9 創世神話で語られない真実
9 創世神話で語られない真実
教会にみんなを連れてきた僕は座ってもらって、一人説教台に立った。
「これから、この国の隠された真実をお話しします。どうぞお座りになってお聞きください。」
〜この世界を世界神が開き、創造神が生命を創造し、破壊神が腐り落ちた生命と世界を破壊し再生へと導く。この3柱の大神の大きな役割はずっと変わらず引き継がれています。
破壊神は世界や生命を破壊する際、その特徴を徹底的に調査します。なぜ、破壊しなければならないほど腐り落ちたかを。そして、その内容は世界神と創造神に送られ、世界神は大陸の位置を離したり、土地の形を変えて、気候や地形を変えたり、山を作り別種族の衝突を防いだり、森や谷を作って世界を分断したりしました。先回りして問題が起こらないようにしたんですね。
創造神は新たに創造する命の個性を決定する参考にしたり、今現在世界に存在する生命の意識改革や、身体改革を行う参考にした。
植物が作られ、虫が作られ、鳥が作られ、獣が作られ、精霊が作られ、エルフが作られ、獣人が作られ、人間が作られた。
最初はシンプルだった。
何もない大地に一つの種を植えた。芽が出た。葉ができ、茎が伸び、花が咲き、実をつける。しかし、自分の落とした葉に埋もれ枯れてしまった。
対応策は、地面に落ちた、葉や枝を分解するものがいる。できた実の外を食べ、中心の種を大地に蒔く存在がいる。
故に、創造神は、虫を作った。鳥を作った。獣を作った。
遠い距離を運ばれた種が植えられたのは、寒い土地だった。それで、その種は根づけなかった。故に、世界神が、その土地の標高を下げ温かい土地へと変えた。硬い地面を柔らかくした。そして創造神は、地面を耕す獣を作り、寒さに強い種を作った。
でも、ほんの少し他の世界の手入れをしている間に、前に作った世界が滅びることが続いた。そこから学んだことも膨大になり、神は自分たちの代わりにはならないが、代わりに世界を治める存在として人間を作った。精霊たちから、肉体を持つエルフを作ったが、彼らは繁殖力が低かった。それで、命をもっと短く、エルフに似た人型の人間を作った。
人間は、肉体的にも精神的にも弱かった。
故に、生存競争で他の種に勝てず、何度も絶滅の危機に瀕した。
故に、彼らは人間に知恵を与える事をきめた。故にアリアーノ世界の管理神に知恵と技術を司るアロンを指名した。
アロンは、人間たちの信仰心と引き換えに、知恵と技術を授けていった。
その結果、人間は生存競争に勝ち抜いた。それだけではなく、今度は他の生き物を迫害し始めた。3大神の目的は、世界の循環と存続。でもアロンの目的は、自身の神格の向上。つまり、3大神を超える大神になることだった。ここで両者の目的が違ってしまったこと。これがこの先の不幸の始まりになりました。
アロンは大地と空の力を自らに集め始めた。次に地上の生命でありながらも、強く、賢い存在として信仰を集めるものたちを傘下に集め始める。聖獣、神獣、精霊、亜神、地上の神などだ。管理神のように天から遣わされてくる神とは違い、地上にも多くの神がいる。
そして、権能の被る神同士を戦わせ権能の収奪を唆す。そうして、本人は知らず邪神となっていき、最初は自らが邪神に落ちることのないように細心の注意を払っていたアロンも、大神たちとの戦いで背に腹は代えられず眷属神たちを吸収したことで邪神となった。
しかし、アロンは自らが、亜空間に閉じ込められた後も、有力者や眷属神を使って、信仰を捧げ続けさせることで、自らのカムイを維持していた。
それと同時に、大神の一柱破壊神を貶めることで、破壊神への信仰をやめさせ、カムイの低下を図った。これは破壊神の力を落とすことで、自身の作り上げた世界の破壊を最小限度にするための措置だった。
アロンは人に連帯を教え、集落から都市国家ができた。覇権を競い合うようになり勝者と敗者、階級、貧富の差が生まれた。そして、獣たちが無理やり使役され、獣人たちやエルフが奴隷に落とされ、一部の支配者層以外の人間たちも搾取と略奪の対象にされる暗黒の時代が訪れた。自らが指名した管理神が世界の形を歪ませたことに心を痛めた3大神は新たな5柱の管理神に世界の管理を委ねた。
