イリディングル3
3 イリディングルその3
僕たちの屋敷は、3ヶ所作ることにした。1つ目は北の特別区の世界樹の側の超一等地。2つ目は中央大通りと東西大通りの交差点そばの超一等地。3つ目は西中央駅のすぐ隣に作る超高級ホテル&レジデンスのペントハウス。
この世には『転移』というスキルがある。これは一度行ったことのある場所に瞬間移動できるスキルだ。レアなスキルで持っている人の数は少ないがゼロではない。北の特別区の自宅には本当に信頼できる人しか、入れたくない。世界樹のそばで、セキュリティの塊みたいなエリアだからだ。
故に、この区域には電車の駅は一つも作っていない。このエリアはいわゆる聖域なのである。
だから、それなりの格式を持って貴人を迎え入れるための屋敷が他に必要になる。この街の中央に位置する第2の屋敷がその役割を果たす。
第3の屋敷は、大都市が西側に集中していることから、連邦王国の貴人は西門から入って来られることが多くなるはずで、その方々を迎える格式を持ったホテル&レジデンスの設置はマスト。屋敷の客間よりも、気楽に自由に過ごしたい方には、レジデンスやホテルの方がいいと思われるので使い分けようかと。
第3の屋敷は、魔動エレベーターが出来てからになるので、今日は、2つの屋敷の外枠だけ作ってみようと思う。この屋敷には、ジルベールとベロニカも住むことになるので、二人の意見も参考にしつつ作っていこうともう。
「これから屋敷を作っていくけど、二人には何か希望はある?」
ベロニカが作ってくれたパスタ料理を食べながら二人に尋ねると、ベロニカは、
「あんまり大きな家は掃除が大変だから嫌ですね。」
えっと、あなたに掃除をさせるつもりはありませんが。
「俺は今みたいに蒼と一緒がいいから、部屋が遠く離れるとかは嫌だなあ。できれば同じ部屋がいい。」
うん、それな。
前世で貧乏だった僕からするとこの世界の貴族や金持ちってやたら広いところに住みたがりだと思うんだよね。何するにも時間かかるし、めんどくさい。だから、今のまめの木の家はお気に入りなんだよ。そっか、じゃあ今の部屋みたいに壁で区切らず、相手の気配は感じながらもプライバシーが守れる的な作りにすればいいか。
「うん、なんとなく方向性が固まったから、頑張って作ってみるよ。」
ランチを済ませた僕たちは第一の館の敷地にやってきた。世界樹と大教会を北に背負う超一等地だ。大教会と世界樹の姿を隠さないように、森の中に、地下2階地上3階の白亜の城を建てた。斜面に立っているので、地下の部分も南側から見ると外に出ている状態なので、本当の地下ではないのだが。教会と繋がっている中庭に面した北門をメインゲートとしたことにより、地上3階、地下2階となった。この巨大な中庭は、城の影が教会に影が落ちることのないように配慮して作ったものである。
「外はこんな感じかな。教会や世界樹に影響を与えない大きさで考えたらこの大きさに落ち着いたんだよね。外観はどう?大丈夫?」
「蒼様素晴らしく素敵です。ああ、なんて美しいんでしょう。心が安らぐ、清々しさです。」
「どうもありがとう。」
「なんかお前らしいな。innocent。コンセプト通りだ。威圧感のある派手な城は他のやつに任せてればいい。中も、シンプルで、モダンにまとめてあるんだろう?」
「うん、まあ君主の屋敷だから最低限の城の決まり事は踏襲したけど、僕らのプライベートゾーンは今とあんまり変わらないよ。じゃあ中を案内するね。」
南側の門から入り、噴水を回り込んで、車寄せに馬車をつける。僕らは転移でくるから関係ないけど普通ならね。そこから3段階段を上がり、外の回廊を歩いていく。突き当たりに扉があり、外開きの重厚な木の扉を開けて中に入る。一面に毛足の長い深い蒼の絨毯が敷かれ、白い海の波模様が描かれている。玄関ホールの先には2階へ上がる階段と1階奥の使用人エリアと大浴場につながる扉とが存在する。
