みんなの希望を聞いたら思っていたよりも良い案に辿り着いた
18 みんなの希望を聞いたら思ってたより良い案に辿り着いた
【新暦586年11月13日】
今朝は気持ちのいい目覚めだった。と思ったらベッドの真ん中で寝ていて、ジルベールは床に落ちたまま寝ていた。このままじゃ風邪ひくよ。
『デリバリー』
ジルベールをベッドの上に戻して、布団をかけてあげる。
48階の訓練所で朝のトレーニングを終えると、シャワーを浴びる。
シャワーから出るとベロニカがキッチンでお茶を淹れてくれていた。
「蒼様おはようございます。今日は体調良さそうですね。グレンのエステが効いたみたいでよかったです。それでご相談なのですが、私もグレンからエステを学びたいと思っているのですが構いませんか?」
僕にお茶を出してくれながら相談を受ける。
「もちろんベロニカが習得してくれたら、お城の侍女の教育の時に助かるから、是非。今朝のお茶もいい香りだね。ありがとう。」
「もったいないお言葉です。」
「昨日具合悪くてエレンを放置しちゃったから、これから顔出しに行ってくる。ジルベールが起きたらそう伝えて。後お昼ご飯はエレンのとこのレストランのオーナーに作ってもらっておくから、準備しなくていいよ。グレンにエステの会社とエステティシャンの学校の設立が早まりそうだから、必要なものの書き出しを頼んでおいてくれる?昨日ラシーヌ様が大満足で帰ったでしょ?絶対すぐにジョセフィン様に連絡してるはずだから。あの二人仲はいいけど張り合うのはやめられないからさ。毎回両方を代わりばんこに勝たせるのも辛いよ。多分今日は呼び出しボタンが鳴り響くはず」
そういうと、ベロニカには珍しく小さく声を上げて笑う。
「昨日のジルベール様のお婆様・お母様トーク面白かったですね。ジルベール様があんなに女性の心の機微を理解されているなんてとびっくりしました。グレンと顔を見合わせて笑ってしまったんですよ。」
「ああ見えて、ジルベールは優しいの。じゃあ、後よろしくね」
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エレンの家の前に着くと、隣のレストランからはもう煙が立っている。
早くない?と思いながら店の扉を開ける。
「おはよう。こんな朝からもう開けてるの?」
「あ、おはよう。体はもういいの?」
「うん、昨日はごめんね。いやー家2軒運ぶって、それも長距離、かなりMPの消費が激しかったらしくてさ。これからはこまめにMPの確認しながらやるよ。」
「ううん、なんかごめんね。それでお詫びとアンドレの教育を兼ねて朝から新メニューの、ハンバーガー・ホットドッグを教えていたの。」
「へー。すごい。確かにこっちに来てハンバーガーまだ食べてなかったよ。朝ごはんには持ってこいだね。でもさ、提供と能率考えたら、別に店出した方がいいんじゃない?」
「そうなのよね。」
「ねえ、アンドレさん、オローラで雇ってた人はどうしたの?」
「え?どうもしません。解散しました。うまい料理の作り方教えてやったから自分たちでどうにかするでしょう?それが何か?」
「・・・・・・。エレン」
「(ぎく)、ご、ごめん。あたしも知らなくてさっき聞いてさ。」
「アンドレ、人は宝です。そんな自分勝手に解雇するなんて僕が許しません。この街において欲しかったら、今すぐオローラに戻ってみんなに頭を下げて戻ってきてもらいなさい。お金は私が当面どうにかしますから。いいですね。」
少し威圧強めでいうと
「はいいいいいい。すみません。」
と、土下座する。はあ、この世界に退職金やら、慰労金制度なんかあるわけもなくそれが普通。その日までの給金を払ってやっただけまだマシ。それもわかる。でもそれじゃダメ。人は食い詰めると何するかわからない。
するとそこにジルベールが僕の影からヌーっと出てきた。
「これ、どういうタイミング?」
確かに絵柄は穏当ではないね。かくかくしかじかと説明。
「じゃあ、俺が影渡で連れていくよ。どこの影、ああ、本屋の影がいいか。
アンドレさんはもう準備できてるのか?」
「ちょっと待ってください。」
と言って奥に引っ込んでいった。
すると、ピピピとベルがなった。ジョセフィン様だ。
「なんだろうこのタイミングの良さ。」
「それで悪いんだけど、ジョセフィンお母様から呼びだし。多分ラシーヌ様から聞いてエステの件だと思う。なんでラシーヌ様をこっちに連れてきて、昨日の聖域のお城の同じ部屋で。ベロニカとグレンにも準備してもらう。」
「お待たせしました。」
白いコックコートから私服に着替えたアンドレさんは、意外にも隠れマッチョなお兄さんだった。着痩せするタイプってやつ?
