初めてのダンジョン初めての戦闘
6初めてのダンジョン、初めての戦闘(ダンジョン攻略1階層から5階層)
今、僕が入ったダンジョンはまだ誰も入ったことがないダンジョン。ゆえに中がどうなってるのか誰も知らないし、攻略ガイドや地図などもない、初見のダンジョンということになる。だから、当然事前準備は万全に行なってある。
まず、転移陣対策に『ホバーリングウォーク』。転移陣や罠の中でも踏んで発動するタイプの対策のために宙を浮いて歩く魔法を開発した。
物理攻撃に対する備えで『バリアー』を発動。
暗い洞窟の中を進むので、『ナイトビジョン』も発動。まあ同行者がいればライトになるんだろうけど、ナイトビジョンの方が相手に存在を見つけられにくいメリットがある。
あと、『フラッシュ』を使った時の効果も跳ね上がる。
色々なものを事前に発見するスキル『索敵』。
スキルの『索敵』は、指定空間の中にいる生命だけでなく、ゴーストなどのエレメンタル系の魔物も補足する。それに、地形情報、鉱物、植物、資源などの情報もまとめて入ってくる。
ダンジョン一階には奥の方に、昆虫系の魔物がいるようだ。あと資源としては銅が取れるようだ。多く集まっているのは、昆虫たちが密集しているゾーンの奥なので、面倒くさいけど魔物を討伐して回収しないと。
「九十九様、この階には銅があるみたいです。色々使えると思うので、たくさん取っていきますね。」
「そうか。すずと混ぜて青銅にすれば鉄の剣に近い硬度を誇るようになる。まあ、蒼の武器には使わない素材だが、鉄が足りない時の代替案として考えてもいいかもな。熱伝導性や抗菌力の高さに特徴があり、水道管、調理器具、食器、医療器具などを作る際に必要になる。この世界では電気を使わないが、使うとしたら、電線の材料として不可欠な素材となる。」
「そうですね。熱伝導がいいのは知ってましたけど、抗菌力も高いんですね。銀が抗菌力高いのは知ってましけど銅もなんですね。」
「どちらも抗菌、抗ウイルス、抗カビ能力が高いんだが、経済性や温度に左右されないなどの理由で、銅の方に軍配が上がるほどだ。あと、魔力を溜め込んだ銅は魔銅と呼ばれ、その中でも上位の純粋さを誇るものはオリハルコンの異名を取る。これは多くの魔素を溜め込んで金色をした銅で、非常に硬くこれを使った武器は神話級、幻想級、伝説級など、一握りの武器にのみ使われておる。ダンジョン1階にあるわけだからオリハルコンまでは手に入らずとも魔銅が手に入るだけでも儲けもんだ。」
さすがは、九十九様。素材のことには滅法強い。
うん?ああ、奥にいる魔物が僕の気配に気付いたみたいだ。こっちに向かってきてる。
「九十九様、向こうからやってきたみたいです。さっき家を壊しかけたあれやっていいですか?」
「おう、そのために来たんじゃ。思いっきりやってしまえ。」
はい、と答えるとこちらも相手に向かってダッシュをかける。洞窟の通路の奥に人間より大きな蟻の形の魔物の姿が見えた。噛みつきと蟻酸に注意だな。だから接近戦は不利なので、遠距離から決めてしまおう。
「さあ、いきますか。『飛斬』」
呼吸を整えて、魔獣たちの群れの位置を確認。呼吸を整えて、水平に刀を一閃する。地面と水平に斬撃が飛んでいき、蟻の姿の魔獣たちの頭と胴を次々切り離していく。前から10列目ぐらいまでは一気に片付けたものの、後ろからどんどん湧いてくる。
さあ、次は風魔法を試してみよう。
『ウインドカッター』『ウインドチョッパー』
ウインドカッターで前の魔獣を刻んでいき、その後ろの魔獣も含めて粉々にしていく。洞窟だから火魔法は控えておこう。
死んだ巨大蟻の横を通るのが嫌で粉々にしたのだが、遺体はしばらくするとダンジョンに吸収されるように消えていった。なーんだ、じゃあお掃除しなくていいんだね。ということで、『テーザー』で動きを止めたら、首を刀で落としていく。最後の一体を一太刀で切り捨てて周りを見渡すと、床に黒いプラスチックのような素材がたくさん落ちている。
「九十九様、これなんでしょう?」
「うん、なんじゃろうな。ドロップ品だとは思うがの。おお、蒼お主鑑定をやってみろ。多分お前ならできるじゃろう。」
うーん、簡単そうにおっしゃいますがどんな魔法かわからないんだが。
とにかく今欲しいのはこの素材が何か知りこと。知りたいのは、素材の名前、性質、用途、前世の記憶の何に近いのか。教えて鑑定君。
