12 ランドサットへ囚人を護送します
12 ランドサットへ囚人を護送します
【新暦586年11月10日】
「えっと、今日さ、上にいる囚人をランドサットに護送しないといけないんだけど、僕がランドサットに行ったことないから一回飛んで行ってくるんで、その後転移で戻ってきて護送します。その時にさ、キリルのことクレリックに伝えて外交問題にならないように話し合いがしたいから、グレンとキリルは、うちにいてほしい。」
「それって、あたし達をアンダルシア大公に売るってこと?」
え?あまりに想定していなかった反応に呆気に取られていると、ジルベールが代わりに話してくれる。
「おい。お前わかって喋ってるのか?」
ちょっと殺気がすごい。流石のグレンも押されているようだ。
「まあまあジルベール。ちょっと先に話を聞こうよ。それで、グレンまずは君に謝罪を求める。助けてもらった恩人に対して思ってもいう言葉じゃないと思うが。」
「・・・・・」
こういうところだ。昔、僕の学校にも荒れてるヤンキーがいた。あたり構わず喧嘩して、ひどくやられていたところを僕が代わりにボコって助けてやったことがあった。何があったのか聞いても何も言わない。結局後から分かったのは、あいつは何も悪くなかったってこと。説明して味方を作る、理解を求めるよりも、ぶちのめしていうこと聞かせるしか解決法を知らない人間の特徴だ。
「まず、グレンはどこまで天翼族と人間の関係を知ってるの?それと、昨日お母さんからキリルの事を頼まれたって聞いたけど。それはどういうこと?」
「その辺りの事情はよくは知らねえ。ただ、ミンジェはいいやつで、そいつがキリルを里から逃してと頼んできたんだ。だから、あたしが連れて郷を出たら、誘拐されちまって。」
「そう。その背景がまだよくわからないけど、これはものすごく大事になるかもしれない問題なんだ。グレンには関係ないことかもしれないけど、そのせいでたくさんの人が死ぬことになる。君たちにとって不都合な状況にならないことは約束するけど、僕らが知らないところで起こっている問題があるなら、それも解決しないと根本原因の解決にならない。それに、ミンジェさんはどうしてるの?」
「わからない」
「なんでミンジェさんがキリルを連れて逃げてって言ったのかその理由もわからない?」
「・・・・・わからない」
「キリルも?」
「わかんない。母さんに会いたい。わーん」
そう。まあなんとなく分かってるけど言いたくないか、言えないかなんかだろうな。
「分かった。じゃあ行ってくる。ジルベールも一緒に行こう。ベロニカ後はよろしくね。」
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ。」
ランドサットの方角へ二人で飛びながらさっきの話をする。
「なんか事情がありそうだけど、グレンのあの態度は早々改善させないといけないなあ。野良聖女としてはいいけど、聖女としてはだめだ。」
「さっきは悪かったな。蒼が自分のことより他人のために生きてるのを知ってる人間としては、身勝手なクソ野郎とおんなじように蒼を扱ったことに我慢ならなかった。」
「僕は嬉しかったよ。ありがとう。誰も分かってくれないわけじゃない。ジルベールはわかってくれるって思っただけで、他のことはどうでも良くなったよ。グレンは周りにそういう理解者がいなかったんだろうね。拳で従わせる方法しか知らないっていうのは勿体無い。」
「そうだな。それでどうする?」
「まずはクレリックと相談だな」
しばらくすると眼下に大きな町が見えてきた。
「オローラだな。」
「明日はエレンを迎えに来ないと。」
「ああ、そうだったな。ほんとゆっくりする間がねえな。」
そうだね、ってしばらく飛んでいくと向こうから黒い何かが飛んできた。
『鑑定』
グリフォン
雄
3歳
「ねえ、いい子見つけちゃった。あの子に乗ってこ。」
そういうと、僕は加速してグリフォンに飛んでいく。向こうもやる気満々で突っ込んでくる。
『水弾』
たくさんの小さな水の弾丸を打ち込む。それを華麗にかわしていく。
今度は向こうが『ウイングエッジ』を飛ばしてくる。
それを『ミニトルネード』で相殺していく。
ニヤッとバカにした笑みを浮かべたグリフォンにちょびっと切れた僕は、
『グラビティ』を発動。次第に羽ばたく回数が増え、余裕のあった表情から焦った表情に変わっていく。
『ウォーターボール』
巨大な水玉をグリフォンに飛ばし中に捕える。
ぶぶぶぶぶと溺れる瞬間に魔法を解除。地上に下ろしてヒールをかける。
目を覚ましたグリフォンは頭を下げて従属姿勢をとる。
『テイム』
「僕は蒼、彼はジルベール。よろしくね。君の名前は「ヒュン」
よろしくね」
「声が聞こえるよ。僕はヒュンなんだね。名前嬉しい。ありがとう」
「悪いけど、僕らをランドサットまで連れて行ってくれる?」
「もちろん。問題ないよ。乗ってのって」
僕の後ろにジルベールがのって、ヒュンに捕まると、スッと浮かび上がりあっという間にトップスピードになっていく。
「ヒュン早いね。僕が飛んでいくより全然はやいよ。ジルベール、あの大きなまちがランドサット?」
「ああ、あれがそうだ。あっという間だったな。」
