11 レストラン部研修終了
短編を書いてみました。
『契捲羽矢子の華麗な日常』
よかったら読んでみてください。
【新暦586年11月20日】
イリディングルで研修を続けていた彼らは、当初の予定のハンバーガー・ホットドッグの屋台の研修の範囲を遥かに超えて、多くの料理が作れる料理人になっていた。その上、今後の展開を考えた時、各街に一つお店があった方が広げやすいということになって方針を変更しクイックダイニングという新しい形態の簡易レストランを出すことに決まった。
その日に提供するメイン料理を2品に抑え、副菜、サラダ、スープ、パンもしくはご飯をセットにした、まあ平たく言えば定食屋です。品数を減らすことで食品ロスを減らすことができ提供の時間が短縮されることで回転数が上がる。それゆえ単価を安く下げることができる。店内飲食とは別にテイクアウトも可能である。テイクアウトの場合、初回は専用容器代がかかるが、次回からは容器持参だと5%オフクーポンがもらえる。
その形態になれるように、まず1号店をオローラの前の店の空き地に作ることに。アンドレさんはイリディングルの本店でレストランを続けて、オローラの1号店はブブカさんとアトムさんにお願いすることにした。それで、いつも名前を聞くのを忘れてたんだけど、アンドレさんのお店の名前は『パンダ亭』というらしい。なので新しくできる店は『パンダクイック』という名前になるそうだ。そもそもこの世界にパンダがいるのかとかその辺りから謎なんだけどね。
それで、デボラータでやる予定のステラさん、オデッサでやる予定のミリアさん、ハレルヤでやる予定のアヤさんは、各町のお店ができるまでオローラのパンダクイックで働くことに。ただ、ミリアさんはエステの研修生が来てる間のホテルのレストラン担当に回ってもらうことになったので、オローラの研修からは外れることに。本当は、あやさん優秀なので、そのままホテルに残って欲しいんだけど、まあ、本人の気持ち次第だからね。こればっかりは。
というわけで、今朝は朝早くから、オローラに帰る人たちを送るためにパンダ亭の前に来ている。一緒に働いていた仲間と別れるとあってみんな名残を惜しんでいる。
「そんでね、オローラのパンダ亭の跡地にお店を建てて欲しいの。」
いいけどね、やるけどね、突然はどうなの?と思いながら了承し、細かいあれこれを指示させるためにエレンも一緒にオローラに飛ぶ予定。
「みんな、別のお店勤務になって毎日は会えないけど、同じ会社の人間だから、年に数回は顔をこれからも合わせるからね。そんなに心配しなくて大丈夫だよ。」
「そうそう、研修には終わりはないの。常に新しい料理に取り組まないとあっという間に置いていかれるわよ。というわけでこれからもよろしくね。
じゃあ、オローラ組はこれから転移で向こうに行くから、残りのみんなは今日もお昼ご飯作って待っててね。」
一瞬でオローラの跡地に飛んできた僕らは土地の周りにバリケードをはり、外からの視線を遮りつつ、店と寮の建設にかかる。
そんなに広い敷地ではないので縦に伸ばして空間を確保する。
地下一階は、倉庫
一階は店舗(キッチン、玄関、カウンター、トイレ)
2階は店舗(サブキッチン、料理受け取り所、カウンター、テーブル席、トイレ)
3階は団体客用個室と従業員用風呂とトイレ
4階は従業員用個室とトイレ
5階は屋上、洗濯場
物の運搬用のミニエレベーターを1機つけることに。
『アーキテクト』『クラフト』
頭の中に明確なイメージを描いて魔法を発動する。
地下を掘り、周りを固め、柱を立てて、壁を塞ぐ、石が積まれ土台ができた上に建物が積まれていく。それと同時に、内部のカウンターテーブル、テーブル、椅子、キッチン、パントリー、ミニエレベーターのダクト、トイレ、風呂、配管、軽浄化槽(スライム入り)、屋上に水の魔法陣を描いたタンクを設置し、浄水の配管と接続。これで常に綺麗な水が飲めて、料理にも使えるようになる。以前は、排水は垂れ流し、浄水は雨水と買ってきた水を沸かして使っていたらしい。
一応、オーダー通りの建物ができたと思うので、みんなで内部ツアー。
それで、ミニエレベーターのダクトを見せてこれに合うのを作りなねってエレンに仕事を押し付ける。やるわよと言いながら、完璧に作り上げる。
