24 おばあさまとお母様の離宮に転移門を設置します。3
24 おばあさまとお母様の離宮に転移門を設置します。3
「みんなお待たせしました。」
僕が挨拶すると、セリーヌとセディはアリサとハグし合いながら話してるし、ラシーヌ様とジョセフィン様も挨拶を交わしている。
「それでは、新しくできました。僕とジルベールのお城、白鳥城にご案内します。」
そう言って、転移門から白鳥城の転移門へ移動する。
全員が転移門を通過した後に、城の全体がよく見えるスポットに転移させる。
「これが白鳥城の正面から見た姿です。」
白鳥が翼を広げたような姿に見えるように建設した白亜の巨大な城にみんな驚いているようだ。外からの視線を避けるために白い長さの違う杭を縦に並べて翼を表現している。首は一本の塔が表し、胴体は中央の僕らの部屋のある棟を縦長に設計してある。上から見ると矢印のような形をしてる。
「この城は多くの大精霊達に協力してもらって、設計、建築して、多くの加護もいただいていいます。セキュリティの鬼みたいな城です。これから内部をご案内します。」
そう言って、大広間に転移した。
「ここが大広間です。あまり予定はありませんが、人を集めた会合をするときなどに使います。晩餐会で使うダイニングがあるのでそこにご案内しますね。」
王族に長い距離歩かせるのは気が引けるので、プライベートゾーンではなくてここから近いメインダイニングへ移動する。
皆が席に着いたら僕が魔法で出したていでガイヤに密かにお茶とお菓子を用意してもらう。家精霊の存在はできるだけ隠しておくほうがいいと判断したからね。部屋の中を質素にシンプルに仕上げているのも、嫉妬されないようにと言う配慮もある。
「よろしければ、お茶とお菓子をご用意しました。お召し上がりください。僕が魔法で入れたものですから、毒はありません。」
「いやあね、そんな心配全くしてないわよ。」
ラシーヌおばあさまが豪快に言ってのけると、
「そうそう、毒なんてすぐに解毒できるから平気よ。呪いだと難しいのよね。」
とジョセフィンお母様が言葉を続ける。
あ、そうだ。この人たちもある意味人外の存在だった。
「すでにこの街に住んでいる人は昨日この城に呼びましたけど、それ以外では皆様が初めてのお客様です。ご招待できて本当によかった。」
「蒼、素敵なお城ね。落ち着いてて、スッキリしてて、見たことないインテリアだけど、なんか心が和むわ。」
豪華絢爛な城で生活してきたセリーヌにお褒めの言葉をいただきました。
「ほら、僕たちは施政者ではありけど、基本は聖職者なんで、質素にしておくことも大切なんです。どこの国の王族やら貴族やらがくるか分からないから、あんまり豪華にしてると変に邪推されても困るし、見下してもらってるくらいでちょうどいいんです。」
困ったように謙虚に話す僕に、
「確かに、本当の豊かさを知らない成金にはこの屋敷の尋常ならざる豪華さは理解できないでしょうね。何気なくみんなが使ってるこのテーブルはエルダートレント材だし、縁を飾るこの銀は魔銀ね。ミスリルに至る手前の金属。この美しいピンク色のお皿は銅を加工したものよね。そんな技術を持った鍛治士なんて見たことないし、このガラスのゴブレットも透明度の高さ、気泡のなさ、薄さが段違い。この椅子の表面の淡いキラキラした白は真珠パウダーを使ったものでしょう?床の黒い岩も黒曜石を加工したタイルよね。
こんなものいくらお金を積んでも手に入らないわよ。」
ラシーヌ様が言うと、
「そう、眼に見える場所だけじゃないの。この建物に使われている素材のほとんどが魔力を帯びている。つまり何気ない、布や建材にも魔法がかけられていると言うこと。セリーヌ、アリサ、セディいいわね。豪華な見た目に惑わされてはダメ。その奥に潜むものに常に心を配って。」
とジョセフィン様が続ける。
やっぱりこの二人は別格だ。それに気づいた過去の僕を褒めてあげたい。
と思った瞬間、ジルベールが頭をなでなでしてくれた。
え?なんで?僕の心読まれてる?
