初めての従魔
7初めての獣魔(ダンジョン攻略6階層から8階層)
次の日は朝から6階層を探索。この階層は、青空が広がる草原で、ゴブリンと遭遇した。初めての人型モンスター。顔も似てるとはいえ、特徴として随分違うし、身長も低いのでそれほど人殺し感はなかったけど、臭さは今までで一番。あと小賢しくて小狡いので、ちょっと注意が必要だ。
「九十九様、臭いです。近づきたくない。」
「わしは匂いは感じんからわからんが。それじゃあ近接戦闘ではなく遠距離攻撃の練習に変えれば良かろう。魔法の遠距離攻撃は精度と威力の調節がとても難しい。周りをできるだけ巻き込まず、確実に仕留めるように」
「はい。がんばる」
気合いを入れ直して、風魔法を使う。
『トルネード』
数人づつ固まって出てくる奴らを一気に片付けるにはトルネードが最適。少し離れて立っている奴らを小さな竜巻が次々と巻き込んでいく。
目に入るゴブリンたちはみんな竜巻の中に入った。
『ウインドチョッパー』
細かい刃物を投入して切り刻んでいく。ゴブリンの死体は素材にできないので、処分一択。
細かい肉片になったものは次々にダンジョンに吸収されていく。ここはダンジョンだからいいけど普通の森とかだったら、火魔法が使えないから処理が大変だろうな。こんなときなんでも吸収して溶かしてくれるスライムが仲間にいたらなあって思った。
『探索、スライム』
するとこの階層の奥にある湖の周りにたくさんいるみたいだ。
「九十九様、ちょっとスライムを見に行ってもいいですか?奥にある湖の周りに集まっているみたいなんで。」
「別に構わないが、なんでまた?」
「いや単純にスライムを見てみたいっていうのもあるんだけど、獣魔にできたら、ダンジョンアタックが楽になるだろうなって。使い道のない遺体だったり、食べ残りや不用品など旅の間はとにかくゴミが増えるでしょ?それから完全に解放されるんですよ。こんないいことない。」
はあーやれやれと少し呆れた感じの九十九様はおいといて、湖までの道を急ぐ。少し離れた場所に隠れ、離れた場所に身を隠しながらスライムの様子を伺う。さまざまな色をしたスライムが鈴鳴りになりながら湖の辺りで日向ぼっこを楽しんでいる。
「九十九様、スライムっておとなしいんですね。」
「基本はおとなしいが、弱い魔物ではない。それに奴らの能力はまだかなり未知数での。神でさえちゃんと把握してないんじゃないかの。」
「そうなんですね。でもいろんな色してて綺麗だな。『鑑定スライムの能力』」
薄く鑑定のための魔力を辺り一面に広げていく。すると、膨大な情報が頭の中に入り込んでくる。それとともに、急に素早くぷるぷると動き始め、こっちに向かって最初の1体が飛び出してくると、次々にスライムたちが向かってくる。
「え?なになになに?『バリアー』」
突然のことに驚いて自分の周りにバリアーを張る。するとバリアーにスライムが張り付いてきて、どんどん外が見えなくなる。九十九様はその様子を見て
「お前が魔力を流したから、美味しそうな餌が来たって思ったんだろうよ。」
「え?餌って。そんな。」
「だからさっきも言ったじゃろう。スライムはよく分かってないって。なんでも食べてくれて、おとなしい反面、個体によると攻撃力に優れ、機動性にも優れた個体もいる。さっき鑑定である程度は奴らの能力がわかったんじゃないのか?」
「そうですね。思っていたよりも種類が多くてその能力も多彩でした。青い子は水魔法を使うようで、攻撃魔法と魔力水を供給すると出てます。なんでも食べますが、魔力も好物のようです。水魔法の能力者に取り憑いて魔力を吸い出すこともできるみたい。この緑の子は緑魔法を使うようで、薬草を取り込んで薬を作る能力があるようです。どうもそれぞれの得意な属性を彼らの体の色が示しているようですね。それでこのこ、透明に金色と銀色の輪っかがくるくる回っている子、この子は特殊個体のようです。鑑定しても情報が出てこない。」
