6 1回の素材売却でDランクまで上げてもらっていいんですか?
6 1回の素材売却でDランクまで上げてもらっていいんですか?
【新暦586年11月18日】
ランドサットへ行く時にお世話になったヒュンはその後聖域の中の森の中で暮らしてる。ずっとそこにいるわけじゃなく、あちこち飛んで行ってはお腹を満たしているみたいだけど。たまには遊んであげないと。
僕は聖域の城に転移すると、念話でヒュンに話しかける。
「ヒュン、おはよう。今何してる?」
「あ、蒼だ。今朝ごはん食べ終わって寝てるー。何か用事?」
「ここのところ忙しくてさ、全然話せてなかったから心配だったんだ。元気ならよかった。なんか困ってない?」
「僕は何も困ってないんだけど、聖教国の黒の森に住んでる仲間が、森が消えて食べるものがなくなって困ってるって。」
「え?何それ?理由はわかる?でも困ってるんだったら、聖域に引っ越してきていいよって伝えてよ。移ってきたい子はみんなどうぞって。」
「え?ほんとに?じゃあこれから行ってくる。」
森が消えるってなんだ?何が起こってるんだろう。これは後で神様に聞かないと。ジルベールを念話で呼び出す。
「ジルベール、今日はオデッサの冒険者ギルドに行って素材のお金を受け取ってから、ランドサットにクレリック様達に会いに行くよ。今、聖域の城にいるから、みんなに朝ごはんごめんって言っといて。」
「おう、わかった。伝言したらすぐ行く」
ジルベールがくる間に、城の周りの何もない草原に目をやる。精霊や動物、魔物達がのびのび暮らしている。ここは何としても守らないと。
前世の電気が無限ではなかったようにこの世界の魔素もきっと無限ではない。だから、魔法依存を少しでも減らす技術革新を進めないと、この先この世界は詰んでしまう。移動・冷却・暖房・通信まずはこの4つを前に進めていきたい。遠距離転移を繰り返してる僕がいうのも烏滸がましんだけどね。
「蒼、おまたせ」
僕の影から、ヌーっとジルベールが出てきた。手にはサンドイッチが。
「まだ食ってないだろ。はいこれ。」
「ありがとう。じゃあ行こうか。」
魔動バイクを出して、二人で乗り込む。前回よりもスムースに移動できた。
今度は門番の兵隊に冒険者ギルドのカードを見せて、街の中に入る。
冒険者ギルドに入るとなかなかに冒険者が集まっていた。朝イチの時間からはかなり経ってるんだけど。不思議に思いながらアンジーさんを探す。カウンターの右端の奥に座ってるアンジーさんを見つけた僕は声をかける。
「アンジーさん、おはようございます。素材の代金をとりにきました。」
「蒼さん、ジルベールさん待ってました。ギルドマスターがお待ちです。一緒についてきてください。」
そういうと、僕らの返事も聞かずにずんずん奥の階段のほうへと歩いていく。慌てて後ろを追いかけていくと、ギルド長の部屋に到着した。
トントン
「ギルド長、アンジーです。蒼君とジルベール君を連れてきました。」
「おう入れ」
中に入ると、ギルド長と一緒にアーリントン伯爵も応接のソファに座ってた。
「おはようございます、蒼様、ジルベール様。ここで待っていて、正解でした。昨日はご迷惑をおかけしましたのに、お手を煩わせることになって申し訳ございませんでした。」
立ち上がったアーリントン伯爵は僕たちに向かって頭を下げてから謝罪する。
「アーリントン伯爵おはようございます。あの、できれば僕達のことは君づけで呼んでください。伯爵家当主のあなたに様付けされると、いろいろやりにくくなりますので。教皇や御使として動くときはそれなりの格好でそれなりの態度で出ますので、冒険者としてあるときはそのようにお願いします。」
「わかりました。ではそのように。昨晩の商業ギルドマスターと暗殺ギルドの三人については取り調べの結果黒だと判明しました。また一緒にお渡しいただいた書類で十分犯罪を立件できます。感謝いたします。」
お互い立ち話を始めてしまったので、ギルマスが声をかけてくれる。
「話も長引くだろうから、まずは座ってくれ。」
ギルマスの言葉に頷くと着席する。
「まずは、先に渡しておく。お前達の素材は白金貨8枚、大金貨3枚、小金貨7枚、大銀貨8枚になった。ギルドカードに入れておくか?それとも現金で渡そうか?」
「全部カードに入れておいてください。」
「わかった。」
