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明かりを消しに部屋を横切る。カーテンをすっかり開けてしまうと、窓の外から光が差し込んできた。月が二つ、闇に浮かんでいる。
「昔話です。かつて、ある国に王がいました。これを仮にエンジュ王としましょう。エンジュ王には三人の息子がおりました。娘はいませんでした。息子は上からリウ、サイ、ナギ王子としておきましょう。
リウ王子は次の王として期待されていました。ですが、そういった型にはまることを好まず、いつも自分のしたいようにし、活動的でした。それが世の人々には奔放で手に負えない放蕩息子に映ったのでしょう。そういった王を好む方もいましたが。
さて、ナギ王子はそんな長男とは性格が違い、温厚でやさしく、人を思いやる心のある方でした。殺傷を嫌い、怪我した小鳥に手当をしてやるような人でした。それだけに人々はこの慈悲深い王子をとても愛していました。
サイ王子はこの両極端の二人に挟まれて苦難しておりました。二人より長ずる部分はほとんどなく、人格的にも凡庸で、いつも忘れられているようなそんな方でした。しかし、そんな二人に劣等感を感じ、いつか見返してやろうという向上心のある方でした。
ある年、リウ王子は女官の一人と恋をしました。それも、すでに子供が生まれていて、発覚したときには二歳になっていたといいます。それが知れて、重臣たちはこぞってリウ王子の廃嫡を主張し始めました。次の王となる人物としてふさわしくない、と。王はリウ王子に女官と別れて許婚と一緒になるように、王位を継いでくれるように頼み込んだそうです。しかし王子は愛する人と別れるくらいなら王位を捨てると言い切り、それにはエンジュ王も反対できず、結局リウ王子は廃嫡され、恩恵がサイ王子に回ってきたのです。
サイ王子の立太子式が行われ、リウ王子はその国を出て行くことにしました。
しかし、サイ王子は恐れました。いつかこの才覚あふれる兄が帰ってきて、自分を王位から蹴落とすのではないかと。そして、サイ王子は兄であるリウ王子を殺してしまったのです。
国民はリウ王子の死を悼みました。
だがそれにおさまらず、自分よりナギ王子を、と望む声が出ることを恐れ、国民から愛されているナギ王子をも殺してしまうのです。
そうして、跡継ぎは自分一人になりました。そこでやっと、サイ王子は安心して眠ることが出来たのです」
自然の光を浴びるピラカを、ファーデスはベッドに腰かけたまま見つめていた。
「ピラカ」
「ファーデス様、どう思われました? この話を聞いて。正しいと思われます? それとも間違っていると思われます?」
「間違っているかも知れん。だが、サイ王子の立場なら同じことをするだろうな」
「そういうものです」
「第一、我々がしようとしていることは、そのものずばりではないか。それを間違いだと指摘するなら、我々がやろうとしていることは間違いだ」
「そう、でしょうね。あなたはどちらを選びますか? 殺すほうか、殺されるほうか」
「殺すほうに決まっている」
ファーデスはきっぱり言い、立ち上がった。
「ブランデーのお代わりはいりませんか?」
「もらおう」




