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「それがセイディア様への復讐の第一歩ですか?」
ピラカの部屋へ立ち寄ると、彼は皮肉っぽく言った。
「まあな。あれほどの美人だ、放っておく手はあるまい。それに元々のターゲットだ。お前も忘れたわけではあるまい?」
「ええもちろん覚えておりますよ。では、いよいよですか」
しかしファーデスは首を振った。
「まだだ。重臣たちの動きが鈍い。この数日重臣たちをつついてみたのだが、セイディアの側につくというものも少なくない。神経過敏になっている彼を見捨てて私につくものは増えつつあるが、もうしばらくは様子を見たほうがいいな」
「でしょうね。フィディアス様を廃位しようという動きもありますし」
国王はすでに政を重臣と代理であるセイディアに任せ、ファーデスと過ごすことが増えていた。
「もう少しだ。重臣さえこちらの味方につければ、たとえ革命を起こしたところでもみ消せる。――ピラカ、父上は殺すぞ」
「……お心のままに」
「それはそうと、近頃何を調べていたのだ? 重臣の一人から聞いたぞ。警察機構に出入りしていると」
「二十数年前の事件を」
「フィディアス王にまつわる一連の事件のことか。この間の昔話は父の話なのだな」
ピラカは答えない。ファーデスはつかつかと歩み寄り、胸倉を掴みあげた。
「ピラカ。お前の本当の目的はなんなんだ。――お前は一体何者だ」
その顔を真正面から見つめてピラカは薄く笑った。すでに政治の中枢にかかわる者の顔だ。
「何者だと思っていらっしゃったのですか?」
意地悪そうに言い、笑う。
「お前はお前だろう。だが、分からないことがありすぎる。お前の行動は不可解だ」
「前にも申しましたよ、フィディアス王の首をいただくためです」
ピラカの冷たい視線。
「それは聞いた。今はなぜだ、と聞いている」
「いずれ分かるでしょう」
「いつわかるというのだ」
「もうじきです」
「それでは話にならん」
「……言わねばなりませんか?」
ファーデスは彼を見――戦慄した。
「ピラカ」
「何でございましょう」
「……いつだったか王がお前に会いたいと言っていた。今宵にでも行くがいい」
「あなたもご一緒でございましょうな?」
「なぜ、私が一緒でなければならない?」
「一緒でないなら、王を殺すかもしれません」
「……それは脅迫か?」
するとピラカは微笑んだ。この笑みをいつ見ただろう。
「私が殺したとなれば、あなたに害が及ばなくて都合よいのですがね……ご一緒にいらっしゃれば、あなたがお知りになりたいことが分かるかもしれません」
「知りたいことが?」
「おそらく」
ピラカはうなずいた。その笑みは禍々しくみえた。




