40 元社畜と少年-19
……思ったよりあっさりで逆にちょっと不安になるな。間違いはないはずなんだけど。
「これを一緒にギルドの買取窓口に出すと、手続き時間が短縮される……らしいよ」
「らしい?」
「いや、ほら、少年が初めてのお客さんだから。ギルド長からはそう話を聞いてるけど、実際はどうだか分からないの」
この店を開くにあたって、ある程度ギルド長と話をつけているし、どういう風にするのかは決めてある。でも、実際にそれが処理されたところを目の前で見たわけじゃないし、そうやって手続きをした冒険者が他にいるわけでもないので、本当にそうなるのか、知らないのだ。
「そ、そっか。初めて、だもんね……。あ、あのさ、じゃあ、これ、今からギルドに納品してくるから、どんな感じだったか報告しに来るよ」
「本当? それは助かる」
やりたくて始めた店じゃないにしろ、業務が滞るのは嫌なので、少年の提案はありがたい。これで何か問題があれば、すぐに対処できるし。
「じゃあ、また後で――」
少年が鑑定書とヴィムヴィペールの鱗が入った麻袋に手を伸ばしたとき、カラン、と、客が来たことを知らせるドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ――、あっ」
「こんにちは」
早速二人目のお客さんか、と思って声をかけると、そこにいたのは鑑定者さんだった。出勤前なのか、かっちりした服を着ているものの、役場の制服らしいジャケットは羽織っていない。
「無事に開店されたのようなので、こちらを、と思いまして」
そう言って鑑定者さんが渡してくれた紙袋の中には、小さな赤い花の花束が入っていた。紙袋の底を持った感覚からして、花瓶ごと包まれていてそのまま飾れる奴だと思う。
「わあ、ありがとうございます」
店内の飾りのことはあんまり考えていなかったから、普通に嬉しい。小ぶりな花束でも、殺風景な店内が一気に華やぐだろう。早速後で飾っちゃお。
「何か困ったことがあれば、ご相談ください。冒険者家業のことも多少は分かります、なにより、同じ鑑定魔法の使い手としてアドバイスできることもあると思うので」
にっこりと、さわやかな笑みで鑑定者さんが言う。アフターケアまで万全じゃん。異世界の役所って、そこまでしてくれるものなんだ。……わたしが住んでいた、前の役所が殺伐としてただけ?
「初めて会った同じ鑑定魔法使いが貴方でよかったです。何かあれば、声をかけさせてもらいますね」
魔法の相談なら剣士さんでもいいとは思うけど、鑑定魔法のことなら同じ使い手の方が話が早いだろう。あんまり何度も聞きに行ったら仕事の邪魔になるかもしれないので、そう頻繁にいくつもりはないけど、相談できる相手がいると分かっているだけでも安心感は段違いだ。
そう思っていると、にゅ、と横から少年が割り込んでくる。
「冒険者のことは! 僕がおねーさんに教えるので! 間に合ってるから!」
少年がいるのに、鑑定者さんと話をしていたからか、少年が拗ねてしまったらしい。少し不機嫌そうな顔をしていた。




