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第六話
「あ…」
見覚えのある人が、ガラス越しの目の前を通っていった。
視界に入ったのは一瞬だったけど…多分そう。
思わず漏れた自分の声は、簡単に店内のざわつきに吸い込まれて、自分以外には誰にも届いていないかのように、周囲の人の動きは何も変わらなかった。
今、多分…店の前を通ったの、前僕に話しかけてきた人だ…
それこそ、似た人かもわからないし、本人かどうかもわからない。
ただ、僕は…数人の男の人たちと話しながら、前を通り過ぎて行った人の顔を見て、出会った出来事を思い出せるぐらいには、似ている人だったなぁ…と思った。
僕がBL俳優に仕立てあげた男の人。名前も知らないその彼は、普通に生活をしていると普通にすれ違えるほど、僕と生活圏が被っているのかなぁ…
どうなんだろう。
まぁ、今のも似た人ってだけで…本人かどうかもわからないし。
別に追いかけてどうこうする話でもない。
むしろ、どうこうしてたら怖いだろ…
たまたま一回、喋って隣に座っただけの男の人をいつまでも覚えている自分が逆に怖くなって、僕は気のせいだよなぁ…と思いながら、目的もなく最近始めたパズルゲームに没頭していった。




