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僕の罰は神様のお手伝い  作者: Gel
アンダルシア王国連邦成立

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セリーヌ王太子妃の逃避行1

1セリーヌ王太子妃の逃避行その1


(蒼side)


次の日、完成したばかりの世界神様塔の入り口に差し掛かったところで、跪き祝詞を唱える。


『世界神様、蒼でございます。御用を承りに参りました。』


すると、塔の周りのステンドグラスの絵が動き出し、新たなストーリーを映し出す。一台の馬車が荒れた街道を走っている姿で、その後ろに馬に乗った一団が迫っている様子が見える。


塔の階段を登り映像を確認していくと、同時に頭の中にメッセージが送られてきた。


「あなたが蒼ね。世界神のテレサよ。管理神たちからあなたのことは聞いています。今私は他の世界の作成中で手が離せなくて、会いにいけないんだけど、あなたが代わりに動いてくれると聞いて、安心してるの。今、アレジ王国の王太子妃とその子供が、トラブルに巻き込まれてアレジ王国の王宮から逃げ出してるところなんだけど、ちょっと複雑なの。助けてあげてほしいわ。」


「はい。最善をつくします。」


「あなたならきっと大丈夫。頼みます。」


そういうと、通信が切れた。


ふん、結構今現在進行形でやばいってことね。まずは、彼らを助けよう。

大神様からの初めての依頼。当然御使モードじゃないと色々面倒だよね。普段の自分がバレると面倒だから、認識阻害効果のついたマスクと白い金色の糸で縁取りしたマントをつけて、同じ衣装に身を包んだ13歳の王子モードのジルベルトとお互いの格好のチェックをする。


「10歳と13歳っていうか、まだ子供だけどこれって御使さまの説得力あるかな?」


「まあ、やること見せれば納得するでしょう。それに侮ってもらったほうが助かることもあるしさ。」


「そうだね、じゃあ急いで救っちゃいましょう。じゃあ飛んで行こう。『フライ』」


塔の踊り場から飛び降りた僕たちはセリーヌのお庭番たちの救出に向かう。


(セリーヌside)


私が幼少の頃より支えてくれている、侍女のベロニカが私の寝室に入ってきたのはまだ夜が明ける前の時刻だった。


「セリーヌ様」そう言いながら私の寝台に近づき、揺り動かす。


「ベロニカ。まだ外は暗いわ。一体どうしたの?」


「セリーヌ様、先ほどより、何やら不穏な気配が。第2王子のテラノ様配下を名乗る騎士たちが、セリーヌ様との面会を希望して、門の前に来ているのですが、時間が時間ですし、あまりにも不自然で。今は警備の兵たちに時間を稼がせております。お子様方を起こしてまいりますので、至急身支度をお願いいたします。」


「テラノ様の騎士?こんな時間に王太子宮殿に騎士兵士を伴って正門前までやってくるなど、あり得ないこと。王太子様が不在とはいえ不敬であることには代わりないわ。わかりました。準備します。」


そういうと、ベッドから立ち上がりいつものドレスに身を包もうとして気がかわり、使用人が着るような質素なワンピースに身を包み、ストールを巻く。護衛の騎士たちの大半は、王太子が愛人たちと過ごす離宮に詰めているため、現在ここの警備は手薄だ。第2王子の主力級を当てて来られると、太刀打ちできない。ここは一度身を潜めて情報を集める必要がある。

自分の身支度を終える頃、隣の子供部屋から、娘のアリサがやってくる。お気に入りのワンピースを着ている。


「お母様、まだお外は暗いよ。眠いー。」そう言ってぐずるアリサを抱きしめて、


「朝早く起こしてごめんなさいね。急だけど、ちょっとお出かけしないといけないから、お母様と一緒にいきましょう。」そう言って彼女の手をとる。


「ベロニカ」

声をかけると、3歳になったばかりのセディを抱いて部屋の中に入ってきた。


「ベロニカ、現在この宮の警備は手薄。城の中に隠れ潜むのも現実的には不可能だわ。彼らの主力が攻めてきたら、守り切れないし。ゆえに、一度城を出て、おばさまのいるアンダルシア城を目指します。そのまま、状況によってはミノラ王国に戻ることになります。」