そして、世界を憂う一つの魂の叫びに気づいた管理神たちは彼女に力を与えた。実質的な武力ではなく、救済を求めるすべての魂を救うために、信仰の力を与えた。彼女の名はイブ。野良聖女として、助けを求める人に寄り添い続けた人だった。そして彼女は信仰で人をまとめ創世教を立ち上げ、聖教国を作った。彼女はその力の限り民に尽くしたけど、彼女の死後教会の内部も少しづつ腐敗が蔓延っていく。
そして、聖教国以外では全く状況が改善されないまま、数百年の時がたち、32代目の教皇ザイムンフェルドの時に、大きな問題が起こる。破壊神の命を受けた、輪廻と転生の神カリスがアイネンホルト王国の王妃ゾフィーナの息子エレストロ王子に異世界の魂を転生させた。この子は世界のあり方を根本から変えるために神様にスカウトされてこの世に転生してきた神の愛子だった。当然神たちは神子を守るために、教会に神託を下ろす。当時の聖女は、エレストロの従兄弟にあたるカロリーナだった。教会の中でもカロリーナの周辺は色めきたった。ザイムンフェルドは神託を受けることができない教皇だったこともあり、カロリーナを枢機卿に推し、神子であるエレストロ王子を次期教皇に推す人間が増えた。これに焦ったザイムンフェルドは、その心を見透かされたアロンによって調略され、エレストロを殺してしまう。
この後、破壊神の怒りは凄まじく、国内のあらゆる場所で雷が落ち、火砕流が起こり、雪崩、地割れ、津波、土石流とあらゆる天災が一気に巻き起こった。これにより、多くの人間が死に、街は壊され、生き残った人間たちも生きる希望を失っていく。
そんな中教会内の粛清の後カロリーナが歴史上二人目の教皇になる。
(第33代)
枢機卿も6名の定員を1名にし、綱紀粛正を行う。ただ、カロリーナは清貧で王家の人間であったことから政治的な才能もあった。しかし、統治があまりに潔癖だったために多くの反発を食らい、短期政権で終わってしまう。
また、復興や教会内部のゴタゴタを収めるために多額のお金が必要になったことから、大商人たちの力を借りてしまったことで、その後の教会内部の腐敗の原因を作り出すことになってしまう。
その後、32代教皇が神子を殺したために破壊神の怒りを買ったために天災が起きたとは言えない教会は破壊神を邪神認定し、全ての責任を破壊神に押し付けてしまう。
その後、腐り切った聖教国に興味をなくした破壊神は聖教国に加護を与えることをやめ、放置することに。その結果国内は『虚』と呼ばれる虚無空間が増えて、人も土地も消えていっているというのが今の状況です。
長い間、手を組んでじっと話を聞いてくれていたクレリック様が声をあげた。
「なんということだ。私たちは知らなかったとはいえ、なんという大罪を犯してしまったのか。この国の全ての創世教の教会の認定を剥奪し、真神教を国教として認可しよう。」
それを聞いて僕はとても驚いた。国教認定は何十年かかるかなって思ってたからね。
「ありがとうございます。本当のことを言うと、僕の語る真実をどれくらいの人が真実だと認めてくれるのかわからなかったので不安でした。でも同時に、僕の声に耳を傾けないなら、世界は滅びるだけ。ってどこか外からものを見てる感覚が僕にはずっとあって。こんなこと言うと、呆れられるでしょうけど。」
ジョセフィン様が困った顔をしながら続ける。
「いいえ、呆れたりしないわ。あなたは善良で優しいけれど、目的のためには非情になれる人。10歳の可愛い見た目とは違って、決断が早く迷わない。導くためにはなんでもしてくれるけど、甘えは一切許さない。自分の利益のために動いていないから、抗う相手を放置する。私はそれに気づいた時、背筋に冷たいものが走ったわよ。」
「ええ?お母様を怖がらせてたんですか?」
みんな笑ってるけど
「違うわよ。あなたを怖がったんじゃなくて、あなたに見捨てられない存在でいるために自分を建て直さないとっていう緊張よ。」
そんなこと思ってたの?ラシーヌ様もうんうんって頷きながら
「わかるわ。蒼ちゃんと会ってから、毎日が本当に楽しいの。びっくりするぐらいやることは増えたし、侍女や侍従たちも緊張感を持って頑張ってるわ。それでも、毎日何か明るい未来に動いてるっていう実感があるの。前は離宮に押し込まれてただ朽ち果てていくのを待たれてる存在だったのにね。」
「おばあさま、これからもっと忙しくなりますよ。それにおばあさまの本質は騎士というか司令官なんです。僕ね、不思議だったの。おばあさまってなんでこんなに強いのにみんな知らないんだろうって。」
そういうと、シーンと辺りが静かになる。あれ?なんか変なこと言った?