「このミニエレベーターは一階のキッチンで作った料理を2階の人に届ける時に、いちいち階段を料理持って上がり下がるのは危ないからこれを使います。営業時間が終わった後のリネンなんかをカゴに入れて屋上に運んだり、そういう用途で使ってね。人間はダメよ。」
エレンがみんなに使い方を説明してる。これ、絶対に流行ってるレストランは導入したいって引き合いがくると思う。狭い土地の有効活用の仕方をこの建物から学べばいい。
「従業員の寮として6部屋作っておいたから、ステラさん、ミリアさんはしばらく使ってね。ブブカさんとアトムさんは実家から通うんだよね?」
「はい。そのつもりです。」
「じゃあ、二人にはお給料とは別に住居手当っていうお金を加算しておくね。」
「え?なんですかそれ?」
「一応、寮を使う人からは、お給料から寮費を天引きしておくんだけど、外で部屋を借りるよりも安く住むことになるのね。だからその差額分を自宅から通う人にはプラスするの。まあ、少しのお金だけどね。」
「そんなことまで考えてくれるんですか?」
ブブカさんは目を真っ赤にして泣き始めてしまった。
「いや、そんなの当たり前だから」
「いや当たり前じゃないです。そんなことしてくれる雇い主は会ったことがありません。」
「約束の給料なんか払われた試しがなかったよ。私らはそれでもそこで働くしかなかったからね。」
さっきまでずっと黙ってたステラさんが目を潤ませながら口を挟んだ。
「あたしは女だったから、余計にキッチンの男どもに嫌がらせされてさ。ここにきて初めて男も女も関係ないって扱い受けたんだ。まあ、できるまで返してもらえないってスパルタ指導付きだったけど。」
みんなふっと力が抜けて笑みを浮かべる。
「感謝してくれるのは嬉しいけど、僕らはお互いに対等なんだよ。気持ちよく働いてもらって、利益を上げてもらうことで、僕も潤うんだから。これからもよろしくね。」
「はい」
「ブブカさんは店長になるから、毎日のキッチンの仕事以外にお店の管理の仕事も入ってくるから大変になると思う。だから、デスクワークの補助に1名つけるけど、キッチンの仕事はできるだけ新しい人間を育てて使うようにね。ステラさんもミリアさんもキッチンの仕事よりもそっちの方が大変だと思うけど、店長として頑張って。ちゃんといい先生を派遣するから安心して」
「「わかりました」」
「さあ、新装開店の案内をあちこちに出さないといけないね。まず、オープン日を決めて、チラシを作ってお客様に知らせる。以前のお客様の興味を引くように、料理は日替わりだけど、以前の人気メニューも入ってるってわかるように、絵を中心のメニューを作ろう。外から、今日のメニューが何かわかるように大きく2枚のパネルを入り口に貼るようにして。開店記念のクーポンを配ろう。それから、材料の調達のために市場と食材の卸の人を呼んで話し合いだね。安い食材を利用する方が利益率が高くなるから、メニューの告知は1週間先までにして、食材はマジックバッグで保管。その辺りも店長に任せるから、頑張ってみて。でも不安だったりわからないことはすぐに連絡してくること。これは通信の魔道具。使い方はこの紙に書いてある。一応連絡先は、エレン、アンドレの2つを指定してあるから、なんかあれば二人に連絡して。僕が必要な時はすぐくるからね。しばらくの運転資金もこのバッグに入ってるから、ここに人差し指を置いて、魔力を流してみて。
そう、これでバッグはブブカさんしか中から物が出せなくなったからね。」
「はい、まずは頑張ってみます。これからもよろしくお願いします。」
「うん、頑張ってね。またすぐ様子見にくるからね。」
「またすぐくるから。ブブカなんでもあたしに連絡してね。じゃあ」
みんなにバイバイって手を振りながら店を出た。
なんとなく寂しい感じがしたけど、しんみり感出すのも違うなあって思って
「デボラータとハレルヤの物件も探しにいかないとだね。」
なんてどうでもいいことを言ってしまう。
「そうね。オローラのお店がどうなるかしばらく様子を見てからまた考えましょう。」
「そうだね。用事も終わったし、帰ろうか。あっすっかり忘れてた。」
「どうしたの?蒼」
「あのさあ、服を頼んでたんだよ。でもそれを取りに行くのを忘れてて。今どこまで作業が進んだかみてくるよ。」
「じゃああたしも久しぶりに寄りたい店もあるから、2時間後に待ち合わせでいいかしら?」
「いいよ。助かる。じゃあ後ほど」
そう言って僕らは別れて、僕はIVYへ向かった。




