女神からの手紙
4女神からの手紙
いつの間にか眠っていたらしい。
昨日食事を作って食べた後に、風呂に入って、ベッドの中でマジックブックを読んでいたところまでは覚えている。
この世界の常識に当たる部分を読み終わるぐらいで寝てしまったみたいだ。今日は魔法のところからかな。
そう思って起きて伸びをする。螺旋階段のしたから上を覗くともうかなり上まで階段ができていて先がわからないぐらいになっている。ポーンという音が聞こえてマジックブックを見たら本が光っている。
慌てて本を開いてみるとそこには女神からの手紙が。
蒼、おはよう。
説明不足でごめんなさい。ちゃんと神の豆に気づいてくれて良かったわ。今あなたがいる場所は、死の谷にある地下ダンジョンの最下層で、上には魔獣がうじゃうじゃいるのよ。豆の中で攻撃魔法や防御魔法の訓練ができたら、各階にある扉から外に出て戦ってみるといいわ。ダンジョン内で魔獣を狩れば魔石やドロップ品を落としてくれるので、それを売れば生活の足しになるはずよ。49階層のボスは当然強いから試すのは浅い階層から順番にね。
49階層のラスボスを倒してしまったらダンジョンの宝玉を取り出すことができるわ。ただ取り出してしまったらダンジョンは崩壊して無くなってしまう。確かに魔獣は脅威だけど、この世界では稼ぎ場所として必要不可欠でもあるの。だからそのあたりのことをよく考えて運用してね。ダンジョンを攻略されたくないなら51階層の隠し階層を作ってそこに宝玉を安置することもできるわ。
あと、階段の登り降りは体のトレーニングにもなるし、しっかり頑張って。
そうそう、今日の要件なんだけど、一つ言い忘れたことがあるの。あなたがこの世界に来るときに地球の付喪神を一緒に連れてきていたの。おばあさんが使っていた包丁から付喪神になった1柱よ。かの神はあなたに伝えたいメッセージがあるみたいなの。それをあなたに伝えるわね。
そこまで読んだところで目の前に一本の包丁が現れる。
「あっこればあちゃんの包丁だ。」
今の今まで忘れていたけど、ばあちゃんが料理をするときに使っていた包丁で、砥石で研がれることで随分と小さくなっている。この大切な包丁を俺は人殺しに・・・・。
込み上げてくる苦い後悔に軽く歯を食いしばる。
するとその包丁からたくさんの映像とともに、言葉や想いが溢れてきた。
「蒼が喜んでくれたらいいけど。」
「上手く作れるかな。」
「どうしてあの子ばかりこんな目に遭うの。あんなにいい子なのに」
「蒼、ごめんなさい。」
じいちゃんとばあちゃんと暮らし始める前の記憶から、一緒に過ごした楽しい思い出、悲しい思い出、いろんな情報と想いが心の中を駆け巡る。
最後のメッセージにはその言葉の背景も一緒に語られていた。
認知症の診断を受け、心が弱っているところに、父が帰ってきて、これからは俺がちゃんと面倒見るから、安心してくれと言われ、蒼に迷惑をかけたくない一心で、後見人を父にすることに同意してしまったということだった。あと、預金封鎖が怖いから、必要なお金をこちらで支払いできるようにしてくれと言われ、暗証番号を教えてしまったようだ。きっと、僕に迷惑かけたくない思いと共に、どっかで自分の息子を信じたい気持ちがあったんだろうな。その優しい思いを踏み躙りやがって。くそ
多くは、料理をしながら思っていたことや、食卓での楽しい思い出、ばあちゃんや時々はじいちゃんの思いが僕の心の中に溢れてくる。知らぬ間に僕の目からは涙が溢れている。会いたい、もう一度でいいからじいちゃんとばあちゃんに会いたい。でも、僕は地球の輪廻の輪から離れてしまったからもう会えない。
「私がこれを作れるのはもう最後かもしれない。蒼、御免なさい。幸せになるのよ。あなたの父親や母親がいかにひどい人間でも恨んで心を揺らしてはダメよ。あなたは、ああ、わからなくなる。病気が恨めしいわ。私もお爺さんもあなたのことを一番大切に思ってるから。」
(そこまでの映像を見ながら僕は涙が止まらない。ああ、ごめんなさい。恨む気持ちに勝てなくてごめんなさい。)
すると突然、優しいおじさんの声がした。
「蒼、わしは付喪神の九十九。今まではお前に婆さんと爺さんの声を届けられなかったが、女神様の助けで、お前に届けられて本当に良かったと思っとる。彼らは本当に善良な人達だった。いつもお前のことを愛し、気遣っていた。おばあさんがいつしか、私がいなくなった後も、あの子をよろしくね。ってわしに願うようになって、付喪神として神格を得るようになったんだ。」