「お母様、おばあさま、蒼が二人の部屋を用意してくれているので、見てみませんか?」
ジルベールがそういうと、お二人はええ、もちろん。喜んでとやる気だ。
「では、まずラシーヌおばあさま、お部屋の好みを教えてください。」
「そうね、基本は黄色とベージュを使ってもらって、淡い緑、金色、銀色、なんかが好きね。」
「わかりました。」
「じゃあ、今度はジョセフィンお母様の御好みを教えてください。」
「私は、青と白が好きね。でも冷たい感じより、ほっこりした感じが好きよ。」
「わかりました。」
〜僕の頭の中で完成した部屋のイメージ図をガイヤに送る。こんな感じで仕上げてくれる?〜
〜御意〜
ガイヤの魔法が炸裂したのを感じた。今回もガイヤはノリノリだった。
「では、お二人の部屋を見ていきましょう。」
最初に向かったのは、西翼のメインルーム。王族達が止まっても問題ない設えの部屋を3室用意しているがそのうちの一つ。
ラシーヌ様の部屋は、黄色と白に緑を加えたボタニカルなデザイン。いろんな濃さの3色に加え、ピンクとゴールドを差し色に使っている。床はミルクホワイトとミルキーイエローの市松柄のタイル張り。観葉植物を床置き、天井吊り下げ、壁掛けなどさまざまな形で取り入れ、カーテンはベージュのカーテンにクリームイエローのレースカーテンを合わせて。テーブルは白大理石に、金色の縁取り。中央にボタニカル柄の模様を加え、ピンクサファイヤをところどころに埋め込んだ。椅子は、イエロー真珠パウダーを砕いたものを表面に塗ってある。ベッドの天蓋はあえて、木の枝の形をそのまま生かした無骨な天蓋をつけたベッド。天蓋につけるレースのカーテンはアラクネシルクを使ったもの。マットは僕特製のマットレスが入っているので寝心地は段違い。L字型の巨大ソファーとテーブルも置かれ、下に惹かれたラグはクッション性の高い厚めのものを選択。床に直接座れるようになっている。
王宮の自分の部屋だと色々な事情でできないことを、この部屋にはたくさん詰め込んでみた。王族が床に直に座るなんて普通だったらありえないもんね。
暖炉もつけてあるが、床のタイルに直接かけた付与魔法で床暖房効果があるので、冬も寒いと感じることはない。
「先ほど、おっしゃっていただきましたご要望を僕なりに消化して、魔法で作ってみました。と言おうと思ってたのですが、嘘をつくのも嫌なので、正直に言いますね。僕の屋敷には家精霊がいます。そのうちの1柱が作ってくれました。」
「家精霊?それは、長らく存在を確認されていない精霊よね。」
「はい。ありがたいことに知り合うことができまして。力を貸してもらっています。」
「使用人がほとんどいないのにどうしてるのかしらって思ってたのよ。家精霊がいたのなら話はわかるわ。」
「はい。ラシーヌ様気に入っていただけましたか?」
「ええ、とっても。特に王族の居室では絶対にないことも盛りだくさんだし、とても快適ないいお部屋ね。」
「本当に、ラシーヌ様に合ってますわ。これで、私の部屋ももっと期待が高まってきましたわ。」
「気に入っていただけて、本当によかったです。あと、これからはラシーヌ様の転移先はこの部屋になりますので、ご安心ください。それでは、次はジョセフィン様のお部屋に行きましょう。」
今度は同じフロアの東翼の王族室の一つに向かう。
扉を開けてみんなを中に誘う。部屋の形や大きさは同じに作ってある。
ジョセフィン様の部屋は、色々な濃さの青と白を使ったグラデーションを多用した部屋になっている。床はグリッターな水色のグラデーションを使った水の波紋をベースにデザインされた柄になっている。家具と壁は全てベージュで統一され、テーブルと柱は樹脂を使ったものになっている。カラー真珠を樹脂の中に配置し、美しい柄を構成している。椅子も座面は透明の樹脂でできており、縁取りは銀色で行われている。水の中のような冷たさを緩和するために部屋のあちこちに黄色い卵形の間接照明をつけて柔らかさと暖かさを表現している。
「まあ、素敵。格調高いのに冷たくない。柔らかくて可愛いわ。青はスッキリしてて落ち着くけど寒々しくなるのに、あなたがデザインするとちょうど良くなるのね。微妙に違う白を多用することと、透明の中に暖色を組み込むことで統一感を出すなんて。素晴らしいわ。」
「よかった。気に入ってもらえて。青の分量をどうするかがいちばんの問題でしたから、ほっとしました。」
「ねえ、ラシーヌ様私たち蒼ちゃんからは貰いっぱなしな気がするんですけど、そろそろ何かあげたほうがいいですわよね。」
「ジョセフィン様、私もそう思ってたのよ。でも、今回のことで何をあげればいいかわかったわ。」
