39 元社畜と少年-18
麻袋の中がきらきらとしていたので、宝石かと思ったが、ひとつ手に取ってみると、随分と平べったいことに気が付く。角が丸い三角形で、サイズは……元の世界で使っていた交通用のカードが一番サイズ感が近いかも。交通用カードよりは全然厚いけど。三倍くらいの厚さかな、触った感じ。
異世界特有の宝石か何かかな。すでに研磨されたような輝きをしている。ぴかぴかしていて綺麗だ。
この宝石を取ってくるのが依頼内容だったのかな。これだけ綺麗なら、高く売れそうだし。
そんなことを考えながら、わたしは鑑定魔法を使う。
――ヴィムヴィペールの鱗。
……う、うろこ……!?
鑑定結果に驚いたわたしは、宝石の前に浮かび上がっている文字を凝視してしまった。
「しょ、少年。これって宝石じゃないの?」
「違うよ。ヴィムヴィペールっていう大きい蛇みたいな魔物の鱗。まあ、使い方的には宝石と一緒だけど」
少年曰く。とてつもなく大きい、水中に生息する毒蛇の魔物らしい。
水中に生きる魔物は狩るのがそもそも難しい上に、ヴィムヴィペールの体長が十メートル弱になるので必然的に水深の深い場所での戦闘となる。その上、毒持ちなので、噛まれても駄目だし、危険を察知したヴィムヴィペールのいる水中は毒が溶けてとんでもないことになり、とにかく戦う場で不利になってしまう。
普通に戦っても強いヴィムヴィペールを倒してこれを取ってくるのは相当難易度が高いらしい。だから、この鱗は相当高値で取引されるそうだ。そもそも市場に出ること自体まれらしい。
「……手袋しててよかった」
薄手のゴム手袋みたいなものをギルド長から開店祝いに貰っていて、それを着用していたのだが、素手で触らなくてよかった。
「ヴィムヴィペールの毒は水に溶けやすいから、水洗いすれば簡単に落ちるよ。だから、おねーさんが素手で触っても大丈夫!」
「いや、それもだけど……せっかく少年が頑張って取ってきたこの鱗を落としたら、って考えたら……。ちょっと肝が冷えたかも」
誰のものでも丁寧に扱った方がいいのは当たり前なんだけど、それでも希少価値が高く高額取引されると聞くと、緊張が余計に加算されるというか……。
わたしは一枚いちまい、フェルト生地が内側に貼られたトレーに鑑定済の鱗を置いていきながら、丁寧に鑑定を進めていく。
――……うん、問題なく全部ヴィムヴィペールの鱗だね。
わたしはカウンター下から取り出したハガキより一回り大きい紙に、鑑定結果を書き込んでいく。鑑定物の名前と産地、採取してからの経過時間を書き込んで、わたしの名前のサインをし、わたしが正式に認められた鑑定者である証拠になる、発行印を最後に押せばおしまい。書き間違いはないか、鱗は全部麻袋に戻したか、最終確認をしておく。
うん、これで良し。




