、良いんですか!?」


"《望月雪乃》こっちこそ! 私で本当によいの!? あ、地元だから案内は任せて!"


「もちろんです! ゆきのん先輩と北海道海鮮食べ放題、すごく楽しみです!」


"この二人、変わらないねえ"

"てぇてぇ"

"食べ放題てw ダンジョンをバイキング会場か何かだと思ってるなw?"


 こうして、千佳が頭を抱えて壁の穴を見つめる横で、トントン拍子に次回の遠征先が決定した。

 新メニューの食材調達のため、私は北海道へ飛び、ゆきのん先輩と一緒にコラボ配信をすることになったのである。


 ――気まぐれにダーツを投げて決めたこの食材調達ダーツ旅。

 やがては訪れた場所を瞬く間に世界的な観光地へと変え、後には『彩音レイナ聖地巡礼ツアー』としてダンジョン庁が予算を組むほどの大規模な社会現象になっていくのだが、それはまた別の話。

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