ジョセフィン王大后にお願いに行こう
4 ジョセフィン王大后にお願いに行こう
ぱちっと目が覚めた。大きなあくびを一つ。
昨日くたくたに帰ってきた僕は、街づくり3日目で早くもグロッキー。魔動モーターがないせいで工事が先に進まないところが出てきていて、後回しにしてる場合じゃないことに気づいた。誰かに助けを求めたいけど、この世界の知り合いって、クレリック、プリシラ、ジョセフィン、ラシーヌだけ。そんな会いに行ってすぐ会えるわけじゃない人達で。でもジョセフィン様は呼び出しの鈴くれたから、もしかしたら、黙って中に入って鈴鳴らしたらあってもらえるかも。うん、まあダメで元々やってみるか。
考えがまとまったらすぐに行動。僕を抱き枕がわりにしてる、ジルベールの腕の中から、脱出すると、大きく伸びをして、シャワールームに飛び込む。
ぬいぐるみじゃないんだから、毎晩抱き枕はやめてほしい今日この頃。
ざーっと頭からお湯を被って、頭を洗ってから、体を洗う。すると、ジルベールが起きてきて、シャワーに突進してくる。
「もう、ちゃんと目を開けて、起きて。ほら自分でしっかり立って。シャワー浴びるんだから、ちゃんと下着脱いでこい。ばか。そうそう、僕ね、今日ジョセフィン王大后に相談があるから出かけてくるから、昨日の続きするか自由にしてて」
ジルベールはまだ完全に目覚めてはいないようだけど、一応手を動かして体を洗っている。僕は、シャワーボックスからひと足先に出ると、体を拭いて、下着をつける。髪の乾燥と、歯磨きを済ませて髪を乾かす。
「え?お義母様に会いにいくのか?俺もいく。」
とジルベールがボソッと返事する。
「いやいや、正体バレてもいいの?絶対王宮に囚われて離してもらえないよ。それでもいいなら、僕は構わないけど。」
「ああ、そっか。そうだな。その辺も考えんとダメだよな。じゃあ、俺の姿見えないようにしてくれよ。それだといいだろ?」
「ああ、そっか。そうだね。それならいいか。でもじゃあ早く支度してね」
ひと足さきにバスルームから出た僕はクローゼットの中を探る。
キレイ目の服を見繕ってみるけど、やっぱりちゃんとした服作ってもらうか。ということは金がいる。今回、何にも褒美をもらってないんだし、褒美の代わりに買取してもらおう。ふふふ、そうそう王大后が持つに相応しい名品が収納の肥やしになってたわ。
「ベロニカおはよう。今日は、ジョセフィン王大后に相談したいことがあるから、ちょっと会いに行ってくるよ。何時になるかわからないから、自由にしてて。」
服を着替えてキッチンの方に向かうと、朝ごはんの準備を終えたベロニカが、コーヒー飲みながら食糧庫の中に置いてあった、前世の料理研究家のレシピブックを読んでいた。
「蒼様おはようございます。今、食事の準備しますね。」
「ベロニカそれ文字読めないでしょう?」
「そうなんですけど、絵がすごくキレイだし、九十九様が文字を読んで意味を教えてくださったので、それを読み返してました。計量スプーンと計りの使い方を教えてもらったので、なんとなくわかります。数字9まで覚えました。」
え?ベロニカさん。凄すぎるんですけど。僕たちは異世界翻訳っていうスキルが標準装備なんでなんの問題もないけど。
「すごいよ。ベロニカ。びっくりだよ。今日も美味しそう。」
「ありがとうございます。今朝は何を飲まれますか?」
「冷蔵庫の中の、牛乳とオレンジジュースが欲しいです。」
「わかりました。」
「ジルベール、先食べちゃうよ。」
そう声をかけてから、ベロニカに渡してもらったオレンジジュースを一気飲みする。
「ベロニカ先食べちゃお。そんで今日はどうする?」
「そうですね。食事作って、掃除して、片付けでもしておきます。」
「うーん、それはそれでなんか寂しいな。あ、そしたらさ、ジョセフィン陛下と僕が喋ってる間に、お城の自分の部屋から私物を取り出しておいでよ。中に入った後、二人には『インビジブル(隠蔽)』をかけてあげるから、自分の部屋の必要なものを全部ジルベールの影収納に入れて貰えばいいよ。その後、必要なものの買い物にベロニカが必要だからそうしよう。ジルベールもそれでいい?」
「ああ、それでいこう」
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『転移』