「蒼?聞き間違いか?お義母様が司令官の才能と武術の才能があると?」
「はい、この中でダントツです。世が世なら、大将軍になってたでしょうね。」
「お義母様、それは本当ですか?」
「もう、蒼ちゃんどうしてバラしちゃうのよ。」
「え?お母様?」
プリシラ様が本気で驚いている。
「プリシラ、あなたのせいでもあるんですからね。私はもともと剣の才能を認められて騎士になるのが夢だったのよ。でも王妃になってあなたを産んで。あなたを育てるのに、そんな経歴の母なんて認められないでしょう?」
「おばあさま、私剣を学びたいんです。お願いです。教えてください。私、逃げるときにベロニカ一人に責任を負わせて逃げ出してしまった。私はもうあんな惨めな思いはしたくないんです。
それはわかる。それにセリーヌも剣神様の加護ついてるんだよね。
「セリーヌはさ、本気でやるならいいと思うよ。だって、剣神様の加護ついてるもん。」
えーー。みんな驚きすぎ
「ちなみに蒼。わしにはなんかついとらんか?」
「えっと、法と正義の神 テミス様の加護をいただいてますよ。あまり加護を人間におつけにならない神様ですので、すごく珍しいです。」
「そうなのか?なんと有難い。」
「テミス様の加護は、法律を作ったり運用したりする際に飛び抜けて優秀な才能を示します。これで新王国の法律作成は一気に捗りますよ。きっとどの国よりも抜けのない完璧な法律が出来上がるでしょう。それと、これは知られていない効能でこれから世界にひろめていかないといけないことですけど、法律に携わる人間の育成機関にテミス様を祀る小神殿を作ると、不正や脱法できない人間の育成につながります。また、法律を執行するものの養成機関においても正義の名の下に運用する人間育成が進みます。アロンは人間の弱い部分に付け込んで行動変容をせまります。テミス様の加護はそれを事前に打ち消してくれるのです。」
「なんと、そうか。それはすぐにでも官僚の養成機関の建物にテミス様の神殿を建てないといかんな。」
「はい、ぜひ、お願いいたします。」
「あと、ここにはいらっしゃいませんが、アリサ様には魔法神様の加護と賢者の称号がついています。これは最近ついたようです。彼女には現役の賢者の師をつけるべきでしょう。ねえ、ジョセフィン様」
「あー、やっぱり。蒼ちゃんには隠し事できないわね。バレてしまったものは仕方ありませんね。アリサの教育は引き受けましょう。」
次々明かされる家族の秘密に慌てふためくジルベール。
「なんか、みんなすごくない?俺なんもないよね?」
「あのね、ジルベール。今は言えないけど、一番チートなのはジルベールだからね。それから、プリシラ様には私もまだお目にかかっていない神様の加護があります。商業神様です。商人たちを巻き込んで、商業神様を祀る仕組みを考え出された方がよろしいかと。それが神様に対する最大の寄進になります。それにいただいた加護により、商いに精通するようになられるでしょう。これからの国は武力で威嚇や競うのではなく経済で国を建てていく時代に入ります。プリシラ様のお仕事はこれから大変になるでしょう。」
「まあ、商売の神様だなんて。私にピッタリね。」
「商人の嘘に騙されないようになったり、一番儲かる売り方とか、とにかく商売に関する能力が駄々上がりです。」
「プリシラがわしに帯同してくれたら、契約で騙されることはなくなりそうだな。」
