セリーヌ王太子妃の逃避行2
2 セリーヌ王太子妃の逃避行その2
(蒼side)
ふう、なんとか間に合ったよ。ちょっとヒヤッとした。この子のバリアの上から、強ーいの一枚かけてっと。あらら、HP1で気を失ってる。死んじゃうといけないから、精霊術を解いて、HPの一部を回復っと。
今できることをチャチャっと済ませると、バリアを殴り続けていた、悪役顔の男に振り返る。
「それで、あんたが、悪い騎士さん?自分とこの姫様殺そうとするのも、その子供を使って戦争起こそうとするのもどっちもいただけないなあ」
移動しながら状況は一応把握してるので、面倒だから、色々すっ飛ばして話しかけてみた。すると、弱そうな僕の姿を見て自信を持ったのか、相変わらず横柄な態度で、返事をする。
「お前のようなガキにとやかく言われる筋合いはない。俺は自分の仕事をしているだけだ。邪魔をするならお前から殺すだけだ。」
そう言って、襲いかかってきた。宿地を使って、間合いをつめたのはなかなかけど、僕にとっちゃ遅すぎ。難なくよけると、馬車側に距離を取る。
「話し合いを飛ばしていきなり押しかかってくるようなやつに騎士は似合わないなあ。卑怯な汚れ仕事専門の半人前さん。」
「このクソガキが。」
剣を持って前に出ようとするその瞬間に剣を逆に押し込み、後ろへと吹っ飛ばす。見た目が10歳の男の子に吹っ飛ばされて驚きながらも、悔しそうに立ち上がる。
「こんなクソガキに吹っ飛ばされるなんて。ふふ、ねえ弱すぎるんだけど。そのでかい図体は飾りなの?だからさ、使い捨ての仕事しか任せてもらえないんだよ。それに、頭悪すぎ。ただ剣を振り回すだけなら、誰でもできるよ。頭も体も悪いなんていいとこないね」
そう言って、奴の剣を弾けとばす。跳ね飛ばされた剣を手元に引き寄せ、
「お前みたいな半人前に剣なんて贅沢だ。『分解』『収納』」
「てめえ、何しやがる」
そう言って、奴の目の前で、剣を金属のインゴットと、剣の柄に分解して収納した。ささやかなこの仕事の報酬ってとこかな?
「それに、お前には不相応な装備と財布だなあ。それも没収。」
そうやって引き寄せて取り上げた財布の中には金貨と銀貨がジャラジャラと入ってる。当座の資金になるかな?ま、こんなとこか。
「てめえ、俺にこんな真似・・・」
醜悪な顔で僕を睨みつけるダンデルにちょっとイラっとした僕は宿地で近づき回し蹴りを喰らわす。ヒューンといい感じに飛んでいき大きな木にぶち当たる。悪役の言葉ってどうして毎度同じなのだろう。悪役検定とかあるのかあ?
