4-2
「さて、王子。私に話とはなんですか?」
戸棚に歩み寄る。グラスを取り出し、ブランデーを注ぎ分ける。
「これからのことだ」
グラスを渡し、隣に腰を下ろす。
「おや、もう決めてあったのでは?」
「私一人ではできぬからな。第一、私の周りは父を除けば敵ばかりだ。セイディア夫婦もアガルティナ姫も、重臣たちもな」
互いに聞こえるか聞こえないかくらいの小声でささやきあう。
「グリスタ王子とサンディアナ姫でしょう」
「手始めにな」
「それなら国王を唆せばいいではありませんか。サンディアナ姫はおいくつでした?」
「今年で十四になる」
「それなら、もっと広い目を養ってもらいたいとでも言って他の星へやったらどうです?」
「いや、サンディアナ姫はいい。たとえこの星にいたところで害にはなるまい。いずれ他星に嫁いでいく身だ」
「ではグリスタ王子を」
「そうだな。彼のほうが厄介だ。今年で十八、私より年上だ」
「どんな方です? 私はまだお会いしたことがありませんが」
するとファーデスは鼻であしらった。
「気の弱い、まるでセイディアの縮小版だな。アガルティナ姫が相当甘やかしたのだろう。何かにつけかばっていたらしいからな」
「それでは」
「私の地位を脅かすことはあるまい。むしろ危ういのはセイディアとアガルティナ姫のほうだな。グリスタ王子は国王が命じれば否応なく従うよ」
「では国王にお任せすればよいではありませんか」
「なんと言って?」
「あなたがご自身で広い目を見につけてきた分、グリスタ様にもつけていただきたいとでも言えばどうでしょう? 実際、この王室の中で本当の世間を見たことがあるのはあなたと、あの王しかおりますまい」
「そうかも知れんな。セイディアにしても、とても視野が狭い」
グラスを傾ける。強い香りが鼻をくすぐる。
「サンディアナ様にしてもグリスタ様にしても、まだ思考の定まらぬ時期でございましょう? グリスタ様の名誉欲が強ければ、そういった部分を鼓舞することも出来ましょうし」
「そうだな。……アガルティナ姫をどうするかな」
ファーデスはそういい、ちらりとピラカを見た。
「どう、とおっしゃられますと」
「ピラカ、本心を聞きたい。今日はそれを聞きたくて来たんだ。お前、本当はどう思っているのだ、アガルティナ姫を」
ピラカは答えず、ふいっと立ち上がると窓の傍に歩み寄った。外は闇に覆われている。
「お前が言うならあの人は助けてもいい」
「お言葉ですが、あの方が一番危険です」
「分かっている」
「分かっていながら、それでも生かしてもよいとおっしゃるのですか?」
「それはお前次第だと言った」
「禍根を断つ、という言葉をご存知ですね。本当に後のことを考えるなら……」
「私のことはいい。お前のことが聞きたい」
「……ファーデス様。一つ話をしましょう」




