16 サザンクロスで屋敷を買うことにしました。
16 サザンクロスで屋敷を買うことにしました。
店の外に出ると馬車の準備が終わっており、僕らはそれに乗せられて屋敷へ向かう。馬車の中で、僕らの個人情報を引き出そうと孫娘が絡んでくるのが鬱陶しくて、無視してると流石に諦めたようで屋敷に到着する頃には馬車の中の空気は冷え切っていた。
「つきました。今門を開けます。しばらくお待ちください。」
門の鍵を開けて、馬車は中に入る。車寄せに馬車をつけて、僕たちはそこから降りる。こじんまりとしてはいるが、作りはしっかりとしたいい屋敷だ。
メイン玄関のオークでできた大扉を両開きする。
しばらく空気の入れ替えがされていなかったのか、カビ臭い匂いはしたが、
別に荒れた様子は見られなかった。妖精達が僕らの周りを渦を巻くように飛んでいる。
「申し訳ないが、二人で見てまわりたいので、しばらく時間をもらえないだろうか?」
そう、孫娘に伝えると、文句を言っていたが、こちらが折れる気配がないのを見ると、1時間ですからねと言って外の馬車の方に出て行った。
「何かあったのか?」
ジルベールが不思議そうに尋ねる。
「うん。たくさんの精霊達が嬉しそうに飛び回ってるんだけど、本丸が彼女がいると出てこれない気がして。ちょっと地下に行きたいんだけどいいかな?」
「ああ。」
階段を下に降りていくと、少し湿気を帯びた冷たい空気が向かってくる。
地下は真っ暗で何も見えない。
『トーチ』
光魔法を使って、灯りを取る。
「どっちにいくか方向はわかるのか?」
「うん。こっちみたい。精霊が引っ張るからさ。」
しばらく歩くと一枚の扉の前についた。中に大きな精霊の気配。でもこの冷たさが気になる。
扉を開けて中に入る。何かがいる気配はするのに、見えない。
「フローラ、助けてもらえるか?」
植物の大精霊フローラに助けを求める。
「蒼さま、お久しぶりでございます。聖域に暮らす精霊が日に日に増えております。本当に感謝しております。」
「いやいや、僕らだって嬉しいから。みんながそばにいてくれたら。僕たちも感謝してるんだよ。今日この街に着いたら精霊いたちが僕をここに導くんだけど、何もなくて困ってるんだ。何か入る気配はあるのに。」
「はい。そうですね。この気配は家精霊の気配です。かなり古い精霊で格で言うと私たちと同じぐらいの高位の精霊です。時の大精霊アリオンの精霊マフにより今は長い眠りの中にいます。でも、蒼さまを呼ばれたと言うことは目覚める時なのかもしれません。ここに小さな聖域結界を結んで、蒼様の魔力をその中に満たしてください。今が目覚める時ならそれで目覚めるでしょう。」
「わかったやってみる」
部屋の真ん中に結界で小さな空間を切り、中に僕の魔力を満たしていく。
『ここに隠れし家精霊よアリオンの眠りの衣を脱ぎ捨て我が前に顕現せよ』
誰に教えてもらったわけでもないのに、言うべき言葉が頭の中に流れ込んでくる。
すると、空間の中に金色の粒子が集まり始める。そして一際強い光を放つと、僕と同じくらいの身長の金髪色白の少女が飛び出してきた。
「あら、ここは屋敷の地下室。私はアリオンと話していて、あれ?あなたは植物の大精霊?それに、この子は神様の気配。」
目を覚まして少し戸惑っているようで、追っつかない様子だ。
「初めまして。家精霊さん。僕は蒼。神様のお使いをする存在だよ。植物の精霊のフローラ。僕の相棒のジルベール。よろしくね。」
「私は。アヌア。家精霊のアヌア。よろしくね。」
「精霊達がこの家を僕たちに勧めるんだけど、それは君がいるからなんだね。詳しい話を聞きたい思いもあるけど、不動産屋を待たせてるから、この屋敷の購入の手続きを進めるね。」
「あなたが新しいご主人様になるの?あなたなら大歓迎よ。他の精霊達と帰りを待ってるわね。」
「わかった。また後で来るよ。フローラ忙しい時にありがとう。おかげで家精霊を起こしてあげることができた。」
「私こそ感謝いたします。彼女は大精霊格の家精霊。彼女が目覚めたことで」これから多くの家精霊が目覚めることでしょう。力を貸した時の大精霊アリオンの仲間も出てこれるようになるかもしれません。漢書が一人いれば使用人はいらないと言われています。一人も使用人をお使いになっておられない蒼様にはぴったりの精霊です。この屋敷を買い取れるといいですね。」
「これから買取交渉してくるよ。」
フローラが一礼とともに転移していなくなると、ジルベールが興奮気味に話しかけてくる。
「やっぱりなんかあると思ったけど、想像の上をいっていたよ。まさか家精霊。それもあんなにはっきりと顕現できて、話ができるなんて。そんな家精霊のことは聞いたことがないよ。」
階段を一階へ登りながら、二人で話していると孫娘がこちらを見て何か言いたたげである。
「ジルベール、2階以上も一応見ておく?」
「いや、もうこの屋敷は買うことにしたんだから、別に見なくてもいいよ。気に入らないところは後で直せばいいし。」
「そうだね。そうしよう」
まだ1時間はたっていなかったが、
「この屋敷を購入しようと思います。冒険者ギルドに向かってください。そちらで代金の決済を行います」
と孫娘に伝える。
「わかりました。冒険者ギルドで契約書を交わすことと致しましょう。一度店に戻って祖母と書類を持って参ります。その後冒険者ギルドで手続きをお願いいたします。」
なんか、もっと嫌がらせとか、売り渋りとかなんか起こるかと思ったのだけど、肩透かしもいいとこで、相場の値段で売ってもらえた。代金の支払いも全く問題なく終わらせることができた。鍵を受け取って、契約関係の書類を受け取ってそれを全てアイテムボックスに入れて宿に戻ってきた。
お昼の時間はすっかり過ぎてもう直ぐ夕方だ。
部屋のテーブルの上に冷えたご飯が置いてあるかと思ったら、何もない。
すると、扉をノックする音が。
「ああ、おかえり。今日は悪かったねえ。ちょと前に冒険者ギルドのギルマスがあの男達を連れて謝りに来てくれてね。二人の昼食はキャンセルにして早めに夕飯にしないかい?ちょっと豪華な夕飯にしてあるから、準備ができたら下の食堂に降りておいで。」
「ええ、ありがとうございます。なんか色々あってお腹空いてるの忘れてました。直ぐ降りますね。」
その日の晩御飯は、魚と肉の両方のメインが食べられす特別コースで、テーブルに乗り切らないほどのご馳走だった。僕たちは酒が飲めないので、レモネードを頼んだ。
「海の近くは最高だね。シーフードがたくさん食べられる。」
僕がご機嫌で食べ進めると、ジルベールも頷きながらいった。
「内陸で育ったから、海のものを食べてこなかったけど、やっぱりいいよな。」
「あの屋敷に、転移門を設置しようと思ってるの。そしたらいつでもイリディングルとサザンクロスを行き来できるでしょ?イリディングルのうちにもプロムに来てもらいたしさ。」
「それはいい考えだな。今まで従業員を雇ってこなかったのもこのせいだったのかと思うほどの巡り合わせだな。」
「今日も幸せな1日に乾杯」




