7 通信の魔道具
冒険者ギルドを後にした僕たちは門の外に出ようと道を歩いていた。
「ねえ、ジルベール、クレリック様は王様なわけで忙しいよね。いきなり会いに行くのはやっぱり失礼だよね。」
「え?今頃?」
ガーン、普通に考えてそうだよね。門番眠らせたり普通だったら打首ものだよね。
「じゃあ、手紙がいいかな?」
「うーん、本当は良くないけど、お母様は手紙送られるよりも直接会いに行く方が喜ぶと思うから、ジョセフィンお母様から魔道具でお兄様にお伺いをかけてもらおうか?」
「そうだね、それがいいかも。でもね、今回の話し合いにはラシーヌおばあさまも呼んだ方がいいと思うの。なぜなら、今回の誘拐に関する捜査と断罪をクレイダー公爵にやってもらおうと思ってるんだけど、彼はミノラ王国の貴族だからさ。おばあさまが間に入った方がスムースでしょ。」
「そうだな。じゃあ、おばあさまにはクレイダー公爵を呼び出してもらって、会議に参加してもらおう。」
「じゃあジョセフィンお母様のところに転移するね。」
街の門を出て、森の中に入った僕たちはバイクを出さないで、転移した。
カラカラカラカラ
お母様からいただいた魔道具の鈴を鳴らす。しばらくするとリリさんが出てきた。
「今、ジョセフィン様は会議中でして。もうしばらくすると終わりますのでしばらくお待ちいただけますか?」
「実は、アンダルシア王国連邦の最高権力者の方々とお話し合いをしなければならないことができまして、みなさんお忙しいでしょうから、お母様からお兄様のご都合を聞いていただこうと参りました。」
ジルベールが僕の代わりに話をしてくれた。
「どういった内容でしょうか?私が代わりにお伺いしても?」
「はい。まず一つ目。ラシーヌ様が保護してくださっている違法奴隷に関わることです。アレジ王国側の取りまとめをしていました者が発覚しまして、現在アーリントン伯爵に身柄を預けてあります。そのものが、奴隷売買に関わったものの名簿を持っておりまして、その中に高位貴族がかなりたくさん含まれておりました。その取り扱いをどうするかに関するご相談です。
次に二つ目。私どものイリディングルからオデッサ・オローラ・デボラータ・ランドサット・オリサルト・ベリス・ミアを繋ぐ列車という新しい乗り物を提案したいと考えています。この説明と意義をご説明したい点。
3つ目にみなさま専用の魔道船をお作りしたく。これは武力の底上げと、避難の選択肢を増やすことにつながります。
4つ目に今隣の聖教国で説明のつかない現象が起こっていて、日々土地が消えていっているそうです。これを放置することは危険だと判断しました。」
「どれも、緊急性のある問題ばかりですね。すぐにジョセフィン様にお伝えしますので、お二人はついてきてください。」
リリさんのうしろをついて歩いていく。こじんまりした応接室に通されてそこで待たせてもらう。
「イリディングラからベリスやミアまで高速列車が繋がるようになったら、物流革命が起こるよな。エレンが来てくれた意義は大きいな。」
「そうなんだよ。これが繋がることで大きな雇用が生まれる。今までなかった職種ができる。仕事に就けない民が減ることで経済活動が活発化するし、国力は増し、3国の統一が早まると思うんだ。」
「確かに。それが今喫緊の問題だよ。大量のやらかし貴族の処断と、その後の道筋を早くつけないとな。蒼がせっかく道を作ってくれたんだから、何とか形にしないと。」
「そのためには強力なリーダーシップと手足となって働く優秀な人材。これに尽きるから。」
なんてことを話していたら、ジョセフィン様が部屋に入ってこられた。
「お待たせしてごめんなさい。」
長い会議だったのかも、ちょっとお疲れのご様子だ。
「いいえ、先ぶれもなくいきなり来る僕たちが悪いんですから。それで、ご迷惑をおかけしないように連絡用の魔道具を作ってみました。」