「かなりレベルが高いか、イレギュラーというやつだろう。なんらかの理由でスライムの理から外れたもの。念和が使えるか試してみたらどうだ?」
うーん、念和はやったことないんだけど、魔力循環をして心の中で念じてみればいいのかな。
『もしもし?もしもし?ねえ聞こえる?僕は蒼。君の名前は?』
最初反応の薄かったスライムが急に細かく振動を始め、金色の光が溢れ始めた。
『え?もしもしってもしかしてきみ日本からの転生者?』
突然、頭の中に響いた声は、僕と同世代の男の子の声だった。
『え?え?え?スライム君が喋ってるの?』
『いや、正確にはこの世界に転生した人間がこのスライムに取り込まれて、理由はわからないんだけど消化されないでこのスライムの中にいきつづけてる。今じゃこのスライムの意識と僕はすでに融合されていて、僕はスライムで、スライムは僕で。」
『そんなことってあるんだね。僕は相馬蒼。君の名は?』
『前世では本宮佑。今世では・・・ジルベール』
『ジルベール君ね。了解。それでね、今日はスライムに興味があったからみに来たっていうのが理由なんだけどもう一つがスライムの従魔をテイムしようと思ってきたんだ。でも、ジルベールが嫌なら仕方ないけどよかったら友達になりたいな。』
『俺もずっと暇だったから、こっちも連れて行ってくれって頼むつもりだったんだよ。じゃあ従魔契約するか?』
『うーん。九十九様、どうすればいいと思いますか?ジルベールは僕と友達になってくれるって了承してくれてるし、契約は必要ないのでは?』
『そうじゃな。だが、まだしばらくは人型を取れないわけだから、人の街に入る時スライムを連れていれば従魔登録はしないと行けないだろうし。しておいた方がいいんじゃないか?それに、このスライム取り込んだものの能力を奪うことができるみたいだぞ。ここにいるスライム全部取り込んだら、全ての能力をジルベールが使えるようになる。そうすれば二人にとって意味があるんじゃないか?』
『蒼?今誰が喋ってたの?』
『あ、そうだごめん。僕が持ってるこの刀は付喪神の九十九様。前世から転生するときに一緒についてきてくれた神様だよ。』
『ジルベール、初めまして。九十九じゃ。これからよろしくな』
『あ、はい。よろしくお願いします。』
『じゃあ、蒼。従魔登録してしまえ。』
『うん。テイム』
細かい漣のような震えが全身に走ったあと白い繭のようなもので包まれたあと、一度光って元の姿に戻った。
「『ステイタスオープン』って言ってみて」
「ステイタスオープン」
すると、種族がプリンススライム。名前はジルベール。と出てきた。
「お前たち、今はいいが実際に声が出てるぞ。念和ではなくなっとる。それじゃあ、ジルベールここにいるスライム全部吸収してしまえ。」
「うん、やってみるね。『捕食』」
急に全身に黒のリングが渦巻いたかと思ったら、大きく伸び広がって、あっという間に全てのスライムを捕食してしまう。すると、ピンピンピンピンと凄まじい勢いでステイタスボードに獲得した新能力が書き加えられていく。
プリンス・ジルベール・ド・アレジ
25歳
スライム型知的生命体
レベル10
称号 プリンススライム
相馬蒼の眷属
HP 2500
MP 3200
筋力520
耐久力1800
敏捷性1380
知力 1200
幸運 320
魔法 全属性
スキル 製薬、捕食、ドレイン、緑の手、精錬、清浄、変装
「やっぱりかなりチートだね。でもそれよか、この名前。アレジ王国の王子様なの?」
「うん、そう。ある日急に部屋に入ってきた人間に攫われて気がついたらこのスライムの中って感じ。敵意とかは感じないし、食事しなくても十分栄養は足りてたし。でもずっと一人でつまらなかった。だから今すごく嬉しいんだ。出会った人間が同じ転生者だったなんて。蒼、俺を見つけてくれてありがとうな。」
「こっちこそだよ。僕は神様とは会ったけどこっちの世界に家族はいないし、九十九様がいてくれたから完全に一人ではなかったけど、寂しかったから嬉しいよ。これからよろしく。」
