22 おばあさまとお母様の離宮に転移門を設置します。1
22 おばあさまとお母様の離宮に転移門を設置します。1
新暦586年11月26日
「おはよう、蒼。あいつらはみんな死んだよ」
風の精霊が耳元で知らせてくれた。くわしい情報は念話で送ってくれる。
僕たちを襲った奴らのうち、『傀儡』の魔法をかけた男が昨日死んだ。ちゃんと黒幕の帝国の第6王子は殺してくれたみたい。その上、その屋敷にいた連中も皆殺しの上屋敷に火まで放ったらしい。魂になってここまで報告しにきてくれた。生前はかなり優秀な諜報員だったのだろう。ここまでうまくいくとは思わなかった。
それから、カシースが死んだらしい。家族全員。クレリックに兵を向けた直後だったらしい。きっとこれは腕の長い公爵様がやってくれたんだろう。ありがたいことだ。
ガストンにはやっぱり僕の温情は伝わらなかったようだ。マルードと共に、裏切って逃げ出したら自然に発生する自爆システムを体に刻んでおいたが、それが発動したようだ。マルードは逃げることを断った。運命とは面白いものだ。
僕が起きた時ジルベールはまだ寝てたけど、僕が朝の訓練を終えて帰ってきたら、もうシャワーから出てきたところだった。
「おはよう。今朝も早いな。どうしたそんな顔して。」
「ううん、ああ、カシースとガストンが死んだよ。ほら、僕らを襲撃してきた帝国の奴ら、黒鴉だっけ。あいつらが、処分した王族に接触してさ。マルード以外は全員逃げ出した。奴隷紋入れた三人は奴隷紋に刻んだ逃げたら体が痛む呪いのせいで逃げられなかったみたいだけど、カシースとマルードは逃げたみたい。カシースは実家に帰って、家族全員でクレリックに兵をあげたみたいんなんだけど、多分クレイダー公爵の手のものに皆殺しにされたっぽい。ガストンは僕がかけた条件発動型の呪いで死んだよ。」
「それでそんな顔してるのか?」
「まあね、僕らと敵対した人間だけど、死んで嬉しいとは思わない。でもその運命を手繰り寄せたのは本人だから仕方ないね。」
「そ、そういうこと。それで今日の予定は?」
「今日は、お母様と、おばあさまのところに転移門を設置しにいくよ。その後、ランドサットに行って、屋敷を一つ買おうと思って。ランドサットの城の中に転移門おけないからさ。」
「それだったらさ、ランドサットにも俺の屋敷があるんだけど、そこを使えよ。長いこと使ってなかったから、今どうなってるかわからないけど、お母様に聞けばわかるだろう。」
「そうだね。じゃあ、最初にジョセフィン様を訪ねようか。もしよかったら、サザンクロスのお屋敷に招待しようか?」
「それいいな。じゃあ、お母様に俺からメッセージを送るよ。」
そういうと携帯型連絡端末にメッセージを吹き込み始めた。
「そうそう、この城も見せたいなあ。構わないか?」
「そうだね。もちろん構わないけど、実は考えてることがあって、東翼と西翼にジョセフィン様とラシーヌ様のお部屋を用意しようと思って。もっと気楽に会いにきてもらいたいし、自分の部屋があると落ち着くでしょ?」
「ああ、それいいな。それじゃあ、二人好みの部屋にしないとな。」
「そうなんだけど、二人に希望の部屋を教えてもらって、それをガイヤに眼の前で作ってもらおうよ。きっとびっくりするよ。」
「ははは。それはびっくりするだろうけど。まあ、そのぐらい許してくれるだろう。どんな顔するだろう。ふふ。」
二人で服を着替えて、ダイニングに行くともうみんな起きていて、ご飯を食べ始めていた。
「おはよう。よく眠れた?」
「ベッドに入るときまでは緊張してたんだけど、ベッドに入ったら一瞬で眠ってたわ。今朝は気持ちよく目が覚めたわ。」
隣に座っていたエレンが答えてくれる。
「明日から、魔動船の制作に取り掛かるからさ、予定空けといてね。多分3日くらいで完成するとは思うけどね。」
「私は大丈夫よ。だから、魔動船完成するまで泊まってていい?」
「もちろん。その方が僕も助かるよ。迎えにいかないで済むし。」
話をしていると、ガイヤが朝ごはんを持ってきてくれる。
「蒼様、おはようございます。本日の朝食でございます。今朝もアンドレ様に作ってもらいました。」
「ガイヤありがとう。今日ジョセフィン様とラシーヌ様が来るから、彼女達の部屋を、東翼と西翼に作ってあげて欲しいんだ。二人に希望を聞くから、それを元にお願いできる?」
「もちろんでございます。それは楽しい趣向になりますね。楽しみにお待ちしておきます。あと、アヌアから伝言です。不動産屋が屋敷を探っているらしいです。敷地の中には入れていないそうですが、男達を雇って屋敷を見張らせているそうです。」
「わかった。どういうつもりか、確認してくるよ。」
4代に渡る不良債権を向こうのいい値で買い取ってやったのに、一体何の文句があるというんだろう。ちょっと確認しておかなければならないね。
〜エオリカ〜
念話で呼びかけると、すぐに返事があった。
〜蒼様どうなさいました?〜
〜悪いんだけど、サザンクロスの不動産屋を探って欲しい。うちの屋敷を人を雇って探らせている理由が知りたい〜
〜わかったわ。近くの子を向かわせるわ〜
「エオリカに頼んだのか?」
「うん。特に何もないければいいんだけど、裏に誰かいればめんどくさいでしょ?」
すると、レイがそっと近寄ってきて、
「私の配下の鳥達にも情報を集めさせておきます。鸚鵡たちは人間の話し声を正確に模倣できますから」
「お願いできる?ありがとう」
「御意」
指示出しが終わり、朝食を食べ始めるとジルベールの端末に返信が来た。
「蒼、お母様は今日は一日空いてるみたいだぞ。早めに迎えに来てって言ってる。何でもアリサが来ているみたいだ。」
「ああ、魔法の訓練かあ。思いの他早く実現したね。じゃあ、早く迎えに行かないと、ということは、セリーヌ様とセディ様はラシーヌ様のとこかな?」
「あり得るな。連絡してみる。」
「うん。」
そういうと、急いで朝ごはんを食べてしまう。
「グレン、今日ラシーヌ様に会う時に研修かける人達に集まってもらうように伝えるから、明日ぐらいにはこっちに移ってくることになるけど、明日から研修できるかな?」
「ええ、問題ないわよ。」
「ベロニカ、預けた女性達はある程度ホテルの従業員として役に立ちそうかな?」
「はい、彼女達は優秀で、預かった7名のうち、一人は、おばあさまのアシスタントにしました。元お針子で、デザインに関してもすごく才能のある子でした。それで2名が元貴族の屋敷で働いていたメイドだったので、サービスに特化してもらいます。残りの1名が商家の娘でしたので、フロントデスクを任せようと思っています。残りの一名を彼女のアシスタントにつけ、残りの2名がハウスキーパーとして働いてもらいます。」
「この身近に間に、本当にありがとう。研修に来る子達にも、研修だけでなくホテルの仕事も手伝わせるから、よろしく頼むね。」
「蒼、ラシーヌおばあさまも問題ないって。迎えに来てって言ってる。」
「わかった。じゃあ向かおうか。みんな慌ただしくてごめんね。行ってきます。」
ジルベールの手を掴むとそのまま、ジョセフィン様のところに転移した。