そういって、アイテムボックスから、手のひらサイズの薄い黒い板を取り出した。これは、一見スマホのようにも見えなくないんだけど、画面はついていない。薄い黒の金属板で、小さな魔石を嵌める場所が一つついているだけ。できることは、音声メッセージを録音して送ることができるというもの。一回のメッセージで最大1分のメッセージを録音できる。会話できる魔道具は長い時間二つの場所を繋がないと行けないので、膨大な魔力が必要になるが、一方的にメッセージを送るだけなら、短い時間、ごくわずかな空間を繋ぐだけで済むので、転移術の1万分の1の消費魔力ですむ。
「この通信の魔道具は、魔石に少し魔術を流します。そうすると明るく輝き出します。点滅が始まると、魔道具に向かってメッセージを話してください。終わる時にもう一度魔石に触れると、魔石の明かりが消えます。その次に、魔道具表面の10個のボタンを事前に登録しておき、メッセージを送りたい人のボタンを押してから、送信とつぶやいてください。そうすると、相手にメッセージが届きます。ちょっとやってみましょう。ジョセフィン様に渡した魔道具の一番にはクレリック様、二番プリシラ様、三番セリーヌ様、四番ラシーヌ様、五番ジルベール、六番蒼で登録してあります。小さく名前を書いてあるからわかりますね。ではまずやってみましょう。お母様、魔石に触れてください。はい、そう、今光りました。点滅始めましたね。ではメッセージを吹き込んでください。何でもいいです。」
「ジルベール、メッセージよ。聞こえるかしら?」
「じゃあ、魔石に触れて明かりが消えるのを確認してください。はい、そうです。できました。じゃあ、五番のボタンを押して、送信とつぶやいて」
「送信」
ピコン
「これがジルベールの魔道具だよ。今一番上のラインが白く光ってるでしょ?これがメッセージが届いた印。じゃあその光ってるラインを人差し指でなぞって。」
「こう?」
「そう、するとメッセージが聞こえる」
「ジルベール、メッセージよ聞こえるかしら?」
「おお、すごい。これはいいね。」
「蒼ちゃんこれすごいわね。今使ってるメッセージの魔道具より便利だわ。」
「気に入ってもらえてよかったです。これで事前に連絡しますね。まだまだ改良の余地がたくさんなので、アップデートできたらまた新しいの持ってきます。リリさんも持っておきますか?お母様リリさんが持ってたら便利でしょ?」
「それはそうだけど、こんな高いものいいのかしら?」
「道具は使ってなんぼですよ。便利は正義」
「違いない」
ジルベールも気に入ってくれたみたいだ。内緒で作った甲斐があった。
「じゃあリリさんのは調整して後で渡します。それで、今日来たのは皆さんと今後のことで重要な案件を話さないといけなくて、会議の日程をどうすればいいか、クレリック陛下に聞いていただきたかったんです。でも、お母様がお嫌でなければ、転移でランドサットのお城まで直接向かいますか?魔道具も渡したいし。」
「うーん、そうねえ。多分あの子はすごく忙しくしてるでしょうけど、この魔道具があれば連絡を取り合うのも素早くなるし、効率的よね。今日話し合いの時間が持てなくても、一回行って話しておくのもいいかもしれないわね。」
「じゃあ、蒼はラシーヌ様のところに行って、ラシーヌ様連れてくれば?俺がお母様をランドサットに連れて行くよ。」
「そうだね。じゃあお願いしてもいい?じゃ、お城の家族のリビングに転移するようにするよ。」
そうやって、二手に分かれると、僕はラシーヌ様を迎えに行った。ラシーヌ様も、エステ会社の運営とエステティシャン候補生の選抜をされて忙しくされていた。
「蒼ちゃん、頑張って、エステティシャン候補10名、と財務を担当する財務官3名、運営を担当する3名、統括1名の合計17名決定したわ。」
「イリディングルにすでに最高のエステサロンを作ってあり、そこで研修を行いますので、すぐにでもかかれますね。ありがとうございます」
「今日はどうしたの?」