それから、バディができた僕はダンジョン攻略のスピードが上がり、10階層まで攻略を終わらせた。
6階層は、ゴブリンとスライム。ドロップ品はなし。代わりに宝箱が出た。
中身は『収納リング』 僕たちが持っているアイテムボックスの能力の劣化版をリングに落とし込んだもの。重量制限2トン、収納アイテム数50、時間経過少し遅め。となっている。僕は重量制限なし、収納アイテム数制限なし、時間経過なしのアイテムボックスを持っているし、ジルベルトは、重量制限なし、収納アイテム数制限なしだけど、時間経過ありで、生きてるものも収納可能。って二人ともチートなものを持ってる。でも九十九様は持ってないので、これは九十九様に使ってもらうことにした。
「九十九様これで自分で飛んでいって魔物狩りして、素材をリングに入れて運んでこれますね。」
「そんなもん、誰かに見られたらどうするつもりじゃ。討伐対象に指定されるぞ。わしは其方のそばを離れんから、そんなチャンスは滅多にないだろうよ。」
「まあ、そうですけど。でも何が起こるかわかりませんし。」
「わかった、わかったじゃあもらっておこう。刀の鍔柄側にはめておいてくれ」
「はーい。大きさは自動調整みたいだからピッタリハマりましたよ」
宝箱の中身の確認は済んだので、鉱物の調査。すると水辺で珪砂が大量に見つかった。あと地面からは銀が見つかった。それにこの階層の木材は家具屋家を作るのに向いているらしい。それらも一気にいただいて、7階層へ。
7階層はさっきよりももっと天井の高い空間で、鳥の魔物が大勢いた 。
飛ばない巨大な鳥『コッコ』と巨大な白い鳥『ロック鳥』。どちらもうまいらしいが、ダンジョンだから遺体は吸収される。ドロップ品は何かな?
コッコのドロップ品は肉。羽をむしられた一羽の状態で葉っぱに包まれておいてある。ロック鳥のドロップ品は、羽と嘴と肉。大きな葉っぱのようなもので包まれてる。いいのか。こんなに至れり尽くせりで。僕以上にこれにはジルベールが大喜び。だって何年もの間何も食べなかたわけだから。前世の記憶があるジルベールには苦しかっただろうな。
「唐揚げだーーー。焼き鳥だーーーー。鳥南蛮だーーーー。」
うん、わかる。わかるよ。その気持ち。
と友達の心が痛いほどよくわかる僕はいつもよりもかなり多めに討伐。周りに一羽もいないところまで狩り尽くす。
肉の回収をジルベールにお願いしている間に、鉱物の調査をすると、石灰石と銀が取れるのがわかった。あと、オリーブの木が大量にあるので、オリーブの実を採集して、ジルベールに精錬してもらい、極上のオリーブオイルをゲット。
揚げ物できるよ。うん、美味しいのがね。
ルンルンで8階層へ向かう。
8階層はあちこちで温泉が吹き上げるゴツゴツした岩場で、奥の方には火山が見える。ちょっと地獄っぽい世界観に僕らはドン引きするも襲ってきたのがファイヤーリザード。火魔法を使う面倒な相手だ。だが、その皮は赤とオレンジの中間色で鮮やかで美しい。当然、高値で売れるはずだ。まだこの世界の人間がその価値に気づいてないのなら、バッグやコートに仕立てて、この世界の貴族に売りつけてやる。ウヒヒヒあっちから札束が降ってくるぜ。
「蒼、なんとなく考えてることは想像つくけど、顔が酷いことになってるよ。」
え?やばいやばい。¥取り繕わなければ¥。
「これは失礼。ドロップ品で皮が出ないかもしれないけど、出ると信じて討伐しましょう。」
そこからは蹂躙に次ぐ蹂躙。そしてドロップ品は牙と皮。
すでに皮は鞣された状態で出てきた。あーー神様ありがとうございます。
前世では触ることもなかった高級品。あのむかつく継母が持ってやがったな。くそ。
「あー久しぶりの充実感。なんだろうこの感覚。」
「うん、蒼のことちょっと情報修正が必要だなって思ったよ。」
まあとにかく、ファイヤーリザードの皮が手に入ったので、その他の鉱物諸々を捜索。すると、