「アンドレさん、もうすでに新しい仕事が決まっている人には、長い間働いてくれてありがとうって、このお金を渡して。まだ決まってない人で、オローラにすみ続けたい人には、ハンバーガーとホットドッグの屋台をやらせよう。屋台と材料は用意するから、売上の50%を納めるようにって交渉しておいで。もし、こっちに来れるというなら、お店の横に社員寮を建ててあげるから、そこからお店に通ってもらって働いて貰えばいい。わかった?」
「は、はい。あのなんでこんなに良くしてくださるんですか?なんか、こんなに大事にされたことがないからどう考えればいいのか、頭の中がごっちゃゴチャです。」
「人は一人じゃ生きられない、支え合って生きていくしかないの。それを暴力や権威で一方的に強いる関係は僕は嫌い。どうせ繋がるなら、恩や信頼や優しさで繋がりたいじゃん。僕がアンドレさんにしたことを感謝してくれるんなら僕以外の人に同じことをしてあげて。そしてその輪を広げていって。
それが僕の願いだよ。」
「わかりました。10歳の子供にこんな大事なこと教わるなんて恥ずかしいです。坊ちゃん行ってきやす。」
「うん。ジルベール色々ごめんね。行ってらっしゃい」
二人が影の中に消えた後、僕は家に転移して、ベロニカとグレンにエステの準備をお願いする。昨日のセッティングをそのままあの部屋に置いてきたそうなので、体一つで転移するだけでいいらしい。グレンはぐずってるキリルを抱いている。
『転移』
聖域の城の中庭につく。
「じゃあ、悪いけどよろしくね。それとこれ朝ごはん。エレンとこのシェフの新作。ハンバーガーとホットドッグ。試してあとで感想聞かせて」
「はい、ありがとうございます。」
「嬉しい、腹減ってたんだ。」
「グレン様、言葉遣い」
「ごめんベロニカ、ついさ」
「施術の間はジルベールにキリルを見てもらって。」
「ああ、私が見られますから大丈夫です。」
「じゃあ、エレンに作業の指示を出してくる。またあとで戻ってくるね」
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「・・・・忙しいの。食べよ」
「うん。」
二人で残されてたハンバーガーとホットドッグにかぶりつく。
「美味しいけど、まだかなり改良の余地があるね。」
「パンもソーセージもパティもピクルスも全部。調味料もね。」
「僕のキッチンには前世の調味料が揃ってるから、味を覚えてもらってこっちの素材で作るしかないね。そうなるといずれは工場建てるにしても最初はハンドミキサー・フードプロセッサー・が必要になるじゃん。それにもモーターが必要。エスカレーターとエレベーターを緊急で作りたいの。屋敷とビルには絶対必要だから。なんでまずその開発からお願いしていい?」
「あのね、モーターはもできてるの。だから作るものに合わせて組み上げればいいだけ。」
「じゃあ、僕は何をしたら必要なもの作ってくれるの?」
「図面を描いて欲しいかな。部品の図面も。」
「僕さ、建築家だったけど、そこは専攻似なくてよくわからない。」
「いや、あなたにできなくても、あるでしょ?わからないことを教えてくれるものが」
「ああ、マジックブック」
「マジックブックって言うんだ。最初はさ、子供なのに嫌に物知りだなって思ってたんだけど、流石にこれ全部知ってるって神か?って思ってたから、AIみたいなアシスタントを持ってると思ったんだよね」
「さすがエレン。あったまいい」
「まあね。工学部志望だったからさ。16で死んだから大学行ってないけどね。父さんが自動車整備の工場やってたから、小さい時から機械が大好きだったの。転生の時に次は大好きな機械いじりができる暮らしがしたいって思ったみたいで。それで今のあたしがいるわけ」
「そっか、じゃあ、マジックブック、エレベーター、エスカレーター、ハンドミキサー、フードプロセッサー、車、バイク、魔道船のエンジン、の設計書、部品設計書をください。」