「実はみなさまで話し合いをしなければならないことができまして、ランドサットまでご一緒していただけますか?転移で行きますからすぐです。」
そういうと、僕の通信の魔道具が光だした。ラインをなぞってメッセージをきく。
「僕たちはお城のリビングに到着したよ。プリシラ様と、セリーヌ様も一緒だ。待ってるな」
ジルベールは仕事が早い。
「蒼ちゃん、それは何?今、ジルベールの声が聞こえたと思ったんだけど。」
「これは通信の魔道具です。ラシーヌ様の分も用意しています。あちらに転移したらお渡ししますね。」
「あら、嬉しい。私は会議は終わったからしばらくは大丈夫よ。」
「では、ランドサットへ向いましょう。」
僕と、ラシーヌ様がランドサットのお城に到着すると、4名がソファーに座ってくつろいでおられた。
「まあ、お母様。」
プリシラ様が立ち上がると、ラシーヌ様のところに駆け寄ってくる。
「おばあさま。ようこそお越しくださいました。」
セリーヌも立ち上がるとその場でカーテシーで挨拶をする。
「二人とも、久しぶり。会えて嬉しいわ。ジョセフィン様もお久しぶりです。でも、近頃は魔道具で手紙のやり取りをよくするのでそんなに久しぶりな感じはしませんね。」
「本当に。毎日こんなに話すことがあるなんて何十年ぶりかしらね。」
「本当に。」
みなさま、和やかに席についてお話しされている。会話の切れ目に静かに話の中に入って、通信の魔道具を渡して使い方の説明をする。ジルベールに他の部屋に行ってもらい魔道具の利用法の確認と実際に使ってみる。案外みなさんすぐに使い方をマスターされたので肩の荷がおりる。
「蒼様こんな便利なものありがとうございます。今使っているのは、備え付けの大きな機械で、文字だけで音声は送れないんです。だから、いつでも持ち運びできるこの魔道具は本当に助かります。」
「喜んでいただけて幸いです。しばらくは、この魔道具の秘密保持のためもありますが、まだ、たくさんの人が使える仕様になっていないので、しばらくはこのメンバーの間だけの利用とさせてください。登録は10人までできますので、側近に持たせたい場合は4名までは可能です。」
そんな話をしていたら、クレリック様が入ってこられた。
「お母様方ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです。蒼もジルベールも先日も協力してもらったばっかりなのに、今回も色々と申し訳ない。」
「クレリック様、お忙しいところお時間ありがとうございます。今、みなさまに通信の魔道具の使い方をお教えしたところです。みなさんもう使えますので、後ほど使い方をお教えしますね。今日は緊急に4つのことを決めなければなりませんで、押しかけてしまいました。始めさせていただいてよろしいでしょうか?」
「ああ、構わん。はじめてくれ」
「まず一つ目。ラシーヌ様が保護してくださっている違法奴隷に関わることです。アレジ王国側の取りまとめをしていました者が発覚しまして、現在アーリントン伯爵に身柄を預けてあります。そのものが、奴隷売買に関わったものの名簿を持っておりまして、その中に高位貴族がかなりたくさん含まれておりました。その取り扱いをどうするかに関するご相談です。
次に二つ目。私どものイリディングルからオデッサ・オローラ・デボラータ・ランドサット・オリサルト・ベリス・ミアを繋ぐ列車という新しい乗り物を提案したいと考えています。この説明と意義をご説明したい点。
3つ目にみなさま専用の魔道船をお作りしたく。これは武力の底上げと、避難の選択肢を増やすことにつながります。
4つ目に今隣の聖教国で説明のつかない現象が起こっていて、日々土地が消えていっているそうです。これを放置することは危険だと判断しました。」
できるだけ、簡潔に言葉を選んで説明したけど、簡単には終わらないっていうのはわかってもらえたみたい。