「あっ、温泉の湯の花が大量にある。家で温泉に入れるよ。入浴剤として、だけじゃなく研磨剤、や洗浄剤の働きもする優秀なアイテムだよ。それに溶岩石が大量に取れる。これは建材としても、水質改善にも役に立つアイテムだからいっぱい取っておこう。」
そうやって大量に集めたら、全て収納していく。ジルベルトが集めてくれた肉もここで僕の収納に移し替え。腐ったらもったいないからね。
それで、9階層に行こうかと思ったんだけど、食事と風呂の誘惑に勝てず、今日はここで終わりにして、みんなで豆の木の家に戻ってきた。
「ジルベール、ここが僕の家だよ。ダンジョンの中の巨大な豆の木の中にあるんだけど、50階のフロアーを家として使ってるんだ。まずはさっき持ってきた湯の花入れてお風呂にしよう。そのあと唐揚げ作るね。」
「ヒョエー、凄い家だな。前世の部屋そのまんま。玄関で靴脱ぐんだ。懐かしい。城では脱がなかったからな。食事も風呂も久しぶりだから楽しみだ。」
流暢な言葉が聞こえるが姿はスライムなので違和感はあるが、運びやすいのは便利だ。さっさと風呂の準備をしにいって、その間にからあげのしこみをする。一口大の大きさに切り分けたら、醤油、ニンニク、酒、生姜を混ぜて作ったタレを肉に混ぜ込んでいく。串打ちは時間がかかるし、適当な竹串は置いてないから、唐揚げよりは小さめに切った肉に、醤油、味醂、酒、砂糖で作ったタレを煮詰めたものをかけて混ぜ込んでおいておく。
するとちょうど風呂が沸いたみたいなので、湯の花を入れて温泉を作る。
「九十九様風呂行ってきますね。ジルベール行くよ」
「おお、行ってこい。わしは疲れたから寝ておくわい。」
「九十九様、取れた金属の鉱石お供えです。」
この日にとれた鉱石をざっと並べる。
「ありがとう。これは俺の中に取り込んでおくから、武具を作るときに使うようにするな。」
「はーい」
シャワーを浴びて汚れをざっと流す。
先にジルベールを湯船に入れてやり、僕もそのまま入る。湯船を大きく作っておいてよかった。
「ふうううう。ああ、最高だ」
「こんな温泉に浸かるなんてまたできるとは思ってなかったよ。蒼ありがとう。うううううう」
「泣かないで。そんな大袈裟だよ。それはそうと、ジルベール、いや佑は前世では何してたの?」
「俺は会社員だったよ。死んだ時は25歳だったかな。いわゆる過労死なのか事故なのか境界線は曖昧だけど、そんな感じだ。こっちに転生して10歳の時に記憶を取り戻して13歳の時に攫われたんだ。それから何年経ってるかわからないから正確な年齢はわからない。」
「そうなんだ。僕は20歳の大学生で死んで、まあ自殺だったんだけど、
10歳の体で転生してきたんだ。じゃあ佑さんの方が先輩だね。じゃあジルバールさんて呼ばないと。ちなみに今は新暦586年の10月3日だよ。
ちなみに転生して3日目」
「まだ3日?俺が攫われたのは、新暦561年だから、25年前か。じゃあ俺は38歳ということだな。」
「スライムの見た目だから、なんとも思わないけど別に歳はとってないと思うよ。そうだ、さっき見たスキルの中に変身があったでしょ。攫われた当時の姿なら、記憶からできるかもしれないよ。」
「確かに。『変身13歳の俺』」
漣が立ったあと、薄紫色に光ったと思ったらなんと13歳の金髪少年が現れた。前世でいう、西洋人的な見た目だ。綺麗だななんて思ってたらお湯がザパーと溢れ出た。二人目を見合わせて
「風呂の中ですることじゃないな。」
と顔を見合わせて笑ってしまった。
「そろそろ、出ようか。お肉がいい感じにタレが回ってると思う。」
それから、僕たちはまだ子供なので酒はなしで、唐揚げと焼き鳥炒めを楽しんだ。コメを出してあげたら、涙を流して喜んだので、金髪王子の外見と合わなくてまた笑ってしまった。
新しいベッドを用意するのも面倒だからそのまま一緒のベッドで眠った。
この世界に来て一番深く眠った夜だった。