「はい、セリーヌ様。護衛はミノラ王国より連れてきたもののみにいたしました。彼らには馬車の準備をすでにさせております。秘密の通路を抜けた森の中の炭焼き小屋のなかの出口を使って脱出いたしますので、お急ぎください。」


「わかったわ。」


震えそうになる身体に鞭打って、我が子だけはどうしても守らなければという思いで、地下通路を直走る。


この秘密通路は王族のみに伝えられるのだが、結婚当初から折り合いの悪かった王太子が信じられないことから、秘密裏に専用の出口を作らせていた。それが今向かっている森の中の炭焼き小屋だ。管理している老夫婦は、ミノラ王国から着いてきた御庭番で、情報収集を頼める信頼出来る部下だ。


複雑な通路を抜け、出口前の最後の扉の前に到着した。追っ手は居ないようだ。

魔法の鍵を解錠して、階段を登る。蓋を跳ね上げて炭焼き小屋に入る。


「ああ、姫様。ご無事で何よりでございます。馬車の準備はできております。お急ぎください。」

年老いてしわくちゃになったお庭番のアランが声をかけてくれる。


「アラン、ジュリ久しぶりです。また今回も、其方たちには迷惑をかけてしまいました。」

小さい頃より、私を守ってくれた二人には実の親以上の信頼と愛情を感じている私は、二人に駆け寄り、抱きつく。


「姫様、名残惜しいですが、一刻も早くここをたたれた方がよろしいかと存じます。ご案内いたします、こちらへ」


そう言われて馬車に向かって歩き出す。そこには古馴染みの側仕えの者たちが馬車に乗って待っていた。アリサとセディをともなって、ベロニカが馬車に乗った時だった。


クインクインクイン


聞いたことのない音があたりに鳴り響く。


「姫様、曲者です。お急ぎください。私が時間を稼ぎます。」

そういうと、アランは警報の鳴った方へと走っていく。


「アランなりません。あなたも一緒に。」

そう言った瞬間、気を失ってしまった。


(ベロニカside)


ジュリはセリーナ様を魔法で眠らせた後、私たちを出発させた。


「ベロニカあとは頼みましたよ。」


そう言い残してアランの救援のために走り去った。その後ろ姿を見ながら私はみんなに心の中で詫びる。


(どうぞお許しください。)


セリーナ様が自分の親よりも大切に思っている、御庭番の二人を死なせることになるであろう企てに加担してしまった自分に嫌気がさす。

しかしこれもセリーナ様のため、母国ミノラ王国のためと思い直し、セリーナを座席に寝かせ、アリサ様とセディ様のお世話をする。


「ベロニカ、お母様はどうされたの?」


「少しお休みになられているだけです。アリサ様もどうぞお休みになってください。朝早かったので、眠かったでしょ?」


「うん。じゃあ少し寝るね。」

そういうとあっという間に寝息を立て始めた。


このまま、この森を抜けて、アンダルシア城へ入ることができればあとはカイデル王太子がうまくやってくれるはず。


そう思っていた時だった。


御者が軽い呻き声を上げたと思ったら、どさっと落ちる音がして、ベロニカが驚いて客車の窓から振り返ると、地面に横たわる御者の姿が見えた。しかし、馬車は止まらず走り続けている。


どうしてなの?こんなことは計画になかった。


そう訝しみながらも、仕方なく、御者席になんとか登ると手綱を持って、馬車を止める。


「ベロニカ、ご苦労だったな。」


その声に振り返ると、馬車の上に座るカイデル王太子付きの騎士、ダンデル卿の姿があった。


「ダンデル卿、これはどういうことですか。元々の予定ではあなた方は、姿を見せず護衛をするはずでは?」


「予定が少々変わったのだよ。いや実を言うと、本当の計画に沿って動いているんだよと言った方がいいかもな。」


何を言われているのかさっぱりわからない。まさか、そんな。危ないわ。

動かないといけないことはわかっているのだけど、後ろにいるダンデルを相手に御者などできない。馬を止めた後、ダンデルに向き合う。すると、馬車の上から飛び降りると喋り始めた。


