3オデッサの冒険者ギルドで驚かれる
全員は載せられないし、パーティのメンバーだけで話したいこともありそうだったから僕たちは一足早く、オデッサに戻ってきた。
何食わぬ顔で、門番に2人で冒険者ギルドと商業ギルドに登録しにきたことを伝えると、仮の入城証をくれた。これをギルドに出せばいいようだ。
「ありがとう」
そう言って教えてもらった冒険者ギルドへ向かった。
大通りに面した大きな建物ですぐに分かったし、入り口は開いていた。
入り口を入ると、何人かの視線が集まってくるのを感じたけど、気にせず受付に向かう。空いている窓口が一つだけある。
「ようこそ冒険者ギルドへ。私はアンジー。よろしくね」
ショートカットの茶色の髪を可愛く整えた、小さな女性が優しく声をかけてくれた。
「すみません、登録したいのですが。」
「あのあなたは10歳を超えてますか?冒険者ギルドの登録は10歳からなの。」
「あ、はい。超えています。二人とも超えています。」
「そう、そうしたら申込書を記入してこの水晶の上に手をおいてもらえるかしら。」
「はい、向こうのテーブルで書いて持ってきますね。」
「ええ。この窓口でお願いね。」
そう言って少し離れたテーブルに歩いていく間に2人はアイコンタクトを交わして少し笑った。昨日、冒険者ギルド鑑定水晶でステイタスをそのまま出されると困るよねってなって、2人ともステイタス隠蔽を使ってそれらしき別の見せられるステイタスを用意した。僕は、名前から称号から全て隠さないといけないし、ジルベールもそう。どちらも希少だから誘拐やらトラブルに巻き込まれるのは困る。
というわけで、当たり障りのないステータスに書き換えてあるが、ちょっぴりドキドキしながら元の受付の窓口に戻る。
「かけました。」
「うん、大丈夫ね。じゃあこっちの水晶の上に手を置いてちょうだい。」
言われた通りにすると、水晶が明るく光って消えた。
「えっと、蒼くん10歳。職業なし。光魔法、風魔法、土魔法、闇魔法に適性があるのね。すごいわ、4属性の魔法が使えるなんて。あと剣術が得意なのね。スキルにクラフトとあるけど生産の能力もあるのね。若いのにすごいわ。頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます」
「えっと、次は君ね。ジルベールくん、13歳、職業なし
あなたは火魔法、水魔法、闇魔法が使えて、製薬と鑑定のスキル持ち
あなたもすごいわ。冒険者向きよ」
「ありがとうございます。」
「それで、2人のギルドカードはこれ。身分証明と銀行カードのような使い方ができるわ。現金で持っているのが不安な時ギルドに預けておけば、世界中のどこのギルドでも引き出すことは可能よ。あと大きな買い物をする場合
ギルドカードのみで決済も可能よ。過去の履歴によるけど、返済能力があると判断されたら、お金の貸し付けも行えます。だから無くさないようにね。
カードに自分の魔力を通しておいてちょうだい。カードの表面が光ったら成功よ。それであなた以外はそのカードが使えません。でも絶対ではないからとにかく無くさないように。」
「あと、あなた方はGランクなのでEランクの依頼までは受けることができます。ギルドへの貢献ポイントによって昇格しますが、Cランク以上は試験があります。当面は採集、探し物、運搬、清掃、警備などの依頼を中心に頑張ってみて。依頼はあそこのボードに出てるわ。」
「あの、素材が結構溜まってるんですけど買取はしてもらえますか?」
「してるわよ。ここで出せるもの?」
「いえ、結構な量があるのでできれば人目につかない広い場所がいいのですけど。」
「そう分かったわ。それじゃ明日の解体場に行きましょう。あなた達の担当になるからよろしくね。お休みの時は代わりのものが担当するから大丈夫よ。」
「はい。よろしくアンジーさん。」
受付奥の階段を降りて、最初の角を左に曲がるとしばらく真っ直ぐ進み、もう一度左に曲がったところに扉があった。中に入るとだだっ広い空間に様々な魔獣が置かれていて、素材の切り出しを行なっていた。
「この辺りでいいわ。」
「わかりました。」というと僕とジルベールのアイテムボックスから、素材を並べていく。
ダンジョン産の魔獣の素材、薬草を中心とした植物類、あと魔獣の肉。
珍しいところでは木材。それも僕のクラフト技術ですでに板にされているものを積み上げていく。
ダンジョン産だから解体の必要なし。だから手数料を引かれることもない。
ジルベールは金属と毒の素材を中心に並べていく。
周りの人間の呆れた視線が痛い。
「ちょっと蒼くん、この量は私では判断つかないからちょっと待ってて。」
