アメリカダンジョン攻略会議(1)
それからはダンジョンアタックの会議に移ることに。
「それでは、ボス戦のアタックについて聞かせてほしいです」
「ああ、もちろんだ。そういえば、配信はつけないで良いのか?」
「え? 配信してもいいんですか?」
ランドルフにそんなことを言われ、おもわず聞き返す私。
さすがに極秘事項だと思っていたし、聞くことすらしなかったのだ。
「もちろんだ。それが少しでも助けになるのなら」
「それは助かりますけど……、良いんですか!」
「今回のダンジョンアタックは、装備品の手配に、失敗の帳尻合わせ――もう予算がカツカツで大きな報酬を用意することは出来ないからな。少しでも協力できることは、全面的に協力することは惜しまない」
そういえば報酬のことは、何も聞いてなかったっけ。
(また、契約書はちゃんと最初に確認しろって、千佳に怒られちゃう!)私は、そんなことを思いながら、
「ちなみに今回の報酬は?」
「五百万ドルと成果報酬を考えている。ボス討伐に成功した場合は、素材は山分け――あなたほどの探索者には安すぎる報酬だと思うが――」
「え!? …………ごひゃ、ごひゃく!?」
「ああ、もちろん安すぎるのは重々承知。だが、それ以上となると我々としても装備の予算の問題もあるので心苦しいが――」
「いやいやいやいや!? そんなぶっ飛んだ金額、聞いたことありませんよ!?」
「一流の探索者に十分な報酬を払うのは、当然のことだろう」
ランドルフは、何を当たり前のことをという顔をしている。
(新宿ダンジョンのアタック、報酬なんてほとんどなかった思うけど――)
(アメリカ、すごすぎますね!?)
「えーっと、とりあえず報酬の相談は千佳とお願いします!」
あまりの金額に思考が止まった私は、とりあえず千佳に丸投げすることに。
「ええっと、本当に配信回していいんですか?」
「ああ。それに、あなたの配信には、随分と凄腕の配信者も集まるようだからね。その知見ももらえるなら一石二鳥といったところだ」
(どうしましょう。最初との温度差がすごすぎて風邪を引きそうです!)
私は、そんなことを考えながら配信を回すのだった。
【ボス攻略の作戦会議室をします!(有識者募集中)】
「食材の皆さん、こんレイナ~。今日はすごいことになりました! なんと、次のダンジョンアタックの作戦会議を、これから生放送しちゃいます!」
"こんレイナ~!"
"えぇえ!?"
"相変わらずとんでもないことしてる!"
"《鈴木 千佳》レイナ、許可取っとるんやろうな?"
「もちろん、ダンジョンアタックの報酬の一部らしいです!…………あ、千佳。報酬の話は、千佳にお願いしておきました。後で細かいところはお願い―― なんか、すごくヤバそうな金額だった気がするから、見なかったことにした!」
"《鈴木 千佳》えっ・・・"
"またしても新たな胃痛がマネちゃんを襲う!"
"生々しいはずなのに、不思議と気にならないなw"
"もはやレイナちゃんなら、どれだけもらっててもおかしくないしね"
「……こほん、それでは早速、今回のボスの特徴から説明していこう。準備は大丈夫かね?」
「はい、バッチリです!」
ランドルフが咳払いをして、何やら目の前に置かれた機材を操作。
すると大きなプロジェクターに映像が映し出される。
「これが、今回挑むことになるヘブンリースパイダーという二九層のボスだ」
――画面に映し出されたのは、巨大な蜘蛛だろうか。
蠢く足とぎょろりとした目。そして目立つのは、頭のあたりに取り付けられた不釣り合いなレーザー砲の射出台だろうか。
"きめぇえええ!"
"蜘蛛だ! めちゃくちゃグロテスクだなあ・・・"
"こんな極秘情報、まじで放送で流しちゃって大丈夫なの?"
"これを放送に乗せるのも、提示された報酬らしいで"
「全長は数十メートルといったところか。足がとにかく長くて、まずダメージを与えるためには、この蜘蛛のコアに直接攻撃を叩き込まないといけないのが第一のポイントだ」
特定のコア以外は、どれだけダメージを与えても衝撃が無力化されてしまい、ほとんどダメージが通らないそうなのだ。
ふむふむ、と頷く私。
「あれ? この頭のこれは、なんですか?」
「あんたは見るのが初めてだったな。信じられないかもしれないが、この蜘蛛、頭からレーザーを撃ってくるんだ。当たるとほぼ即死、受けられるのは私の盾ぐらいだな」
「ひえっ……」
ランドルフが操作すると、スライドの中で巨大な蜘蛛が蠢き、ピカッと光り輝き凶悪なレーザーを射出する。
「このレーザー砲に、今までも何人かやられてる。視認してからでは遅い――とにかく撃たれるタイミングを推測して、物陰に隠れるぐらいしかやりようがないのが現状だ」
「ふむふむ……」
説明を聞きながら頷く私。
"このレーザーは、何かスキルで無効化できないの?"
"撃たれたら即死は、相当きつそう"
"でもランドルフさんが防げるんだよね? これだけなら、そこまで詰まるほどのヤバさではなさそうな・・・"
コメント欄では、様々な探索者が好き勝手に話し合っていた。
「ああ、その通り。ここまでなら、我々だけでも問題なく対処できる」
「うん。第一形態は安定してる。レーザーのタイミングは、一定間隔だからやり過ごすことは容易――問題は第二形態」
マインちゃんが、大真面目な顔でそう頷いた。
「第二、形態?」
「ああ。むき出しのコアをある程度叩いたところで、奴が真の姿を現すんだがな……」
ランドルフが更にスライドを操作する。
現れたのは……、
「き、気持ち悪っ!」
「ああ。あまりにも忌々しい。この蜘蛛たちは、増えるのだよ」
――即死レーザーもセットでね、とランドルフが忌々しそうに呟く。
ランドルフの操作と同時に、小型な蜘蛛が画面に大量に生成された。





