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その日、警察機構から借り受けてきた古い書類を抱えて部屋に入ると、いまや王室に組した少年が彼の帰りを待ち受けていた。
「ファーデス様」
「お帰り。遅かったな」
どこいってたんだ、と視線で問いかける。
「支社へ出向いてきたんですよ。それにしてもお珍しいですね。この時間に私の部屋をご訪問なさるとは」
「来ちゃいけなかったか? それとも都合の悪いことでもあったか?」
「いいえ」
頭を振り、荷物を片付ける。拗ねた様子の少年はベッドに寝そべり、大きく伸びをした。まるで猫のようだ。
「眠たそうですね」
「ああ、父上が離してくれないので疲れがたまってな。その上夜遅くまで晩酌に付き合っているんだ。眠くもなるさ」
もう一度大きくあくびをする。部屋の主は仕方なさそうに彼を見下ろし、傍に腰を下ろした。波打つ髪の毛を撫で付ける。
――父上、か。
「何か私に話したいことがあるのではありませんか?」
「なぜそう思う」
「昔から変わっていませんね。その癖。何かに行き詰ったりどうしても誰かに話を聞いてもらいたいときにはよく私の部屋に来てベッドに潜り込んでいたでしょう?」
「そうだったか?」
知らぬげに答え、青年の黒髪を引っ張る。それからふと視線を上げ、上体を起こした。
「おまえ、その黒服に何か意味があるのか? この星に来てから黒以外の服を着ているのを見たことがない。ジェグネでは明るいスーツばかりだったのに。意味があるのだろう?」
ピラカは髪を引っ張る少年の手を外し、微笑んだ。
「ええ、同じことをアガルティナ様にも聞かれました。これは喪服なんです」
そういい、スーツの襟を引っ張って見せる。ファーデスは顔をしかめた。
「喪服?」
「そうです。あなたも着たことがあるでしょう? オルディア様の葬儀の際に」
「それは分かってるよ。誰の喪服だ」
「これは私の服ですが」
「とぼけるのはよせ。似合わんぞ」
ファーデスの鋭い視線が彼を貫く。
「わかっていますよ。これは父と母のための喪服です」
それ以上は言いませんからね、と彼の耳元でささやき、立ち上がる。