一瞬で、アレジ王国王宮のセリーヌたちが暮らしていた離宮に転移してきた。
『インビジブル』
三人とも見えなくなったのを、温室のガラスの前に立って確認。
「ベロニカ、ここから自分の部屋まではいける?」
「はい、大丈夫です。」
「OK,じゃあジルベール終わったら僕の影に入って休憩してて。早めに用事を済ませるようにするよ」
「了解。蒼も気をつけてな。」
「うん、それじゃ」
転移を使ってジョセフィン陛下の宮へ飛ぶ。
プライベートゾーンの庭についたので、頂いた鈴をふる。
しばらく待っていると、庭にジョセフィン陛下がやってきた。
それで『インビジブル』を解除する。
「ジョセフィン様、お忙しいところ急にお邪魔して申し訳ございません。」
「あらあら、いいのですよ。こんなに早く、鈴を使ってもらえて本当に嬉しいわ。今、お茶を用意させますから、こっちの東屋へ行きましょう。」
「ありがとうございます。」
ジョセフィン陛下はたった一人の侍女のみを連れて、庭の一角にある、東屋へ案内してくれた。
「どうぞおかけになって。それで今日はどうなさったの?」
二人が着座すると同時に、お茶の支度がされる。僕たちの話の邪魔にならないように丁寧なサービスに感心する。
「ありがとうございます。いくつかお願いがあって参ったのですが、
まず、ジョセフィン陛下に献上したいものと、買っていただきたいものがございます。献上したいものは、こちらです。」
そう言って、巨大なペイルブルーの宝石を差し出す。
「まあ。」
「これは」
陛下と、侍女のお二方が全く同じリアクションをされる。
「最高等級のサファイヤです。その上この大きさ。値段がつけられない宝石となっております。争い事の種になるのがわかりきっていますので、どこにも売りに出せず。ですから、この国の最高の地位におられるジョセフィン陛下に受け取っていただきたいのです。」
「でも、私にこれの対価となるものをお渡しできるとは思えないのですが。」
困惑した様子で、僕を見つめるジョセフィン様にニコッと笑うと
「私は今、イリディングラという街を作っております。しかし、住民がおりません。つきましては、仕事がないもの、生活が苦しいもの、など移住を希望するものたちを我が国へ受け入れることをお許しいただきたいのです。それから、借金奴隷や、犯罪奴隷とは違う、違法奴隷に関しては、それに関わったものをアレジ王国に差し出す代わりに、奴隷たちを解放し、我が国で引き取ることをお許しください。」
「それは、我が国が十分保護できていない民の為になることであり、むしろ私たちが助けられているのでは?」
「確かに、そうとも言えますが、そのように考えない心得違いもこの世には多くいるのです。民を私物だと思い、我々に代金を要求するような恥知らずもおります。」
「恥ずかしいことです。蒼様のお気持ちはわかりました。クレリックと相談して、ご要望に添えるようにいたします。少しお時間くださいませ。」
「はい。よろしくお願いたします。」
「次に買っていただきたいものですが、まずはこちらです。」
そう言って、アイテムボックスから出したのはガラスでできたペン。ガラスペンである。インクは、グラファイトを使った物、炭を使ったもの、お茶と鉄屑を使ったものの3種類だ。
「こちらのペンを手に取っていただき、このインク壺に、先をつけていただき、インクの量をこうやって調整して紙に書きます。今日はこちらの紙にお書きください。」
「このペンも、紙も初めて見る物だわ。リリ、なんてこと。とっても鮮やかに綺麗に文字が書けるわ。羽ペンとは書き味が全然違うの。」
「しばらく書いていますと、インクが掠れてきますので、そうすると、少しペン軸を回して頂けましたら、またインクが出てきます。ペン軸を回しても色が出なくなったら、またインク壺につけてください。」
「この紙も、素晴らしいわ。分厚くて、しっかりとしているのね」
「お気に召していただけたようで嬉しいです。」
「次にお見せしたいのが、こちらです。」
「次はカラフルな色に加工したガラス玉を加工して作ったかんざし型の髪留めと樹脂と木材と天然石と貝殻を合わせた素材で作ったアクセサリーです。」
ダンジョンでゲットした樹脂を早速使ってみた。
「まあ、なんていうこと。可愛らしい。」