「それから、犯人捕縛に対する討伐料だが、領主からのお礼金は、大金貨3枚だ。これだけの素材代を受け取った後では些少に思えるでしょうが、勘弁いただきたい。ただ、商業ギルド長が盗賊のカシラだったと定義すれば、彼の財産は討伐したお二人のものになります。どのようにいたしましょうか?」
「僕らはいらないので、そのお金で基金を作って、違法奴隷として売られた人の捜索や解放のための代金として利用してください。また、射木復帰するための一時金として利用してもらっても構いません。お願いできますか?」
「はい、もちろんです。私の方で間違いなくやらせていただきます。」
「お願いします。それに、とんでもないことに、人間だけでなく、獣人や天翼族のような亜人にも手を出していました。これは国際問題として尾を引く問題になるでしょう。それに買った貴族達の問題もあります。彼らをちゃんと処罰できないとなると必ず問題が起こります。ここは圧力に負けず徹底的にやらなければなりません。大変失礼な言い方になりますが、アーリントン伯爵には少し荷が重いように思いますが、いかがでしょうか?」
面と向かって10歳のガキが大人に言うことばではないことは十分わかってるんだけど、曖昧にできない問題だし。少し顔を白くして俯いていたアーリントン伯爵だけど、吹っ切るように顔を上げると
「はい、おっしゃる通りです。問題を起こした貴族家に、我が家よりも上位の家柄がたくさんありました。彼らの圧力や妨害は私にはかわす力はありません。」
「だから、これから、クレリック様に会いに行こうと思っています。一人適任の方がいらっしゃいますので、その方を推薦しようかと。ですから、アーリントン伯爵には、ザイン伯爵家の問題と、違法奴隷解放基金に集中していただきたいのです。このことも、クレリック様とジョセフィン様にお伝えしておきます。」
「わかりました。では、早速取り掛からせていただきます。それでは、私は先に失礼させていただきます。」
アーリントン伯爵は、話し合いの後、すぐ取り掛かるつもりなのだろう。早々に立ち上がると部屋を出ていった。
「全く、あいつは気が早いやつだ。」
「大変、優れた領主だと思います。能力だけでなく、人柄が。あのような領主に治められるこの街は幸せですね。」
「まあ、口うるさくて細かいやつだが、いいやつだ。あいつお前らがくる前は悲壮な決意を固めた顔してたんだ。上位貴族とどうやって渡り合うか考えてたんだろう。でも蒼が早々にやつの肩の荷を下ろしてくれたから、帰る時の顔ニッコニコだっただろう?ほんとにありがとな。」
「いえいえ、失礼千万な言葉だとはもちろんわかってるんですけど、何事も適材適所ということです。正義感の塊の彼にはあの仕事が向いてるでしょう」
「そうだな。そうだ、もう一つ大事な話が。お前らの提出した素材がランクアップの規定をクリアしたので、お前達二人はDランクになる。それで、一件護衛依頼をこなしてもらえれば、Cランクに上げられるんだが、どうだろう?」
「護衛依頼?」
「ああ、今回は南部の港町サザンクロスまで商人のキャラバンの護衛についてもらいたいんだ。」
「期間はどれほどですか?」
「3日後の11月21日に出て、一泊野営して22日に現地到着。11月24日にサザンクロスを出て25日にオデッサに到着予定だ。」
「ジルベールどうする?」
「その日程だったら何とかなるんじゃないか?レストラン部門の研修は20日で終わりだろ?」
「そうだね。その話お受けします。」
「やってくれるか、助かる。じゃあ21日の朝5時にギルド前に来てくれ。そこで他の護衛メンバーを紹介する。」
「わかりました。もう一つ大切なこと忘れてた。僕らが作っている街イリディングルで求人があって、よかったら全国のギルドに回してもらえませんか?仕事を探している人たちに来てもらいたいんです。」
「わかった、求人票はアンジーが持っているから、相談して書いてくれ。
それの写しを他のギルドにも回すようにする。だけどできればその前に俺たちを連れていってもらえねえか?行けば何が必要か、俺も役に立てると思うしな。」
「わかりました。じゃあ、明日迎えに来てもいいですか?何時なら時間取れますか?4時間ほどあれば施設には十分だと思います。」
「じゃあ、朝の10時に来てくれ。」
「わかりました。迎えに来ますね。それじゃあ求人票はその後書くことにします。じゃあこれからクレリック様とジョセフィン様のところに行ってきます。」
「わかった。無理すんなよ。」
「はーい」