『鑑定』
すると、頭の中にこの素材の内容が上がってきた。
ダンジョンドロップ
蟻の外骨格
硬く、軽いので鎧の素材として人気がある。
プラスチックに近い
「九十九様、蟻の外骨格らしいです。鎧の素材として人気で、プラスチックに近いらしいです。それよりは硬いみたいですど。」
「おお、そうか。じゃあ集めんといかんの。お前防具持っとらんからな。
お前はなくても魔法があるから大丈夫だが、この世界で冒険者として動くなら、一般的な装備は必要だ。」
「ああ、そうですね。防具つけてない冒険者なんて怪しすぎるか。それに、御使として活動する時は別の姿にしないと余計な苦労を背負い込まされそうだ。名前は、普段は蒼、御使モードはアズールにしよう。そうなったらそれぞれの衣装も作らないと。うーんまたやることが増えた。」
がっくりしながらも、魔法『収集』で床のドロップ品をかき集める。アイテムボックスに全て収納すると、今度は、壁の中に向けて魔法をかける。
『収集』銅鉱石、魔銅鉱石を含む。
すると、洞窟の壁から金色の光が出てきて、それとともに鉱石も引き出されてくる。表面に露出した鉱石は次の瞬間に消えているところを見ると、自動でアイテムボックスに送られているようだ。順調に銅鉱石が収集されていく。表面近くの鉱石がほぼ収集されて、壁奥の鉱石の引き出しに移ったようだ。するとアイテムボックスの別のボックスに待望の魔銅鉱石が転がり込んできた。
「九十九様、一つ魔銅鉱石が見つかりました。あ、二つ、え?三つ」
深い層に魔法が伸びていったことで、一気に23個の魔銅鉱石が見つかった。
「残念ながらオリハルコンはありませんでしたが、魔銅鉱石は23個もありました。1階からこれだとちょっと期待しちゃいますよね。」
「はは、そうじゃな。それでどうじゃ?初めてのダンジョンアタックは?」
「いや、大変ですけど、楽しいですね。こんなに色々手に入るなんて驚きです。」
「まあ、緊張感を切ってはいかんが、あんまり緊張しすげても上手くいかん。今日は5階層まで行って引き上げるかの。」
「そうでうすね。じゃああと4階層頑張りましょう。」
階段を降りて下がった2階層から5階層までは特に変わり映えしない洞窟型ダンジョンだった。遭遇した魔物も、2階層はウルフ、特別問題なく駆逐し、ドロップは狼の毛皮。普通のグレイウルフなので特に高いわけではないけど、防寒着には使えるらしい。今回は小さいながらも魔石が取れた。
金属は特に取れなかったが、ルビーが取れた。大半が小さいものだったが、いくつかとても大きなものが取れた。ただ、赤い鉱石ではなくて、鑑定くんが教えてくれなかったら、そんなに価値あるもんだなんて思わなかった。ゴツゴツした六角柱をしていて、表面もゴツゴツ。まあ研磨したらわかるか。
3階層は蜂の魔物、ドロップ品は蜂蜜、ローヤルゼリー、蜂毒。ただの毒ではなくて、薄めると美容に良い成分も含まれているらしく、鑑定くんが色々教えてくれる。甘いものの少ないこの世界で天然の蜂蜜はすごく貴重。だから一番嬉しかったかも。この階層ではアルミニウムが見つかったよ。アルミは寒いところでも粘り強さを発揮する金属だから、いろんな使い道がありそう。
4階層は蛇。ラスボスのヒュドラより小さな子供蛇が大量に頭の上から降ってきた時は、バリアーをしてると分かっていても発狂レベルの衝撃だった。ドロップ品は蛇皮と蛇毒。蛇毒は、神経毒、出血毒、溶血毒、筋肉壊死毒
消化酵素などの側面を持っているので、毒としてもいろいろな使い方ができるのだが、医療現場や薬を作る上で役に立つ側面もある。血液の凝固を調整する作用、痛みを抑える作用、高血圧の治療薬、など。きっと優秀な医師、薬師なら欲しがるはず。鉱物はスモーキークオーツが見つかった。これは光魔法の威力を抑える働きをするので、何かを作るときは考えないといけない。
5階層はカマキリの魔物で、ドロップ品がカマキリの目と鎌なんだけど、
なんとカマキリの目は現代でいう監視カメラとモニターセンターのスイッチのような働きをする魔道具に加工される。ゆえに高額で取引されるらしい。
鎌は、そのまま大釜の刃に加工される。たまに武器として使われることもあるが、主に農業で穀物の収穫や草刈りで使われる。水晶と鉄が見つかった。
そうやって、5階層をクリアした僕は家に引き上げた。