「すると、本が開いて、紙が出てきた。」
「すごいね。ちょっと見せて。ああ、すごい。わかりやすい。
これでできると思う。作る順番は?」
「じゃあ、ハンドミキサー・フードプロセッサー・エレベーター・エスカレーター・魔動船のエンジン・車・バイクかな」
「真っ先にバイクっていうかと思ったけど意外。」
「それがさあ、この世界は道が舗装されてないから、タイヤを使わないで浮き上がらせて進む形を考えてるのね。そしたら、モーターじゃなくて付与魔術の方が作りやすいなあって考えてて。」
「ああ、そういうことね。魔法が使える人にはそれでいいか。」
「それじゃあお願いしていい?心配だからアンドレさんのとこ見に行ってくるよ。」
「わかった作業しとく」
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オローラのお店があった場所に転移したら、空き地で泣いている人がたくさんいて困った顔で立っているアンドレさんがいた。
「アンドレさん」
「あっ。坊ちゃん。ちょうどいいところに。坊ちゃんに言われた通りにみんなに行って金を渡したら、みんな泣き出しちゃって。全員坊ちゃんの街に行くっていうんですよ。」
え?そうなの?
「僕は構わないけど。家族がいる人とかは大丈夫なの?」
するとアンドレさんと同い年ぐらいの男の人が出てきて
「あの、坊ちゃん。俺はブブカって言います。俺は行きたいんですが、子供がここから離れるのを嫌がってまして。」
「全然構わないよ。ブブカさんは次の仕事見つかったの?」
「いや、まだで。しばらく冒険者ギルドで日雇いでも斡旋してもらうつもりでした。」
「そうなんだ。あの、この街で屋台やるつもりない?その話アンドレさんから聞いてない?」
「いや、聞きました。仕入れなし、先行投資なしで売上の50%もらえるって夢みたいな話だったんですが、俺は坊ちゃんの言葉に、うううう、感動しちまって、そんなオーナーに雇われたいって思ったんでさ。」
「そうなの?なんだ、それならそれでいいよ。給料と手当を払うからこのまちで屋台やってよ。時々は研修でこっちにきてもらう事もあると思うけど、僕が転移で迎えにくるからさ。そんで、この屋台はあちこちに増やしたいの。ブブカさんが独り立ちしても大丈夫って思う子ができたら僕に報告して。新しい屋台を持たせて、別の場所で働けるようにするからさ。」
「本当ですか?そんなうまいやり方があったなんて。ありがとうございます。ありがとうございます。」
「いいこと教えてくれてありがとう。みんなも希望や何か問題があったらいつでも相談してね。ブブカさんが行ってくれなかったらこの解決法思い浮かばなかたから。それで何人くらいうちの街に来てくれるの?」
4人の手が上がった。
「今手を上げなかった人はブブカさんのやり方がいい人かな?」
「はい、俺はこの町で生まれ育ったんでこの町でもオーナーのもとで働けるならそうしたいです。」
「私は、デボラータって町の出身なんです。母の具合があまり良くなって聞いて帰りたい気持ちはあったんですけど仕事がなくて。でもこのやり方で
でボラータで仕事ができるならやってみたいです。」
「ああ、素敵だね。広がっていくのは僕も大歓迎だよ。他の街でやってみたい人は?」
二人の手が上がった。
「私はオデッサで」
「私はハレルヤで」
「じゃあ、だいたい1週間研修するから、家族に家を空けることを伝えて、当面必要なものを持って2時間後にここに集合。よろしく」
そう言って一度解散した。
「アンドレさんジルベールは?」
「ジルベールさんはここで俺を下ろしてくれて、ジョセフィンさんのところに向かいました。」
「わかった。じゃアンドレさんは先に戻ってようか?」
「いや、俺がいないと戻ってきた時不安だろうからここで待ってますよ。」
「わかった。じゃああとで」
ジョセフィン様の元へ転移した。