「じゃあさ、あのお城の上空で僕ら降りるから、近くの森でゆっくりしてて。」
「うん。終わったら呼んでね。」
「分かった。あとでね」
ぴょんとヒュンの背中から飛び降りた僕らは顔に認識阻害のマスクをつけて、城の玄関の前に降りる。
「誰だ」
門番が僕らに槍を向けてくる。
「クレリック大公に用があってきた。アオイとジルベールが来たと伝えて欲しい」
「大公とアポもなく会えるわけがないだろう。帰れ帰れ。」
「ここで無駄な時間を潰してる暇はないんで、悪いけど寝ていて。『スリープ』」
『インビジブル』
門番を眠らせたあと、見えない魔法をかけて城の中に入っていく。上層階に数人が動く気配を感じる。
「まあ、あの中にいるだろう」
そうして上層階に到着。ドアをノックして中に入る。
「初めまして、アンダルシア大公・プリシラ妃、僕が御使蒼で、こっちが相棒のジルベールです。」
「ジルベール」
小さな声でクレリックが囁くのを拾った。彼らはジルベールのことを今でも思ってるみたいだ。
「まあ、あなた達がセリーヌ達を救ってくれた《ツインエンジェル》ですね。本当にありがとうございました。私セリーヌを読んで参りますわ。」
そう言って、プリシラ妃は部屋を出て行った。
「大公陛下、緊急でお話をしないといけないことがありまして、まかりこしました。玄関の門番が取り継がなかったものですから、眠らせてあります。申し訳ありません。どなたかに伝言をお願いいたします。」
「あい、分かった。誰か?」
「はい、ここに。」
「近衛隊長に玄関の門番が寝ているので片付ける指示と今後蒼様ジルベール様がいらした時は丁重にご案内するように通達を行うよう伝えてくれ。」
「御意」
「それで、ツインエンジェルのお二人には、まずはお礼を。セリーヌ達を救ってくださったことと、3国の危機を救ってくださったことにまずは感謝を。」
「大公陛下には逆に重荷を負わせることになり申し訳ないことです。今日の要件は3件。1つ目は昨日ラシーヌ王大后陛下にご助力いただきました、ベリスの奴隷商人と関係者の捕縛の件です。捕縛したものは私の拠点の牢に入れておりますが、それをこちらに移送いたしたくその許可をいただきに上がりました。
2つ目は違法奴隷として売られそうになっていたものは全てラシーヌ様が保護してくださっています。また、黒幕のジャクソン・ガートルードは残念ながら殺しましたが、他のものは全てとらえてあります。また、犯罪の証拠と土地・建物・の権利書、蔵の中の商品・紹介の権利書全てラシーヌ様に私てあります。犯罪の証拠が上がったのが、ミノラ王国の、2公爵家・4侯爵家・
12伯爵家・30子爵家・43男爵家・23騎士爵家、アレジ王国の1公爵家・3侯爵家・20伯爵家・15子爵家・30男爵家、アンダルシア公国の2伯爵家です。」
「そんなに多くの貴族が犯罪に関わっていたのか。嘆かわしい。」
「はい、全ての貴族家を処罰した場合、王家直轄地は全体の57%を超え、もうどんな大貴族も王家に逆らえません。故に大変ですが、急ぎ体制を整え、代官の派遣と領地の安泰を図るべきです。」
「それだけの貴族家を一気に処罰するというのはなかなか難しいが、致し方ない。」
「はい、ムチだけでなくアメもうまく使ってこの難局を乗り越えるしかありません。具体的な方法については後ほど。それから3つ目これが一番大事ですが、誘拐された中に天翼族の子供が含まれていました。保護者役の野良聖女グレンが今は保護していますが、何やら複雑な事情がありそうです。放置すると大変なことになる気がしましてご報告に参りました。」
「それはありがたい。実は天翼族の里から問い合わせが来ていたのだ。」
「後ほど当事者を連れて参りますので彼らを交えてお話しできれば幸いです。では、囚人達を出す牢にご案内いただけますでしょうか?」
「ああ、分かった。誰か、蒼さまを牢のフロアにお連れしてくれ」
僕が、牢に案内されるのにジルベールもついていこうとした時だった。
「ジルベール様はこちらでお待ちになっては?今茶を用意させます。」
とクレリックが声をかけてくれた。
「じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰えば?僕もすぐに戻るよ」
と一人出ていった。牢屋に着いたので、拠点に戻り、囚人達を送還。
そして、グレン・キリル・ベロニカを連れてクレリックの部屋に戻ってきた。
そこで見たのは、ジルベールが仮面を外し、クレリックとプリシラが泣いていて、セリーヌがプリシラの背中をさすっている姿だった。
セリーヌは僕の姿を見て頭を下げたあと、後ろにいるベロニカに抱きついて行った。
「お嬢様、申し訳ありません。私が私が愚かでした。」
セリーヌを抱き止めたベロニカだったが、すぐに跪いて一生懸命許しを乞うていた。
その光景に唖然としてる、グレンとキリルに目を向けて、笑顔を向けると
「パン」と一回手を打って
「さあ、まずはみんな席について。つもる話もひとつづつ解いていきましょう。」
となぜか部外者の僕が締めて場の空気を整える。
「お茶を入れなおしてください」
部屋の隅でかしこまっていた侍女達に指示を出してみんなに向き合う。
「どこからお話ししましょうか?」