瞬間に転移し、木の根元でうずくまるやつに
「こんな真似したらなんだって?」
そう言いながら奴の胸グラを掴んで自分が浮き上がりながら持ち上げる。
「ヒイイ、やめろ」
そう言いながら、暴れる。いや、今ここ浮いてるから危ないんだけどんさ。
「暴れると、落ちるよ。ベシャってミンチになりたいの?僕は別に構わないけど」
そういうとおとなしくなる。奴の目を覗き込んで闇魔法を発令。
『傀儡』
反抗的だった態度は鳴りを顰め、感情のこもらない瞳でこちらを見ている。
地上に下ろすと、その場に膝を立てて座り忠誠を示す。
「これより、お前の主人の元に戻り、こう伝えよ。セリーヌ暗殺及び、アレジ王国への陰謀はすでに露見した。今までの行動を反省し心を入れ替えるなら、穏便な対応を取るが、また性懲りも無く、悪事を図ればその時はお前の命運尽きる時だと知れ。情けをかけるのは一度きりだ。と。」
「承知しました、アズール様」
そう言うと、フラフラとミノラ王国へ向かって歩き出した。この世界に降りてきて、初めて闇魔法を使ったけど、これ効きすぎじゃない?こんなに簡単だったら、戦闘しなければよかったよ。
あ、と声をあげて追いかけ、蒼はダンデルに再び声をかけ、耳元で何かを囁く。
それに対して何も言わずに黙礼を返して、ミラノ王国の王城へと帰っていった。
去っていく後ろ姿を見送り、ジルベールに声をかける。
「アランとジュリを出してあげて。」
「ああ、わかった。」
ジルベールのアイテムボックスというか異空間収納から出された二人は戸惑いながらも、目の前の馬車と、倒れているベロニカを見る。
「あのね。ベロニカはどうもミノラ王国の王太子の部下に唆されてしまったみたい。彼女は彼女なりにセリーヌと二人の王子、王女を守ろうとしたみたいなんだけどね。今彼女は自分の命を対価に精霊魔法を発動してバリアーを張っていたんだ。それで死にかけてる。彼女には療養が必要だ。だからここからはジルベールが密かに護衛につくから二人がアンダルシア大公夫妻のところに連れていってあげて。僕は一足先にベロニカを療養させに行くよ」
振り返りニコッと笑いながら、お庭番の二人につげる。
「ジルベールあとはお願いできる。終わったら帰ってきてね。ジルベールは大公に会わなくていいから(まだ今のところは)。」
「わかった。」
「それからアランこの手紙をクレリック大公に渡してください。」
「はい、もちろんでございます。あの、助けていただいたあなた様のお名前は?」
「僕の名前はアズール。あとのことは頼んだよ。」
「はい、ありがとうございました。主人に変わりましてお礼をもうしあげます。アズール様。」
そう言って御者台にアランが座り、馬車の中に入っていくジュリ。
馬車の中では、みんなぐっすり眠っていたが、ジュリが入ったことでセリーヌが目を覚ます。
「ジュリ。無事だったのですね。」
セリーヌがジュリの手を握り良かったと安堵のため息をつく。
「うーん、お母様。もうついたの?」
アリサ王女がそう言って目をこすりながら目を覚ます。
「セリーヌ様、ジュリ様、ここはまだ森の中でございます。アンダルシア城まではまだもう少しかかりそうです。」
「ジュリ、ベロニカはどうしたの?」
「ベロニカは、賊に襲われた際精霊魔法で防いだため、魔力を使い果たしてしまいました。もういってしまわれましたが、皆様をお助けくださいました、アズール様がベロニカを治療のためにお連れになりました。生命力を代償に魔法を使ったらしくかなり危ないらしいと。詳しいことはアンダルシア城についてからにいたしましょう。」
「アズール様とは?わかったわ。アランも無事なのね。よかった。」
「はい、お嬢様、ご心配いただき申し訳ございません。もうしばらくご辛抱ください。」
セリーヌはなんとなく不穏なものを感じながらもジュリの様子から今は詳しくは教えてもらえないことを悟ったようだ。何も言わずに窓の外を見ると、マスクをした白いマントに身を包んだ金髪の少年が一人立っていた。
「あの方はどなた」
とジュリにセリーヌが尋ねると
「彼の方は、アズール様のお仲間でジル様とおっしゃる方です。セリーヌ様がたが無事にアンダルシア城に入れるまで護衛をしてくださるそうです。」
「まあ、なんという。あとでお礼を申し上げなければ」
僕は、そのあたりの様子を千里眼で見ながら、転移で自分の拠点に戻ってきた。豆の木の中47階に客室を作って、ベッドに寝かす。
治療は施したので、しばらく寝て魔力が回復すればベロニカは大丈夫だろう。でも、彼女を元の場所に戻せばお咎めなしというわけにはいかない。
そうなると色々なことが落ち着くまで、僕のもとで働いてもらおう。