「そうですね。ちょっとお茶にしましょうか?教会の裏に僕の城がありますのでそちらでお茶にしましょう。」
みんなを城の大広間にセッティングされた大きなテーブルの前まで転移で移動する。南側に広がるイリディングルの街が見える。まだ建物はちらほらしか立っていないので、ほとんどは自然の景色だ。
「蒼と一緒だと全く歩かなくなるなあ。この窓の外に広がってるのがあの死の谷だった場所か?なんと美しい。」
「はい、女神様方と植物の大精霊フローラの助力を得て、このように美しい土地にしてもらえました。」
「さっきいたMESH TOWERがあれね。この街は大きいのね。」
「これからいろんな建物が立ってくるともっと面白い街になると思います。
皆様お待たせしました。どうぞお席におつきください。」
みんなの前に紅茶と、いちごのタルト・チョコレートを出しておく。
ポットが一人でに立ち上がってみんなのカップに紅茶を注いでいく。
「蒼ちゃんは使用人が少ないわね。」
「そうなんです。なんでもみんなできちゃうから特に必要としてこなかったのと、何かと秘密が多いから雇えないっていうのもあって。」
「そうよね。それだったら奴隷を買ったらどうかしら。蒼ちゃんが奴隷制度を嫌っているのは知っているけれど、奴隷だと秘密を守ることができるわ。」
「確かにそうですね。いい奴隷がいないか探してみます。あと、ラシーヌ様解放していただいた奴隷たちでうちに来たいと希望していたものたちも引き取らせてもらいます。」
「街を見せてもらえたから安心して送り出せるわ。」
「はい、ありがとうございます。今は魔法で見えないようにしてるんですが、今日からは門は閉じたままですが、街を覆う壁は見えるようにしておきます。」
そういうと、何か忘れてると思ってたことを不意に思い出す。
「そうだ、忘れないうちに出しておかないと。これ年齢を変えるキャンディーです。水色のキャンディーは10歳プラス。ピンクのキャンディーは10歳マイナス。ちょっと僕やってみるね。」
その言葉に女性陣たちの目が一気に輝く。
そうやって、水色のキャンディーを一粒食べる。すると、20歳の僕に。
「こんな感じです。僕はピンクのキャンディー食べたら赤ちゃんになっちゃうから使えないけど。元に戻る時に使います。」
元の10歳に戻る。
「特に制限時間はないです。トレーニングの時に若くなりたければ、ピンク使ってもらってもいいと思いますし、お忍びで出かけたい時とか結構便利ですよ。たくさん作ったのでお裾分けです」
きゃあ。とえ?って聞き返したくなるような声を聞いて戸惑う僕とジルベールを置いて、みなさん大喜びの大騒ぎ。みんなピンク食べてる。
「あら、顔の皺とかそんなことより、体が軽いわ。動きやすい。蒼ちゃんもう一粒食べたらあと10年若返るの?」
「はい、そうです。でも連続食べは3粒までにしてください。あと、このことは外にバレないようにしてくださいね。」
「そうね、私たちは常にいろんな人に囲まれてるからなかなか難しいわ。」
「うーん、そうですね。お忍びで出かけるときに隠れて使うしかないかもね。まあ、その辺はおいおい考えましょう。」
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みんなあっという間に、タルトチョコレートを食べちゃったから、追加でシュークリームと、アーモンドチョコレートと塩煎餅を出しておいたけど、クレリック様が塩煎餅にハマりまくってお土産で持って帰ったよ。