「そんな、顔で見るなよ。我が主人は昔から、優秀な王女殿下、失礼アレジ王国王太子妃でしたね、がお嫌いだったのですよ。目障りな女を殺し、その子供を使って隣の国を併合する。なんと頭の良い計画であったことか。まあ、母国の利益のために死ぬんだ。国のために尽くせて嬉しいだろう」


醜悪な顔で、笑いながら私の主人であるセリーヌ様を冒涜する。私がバカだった。バカすぎた。

こんな奴らを信じるなんて。私は誰よりも優秀で心の美しいセリーヌ様がバカな男たちに蔑ろにされるのを見て、姫様の当たり前の幸せを願っただけなのに。

考えてみればセリーヌ様はお小さい時から不運だった。


側妃から生まれた長男のカイデルは、魔法も武術も勉強も何もかもが中途半端な暗愚な男だった。セリーヌ様のお母様の王妃マリアノーラ様は、セリーヌ様が小さい時にお亡くなりになり、カイデルを産んだ側妃カシースはまるで王妃気取りでセリーヌ様を貶める。その上、王太子の座に自分の息子をつけた上で、仕事を全部セリーヌ様に振る始末。そんな中、隣のアレジ王国王太子クサインとの結婚が決まる。完全な政略結婚だが、二人の子供を儲けるが、クサインは王妃を放置し、数多いる側妃や愛妾の元で暮らす毎日。セリーヌ様は何も問題ないわとお二人のお子様の成長のみを楽しみに暮らす。

そんな時、ミノラ王国の王太子付きの騎士である、ダンデル卿からセリーヌ様とお子様方をミノラ王国に戻した上で、アレジ王国から賠償金をとり離婚に同意させるというものだった。アレジ王国の王太子と第2王子の仲が悪いことを利用して、諍いを起こさせ、殺されそうになったという体でこちらに有利に離婚調停を行うというものだった。


「さあ、お前の役目は終わりだ。あとは俺たちに任せて安心して旅立てば良い。すぐに主人はそっちに送ってやるからな。」


ニヤけた顔で剣を片手にこちらに歩いてくるダンデルに対し、懐に隠してあったナイフを投げる。


「この、薄汚い裏切り者が」


しかし、あっさりと剣で払われてしまい、剣を持って襲いかかってくる。

「ほら、死ねよ」


ダンデルの剣を2本のショートソードで受け、右手の剣で相手の剣を牽制しつつ、左手の剣で腿を切り付ける。しかし、足の防具のせいでほんの少ししか剣が届かない。ダンデルを後ろに押し込み、宙返りをして後ろに下がり距離を取る。奴の背中を取りたいが、後ろには守るべき主人たちがいる。奴を自分の後ろに通すわけには行かない。


「ふふ、ははは。やめとけやめとけ。おまえごときが俺に敵うわけないだろ。セリーヌたちを庇ってるかぎり、お前は俺の後ろを取れない。わずかな時間稼ぎをしたところで、どっちみち逃げられるわけがないだろ。」


こちらの事情も当然わかってるってわけよね。


「セリーヌ様愚かな私をお許しください。セリーヌ様、セリーヌ様、どうかお逃げください。」


気を失って寝ているセリーヌ様にあらん限りの声で緊急を知らせる。お願い、起きてください。1分でも1秒でも多く、稼ぎたい。


「ダンデル、あなたは騎士でありながら、侍女の私ごときに遅れをとるとは。そりゃ、こんな汚い謀に頼るはずね。恥を知りなさい。」


つま先で、足元の泥を掬ってダンデルの顔にぶつける。そして、馬車の方に駆け出すと同時に防御魔法の詠唱を行う。


「ダーーーー、かったるいな。こんなことしたところで、時間の問題だろう。手間をかけさせるんじゃねえぞ。」


そう言うと、持ってる剣で障壁を殴り始める。ダンデルは腐っても騎士。あの力で殴りつでけられれば、私のバリアなど、もうそんなに持たないだろう。それでも最後の1秒まで、私は命の限りお守りする。神様どうか力を。そう願った瞬間だった。


「ごめーん。お待たせーーー」

そう言いながら白いローブを纏い、マスクを被った黒髪の少年と金髪の少年が上から降ってきた。


「へ?」



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