「この奥の二つの扉は、使用人エリアと大浴場エリアにそれぞれ繋がってるんだ。大浴場は、泊り客が使う時間と従業員が使う時間は分けてあるよ。
各部屋にもシャワーはついてるけど、僕も、ジルベールも大きな浴槽が好きだから作っちゃったよ。それに従業員の部屋にはシャワーをつけられなかったから、彼らの使える浴室も作りたかったしさ。」
大浴場は少し高さを下げて、外の外気と光を取り込めるように、一部ガラスで覆って、外からは見えないように魔法陣を刻んだ。白の大理石で作った、楕円形の大きな浴槽とシャワーボックスを4つ備えている。各個室にもシャワーはつけてあるので、泊り客がここまで降りてきて風呂に入るのは稀だとは思うのだけど、僕もジルベールも銭湯大好きだったからこれは外せなかった。
風呂の見学の後僕たちは2階へ階段を上がる。階段の途中で左右に分かれるタイプだ。左側に折れて2階に上がると階段の先にはU字型の廊下が続いており、階段右側に上がったところと繋がっている。ここは階段を挟んで向かい合わせに部屋が並んでいて、各部屋には窓はついていない。
「ここは、泊り客の従者や、それほど身分が高くない人たちの宿泊部屋です。部屋には、水とお湯が出る蛇口とトイレはつけてある。体を拭いて済ませるか、一階の大浴場を使ってもらうつもり。」
U字型廊下の中央にも広場があり、そこに3階へ登る一本の階段がかかっている。それを登ると、中庭に面したホールに出てくる。中庭側の扉を開けて、中庭に出てみる。水路が張り巡らされており、美しい植物が植えられていた。
建物の中に戻ってくると、ホールの両端に南側に向かう廊下があった。廊下の間にメインダイニング、つきあたりに大ホールが配置されていた。大ホールの南側には一面大きな窓が嵌め込まれており現在造成中の街の景色が目に入ってくる。
「街が出来上がったら、素敵な景色が堪能できるホールになるよ。いろんな使い方ができそうだよね。」
「確かに王宮の大ホールと比べれば小さいが、そもそも王族らしい暮らしなんて想定してないし、これで十分だよ。」
「だよね」
大ホールを出て元の中庭側の玄関ホールに戻ってくると、端に上に向かう階段がついていた。4階は中央に廊下が一本あり、南側と北側に部屋が並んでいた。そして、廊下の一番奥の北側の部屋の扉を開けるとそこには広い玄関と螺旋階段がついており、5階のプライベートゾーンへ上がれるようになっている。また、そこから北側に突き出た広いテラスに出ることができるようになっている。
「ここからプライベートゾーンだよ。泊まり客をお見送りして、あたかも、同じ階の客間に留まるように見せて、プライベートゾーンへ入っていくって仕掛けにしてみた。5階にいく階段を出しておいたら、絶対に上がってくるやつがいるだろうしな。」
螺旋階段を上がった先には広ーい仕切りのない大空間が広がっており、入ってすぐ右側には、小さな可愛い小部屋が。
「ここのコーナーはベロニカの部屋だけど、細かい調整は自分でやってね。」
奥へ進むと、読書コーナー、キッチン、ダイニング、ベッドルームと続いていた。ベッドルームについているテラスへ出る扉を開けると、広いテラスが広がっており、塔の小部屋に上がる階段が垂れ下がっていた。この小部屋は緊急時の転移脱出装置として作られており、豆の木の家の48階に転移してくることになっている。僕とジルベールがいないときに外敵に攻撃されたら使ってもらうようにした。関係ない人間が転移できない仕組みを作るのがなかなか難しく難航したが血液を利用した個人識別法でなんとか乗り切った。
はあああ。僕の代わりが欲しい。