そういうと、どこかに走り去っていった。しばらくして、ゴリマッチョのおじさんを連れて帰ってきた。
「ギルドマスターを連れてきたわ。」
「初めまして。僕は蒼です。」
「ジルベールです。よろしくお願いします。」
「ああ、ゴリ・ホテイソンだ。元Aランク冒険者だ。それでお前達が登録したてなのにすごい素材を持ってるって奴らか。それでこの様子だとどこかのダンジョン産だな。だが、こんな素材が出るダンジョンのことは俺は知らない。どこのダンジョンだ」
「死の谷です。一般に知られていない50階層のダンジョンがあります。僕らは一度踏破しています。」
そういうと、ゴリの体から威圧のオーラが立ち上がる。
「嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつけ。」
その一言に、僕が反応する前に
「おい、蒼は嘘なんかついてない、このタコが」
そういうと、『グラビティ』並みの重圧をかけていき、よせ、やめろとか言いながら、元Aランク冒険者が膝をつきうずくまってしまった。
「闇魔法 『影縛り』初めて見ただろ。」
僕の方を向いてニコって笑いながらいう。
「すごい魔法だね。僕のグラビティとか威圧に似てるみたい。」
ゴリを地面に縛り付けてる間に、二人でわちゃわちゃしてると、後ろからやってきて、ギルマスが脂汗かきながらうずくまってる姿を見てアンジーさんが悲鳴をあげる。
「きゃー」
アンジーさんの悲鳴で我に戻ったところでジルベールが魔法のキャンセルを行う。肩で息をしながら汗びっしょりのギルマスは僕らを睨みながら立ち上がる。
「ギルドマスター。僕の見た目がガキだからって甘くみないでもらいたい。嘘をついているとか、そのようなことを断定するならあなたは証拠を出さなければならない。このギルドを預かるあなたのような方が不用意な発言をすると問題が大きくなりますよ。このことはよく覚えておいてください。」
笑顔の中に毒を散りばめながら言ってやる。
「そうだな。今回のことは俺が悪かった。お前らの姿にまんまと騙されたわけだ。魔法使いとしてもかなりレベルが高いし、お前ら物理も相当できるだろう。全く隙がねえ。」
「謝罪を受け入れます。もし、ギルド内でギルドマスターに手を出したなどで問題にするようなら、ここを木っ端微塵に爆発して置くとこでした。命拾いしましたね。」
にっこり天使の微笑みを浮かべて毒を吐く。
「それで元に戻りますが、死の谷のダンジョンですが、ギルドに報告しなかったのには理由があります。そもそも僕はギルド員ではないから義務がない。次に死の谷周辺の土地はもともと所有者がいなかったのですが、周りがアレジ王国の領土であることからアレジ王国と余計な揉め事を起こさないために政府と交渉し、御使のアズール様に割譲されることが先日決まりました。ダンジョンはアズール様の領地の中にあるので、情報を外に出すことができなかったのです。そのことは、王国の担当部署を通じて各所に知らされるはずですが、まだ混乱しているのでしょう」
「混乱とはどういうことだ?」
「さあ、私の方から言えることはありません。情報が欲しければご自分で取りに行かれるといいでしょう。それで素材の買取はどうされますか?あなた方がいらないのでしたら、よそに高値で売るだけです。」
ゴリの元々の性格かもしれないが、性格は悪いとまでは言わないけど、厚かましさが鼻につく。力技でまだどうにかできると思ってるとしたら、もっと徹底的に解らせてもいいけど、それもめんどくさいか。
「別に商業ギルドや王都の大商人に直接売ってもいいんだ。アイテムBOXに入ってるんだから別に困りはしない。」
僕が黙り込んだタイミングでジルベールが言葉を紡ぎ、決断を促す。
「そうだな。素材は買い取らせてもらおう。ただ量が多いので計算が間に合わない。明後日以降に取りに来てもらえないだろうか?」
おーー、ちょっとは空気読めるんだ。馬鹿ではないということか。
「はい、いいですよ。では受取書をください。それとこの街に入るときに門番にもらったこの書類にも判を押してください。」
「分かったわ。それは上のカウンターで処理します。」
「それじゃ、ギルド長また明後日に。さようなら』
そういうと、アンジーさんと一緒に一階に上がり、書類を書いてもらう。
「今日はギルドマスターがごめんなさいね。でも、もし相手が貴族だと、いくらあなた達が正しかろうと不敬罪で捕まってしまうから我慢してね。」
「アンジーさんは優しいんですね。ご忠告感謝します。また明後日。」
そう言って冒険者ギルドをでた。