「「屋敷」」
「これから、蒼ちゃんとジルベールはいろんな会合に出ることになりますもの。オローラやベリスに屋敷がないと困りますわ。」
「じゃあ、使用人もつけて用意しましょうか?」
「いいですわね。そうしましょう。」
「ええ?屋敷だなんてそんな大層なものもらえませんよ。」
「いやむしろもらって欲しいのよ。ほら、碌でもない貴族達を大量粛清したじゃない?それで王都にあるタウンハウスが余ってるのよ。なので、そこにあなた達が入ってくれると、私たちも助かるの。それにいくら家精霊がいると言っても、人間の使用人もちゃんと使っていかないといけないわ。これも勉強よ。」
「その屋敷はありがたくもらうとして、お母様、俺が兄様からもらった、ランドサットの屋敷はどうなってる?」
「ああ、あの屋敷は私がちゃんと管理してあるわ。」
「よかった。蒼と話してて、ランドサットに転移門をおきたいけど、城は多重結界の関係で置けないから屋敷を買わないとって言ってったんだよ。それじゃあ転移門はその屋敷に置くようにするよ。」
「あ、おじさまその話ちょっとお待ちください。実はランドサットにおじさまにもらっていただきたい屋敷があるんですの。」
急にセリーヌが話に入ってくる。
「実は、過去に王家の血が入った公爵家もお取り潰しになりまして、その家が持っていた屋敷が、王城の避難場所の一つになっているのですが、そこをお二人に使っていただきたいのです。私たちにとってお二人以上に頼りになる存在はありませんから。」
「ああ、あの屋敷ね。確かに、二人が使うならあの屋敷の方が、いろんな意味で適していると思うわ。私もそれがいいとおもう。」
「そうね。賛成だわ。」
「じゃあ、ジルベール、皆さまの好意を感謝して受け取って、王家の皆さんの絶対的な守護神としてその屋敷を死守しましょう。」
「そうしていただけると助かります。地下の通路で繋がってる屋敷を知らないものに使われたくありませんから。」
「わかった。そうしよう。」
「ジルベール、あの屋敷もあなたに返しますから、自分で管理をよろしくね。」
「はい、お母様。長い間ありがとうございました。」
「いいのよ。」
「というわけで、お二人の離宮から、この城のお部屋が繋がりましたので、いつでもいらしてください。連絡は不要です。」
「わかったわ。これからますます楽しくなるわね。」
「おじさま、私たちもこのお城に来ちゃダメですか?」
「全然構わないよ。なあ、蒼。」
「もちろん。セリーヌの部屋が城の中だから転移門繋げられないから、ランドサットのその屋敷まで直接地下道を繋いであげるから、そこの門から転移してくればいいよ。あ、プリシラ様とクレリック様にも伝えておいてね。アリスとセディは同じ部屋?それとも別にする?」
「もちろん、同じ部屋で構いません。」
「じゃあ、僕たちと同じ中央棟に部屋を設定しておくね。アリスとセディが個室が必要になることも想定して、コネクティングルームにしておくよ。その部屋の設定は、ランドサットの屋敷の手入れをするときに一緒にやっちゃうね。」
「嬉しいです。」
「それじゃあ、今日やるべきことは全部やったので、みんなでBBQしない?」
「BBQって何?」
アリサが首を傾げながら聞いてくる。
「お肉とか、お魚とか、野菜とかを外で炭で焼きながらみんなで食べることだよ。」
「え?自分たちで焼いて食べるの?」
「まあまあ、王宮では絶対できないことだわね。ぜひやりましょう。」
やっぱりラシーヌ様はこういうこと好きみたいだ。
「では、テラスでやりましょう。」
メインダイニングに繋がった広いテラスに、焼き台の用意をすると、食材を取り出す。
「BBQはたくさんでやった方が楽しいので、今城にいる友人も呼んでいいですか?」
「もちろんよ。ぜひ紹介して。」
〜ガイヤ悪いけど、屋敷にいる人にBBQするから降りてきてって伝えてくれる?〜
〜承知しました〜
みんなが続々降りてくる。アンドレさん達に説明して、セッティングをお願いしてから、みんなを紹介する。大人にはお酒、子供にはジュースを出して、みんなで乾杯する。
やんごとない方達と一緒になるということで、ジュリアさんなんかは何回も意識を飛ばしそうになってたけど、セリーヌが言うにはハーネス子爵家の調査で色々わかってきたので、問題なく離婚できそうだと言ってもらえて、ジュリアさんは泣いていた。ずっと妹だと言われていた女は愛人らしい。
それだけでも断罪に値するのだが、それ以外にも脱税疑惑や口利き詐欺疑惑などが出てきたらしい。今はその裏をとってるところだと言うことだ。セリーヌからも、新しいドレスの発注も受けてジュリアさんも最後は笑顔だった。