「ジョセフィン様、これは浜辺にたまに落ちているピンクの小さな貝殻ですよ。ああ、ジルベール様とご一緒にとったサザンクロスの浜辺を思い出しますわ。」
「リリ。」
「申し訳ございません。ちょっとお茶が遅いですわね様子を見てまいります」
そう言って、リリという侍女は涙顔を隠すように下がっていった。
いや、ジルベールは生きてるんだけどって言いたいけど、これは僕が決めることじゃないし。これは要話し合いだ。
「次は、蝋燭なのですが簡易型の結界を張ることができます。だいたい蝋燭の灯りが届く範囲は結界がはられ、物理・魔法・呪い・毒全てに効果があります。直撃した時よりも50%くらい緩和されます。これで即死は免れますから、私のところに転移してきてください。」
「まあ、すごいアイテムね。でも蝋燭でどうして結界がはれるの?」
「素材がクイーンビーの蜜蝋なんです。このような効能を持つのはクイーンビーの蜜蝋だけです。貴重な品ですが、これから少しづつにはなりますがお持ちしますのでお使いください。あとこちらが転移の腕輪です。これは素材の関係で劣化版なので、一箇所にしか転移ができずそれは私の屋敷の部屋に設定してあります。緊急時には躊躇なくお使いください」
「蒼様、そんな転移の腕輪なんて国宝級のお宝、私にはとてもとても」
「いいえ、道具は代わりが作れますが、ジョセフィン様のお命は一つだけです。変わりはないのです。この後お出しするものも絶対に仕舞い込まずに使ってください。変わりはいくらでも用意します。」
そう言って、続々商品を出して行った。
「こちらは《仙桃》です。ダンジョンで稀にしかドロップしません。HPを急速に回復します。ただ、病気や怪我の原因を取り戻さなければまた悪くなってしまいますので、この時も転移で助けをもとめてくださいね。でもそもそも、攻撃を受けなければいいので、ここからはチート素材をふんだんに使った魔道具をお出しします。まず、《アラクネのベスト》です。これは下着の様に着ることができますので、必ず身につけてください。効果は物理攻撃・魔法攻撃80%カットと常時回復です。アラクネのシルクの布とゴールデンフォックスの毛皮を使っています。次が《防御の指輪》です。ミスリルにレヴィアタンの鱗を溶かし、金と銅でできた金属糸を巻きつけてリングを作り、毒・状態異常50%カットの効果をつけて、トップにブルーサファイヤをつけました。石には毒検知の魔法を付与しましたので、ほとんどの場合毒に気づくことができるかと思います。《魔法の食器》は基本は銅とオリハルコンでできており、毒無効をかけてありますので安心してお召し上がりください。」
「蒼様、これらはおいくらでしょうか?」
「はい、白金貨2枚でいかがでしょうか?」
「これ全部をたった白金貨2枚ですか?」
「はい、あ、大切なものを忘れていました。こちらです。僕が調合しました若返りのクリームと肌に優しい石鹸です。オリーブオイル・ローズマリーの精油・アラクネシルクの成分、メガロドンキングのスクワレンなどすごく優秀な成分を惜しみなく使って作りました。こちらもおつけいたします。」
「はい、もちろんいただきます。ぜひ売ってください。」
「ありがとうございます。」
「いいえ、まずは2度と出ない最高等級のサファイヤ、ガラスを使ったペン、と深い黒のインク、軽くて、強くて、しなやかな紙、それから絶対に他では手に入らない魔道具の数々。今までの買い物がバカらしくなります」
「ガラスペンは五十本、すべてデザインと色が違います。形は同じです。インク壺は100。黒以外に、私の色、蒼色も用意しておきました。紙は300枚あります。クリームと石鹸も100個ずつ用意しておきました。」
「まあ、素敵。リリこれを見た貴族の奥様方の顔がどうなるかと思うと、ちょっと愉快ね」
「まあ、ジョセフィン様。」
「ジョセフィン様お金のご用意ができました。」
「では蒼様こちらが本日の代金です。いつでも私を頼ってくださいましね。誰も私を顧みなくなっていたのに、急に頼られ出して、むしろ元気になっておりますのよ。」
「ありがとうございます。またきます。新作を持って驚いてもらえるように。それでは失礼します」
オローラの街の中心街近くの路地へ転移。
陰から二人が出てくる。
「長い間お待たせしてごめんね。お金手に入ったから、買い物に行こう」
三人で初めての都会でのお買い物。ちょっとワクワクしてます。