「九十九様、じいちゃんとばあちゃんの声を届けてくれてありがとうございます。俺は愛されてたってちゃんとわかったから、もう大丈夫。一人じゃないって思えるよ。」
溢れる涙を抑え切れずに俯いていたが、両手に包丁を持ってちゃんと笑い顔を作る。
女神様ありがとう。九十九神様ありがとう。
ポーンと音が鳴り本が光ると新たな文字が浮かび上がる。
九十九様は、蒼と一緒にこの世界にあることを選ばれました。ゆえに、あなたの神剣として共にあるように。
魔法だけではなくて剣の訓練も頑張るようにね。
魔法神と剣神の眷属をマジックブックから召喚できます。本に向かって呼んでみて。
九十九様はあなたと直接会話できるから色々教えてもらいなさい。
それじゃあまたね。
女神様からの手紙を読み終えて顔を上げるとさっきまで包丁だった九十九様が立派な刀になっていた。
「蒼、今はこの姿だが、刃物なら何にでもなることができるでな。お前の成長に合わせて希望があればいつでも言ってくれ。」
九十九様を腰に巻いて立ち上がる。
「はい、ありがとうございます。九十九様一緒にいてくださってありがとうございます。正直いうと一人で心細かったんです。俺あっちでも剣道はそこそこやってたので、剣術も頑張ります。」
「おお、そうじゃな。大会優勝の賞状見ながら、爺さんも婆さんも誇らしげじゃったわ。あっちとは違い、こっちは危険な世界。生き抜くためにも剣術の技術は上げておかんといかん。お前は魔法もかなり得意なようだが、魔法が効かん相手も出てくるでな。早速、剣神様の眷属を呼び出してみてはどうだ?」
「そうですね。やってみます。」
マジックブックを開いて声をかける。
「剣心様、眷属をお遣わしください。」
すると、開いたページが光りそこから武士のような格好をした小人が現れた。昔話に出てくる一寸法師にそっくりだ。
「我が名は一寸剣士。剣神様の眷属である。我を呼び出したのは其方か?」
ぶおおおお、かわいい。触りたい、撫で回したい、頬擦りしたい。
ちっこくてかわいらしいのに、喋り口調は歴戦の武士ってこれいかに?
「はい。相馬蒼と申します。私に剣術を教えていただけますでしょうか?」
マジックブックから手を離し正座して手をついて頭を下げる。
宙に浮いたマジックブックの上にのって胸を張る、一寸剣士様のことを可愛いと思いながらも気分を害されないように丁寧に対応する。
あー。かわいい。
「わしの獲物は片刃の刀じゃが、それで良いか?」
「はい、もちろんです。」
「ではまず、素振りから・・・・。」
一寸剣士様は見た目と違いそれはそれは厳しい方で、基本を教えてくださったあと、模擬戦の時は大きくなれるからなと言い残し、毎朝の訓練の課題を出して一度本の中にもどられました。
その後、階段を上まで登り、また降ってくるのを5セット行い、朝の訓練は終了。いやー、死ぬ。
トレーニングを終えてシャワーから出てくると、刀は包丁に変わっていた。
「九十九様、お腹が空いたんですか?」
「わしは、食べんが、其方はしっかり食わんといかん。体を作らんといかんからな。わしを使えば料理は失敗せんぞ。婆さんのレシピはしっかり覚えておる。ちなみに、わしは鉱物や魔石は取り込むことができる。刃物の質も格段に上がるぞ。故に魔物討伐の際にとれたものがあったら、供えよ。」
「はい、わかりました。」
異世界にはどんな金属があるんだろう。定番のミスリルなんかはあるのかな。
「この世界の金属は基本的に地球と同じだ。ただ、魔力が濃いせいで、金属に魔力を帯びておるものがあり、性質が変わっておる。何を作るかによって使い分けるが良いぞ。」
「そうなんですね。まあ、まずは訓練、あと食事ですね。」
はははと笑いながら食事の支度を始める。
朝だけど、肉を薄く切り、フライパンに油を引いて引くと卵を焼く。
前世のフランパンのようなパンを切り、バスケットにもる。レタスのような野菜と手でちぎり、油、酢、塩、砂糖を使ってドレッシングを作ると、サラダを作る。コーヒーメイカーに水と挽いた豆をセットする。
この世界で最初に食べた食事は美味しかったけど、調味料は要検討だな。
食糧庫体した食材は自動で補充されているみたいだ。外で一人で暮らしていく力がつく前の今はとても助かる。命を守れるように魔法や剣術の訓練をしないと。