リリさんには、お待たせしましたと言って、現在販売している化粧品と、今後発売予定のサンプルを渡し、作り方をまとめた冊子と利益関係の取り分関する契約書を渡す。
「なんか、お待たせしてすみませんでした。詳しいことはお渡しした書類に書いてあるので、まず会社を設立して、本社と工場を作る。その後薬師ギルドから優秀な人を雇って、生産に入る。販売のための人員と施設の準備をして販売する。働いてくれている人のお給料や労働環境の管理をしたり、原材料確保のための人員確保など、やることは多いけど早めに進めてください。」
「まあ、蒼様こんなに詳しい手引きを作っていただき恐縮です。離宮に帰りましたらすぐに対応させていただきます。」
「リリさんも転移門通れるようにしておくので、何かあればこっちにきてください。」
「はい、承知しました。」
リリさんとの話が終わったので、ラシーヌおばあさまに明日にでもエステ関係者をこちらに転移門で送って欲しいと伝えて、グレンを紹介した。ラシーヌ様は、取りまとめをする人間を明日こっちに寄越すと言ってくれたので、数日中に研修が始まる予定。
その後エレンを紹介して、魔動モーターの説明をしてもらった。それがおばあさまの飛行船の鍵になるんですというと、すごく興味を示していた。それで、魔道モーターは使っていないけどもそれと似た動きをするって言うので、僕の魔動バイクを出してあげると、エレンが運転して、ラシーヌ様を乗せていった。すぐに気に入ったラシーヌ様は自分も欲しいと言い出したので、魔動モーターを使ったバージョンを用意しますねと約束した。
アリスは、乗り物よりも自分で空に浮かぶことに興味を示したので、僕が『フライ』を教えてあげる。最初バランスがうまく取れず何度も転んでいたが、すぐにコツを掴む。10CMぐらいの浮遊を30分続けることができるようになったら次のステップを教えるねというと、一人で黙々と練習し始める。
そんなことをしてるうちに、どんどん焼き物が出来上がってきたので、みんなで食べ進める。セディは目の前でやき上がったものを暖かいまますぐに食べられることに大喜びで、いつもの小食が信じられないほど、バクバク食べる。この子達みんな毒味が済んだものしか食べられないから、冷たいものばっかりなんだよね。
ジョセフィン様も同じことを考えてたのだろう。少し目を潤ませていた。
すると、突然みんなに宣言する。
「私、ここに住ませてもらうことにします。セディとアリサもここで育ててあげたい。セリーヌはどう?」
ジュリアさんと話し込んでいたセリーヌがこっちを向いて返事をした。
「はい、私もお願いしようと思ってました。王族として勉強するべきこともありますけど、こちらでのびのび生活させてあげたい。王宮に通う形で過ごさせてあげたいって思ってます。」
「僕は構わないよ。使用人達の住む部屋もたくさん用意してるから、何人連れてきてもいいけど、できたら商人も連れてきて欲しいです。食料品店を早くこの街にも開きたくて。」
セリーヌに返事をすると、ジョセフィン様が
「じゃあ、オローラが一番近いから、差し当たってはうちからお願いしてきてもらうわ。いずれ、列車が開通したら、他の街の商人もたくさんくるようになると思うわ。」
「それはすごくありがたいです。店を出す場所はたくさん空いてるから、今が狙い目だと思います。」
「わかったわ。転移門ができたおかげで、自由にこちらと離宮を行き来できるようになったから、仕事が捗るわ。」
「ほんとね。ベリスは特に遠いから、嬉しいわ。それと、違法奴隷で保護した人たちの中で、故郷に帰ることを拒否した人が5人いるんだけど、ここに送ってもいいかしら?」
「もちろんです。うちは人手不足なのでいつでも歓迎です。ね、ジルベール?」
「ああ、ほら話してばっかりいないでみんな食べろよ。どんどん焼き上がってるぞ。アリサ食いながら浮く練習しろ。ほら早くこーい。」
「おじさんひどい。もう少しで30分いきそうだったのに。」
文句を言いながらも、焼きとうもろこしとエビ串を渡すとどちらも美味しそうに頬張る。
「うわ、あまーい。こっちは塩気がちょうどいい。美味しい」
「アンドレさん達も焼いてばっかりいないで、どんどん食べてくださいね。お酒ももちろんどうぞ」
「ありがとうございます。オーナー」
みんな笑顔で、この世界に来て一番楽しかったかも。それに美味しかったな。少しづつ周りの人間も増えて、楽しくなってきた。やることは山積みだけど、それもまた楽しい。
みんながお腹いっぱいで食べ終わるまで楽しいBBQは続いた。




